Special Person Interview

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田村 英夫、RED TAG

No.24 Vol.44. 2010年7月号 田村 英夫 RED TAG 

 ダーツバーを始めて18年とのことですが、その間にはいろいろなことがあったと思います。NDLとも長いお付き合いになりますが、マシンも何回か変えられましたね。
 マシンに関しては変えたくて変えたんじゃなくて、先方の都合の場合がほとんどだったんですけどね。でもそのせいでいろんな人達とめぐり会うことができ、おかげで今の自分があるのかなと思います。

 

今はD1の店舗として営業なさっていますが、そこに落ち着いた理由というのはどうしてでしょうか?
 D1になる前から付き合いがあった方がいらしたんですが、その方のダーツに対する考え方がとても気に入ったんです。ダーツに対して「楽しいことをしましょうよ」「ダーツはお客さんと一緒に楽しむものですよ」という姿勢が素晴らしかった。インカムは入れば嬉しいけど、でもお客さんが楽しむために使ってもらうことが一番、というスタンスで接してきてくれたんです。僕は今でもその考え方を持ってるし、こういうのがダーツの良いところだと思うんですよね。
 一概には言えませんが、最近はトーナメントブームになっていると思うんです。でもダーツは、本来はその場にいる人間が楽しむものであって、お客さん同士のコミュニケーションツールとして活躍してもらいたいと思うんですよね。その中から競技志向に移るプレイヤーも出てくるだろうし、仲間同士でリーグ戦をやるのもいいと思うし、いろいろな使い方があるでしょう。ただ言えることは、投げる場がないと使えないというのが現状だと思うんですよ。

 

この18年間で楽しかったことや逆に大変だったことはなんでしょうか?
 楽しいというのはいろんなお客さんが来てくれて「ダーツは楽しい」と言ってくれるときに常に思うことですよね。「また来ます、また投げたいです」と言ってくれるときが一番嬉しいですね。
 僕はあまり難しい考え方はしたくないので、お客さんが純粋に楽しんでくれて、それをそのまま受け入れたいんです。お客さんがつまらないと思うことはしたくないし、ましてや押し付けるよう

なものでもないと思うんですよね。だからゲームにしてもゼロワンとクリケットだけにこだわるんじゃなくて、いろんなパーティーゲームがあるんだから、それで遊ぶのもいいんじゃないかと思います。
 同業者がやっていけなくなってお店を手放す時、台を下げなくてはならないのは悲しいですね。それはダーツのせいじゃないのにダーツのせいにして、ダーツを嫌いになってしまう人がいるんです。例えば「ダーツのお客さんが来るから飲むお客さんが飲まなくなっちゃう」とか、いろんな言われ方をすることがありますが、こういうのは本当に寂しいですね。

 

リーマンショック以来様々な業種が大変な状況に追い込まれているわけですが、最近はいかがですか?
 今は非情に厳しい状況ですね。まぁバーとしてなんとかやっているというのが現状ですね。ただ、常に同じスタンスで営業しているので、新しいお客さんがまったく来ないわけじゃないんです。うちは街中にあるお店じゃないんで逆に地元の人達なども気にしてくれていて、「何度も通りかかってずっと気になってたんで入ってきました」という方もいますからね。そういうお客さん達が楽しめる空間でありたいと思っています。他店が無くなっている場合もあるので、新しいお店を探してる人達がいることも事実なんですよ。その中のひとつの候補であるわけなので、入ってきてくれたお客さんに対しては居心地のいい、楽しい空間にしてあげたいという気持ちで接しています。
 お酒を飲み食事をしてダーツで遊び、それが気に入ればまた来てくれるでしょうし、気に入ってもらえるように努力するのがお店の役割なわけですよね。だからドリンクにしてもフードにしてもやるべきことはちゃんとやる、やっぱり手抜きは出来ないです。ソフトドリンクでさえ気を使って注ぐ、カットフルーツをきちんと添える、プロとしてお客さんをもてなすわけですから、グラスの運び方ひとつにしてもグラスが温まらないように持つところに気を使ったりしています。お客さんは気付かないかもしれないけど、それはあたりまえの仕事だと思うんですよ。

