Darts Psychology

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Vol.59. 2013年1月号 ワンランク上を目指す練習法 最終コラム

そもそも練習は何のためにするのだろうか?それは、上手くなりたいからに他ならない

 長らくお付き合いいただいたダーツ心理学講座も、今回で最終回となる。これまでに自分がどんなプレイヤーかを知ることから始め、心理学を応用した戦略の立て方など、ダーツにおいて大切な局面を幾つか切り取って解説して来た訳だが、最終回にあたりダーツプレイヤーが最も注目しているトピックの一つである「練習方」のことを考えてみたいと思う。

 

 ダーツをプレイするからには、誰でも多かれ少なかれ練習をしたことがあるはずだ。勿論、楽しむのが主な目的だから練習は一切しないというプレイヤーの方もいるかも知れない。しかし、ダーツバーやその他のアミューズメントスポットなどで楽しみながら投げることそのものも、ダーツの練習になっている。投げた分だけ少しずつ上達するというのは、ある意味真実だろう。しかし、同じ時間を練習につぎ込んでも、すぐに上達してしまう人もいれば、なかなか今いるレベルから上に行けないと悩んでいる人もいる。結論から言うと、練習はした分だけ誰もが同じように上手くなる訳ではない。自分に合った練習方や、効率を考えた練習を取り入れることによって、その上達のスピードは変化するのだ。
 プレイヤーの中には、ダーツ上達の速さはその人の素質に関係していると思っている人も多いはずだ。確かに恵まれた体格を持ち、生まれつきカンの良い人というのはいる。しかし、上達が早い人が必ずしも素質に恵まれているという訳ではない。上達の早さの秘密は、その練習方にあることのほうが圧倒的に多い。人間が物事や技能を練習して上達し、習得していく過程にはある程度の法則があり、それを心理学の側面から知っていれば、より効率の良い練習が出来るようになる。
 そもそも練習は何のためにするのだろうか?それは、上手くなりたいからに他ならない。つまり練習方を考えるには、人間がどのように上達していくのかということを知れば良いのだ。これは、心理学の分野では「学習心理学」と呼ばれ、古くから多くの人々によって研究されてきた。実を言うとかなり古い心理学の学説を多く含み、最近ではあまり発達の無い分野とも言われている。しかしこれは逆に考えれば、すでにある程度経験的にも完成されており、かなり信頼できるセオリーが多いとも言えるのだ。
 心理学で「学習」といえば、誰でも知っている有名な実験がある。それが「パブロフの犬」だ。これは犬に「条件付け」という行為をして、ある行動を学ばせるようにするという実験で、犬が餌を与えられる直前に必ずベルを鳴らすようにすると、何回もこれを繰り返した後、その犬は餌を与えられなくても、ベルの音を聞いただけで唾液が出るようになるというのだ。つまり、犬の餌のようなご褒美は良い「条件付け」ということで、ダーツにおいては、達成感や試合に勝ったときの満足感などと同じようなものだ。だが、我々人間が習得するダーツのように複雑な技術と理論が必要なものは、この犬の学習のように簡単にはいかない。良い「条件付け」は上達への糧になり得るし、それを繰り返すことによって進歩はするが、反面逆にプレッシャーになったりと、人間の場合他の要素が多すぎて、このように単純な「条件付け」だけで学習が完了するわけではないのが難しいところだ。
 人間がダーツのような技能を習得しようとした時、その習得すべき課題は上達の段階によって変わっていく。つまり初心者・中級者・上級者という習熟の段階によって、それぞれ違う問題が現れるため、乗り越えなければならない壁も様々となり、それに対応した練習をしなければ、更なる上達は難しいということだ。ここからは、ダーツプレイヤーのレベルごとに、その効率的な練習方を見て行きたい。
 まず初心者だが、この時期人は過去の経験(他のスポーツや、生活の中での動きなど)を生かして新しい技術を学ぼうとする。ダーツでは、自分が今までにやってきたスポーツでの動きや、何かを投げるという動きの経験値を生かして、とりあえずダーツを投げて見ることから始めるのだ。ダーツのグリップが、自然とやったら鉛筆持ちだという人が多いのはこのためだ。初心者の時期はこの自分の自然なスタンスやフォーム、グリップというものを生かしたほうが良い。最初から一流の選手の真似をして投げるのも一つの方法ではあるが、それを自分のものにするためには時間がかかり、ダーツの面白さが見えてくる前に、その習得が難しいためにいやになってしまうことがよくある。だから、最初は自分の投げやすいフォームで、技術などはあまり気にせず的を狙うことに意識を集中したほうが良いだろう。
