Special Person Interview

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まえしましろう、前嶋 志郎、Shiro Maeshima、前嶋組 代表

No.20 Vol.62. 2013年7月号 前嶋 志郎 前嶋組 代表 

ダーツに出会ったきっかけを教えてください。
 今から約12年前に、プレハブの中にものすごい人が集まってるんで「なんだろう?」と見に行ったのが初めてダーツというものを見た瞬間でした。まだライブカードなんてものもない時代ですね。
 その時僕は28歳だったんですけど、会社で多額の債務を負ってしまってもうどうにもならなくて、この世から去ろうかと考えていたんです。そんな状況の時に初めてダーツを見たんですけど、その時に中から一人の男の人が出て来て「一緒に投げましょうよ」と言うんです。僕は断ったんですけど、半ば無理矢理手を引っ張られて初めてダーツを投げました。
 その人は全然知らない人なのに「もっと投げてみようよ」と、何回も何回もお金を入れてくれてずっと相手をしてくれたんです。で、結局次の日も行く事になって、その人は「まぁ命を取られるもんでもないし、いろいろ頑張ってやろうよ」なんて言ってくれたんです。
 それで気持ちの切り替えができたのか、その後頑張って債務を返済してなんとか立ち直る事ができたんです。
 しばらくしてその人にお礼に行こうと同じ場所に行ってみたんです。そうしたらそのプレハブは無くなっていてビルが建っていました。そこにも「ダーツ」って看板があったんで上がって行ったんですけど、雰囲気も全然違って……。
 ダーツが10台くらい並んでいてその横にはライブもありました。その時に店のスタッフからライブカードの存在やシステム等の説明を聞いて「チャットとかも出来るから、探したい人がいるならいいかもしれないですよ」ということで通い出したのがダーツにハマるきっかけですね。
 全然知らない人が繋げてくれたダーツのおかげで僕も助かったようなものだし、今度は僕にも何か出来ないかと思いました。例えば大会に出たくてもゲームセンターや投げ放題の店で投げてるプレイヤーは情報を知らないので、じゃあそういうプレイヤーのための窓口になろうと店を出したのが「YAMATO」のスタートなんです。
 それから、僕にダーツを巡り合わせてくれたあの人にもう一度会いたくて、店を始める事でまた出会えるかもしれないという思いもありました。願った通りしばらくしてから店に来てくれて、今でも交流は続いています。
 そんな中でいろんなプレイヤーとも知り合って、パーフェクトにもプロプレイヤーとして参加する事になりました。


パーフェクトはいつから参戦されていますか?
 僕がプロ試験を取った2007年からです。

 

地元が大分ですから、なかなか大変そうですね。
 めっちゃ大変ですね。どこへ行くにもまず大分空港まで2時間半くらいかけて、飛行機でも最低1時間から1時間半は乗りますからね。

他のプレイヤーとはちょっと違ったきっかけでダーツを始められたようですが、結果というもの以外の何かを求めている様に感じられますね。前嶋さんにとってはダーツの世界において何が大事なんでしょうか。
 ダーツにおいて強さというのもすごく大事ですが、何よりもやっぱり人間だと思うんですよ。ダーツに限らず他のスポーツにしても仕事にしても、例えば金額が安ければいいとか強ければいいとか、そんなことよりもやっぱり人間関係の方が重要だと思うんです。結果がどうあれ一生懸命ひたむきに向かって行く姿勢が大事なんですよ。
 強ければスポンサーが付くとか、強ければ何でも意見が通るとか思ってるプレイヤーも多くて、これはちょっと勘違いというか、僕は違うと思うんです。やっぱり人間としての魅力がないと、ただ強いだけじゃ人気は続かないと思うんです。僕はみんなから受け入れられる選手がもっと出て来たらいいなと思うし、そういう選手がいたらできるだけ応援出来る様に、なんとなく「みんなのおやじ」的存在だという気持ちが強いかもしれないですね。だからわざわざ時間をかけて全国に遠征するのも、半分は同窓会の様にみんなの顔を見に行くようなものかもしれないですね。そうしているうちにいつかは獲れるかもしれないし(笑)。もちろん僕だってプレイヤーですから、優勝はできないかもしれないけど、ここ一番の時には「こいつを食ってやろうか」みたいな気持ちはありますよ。

