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すがまたあやの

No.20 2015年3月 猛毒の爆撃手・竹田涼

 駅の改札越しに見えたその男の姿は、ただそこにある壁に背を付けて立っていただけなのに、到底一般人とは言えぬ圧倒的存在感。ダークな風合のフェドーラを浅めに被り、ロングストールを柔らかに捻り巻き、鮮やかな青色のサルエルパンツにモードな黒コート、レザー素材の手袋と編上げブーツ、オイルバケッタの鞄を手に…。

 取材の為に待ち合わせた私を見つけると、男は小さく一礼をして改札を通り抜けて来た。その姿はまるでNYの地下鉄から抜け出して来るかの様に、またはランウェイを颯爽と闊歩するかの様に、此処が日本の狭い雑踏の中だという事を忘れさせてしまう程の高潔さを感じさせられました。
 私が今まで見てきたダーツに携わる男性の中では図抜けたファッションセンスの持ち主である、竹田涼。誰よりも先に私が撮りたい!書きたい!と願った唯一無二のアマチュア選手。そんな私の唐突な取材の申し入れを、躊躇いながらも誠意を以て受け入れてくれた紳士であり、そしてまた危険な色香を拭いきれない大人の男でもあるのです。

 2月某日、音楽とファッションの街・下北沢にて。私の知る限りの繁華街の中で最も竹田涼の背景に相応しいと選んだこの地で彼の撮影と取材に臨み、まずはどうしても聞いてみたかった事を第一声として私から投げかけてみました。

「有名人ですよね?」

 その言葉に意表を突かれたのか、わずかに失笑を漏らしながら小刻みに頷き「はい、そうですね。そうだと思います。」と答えてくれた。そして身構えた緊張感からは一変して時折笑みを浮かべ僅かに恥じらいながら語り始めたその横顔は、 明敏な知性を武器に強烈な言語を発する…世間のイメージにある竹田涼とは別人でした。
 しかしその竹田涼がダーツという業界の「裏側」で有名人な事は周知の事実。彼が首都圏で活躍する人気者のプレイヤー達から逸脱して有名人になってしまったのは、姿見せぬバーチャルなSNS等で数多に湧き出る「アンチ」の存在があってこそ。極めて博学的且つアウトローな男の生き様を魅せる彼に、立ち向かわんとする反論者(アンチ)達。液晶画面に映し出されるその論争はまるで果てしなく激化してゆく異教徒同士のゲリラ戦さながら。

 現代「アウトロー」とは無法者または自ら望んでそう生きる事を選択した人間の代名詞として使われていますが、そもそもの語源は犯罪や逮捕歴等で法の加護が受けられない者、または市民権を剥奪された者の事を指します。

 法とはだれが作り上げたものなのか?それは国境線の中にある国家です。ではダーツという競技に例えるならば、その国境線とは?国家とは?
 ルールが法だとするならば…以前このコラムの中で私自身が書いた事ですが、ルールとは規則でありマナーとは礼儀でありモラルとは道徳です。
 正義は個々の裁量に委ねられるもの。その裁きが例え一方によっては非道徳的と思えるものであっても。
 取材の間私から核心に迫る質問は一切せず、また竹田涼本人もそれに触れる話はしませんでした。ですが現在の状況も踏まえ一言、竹田涼は自身を「これは成るべくして成った像(かたち)だと思っている」と真摯に受け止めていました。

 竹田涼という人間を身近で見ている人達にも話を聞いてみたいと思い、彼がハードダーツのホームとしている巣鴨のダーツバーへ同行させてもらいました。
 その道中に並んで歩く竹田涼を見上げ私が感じたのは、とにかく他人の注目を集め、望まなくともスポットライトを浴びさせられてしまう存在なのだと。その洗練されたファッションスタイルに整った顔立ちと長身、ビジネスとして身なりを整えてきたつもりの私でも、もっと洒落っ気のある着飾った姿で来れば良かったと後悔させられてしまう程でした。
 女として聞いてみたい事も沸き立ち、恋愛等に関する質問をしてみると思いのほか易々丁寧な口調で答えてくれました。

 先ずは月並みな「女性の好みは?」に対して、あまり具体的な像は無いにしろ、やはり「ダーツに関わっている女性が良い」と。逆に「苦手な女性は?」に対しては、明確な回答で「馴れ馴れしく距離感が異常だったり自分が設定していた空間を潰されるのが嫌」と。
 その言葉を聞いて悟りました。明らかに年下と認識している私に対しても、始終変わらず礼儀正しく敬称も付けて丁寧語で話してくれていたのは、私に対する敬いではなく私との距離感を保っていたいからなのだと。

 彼がホームとする巣鴨の店主が聞かせてくれたのは、正に竹田涼という男のカリスマ性を明確に表す言葉の数々でした。
 とにかく頭の回転が良く吸収性のあるスポンジのような頭を持っていて、誰よりも努力家であるという事。思ったことをそのまま言語として表現してしまうが、本当に正しい日本語を知っているという事。一歩も二歩も先を行き過ぎていて他人に理解されない男だという事。
 そして店主は「今の姿を理解できる人間だけが彼を応援すればいいと思う。自分は竹田涼を人として選手として年下ながら心から尊敬している」と。
 聞こえていない筈は無いのに照れ隠しなのか、私が店主から話を聞いている間は始終背を向けたまま、その場に居合わせた仲間たちとの会話に花を咲かせようとする竹田涼。店主の言う通り彼はただ「純粋すぎる」だけなのかも知れないと、その時初めて無数の点が糸で繋がったかのように感じました。

 一国でカリスマ性を持ち人々の指導者となるべき存在の強き言動は、国家にとって脅威となればそれは「テロリスト」と呼ばれ、時代にとって都合が良くなればそれは「革命家」と呼ばれるでしょう。
 ですが権力に怯え誰一人反旗を翻さなければ、強き者たちだけの独裁政権となり弱き者たちの声はいつまでも届く事は無く、悪しき習慣もまた公然たる事実と知りながら続いてしまうのです。平穏な国日本でも政治家に汚職があり、規則を作り審判を下す側の人間も欲と感情を持つ同じ人間なのですから。
 数年前とある広告の受賞作品で、小さな鬼の子供が身の丈に合わぬ大きな金棒を持って泣いている絵が描かれていました。そして書かれていた文字は「ぼくのお父さんは桃太郎というやつに殺されました」。これは「幸せ」を題材にした応募作品で、タイトルは「めでたし、めでたし」。
 非現実的と思われるかもしれませんが、この子供にとって世間の「正義の味方」は目の前で親を殺した「残虐者」なのです。

「襤褸は着ていても心は錦」
それが孤独なテロリスト、竹田涼。

 終わらない歌を歌おう…

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