Darts Psychology

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Vol.57. 2012年9月号 心理学の戦略的応用法

対戦相手として最も嫌なのは、隙がなく、あわてたそぶりを見せない、落ち着いた態度を崩さないプレイヤー

 「ダーツはメンタルスポーツ」という言葉を追求するため始まったこの企画。これまでの連載では、ダーツプレイヤーとしての「自分」を知り、それを可能な限り制御し、さらには具体的な方法でモチベーションを上げて勝つための行動を取れるプレイヤーを目指すという話をしてきた。

 今回は、ダーツでは避けて通れない「対戦」や「相手」というものを意識しつつ、心理学的思考をダーツの戦略の中に取り入れていく方法を考えてみたい。

 

 ダーツを自分ひとりで投げて技術を切磋琢磨して楽しむのも良いが、ダーツをプレイするからには、「ゲーム」として対戦相手と戦い、そして勝つというところにその醍醐味があるのもまた真実だ。つまり、ダーツの面白さには、その技術的な素晴らしさと同時に、駆け引きの心理戦というものがあるということだ。「ゲーム」である以上常に「相手」がいて、自分と「相手」の間には様々な心理的葛藤が繰り広げられている。
 心理学で「ゲーム」というと、ゲーム理論を思い出す方も多いかもしれない。ゲーム理論と言うのは、数学や経済の分野から始まったもので、ゲーム的場面で人がどのような行動を取れば、最も利益を得られるかということ考察する学問だ。こう説明するとなんだかややこしい感じがするが、簡単に言えば、リスクを最小にして最大の利益を獲得するためにはどんな行動を選択すれば良いかを考えることだろう。
 この理論は経済や軍事など様々な分野で応用されているが、現実の世界には机上の計算では考えられないほど多くの思いもかけぬ要素があり、100パーセントこの通りに行動すれば大丈夫というわけではない。だがゲーム理論は、人間はいつでも最小のリスクで最大の利益を得る理論的な行動を選択するわけではないということを私達に示してくれていて、これはダーツで他のプレイヤーと対戦するときに、意識していなければいけない大変重要なことだと思う。
 一つの例を見てみよう。ゲーム理論の中で最も有名な「囚人のジレンマ」というものがある。ある罪で共犯関係にある2人の犯人AとBが警察に捕まり、別々に尋問される。警察はABそれぞれに同じ条件の司法取引を持ちかける。AB両者黙秘すればどちらも懲役2年。どちらも自白すれば懲役5年。だが一方が自白しもう一方が黙秘を続けていた場合は、自白したほうは釈放され、黙秘したものは懲役8年となる。囚人AB共に相手も同じ条件を提示されたことを知ってはいるが、別々に尋問されているので、相手がどんな選択をするかはわからない状態だ。
 さて、みなさんならこんな状況になったときどうするだろうか?実際に実験でこの問題を提示されると、人間は相手を裏切り自白する(そうすれば自分は釈放される可能性があるから)方を選択する傾向にあるということがわかったのだ。どちらも黙秘したほうがお互いに懲役2年で済むわけだから、本来はこれが最善の選択と言うことになる。しかし、相手に裏切られて自分のほうが多く懲役を受けるより、自分が相手を裏切って釈放される可能性にかけるのが人間の行動原理と言えるのかもしれない。しかしその心理プロセスは当然AB両者に起こるわけだから、結局お互いにとって最高の利益になる選択(ここではお互いに黙秘して懲役2年)は出来ないということになる。
 この例自体は、ダーツに当てはまるところは少ないかもしれない。ダーツとは対戦相手と協力し合って何かを成し遂げるゲームではないからだ。むしろ、相手の利益が直接自分の不利益となる、交互行動のゲームだ。しかしこの「囚人のジレンマ」のような例は、人間は必ずしもいつも自分にとって最良の選択を理性的に出来るわけではないということを教えてくれる。その基本的な考え方をわかった上で、自分のダーツの戦略を立てることが必要なのだ。
 ダーツをプレイする中で、最も戦略が生きるタイプのゲームといえば、クリケットだろう。単に点を取っていくようなカウントアップや、点を減らして上がる01ゲームと違って、クリケットでは加点することと、陣地を取っていくという2つの要素が絡み合い、お互いの駆け引きが勝負の行方を左右する。もちろん、対戦する2人(2組)の実力があまりに離れている場合は、どんなに素晴らしい戦略を立てたとしても、やはり結果は実力に大きく左右されてしまう。しかし実力がさほど変わらない場合は、戦略がものを言うのがこういったゲームの特徴だ。