そういう基本的な努力をされているわけですが、ダーツに対してはどのような取り組みをなさっていますか?
 ハウストーナメントについてはオープン当初からマンスリーでやっています。人が集まろうが集まらなかろうが基本的にはシングルスのガチで、人数が多くなった場合はダブルスに変更という形をとっています。そのスタイルが合っている人だけしか来ないわけですが、でもうちのハウスはこういうものなんだというのは一貫して通したいというのがあるんです。
 そのほかには初心者向けのダーツ大会もやっています。楽しみ方はいろいろあると思うし、どっちも楽しいと思うんですけど、中間層のプレイヤーがちょっと難しいですね。お客さん同士が楽しみを分け合うと言うことが少ないかなという気がしますね。
 最近はどうしてもそのグループ同士で楽しもうとする傾向があって、いろんな人と絡もうという雰囲気がちょっと減ってきているように感じます。トーナメントとかいろいろありますが、対戦相手のことを何も知らないまま帰ってきてしまうようなパターンが増えている気がします。「いつもはどこで投げているんですか?今度遊びに行きますよ」というのが昔はもっとあったように思うんですが、今は勝ち負けだけを追っちゃってるのかなと……。でもそれもその人達の楽しみ方だからいいとは思うんですけど、せっかくいろんな場所から人が集まってくるんだから、出会いの場がトーナメントでもいいと思うんですよね。どうも最近はそういう絡みが少ないですね。もう席まで決められちゃうような風潮があるんですが、あれはどうしてなんだろうと思います。なんで自由に隣に行って話せないの?と思いますね。

 

トーナメントに出場したいというプレイヤーに関してはどのような対応をされているのですか?
 うちからエントリーできるものはもちろん出場してもらいます。うちからエントリーできないものに関してはどうすればエントリーできるかということくらいは教えてます。
 ハードに関しては送られてきたものはすべて掲示しますし、他のボードメーカーのトーナメントでも送られてくれば掲示しないことはないです。

 

ハードボードもきちんと設置されていますが、投げるプレイヤーはいますか?
 そんなに数は多くないですが、競技の方で頑張っているプレイヤー達が投げています。ソフトのプレイヤーとは捉え方が違うようですが、投げることに関しては同じですよね。
 ソフトのプレイヤーでもトーナメントを楽しんでいる人達の考え方でいけば、そのままハードに移行しても全然問題ないでしょうね。リーグだとまたちょっと変わってくるとは思うんですけど。

 

プレイヤーを育てることについてはいかがですか?
 僕は育てるという考え方は最初から持ってないですね。あくまでも来てくれる人はすべてお客さんなので、プレイヤーとしては一切見ないようにしています。お客さんとして人として接することを大事にしています。プレイヤーだから、選手だからというよりも、お客さんというのが必ずその前にありますから、ダーツが上手い人でも下手な人でも同じお金を払っていただいて遊んでもらう時点で同じですからね。上手い人だから優遇されるというのは、店の中では同じお客様である以上あってはならないことだと思うんですよ。

 

沼津という場所はダーツバーとして、またディーラーとしてはどのような土地ですか?
 自分がロケとして廻っている以外の場所を知らないので比べられないですが、とりあえず今は飲食店にダーツを置くというビジネスは難しいですね。今までのようにダーツバーが流行る要素はどんどん無くなってくると思います。

それはどうしてですか?
 いろんな人達と楽しみながら投げるというより、自分たちさえ投げられればいいという雰囲気になってきている気がするんです。そうすると別にわざわざダーツバーに行かなくても、いいやという流れになってきてしまう。要するにダーツバーにはエントリーするためだけに来るというお客さんがいます。でもそのお客様も次に繋がる大事なお客様であることには変わりないですからね。
 しかもトーナメントでもお店に行かなくてもネットでエントリーできるようなシステムが始まっています。トーナメントのためにひたすら練習したいなら、一時間いくらというネットカフェや、家で投げて練習すればいいわけで、ダーツバーに行こうという気持ちが薄れてしまうんじゃないでしょうか。

 

ダーツバーが始まった当初の仲間同士のふれあいや温もりが薄れてきてしまっているということですね。
 そうなんです。結局トーナメント重視のダーツだと、この先どんどん形が変わってしまうんじゃないでしょうか。リーグ戦重視だったらまだ救われるのかとも思うんですけどね……。

 