 

最近はいろいろなプレイヤーのユニフォームに前嶋さんの会社の名前を見かけますが、選手のスポンサードにも力を入れられているのですか?
 最初はスポンサーなんてするつもりはなかったんです。スポンサーと言っても金銭的なサポートだけじゃなくて、人間的な部分で注意したり励ましたりすることも大事だと思うんです。そうやっていろいろ世話を焼いているうちに、いつの間にかこういう事になってしまったんですね。
 だいたい僕から会社の名前を付けてほしいと言った事は一度もないんです。うちは鉄工所なので、ダーツのユニフォームに名前が付いても何のメリットもないですから(笑)。


お仕事はどのようなことをなさっているんですか?
 主に重機の小松製作所の実験部での溶接を担当させてもらっています。実験部ですから、市場に出る前のマシンについての事ですね。それから機械を海外へ出すコンテナクレーンという運送作業です。積み込んで溶接して、現地で切って離して降ろすという作業です。それから新日鉄さんとか太平洋セメントさんとかの工場関係にも入っています。うちは15〜16人の小さい規模ですけど突発要員なんで、心臓部に関わる事をやらせてもらっていて、今のところはおかげさまで順調な状況です。

 

全くダーツには関係ないですね(笑)。社長は大会でしょっちゅういないし、会社の方ではいろいろ大変じゃないですか?
 僕はダーツを始めるまでは人を信じなかったんです。例えば自分が誰かを助ける事があったとしても、自分を助けられる人間はいないだろうと思っていました。実際金銭的に困る時は大きな金額ですから無理ですよね。そういう考え方だったので、どこかに人間不信的な部分があったと思うんです。
 でも、今まで人に頼る事がなかった僕が、ダーツ関係でいろいろと動く様になってからは人に任せられる様になりましたね。従業員を信じて大事な仕事を任せています。そうするとその従業員がそれをしっかり受け止めて、次のステップにどんどん動いてくれるんです。専務は社長の様に、責任者は常務の様に、次の展開、その次の展開をいろいろと考えてくれて、必ず100パーセントの連絡と報告をしてくれます。
 僕は今社長の肩書きですが、分からない現場では従業員に徹底的に教えてもらいます。僕は溶接の方なんで、例えば従業員がエンジンのオーバーホールをやるという時は、その分野では無知の僕が助手に付きますね。「ボルトを外して」と言われれば「はい」というように、常に上下が変わってもいいと思っています。そういう中で従業員との連帯関係や信頼関係を築けるようにしています。
 僕がダーツで地方に行く時は、いくら本気で試合だと言っても従業員から見れば遊びに行ってるようなものじゃないですか。だからそういう時は「家族と食事でも行って」と、そういう費用は渡すようにしています。

前嶋さんは大会ではお酒は飲まれないですね。
 僕は家でも飲まないです。もともとお酒は大好きなんですけど、僕の仕事は突発的に何が起こるかわからないんですよ。例えば急に「機械が壊れたから今から修理に来てくれ」と言われたら、従業員に行ってもらうわけじゃないですか。そんな時に自分はお酒飲んでますじゃ済まないと思うんです。だから、例えば結婚式でもゴルフでももう飲まないと決めたので、それだけは貫き通しています。やっぱり筋が通ったことを言いたいですからね。

 