 クリケットの具体的な戦略とは、陣地をクローズするという行動と、加点していくという行動を、どの時点で、どういう割り合いでやっていくかということだ。ダーツのように交互行動のゲームでは、先攻が有利になるのは仕方が無い。だからこそ、後攻のプレイヤーがそのゲームを取ると、それを「ブレイク」と呼ぶのだ。これはテニスなどにも共通するアイデアだ。クリケットの場合、まずクローズして相手が加点出来ないようにするという行動を優先したくなるのが普通の心理だろう。多くの試合を見ていると、やはりクローズを優先させながら、プレイを進めていくプレイヤーが多いように思う。しかし、理性的に考えれば、試合の勝ち負けは加点で決まるのだ。常にそれを念頭において、相手と自分の入れられるダーツのバランスを考えることが出来れば、ある特定の対戦相手に対しての最善の戦略が立てられることになる。
 これをわかりやすく実践するためには、自分の理想とする戦略を一投目から樹形図に描いてみるといいだろう。この方法は将棋やチェスなどのボードゲームでは普通に行われている。自分の手を考え、次に相手の立場に立ってどう応戦するかも考える。ただ、ダーツが将棋やチェスと違っているのは、狙った手を実際に打てる確率が自分や相手の実力によって変わってくるということだ。そこで、自分や相手の打てる確率も考慮しながら試合の流れをシミュレーションしてみるのだ。
 勿論このシミュレーションした試合の流れを憶えて、実際に投げ始めてみても、その通りに試合が運ぶことはまずないだろう。だが樹形図によるシミュレーションの効果とは、その通りに試合を進められることにはない。さきほどの「囚人のジレンマ」でわかったように、精神的に日常とは違った試合という状況になると、人間は理性的な行動を取りにくくなるものだ。そんなときに、理性的な選択で作った樹形図を思い出して欲しい。100パーセントその通りに投げられなくてもいい。そのときの状況に合わせて自分の作ったシミュレーションを部分的にでも取り出し対処することが出来るようになれば、相手からかけられる心理的なプレッシャーに簡単には負けないようになる。クリケットでは、自分のミスは即相手につけいれられる隙になる。そうなると、どんどん精神的に追い詰められていくものだ。シミュレーションがしっかりしてあるだけで、あわてず対処することが可能になり、その自信が逆に相手を追い詰めることにもなるのだ。
 例えば、ダブルやトリプルに入れる技術はまだまだだが、シングルなら結構な確率で入れられるというプレイヤー同士が対戦したとしよう。当然理性的に考えればクローズに行くにしても、シングルを狙ったほうが確率が高いわけだ。しかし、試合で気持ちが乱れてくると、あせって普段は入れられないトリプルを狙おうという気分になったりする。勿論、追い詰められてトリプルに入れなければ勝てないという状況であれば挑戦すべきだが、そこまで行っているわけでもないのに、「安全圏に逃げるため」というような理由で、自分の実力に見合わない挑戦をするのは理性的な選択とは言い難い。そんな時シミュレーション樹形図を思い出せば、自分が理性的に描いた選択を指標として、それに基づいた選択が出来るのだ。
 メンタルスポーツとしてのダーツでは、こういった行動が試合の結果を分けることにもつながる。こちらが、自分の実力を最大限に発揮する戦略で落ち着いて確実に投げていれば、必ず勝機はやってくる。その勝機がやってきたときに、それを捕まえるために臨機応変に冒険をするのが、試合のセンスを磨くということだろう。ただ闇雲に挑戦するのではなく、必要なときに勝負に出るためには、それ以外の場面での理性的判断が重要なのだ。そのためにも、普段から自分なりの戦略を頭に入れて置くことが必要だ。

 01ゲームでも、戦略を立てることは大切だ。クリケットと違って、単純に数字を削って行く01ゲームに戦略は必要ないと思っているプレイヤーもいるかもしれない。しかしこの考えは間違いで、自分のアレンジや攻略ポイントを持っているほうが、試合で勝つ確率は高くなる。クリケットと同じ理論で、理性的に考えた自分なりのアレンジが練習により自分の中に根付いている状態のほうが、危機的な状況にも対処しやすいし、あわてる度合いが低い。
 ダーツボードの点数の配置が順番通りに並んでいないのは、ゲームを複雑にするための工夫だ。上がりにダブルやブルといった縛りをつけることも同様の効果を生んでいる。自分の得意な場所や、入れやすい場所などを考慮しながら、自分なりのアレンジを作っておくことで、非日常な試合の場面で、理性的で最善な選択が出来るようになる。

 ここまでで、前もって戦略を立てて試合に臨むことそのものが、自分のダーツのメンタル面の安定にとって必要不可欠であり、相手に対して常に有利な心理状態でいられる秘訣だということをわかっていただけたと思う。それを踏まえて、自分に合った戦略を立てることが大切だ。
 何度も戦略を立てていくと、だんだん自分のパターンが見えてくる。それはある意味自分の得意技のように自分を救ってくれる強い見方になってくれるのだ。だが技術的に上達していく上で、戦略は徐々に変えていかなければならない。なぜなら、戦略を立てる時大切な要素の一つは、自分と相手のスキルの確かな評価に他ならないからだ。核の部分では同じパターンを取ることはかまわないが、技術の向上と共に出来ることも増えるし、戦略のバリエーションも多くなるわけだから、積極的に新しい手法を取り入れていくのも楽しいだろう。
 相手との駆け引きに勝つためにはどうすれば良いですか、という質問をよく受ける。単純にこうすれば駆け引きに勝てるという明確な方法があるわけではない。しかし、これまでに見てきたように、前もって戦略を立てることで、試合中にも落ち着いて平常心でいられるし、比較的理性的な選択をすることが出来るのだ。対戦相手として最も嫌なのは、隙がなく、あわてたそぶりを見せない、落ち着いた態度を崩さないプレイヤーだろう。戦略の心理を理解することによって、自分自身がこの「嫌な相手」になることが出来るのだ。それは、周りから「強いプレイヤー」という評価を受け、更には本当に強いプレイヤーになるための第一歩になることだろう。

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