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No.11 2013年9月 「豚に真珠」

 2008年5月、都内某所で開催されたダーツトーナメントの会場で、とある一大イベントが同時に行われました。イベントの名前は「セレクション」。
 このセレクションとは、ダーツバレルメーカーやダーツに関わるアパレル・アクセサリー等の企業が、専属の選手としてサポートを受けたいと願う参加者たちを質疑応答とダーツの実技で審査し、スポンサーとして契約しても良いと思った選手に対して自社のメーカー名のプラカードを上げるという企画でした。
 当時、USAGIというダーツバレルメーカーの契約プレイヤーだった私は、社会的経験から、セレクションでUSAGIの審査員席に座る事となり、名だたるダーツ企業の代表者たちと肩を並べるという貴重な体験をしました。
 審査員席にはUSAGIの他に、DMC、Monster、samurai、ULTIMA、Clear、888、RYU、SHADOW、ACID、松本忍者、L-Style等から、ほとんどのメーカーは社長自らが出席し、錚々たる面々がドレスコードによってフォーマル姿になり、司会進行はKTMこと小田川克己氏、そのアシスタントには全国に名を馳せたレディースダーツ界のアイドルプレイヤーが起用され、ダーツ業界を震撼させる前人未到のビッグイベントが発足されました。

 しかし、いざ蓋を開けてみれば、ダーツという競技を社会市場に進出させようと狙う企業にとっては、あまりにも虚しすぎる思いだけが残される結末でした。

 セレクションへの参加者は80名ほど。参加者たちはエントリー時に自己PRとアンケートに記入して提出。主催側は記入された参加者全員分の用紙のコピーをイベント開催日の前日までに、審査員である企業へ送付してきました。
 開催日当日、イベントの会場へ向かう車の中で、私はその用紙に初めて目を通し、自分の目を疑う程の衝撃を受けました。
 実際に書かれていたPRを例に挙げると「24歳男性でレーティング8、賞歴は地元のダーツバーで毎月行われているハウストーナメントで2度優勝。希望スポンサーはMonster、その理由は名前がかっこいいから。」といったものでした。
 この時の私の脳裏では、敢て下品な言い回しをするならば「ナメてる」としか思えませんでした。

 錚々たる面々とフォーマルという重々しい空気の中、9dartsTVの撮影や雑誌の取材等が立ち並び、審査員席の前に設けられたステージへ次々に参加者たちが登場して自己アピールを始めました。
 参加者たちのその殆どが、緊張というよりも照れ笑いをしている者が多いと思えたのが私の第一印象でした。
 企業側からの真剣な問いかけにも笑って誤魔化したり、小さな声で質問の内容とはかけ離れた返答を呟く人等、イベントが進行するにつれて審査員側では「この人たちはいったい何が目的で参加しているのだろう?」という疑心暗鬼が漂い出しました。
 一次審査の後半では、もうPR用紙に目を配る審査員も、参加者の発言に耳を傾けて質疑応答をしようとする審査員も居なくなり、ただ決められた時間内は決められた場所に座り、傍観者となっているばかりでした。
 二次審査では4人一組に分けられ、会場内のトーナメントの行われていないダーツ台で、参加者たちはただひたすらカウントアップを繰り返し、審査員たちはその光景を見て回るというもの。
 私はUSAGIの社長と相談し、ある一人の気にかかった女性プレイヤーのいる台へ向かいました。参加者たちの中で唯一、大舞台で何度も表彰台に上がった経歴を持ち、PR用紙を読まずとも既に名の知れた女性プレイヤーの元へ…。
 その台の周辺には既に審査員の殆どが群がり、各々の評価を口にしたり、その女性の情報を交換したりしていました。USAGIとしても是非獲得したいと思っていた女性でしたが、競争率も高く、他のメーカーと比べてしまうとUSAGIはブランド力では引けを取っている為、諦め半分で私はその場を去りました。
 他の台ではどの審査員の目にも留まる事のない参加者たちが、和気あいあいとダーツを投げ続けているのを横目に、私は足早に喫煙所へと向かいました。程無くして、喫煙所にはいつのまにか審査員たち全員が集まり、今回のセレクションというイベントと参加者について語りだしました。
 初めに口を開いたのはClearの社長でした。「あの子たち、何がしたいんだろうね。」呆れた表情で話し始めると、その真横で煙草に火を付けたばかりのACIDの社長も「スポンサーが欲しいって軽く言っているけど、実際何をしてほしいって事かな?」と笑い飛ばしました。
 その話を皮切りに、次々に審査員たちは「ユニフォームにメーカー名を入れたいだけじゃないかな?」とか「レーティング一桁台で何ができるんだ!」等と愚痴に似た違和感を吐き出していました。
 喫煙所での会話が聞こえたのか、主催者が挨拶に来ると、その愚痴の矛先も定まり、イベント開催にあたっての方向性等を主催者に問いただしました。主催者側も「ここまで酷いとは予想外でした。契約したいプレイヤーは見つからなくても、一時的な物品支給だけでも構いませんから。」と困り果てた様子で、L-Style社長からは「うちはチップメーカーだよ?チップの試供品あげるだけでもいいの?」という質問まで…。
 結果的には主催者側から、今回のイベントを成り立たせるために、この先伸びしろがあると思われる数人にプラカードを掲げて「これからもっと頑張って上を目指してください」という意味合いを込めてメーカーから物品を提供するだけでも良いという事になりました。

