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すがまたあやの

No.27 2016年5月 夜鷹は花魁の夢をみる

 ハチスズメは花の蜜を食べ、カワセミはお魚を食べ、夜鷹は羽虫をとって食べるのでした。それに夜鷹には、鋭い爪も鋭い嘴もありませんでしたから、どんなに弱い鳥でも夜鷹をこわがるはずはなかったのです。

 だってそれはあんまり無理じゃありませんか。そんなことをする位なら、私はもう死んだ方がましです。今すぐ殺して下さい。

『夜鷹の星 宮沢賢治』より抜粋

 強き者が慕われその姿に焦がれた者たちは跡を追う、それは如何な競技においても類似的。ダーツという競技は決して特殊なわけではなく、寧ろ日本でのダーツが競技としてまたアミューズメントやエンターテイメントとして周知されるようになったのは、僅かここ数年での事。故に何事においても未だ手探り状態から他の競技の真似事を追い、同業種間での腹の探り合いという暗影が表立って見え隠れしている状況も否めない。

 十数年前では強き者…数多の勝利と功績、または偉業を成し遂げる者は、称賛に甘んじて毅然としていることが世俗的であった。バレルメーカーやアパレルメーカー、所属するショップやチーム等から多くのスポンサードを受け、ユニフォームには其れ等を誇らしげに掲げ、愚民たちを魅了する。いつか自分も…と。

 言葉を荒げて言うなれば、ただ強ければ良い…そんな時代があったのだ。
 極論では、観客や消費者への敬意も礼儀も必要なく、武勇伝に酔い痴れていればそんな姿に吸い寄せられる取り巻きたちは幾らでもいたのだから。メーカーや企業としても十二分にそれで成り立っていたのだ。
 勝つことこそが最大のパフォーマンスで、当時ではまだ種類も少なかった専門誌や動画などのメディアに数回取り上げられれば、一朝一夕でスター選手の誕生。あとは強気な発言を繰り返すことで「強いから勝った」と思わせれば充分だった。
 強いから勝った…確かにそうかもしれない。けれども、勝ったから強いと言われている、それも正論ではないだろうか。

 十数年前から日本国内メーカー企業でも有名選手に関わる品々は生産・販売されていた。最も典型的な品はバレル。有名選手(とくにスター選手)のモデルともなるとその数は飛ぶように売れる。
 アパレルや備品も、敬愛する選手が使用しているものは消費者にとっての憧れ、選手と同じ物を挙って買い求められてきた。
 その販売ルートは、現代ではオンラインショップやダーツショップ等、安易に消費者の手に届くものであるが、私がダーツに携わるようになった時代では、売買は愚か都心から遠ざかる地方であるが故に商品に関する情報すら入手が困難であった。
 そんな地方での販売は「トーナメント会場」が常。物販ブースで出展される品々に消費者たちは目を輝かせた。

 今では想像もつかないであろう…当時のブースといえば会議用の長テーブルを二脚とパイプ椅子を二脚、貸し出してもらえるのは僅かそれだけ。設置場所は出入り口付近か会場の外、またはトイレの前という過酷な状況もあった。そのブースに立つスタッフといえば、そのメーカーの社員かアルバイト。物品を眺めにくる客から質疑があれば答え、需要があれば売り渡す。
 彩り豊かなテントに広々としたスペースで華やかなスタッフたちで活気付いたショップブース…そんな現代のブースとは雲泥の差とも言える。
 私はそのブースに立っていた。社員でもましてやアルバイトでもなく、その企業からスポンサードを受ける選手として。販売されているものと同じTシャツを着て、通り過ぎる人たちを呼びとめ呼び込み、物品を薦め求められれば購入された品にサインを書き、また別の選手のサインを所望されれば品とサインペンを持ち出して会場内を駆け巡り、サインを書かせてはまたブースに戻る。遠征費から参戦費までを優遇されていた私は、どの試合でも戦う合間合間はその様に立ち振る舞っていた。

そして私は、恥晒しと呼ばれた。

 年月を増すごとに日本のダーツという競技の底は上がり、同時に携わる企業も増え続け、パフォーマンス力は彩りをもち、選手たちは各々数多の企業からスポンサードを受けるようになり、ユニフォームに掲示される名も其れがメーカーなのかチームなのか何の意図もないロゴなのかすら判らないほど膨大である。(前号で私は其れ等をデコレーションケーキと毒突いた。)

 既存のスポンサー企業から新商品等が発売されればSNSを使い宣伝する。また新たにスポンサードが決まれば、選手たちはその名を大々的に紹介する。
 トーナメント会場で物販ブースが設置されれば、広告頭として店頭に立ち接客やパフォーマンスを繰り返す。中にはコスプレなど一風変わった姿で体を張り声を張り、集客に懸命に取り組み自己のキャラクターを売る遊泳術も魅せる。
 そんな選手たちの言動からは、スポンサー企業や消費者に対する敬意が感じられる。スポンサー数を意気揚々と並べ伝える有頂天さは滲み出ているものの、傲慢さはさほど感じない。
 トーナメント会場の一角に広々と設置されるブースからは絶えず明るい声が響き、客足も途絶えない。ブース毎に消費者を飽きさせない企画力もあり、其処はテーマパークさながら。
 選手でありながらブースの店頭に立つ姿を「恥」と言う者はいない。接客を「媚びるな」と罵る者もいない。もう十数年前の実態を知る人間は少なく、私のような懐古の念を抱く者は皆無であろう。良い時代になったのだ、と。

 強き者だけが称賛される時代は終わったのだ。だが強さは必須であろう、男性に至っては特に。
 しかしただ功績を上げるだけでは望まれない時代にもなったのだ。エンターテイメント性とパフォーマンス力、其れが現代ではスポンサー企業に最も重要視されている。
 如何様に魅せるのか…女性に至っては外見を重視されるのも否めない。勝ち続ける人材より、数度の勝歴と華やかさや若さ、そして愛想を振り撒く人材が求められてしまう。
 一部では華やかさが故に強き者より需要がある者もいる。これは女性に限らず、男性にも有り得ることなのだ。どれだけ多くの集客ができるか…それがエンターテイメントを避けパフォーマンスに欠ける不愛想な強き者に対して冷酷に圧し掛かる現状。その理不尽さを乗り越え、自我を押し殺してでも矢面で立ち振る舞う者たちの艶やかな事、花の如し。
 一層の飛躍を企てる日本のダーツ業界と選手たちを眺め、此の場所から此の花たちを見続けていこう…。

私は夜鷹だ。

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