お話を伺っていると前嶋さんからは独特のしっかりとした考え方を感じますね。
 僕は「思い」というのは一方通行でいいかなと思うんです。例えばこの選手にこんなプレイヤーになってほしいと思って応援したとして、そうならなかったとしてもいいと思うんです。「お前のこういうところが好きなんだよね、こういうところが良いところなんだよね」というのをアピールしてれば、そこだけは守ってくれると思うんです。結果として返ってこなくても、そういう「思い」が伝われば満足ですね。
 ちょっと話が逸れますが、なんか僕とTB(チトボス)が仲が悪いとか言われてるんですけど、僕TBのことめっちゃ好きなんですよ。調子いいと言われるかもしれないんですけど、吉永君のこともめっちゃ好きなんです。最初は一緒にやってた二人が今は分かれてますが、それぞれがトップになって結果を出してるというのはやっぱり凄いと思います。その中で僕に何か応援出来る事があればやるぞ、という気持ちなんですけど、それを両方に付いて調子いいと思う人間もいるかもしれないですよね。でも僕は決して利用しようと言う訳ではなくて、とにかく応援しようとしてるだけなんです。彼等は僕の意見も取り入れてくれる部分もあるし、お互いに頑張ってほしいと思ってますね。

 

年間かなりの数の大会に出場されたり応援に行かれたりしていると、たくさんのプレイヤーや業界の人達と交流があると思います。そして、現在はパーフェクトに参戦されていますが、ライブでもメインスポンサーになられてるという状況の中で、前嶋さんから見たダーツ業界はどう思われますか?
 業界的には良い形の盛り上がり方をしてきたなと思うんです。トーナメントも増えてプロの地位も認知されてきて、それは数年前とは比較にならないほどの進展だと思います。ただ僕は、だんだんメーカー主体というか、業界主体になっているような気がしてそれが寂しく感じますね。プレイヤー主体になり過ぎても良くないと思うけど、メーカーとしての会社の意思がどこまではっきりしているのかという部分に疑問を感じることがあります。
 これからもっと伸ばしていくためには、ダーツメーカーだけのスポンサー枠では話にならないと思うんですよ。一般企業からスポンサードを受けるためにはどうしたらいいかということを考えていかないとダメだと思うんです。全部が利益ばかりを追い求めて、なんとなく歯車が狂ってきてるように感じますね。選手もお金を要求しすぎる、メーカーもお金で解決する。それでは人の熱い思いが消えていくような気がして、それに反応してディストリビューターなどが動いていってしまうんじゃないかという不安がありますね。
 僕は選手に対して意見を言える立場でいたい、選手の相談にのってあげたい等、プレイヤーに対してのサポートの延長線上がメインスポンサーだと思ってるんです。さっきも言いましたが僕には何の利益もないので、その分言いたい事も言えるし、立場的にいろんな繋がり方が出来ていていいのかなとも思いますけどね。

これからダーツ界も変化していくと思いますが、どのようになって欲しいと思いますか?
 まだソフトダーツの歴史は短いと思います。でも今まで頑張ってきた人達はたくさんいるわけで、そんな人達の居場所もちゃんとあり、新しい選手達の未来もあり、という形がしっかりできればいいと思いますね。それから、もうマシンは関係ないよね、というのが理想的ですね。選手同士はすごく仲がいいのに、マシンのことになるとそっちに出たらいけない、こっちに出たらいけないというのは消えていって欲しいですね。極端に言えば、ダーツ3本さえあれば 紙にマジックで的書いても投げられるじゃん、なんてのでもいいんじゃないかと思いますね(笑)。

 だからと言ってメーカーはやっぱり大事ですからね。この数年のダーツの普及率はものすごくハイスピードだったと思うし、それはメーカーの努力あってこそですから。どのメーカーも目指している事に大きな違いはないと思うんですけど、その歯車がもう少し噛み合うと、より良い業界になるように思いますね。
 大会もちょっと多すぎる気がします。いろんな地域でいろんな人達に見せたいという気持ちも分かりますが、メーカーも選手もみんなが無理してるように感じます。移動費も大変ですからね。僕なんか、もし優勝しても賞金なんかじゃ追いつかないですからね(笑)。
 いろんな選手にたくさんのチャンスを与えてもらいたいと思います。みんな本当に一生懸命頑張ってるし、最近は昔の選手もどんどん復活してこようとしてるんですよね。そういうことにも僕は力を入れていきたいと思ってます。