 この時ようやく私は私自身の中に芽生えていた違和感の正体に気づきました。その違和感とは「審査員と参加者の温度差」でした。
 このセレクションでの審査員とは、ダーツという競技の世界で社会的に発展していこうとする企業からの代表者(主に社長)であり、未だ日の目を見ずにいたダーツプレイヤー達を発掘し日本を代表する選手として育て上げる事で、企業PRと商品開発や売上に繋げていけると思い描く人たち。
 それに対して今回の参加者たちは、あくまで趣味や特技の領域であるダーツという競技で、もっと目立ちたいとか、周りに自慢できるほど注目されたいという目的の為だけにメーカーとのスポンサー契約を結びたかった人たち。
 今では考えられないような話ですが、これは実話です。見てくれや聞こえの良さだけで契約プレイヤーになることを望み、それでいて今の自分に何が出来てこれから何をしていくべきなのか等とは到底考えもせずに、ただ「スポンサーになって欲しい」と言う人たちが大勢いたのです。

 最後の三次審査では、今一度参加者たちがステージの上へ順番に上がり、名前と一言アピールを口にした後、メーカー側からプラカードが上がれば、そのメーカーの元へ行って詳細な交渉ができるという形でした。
 私はUSAGIの社長と話し合い、USAGIからは女性数名にプラカードを上げて、後日Tシャツのみ郵送してあげようという結論に至り、打ち合わせ通りに数名にプラカードを上げました。
 セレクションで最後まで審査員たちの注目をただ一人浴び続けた女性は、一次審査後から熱心に交渉を続けてきたULTIMAと契約を結びました。今でも日本を代表するレディース・トッププレイヤーの一人として名を連ねています。

 チャンスとは見逃すと二度と巡り合えないものでもあり、時には自分から掴み取っていかなければ転がり込んでは来ないものでもあります。
 しかし、人には分相応という言葉があります。自身の足元はきちんと固まっているのか?現実的なビジョンは描けているのか?その望みは今の自分の実力と経験に見合っているのか?今一度思い直すべき人もいる筈です。
 「プロ意識を持つ」というのは、プロとしての資格を取るという事でも、ましてや武勇伝を語り威張り散らす事でもありません。
 本物のプロとして周囲に認められる存在になりたいと望むなら、まずは与えられている場所と自分のすべきことをよく理解して、自分に言い訳を持たずにブレない意志を持ち続けるべきでしょう。

 貴方は貴方の目指すその道で、しっかりと地を踏んで歩いていますか…?

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