 初心者にとって一番の問題は、何を練習したらいいか分からないということかもしれない。ダーツでは的にダーツを当てる技術だけでなく、ゲームとしてどう攻略していくかということも重要になってくる。しかし初心者のうちは、高度なゲームの駆け引きなどにこだわらず、まずはダーツを思ったところにコントロールするコツを身体で覚えるのが一番の近道だ。そのためには、反復運動が一番効果がある。それも、全体を何度も練習するより、部分に分けて練習すると上達が早い。具体的に言えば、カウントアップや、時計回りに的に当てて行く練習などを多く取り入れたほうが上達の近道になる。試合の感覚は試合をしなければ分からない部分もあるので、ある程度投げられるようになったらどんどん他人と投げ合うのは大切だが、ごく初心者のうちは、地道な反復練習を忘れてはならない。更には、スタンスから投げるモーションに入るところ、3本投げるリズムなど、投げる動作を分けて別々に練習してみるのもいいだろう。
 一回の練習はあまり長く続けても筋肉が疲労するし、同じ動作を繰り返し過ぎると達成率は下がる。特に初心者は集中力が比較的低い傾向があるので、休憩をこまめに取っての練習が理想だ。またこの頃は、技術がどんどん進歩していくので楽しい時期でもある。昨日出来なかったことが今日は出来るようになるという、学びの醍醐味を感じることができる。だが短い期間に習得したものは、短時間で忘れてもしまう。だから、初心者のうちは出来るだけ頻繁に練習したほうが良い。練習と練習の間に時間が空き過ぎてしまうと、前回できたことのコツを忘れていたりして、イライラすることもある。
 練習の頻度としては、週1回よりは2回のほうが憶えの効率が良いといわれている。これは、人間がものを「忘れる」というメカニズムを研究しての結果だ。週3回でも2回とはあまり変わらないという実験結果も出ている。勿論毎日練習できる人はいいが、忙しい中で練習するなら、週に2回程度が理想的だろう。初心者にとっては実際に身体を動かして練習することが一番だが、もしどうしてもできないときは、自分が投げるところをイメージすることも結構良い練習になるので、実践してみて欲しい。
 ダーツにはまり、面白さが分かってくる頃には、そのプレイヤーは中級レベルには達しているだろう。中級プレイヤーとは、単にダーツをある程度思ったところにコントロール出来るだけでなく、アレンジやクリケットの攻略など、ゲームの展開にも気を配れるようになっている。初級から中級といっても、勿論そこにはっきりした境界線があるわけではない。
 しかし、ダーツを長くプレイしていくと、自分のダーツスタイルが出来始め、初心者の時には気付かなかったことも、自分の課題としてはっきり認識できるようになってくる。そうなれば、自分は中級プレイヤーになったと考えていいだろう。この自分自身での「気付き」というのは、上達の段階でとても重要だとされている。山登りをイメージしてみて欲しい。3合目と7合目では見える風景が違うものだ。上達もこれと同じで、初心者の時には全く見えていなかったダーツの風景が、上達するに連れてクリアになってくる。この過程は、ある意味悟りの階段を登っていくような感覚にも似ているのかも知れない。
 さて、中級プレイヤーにとっての大きな課題は、中級を脱して更に上に行くためにはどうすればいいかということになるだろう。普通にダーツを練習してプレイしていれば、誰でも比較的すんなり初級者から中級者になることはできる。だが、自分自身を中級プレイヤーだと認識してからその先は、人によって進み方が大きく違ってくるのだ。同じ時間を練習に費やしても、全ての人が簡単に上級と呼ばれるプレイヤーになれるわけではない。ここで重要になってくるのが、ワンランク上を目指す練習方なのだ。初心者の頃から続けている練習をそのままただだらだらと続けていても、上級者への道は遠い。やはり、上級を目指すための効率的な練習法を取り入れたほうがずっと近道だ。