 

前嶋さんはあまり海外には行かれないということですが、今回のフェニックスサマーフェスティバル、韓国大会はいかがでしたか?
 いやぁ、いろんな国の人がいてものすごく楽しいですね。言葉も全然分からないし文化も違いますけど、コークひとつ決めるにしても、ワン・ツー・スリーでいったりコイントスにしたり、お互いがお互いの事を思いながら試合してますよね。
 僕は全くマイナーな選手ですけど、今日このソウルでの大会で50人くらいの選手から「一緒に写真撮って下さい」って言われたんですよ。僕はユニフォームに名前も入ってないので、相手は僕の事を知ってるんだと思うんですけど、いろんな人が「前嶋さん、前嶋さん」って来てくれたのは本当に嬉しかったですね。大会中も放送で何回か「マエシマグミ」って放送されて、ちょっと照れくさかったんですけど、僕のそんな活動が少しでもプレイヤーのためになってくれているんでしょうかね。
 昨日の夜はマレーシアの組と投げたんですけど「ワンモア、ワンモア」って、僕なんかでもずっと相手してくれるんですよ。こういう交流をぜひみんなにも持ってもらいたいですね。そういう意味でも全ての壁を取っ払ってほしいですね。シンプルになってほしいです。

お店のことを教えていただけますか?
 僕は大分の津久見という、人口2万人もいなくて、夜は猫くらいしか歩いてないないような所で「YAMATO」という店をやらせてもらってます。2006年からやってますが、年間の来店客数が最初の年で4千人、その後も6千人は切らないという状況です。
 うちは地元のお客さんはほとんどいないんです。津久見市の人は多くて2%くらいで、ほとんどは県外からのお客さんです。そんな店でもなんとかやっていけるのも面白いし、これもやり方なのかなと思いますね。
 この店はダーツバーをやりたくて始めたのではなくて、エントリーしたいけどできないというプレイヤーのための窓口的な感覚で作った店なんです。
 極端に言えばお客さんゼロでもつぶれないという感じですね。僕と息子の練習場のようにもなってます。常連のお客さん達はお客というよりは経営者のようで、店の鍵も持っているんです。別に僕や息子がいなくても常に店は開いているという状態で(笑)。そういう変な店なんです。
 下には映像室があってスローを撮りながらチェックしたりもできます。スローカメラは無償で貸してるので、僕は「お金がないから投げられないなんて言うなよ」って言ってるんです。「お金がないなら下に降りて、スロー映像撮りながら自分のフォームチェックしろよ」と。そこではバケツにジュースが入ってて「一本100円」とかって書いて置いてあるんですけど、一回も金額がずれたことはないんですよ。

年に一度大会を開催されてるということですが。
 周年行事として「たちばな」という大会を開催しています。今年は5月3日でしたが、これは5月のパーフェクトの2日前というのに決めてやらせてもらってるんです。ありがたいことに全国からいろんな方が来てくれますね。「マエジマ」付けてるプレイヤーの8割くらいは参加してくれます。形式はシングルス・シングルス・ダブルスの男女混合で、プレミアも一試合だけ男女混合でやるという形です。
 ずっと盛況に続いてたんですけど、ジャパンができてからは日程が変わったじゃないですか。なので、正直参加者は減るだろうなと思ったんです。でもその時も木山君からメールもらって「僕らは行きますよ」って、みんな自腹なのに来てくれるんですよ。大阪のアサダさんとか、谷田さんとかぶんぶんなんかは車で来てくれて……。本当にとんでもない面子で嬉しい限りです。僕が常に思う「最後は人間だな」って感じざるを得ない大会なんです。毎年人の温かさを感じさせてもらってます。
 スポンサーになったりしてますが、逆に僕がみんなからサポートされてるんですよね。僕がサポートしてるつもりは何もないです。それが今の僕なんです。

前嶋組をよろしくお願いいたします

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