 では、上級へ進むための具体的な練習方とはどんなものだろうか?それを考えるためには、上級プレイヤーと中級プレイヤーは何処が違うのかということに注目すべきだ。一言で言うと、上級プレイヤーはその分野に対する認知能力が初級者や中級者より格段に優れている。認知能力というのは、記憶、知覚、思考といった、人間が行う情報収集・処理・収納・発信などの能力ことだ。例えば、上級プレイヤーになればなるほど自分がプレイしたゲームの内容を良く憶えているし、色々な場面で初心者や中級者が気付かないことにも敏感に反応する。さらに、細部に注意を払うことが出来る割に、全体の流れを読むことが上手いのも上級者の特徴だ。彼等は初心者や中級者に比べて処理する情報量も多いので、長い時間退屈しないでプレイや練習が出来る。また、経験情報が多く蓄積されているので、新しいものに対処するときも柔軟に対応出来、あわてずに済む。
 中級プレイヤーがそんな上級者を目指すためには、幾つかキーになる練習方法がある。第一に、自分のとことん得意なものを作る練習方だ。中級になっていれば、そのプレイヤーはある程度のダーツは出来るようになっている。しかしその先を目指すなら、全体をまんべんなく底上げしようとはあえてせず、自分の得意技・誰にも負けないものに磨きをかけると良い。投げる技術でも、戦略でも良い。これだけは絶対他人には負けないというものを作るのだ。これは、ダーツという複雑な体の動きと戦略を必要とするスポーツの全体を、よりクリアにマッピングするためには大切なことだ。あなたが大きな街を探索するところを思い浮かべてみて欲しい。まず本拠地を決めて、そこからの距離や方角を測ったほうが早く全体像をつかみ易いだろう。一つ得意なものが出来ると、それを足がかりに苦手だったことへの対処方が見えてくるし、プレイの安定感も増して、ダーツの全体像が見えやすくなる。
 第二に、実際に投げる練習だけでなく、頭の中でイメージする練習を増やすと良い。初心者から中級者にかけては、実際のプレイで自分の筋肉の動きを身体と頭で憶え、記憶の経験値を上げる。更に上を目指すためには、その経験値を利用して頭の中でプレイをイメージし、それを反復しながら増幅させることだ。これは、単に自分のプレイをイメージするだけでなく、プロプレイヤーなどのプレイを見て、それを自分に置き換えてイメージしてみることも出来るので、フォームの改善
やゲームの進め方が上達するという利点がある。更には、実際に身体を動かして練習できる時間が限られていても、移動中や空いた時間に簡単に実践できるので無駄が無い。こういったイメージ練習に役立つという意味で言えば、上質なプレイを多く見るのも必要なことになってくるだろう。
 第三に、自分のプレイやダーツ理論を言葉にして説明したり、体系立てた流れを考える。上級を目指すからには、すでにダーツの基本理論やゲーム展開などは理解しているだろう。しかし、もう一度細部にまでこだわってダーツの投げ方やゲームの攻略法などを実際に説明したりマッピングしようとすると、実は分かっていないことが多かったり、自分の弱点に気付いたりするものだ。そのためには、入門書や技術論などをもう一度読み返したり、ハウツーもののDVDなどを見てみるのも良いだろう。意外な発見があるかもしれないし、逆にその理論に穴を見つけることもあるだろう。どちらにしても、何かに気付いたり、ひらめいたりする感覚を体験できたら、それは自分が一段階段を登った状態になったことに他ならない。
 ここで紹介した練習を経て目指すのは、先ほど話した「気付き」の頂上だ。そこに立ったプレイヤーの見る景色は、7合目にいる人達とはまるで違う。テニスや野球の選手などが、ある時からボールが良く見えるようになった、というような発言をしているが、これも、階段を一段上がった状態を表している。実際ボールの速度は以前と変わらないのだが、自分の認知の能力が上がることで、球筋がよりはっきり見えるようになるのだ。ダーツも同じで、こういった練習を続けていく中で、ダーツが以前より「分かり」、「自分の思うようになる」という状態がやってくる。その感覚を一度でも味わうと、そこからの上達には加速度がつく。全てのプレイヤーに頂点に立つチャンスは平等にある。ここで紹介したような練習方を取り入れて、着実に一段上を目指して欲しい。
 ダーツはメンタルスポーツ、これは真実だ。だが心技体はスポーツの基本であり、心と身体、そして技術が一つに溶け合ってバランスを保つことで、初めて本当の意味でダーツを極めたと言えるのだろう。その大切な3本柱の一つである心の鍛え方のヒントを、読者の皆様がこの連載から少しでも見つけていただけたのなら幸いだ。

 

 ダーツ心理学講座1年に及ぶ5回の連載は今回で終了致しました。岡田さんありがとうございました。熟読していただき是非参考にして下さい。それにしてもスポーツ心理学って難解で奥深いですね!

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