沼津に関してはそういった傾向が顕著だということですか?
 他を知らないので比べられないのですが、そのように感じますね。お客さんはどこの店で何を投げようと、自分のライフスタイルや好みに合った店で投げるのが当然だと思います。店側としては選んでもらえるように努力しなくてはならないわけで、一回でも来てもらえる努力をする、来たからには楽しんでもらう、そういう意識が大事だと思うんです。

 

これからについてはどのように考えていらっしゃいますか?
 うちはお酒を飲みながら、とにかくゆっくりゆったり投げてもらうスタンスなので、これからもそういう方向性でいきたいと思っています。
 ガンガン投げたいお客さんが減っているのは事実ですが、このスタイルを変えたくはないですね。これは僕の年齢的なものもあるでしょう。もう40代後半に差し掛かってしまうんですが、この年齢で漫画喫茶やインターネットカフェなどのアミューズメント系のお店でダーツを投げるということにはどうしても抵抗があるんですよね。「いいおじさんが何しに来たの?」みたいな……。やっぱり僕くらいの年齢の人でも、一人でフラッと入って投げられるお店が欲しいですからね。
 今はとにかく誰でもいらっしゃいませというスタイルですから、たまにおじいちゃんおばあちゃんも入ってくるんですよ。この前も79歳のおじいちゃんが来て、しっかりお酒も頼んで「ダーツ投げてみたいんだけど」って言うんですよ。さすがにカウントアップ8ラウンドでさえちょっと長いので、「とりあえずおじいちゃん投げてみてよ」とカラ投げしてもらったら、2~3回投げて満足してにこにこ笑ってくれて、「また来るよ」って帰って行ったんです。僕はこういう出会いや触れ合いを大事にしたいんですよね。
 これからもお客さん重視に変わりはないですが、お客さん重視というのはお客さんの要望を全部叶えるという意味とはちょっと違うんです。何かうちならではの特色を生かせるものを見つけて、お客さんが楽しんでくれるものをこちらから提供したいと思っています。
 他のメーカーでは通信があたりまえで、実際にそこにいない人同士が戦いますよね。それも確かにひとつのコミュニケーションですが、その場にいる人達だけで楽しむんじゃだめなのかなと思っちゃうんですよね。例えば地方で1店舗しかなくて、いつも同じ人とばかり投げてる場合は、通信でも違う人と投げてみたいという気持ちはわからなくもないけど、もっと仲間を増やそうとか、そういう感覚が少ないかなと思いますね。いつも同じグループだけで楽しんでいるんじゃなくて、たまには違うグループともコミュニケーションをとってみる、お店はそういう場でありたいと思います。

最後にダーツ業界にひとことお願いします。
 とにかく僕は『プレイヤー』という見方はしたくないんです。トーナメントにしても同じで、あくまでもお金を払っていただく『お客さん』だという意識で接してほしいんです。そのお客さんを楽しませる努力は惜しまないでほしいですね。

 

上から目線という態度はよくないということですね。
 もともとはこの台で遊んでいただいているお客様へのサービス還元で「参加して下さい」というものだったはずなのに、最近は開催側の方が強いような気がするんです。まぁ僕だけが感じていることかも知れませんけどね……。大会というのは、その日一日遊んでくださいというものだったはずなのに、予選で終わって帰っちゃうだけじゃあまりにも面白くないですよね。原点を思い出してほしいと思います。これはソフトでもハードでも同じだと思うんですが、そうしないとこの先続かなくなってしまうんじゃないでしょうか。
 僕はダーツをやったら『楽しい』という気持ちだけでいいと思うんですよ。確かに勝負なので『悔しい』というのもあるとは思うんですが、その『悔しい』の中にも『負けたけど、でも楽しかった』というのがあってほしいんです。
 中には試合に負けるとふて腐れる人もいますよね。やっぱり勝った人に対しては「おめでとう」という気持ちを持って欲しいし、それは礼儀だと思います。負けたのは自分の問題なのに、それを「相手の投げるリズムが悪いから」とか、ボードや場所のせいにする人がいるのは悲しいですね。試合中でも負けてくるとあからさまにやる気のなくなってくる人がいますが、まだ最後までわからないのに、なんでなんだろうと思いますよね。結局普段の練習でもそうなのかなと、ひとつひとつのゲームを大事にしてないんじゃないかと思うんですよ。ファミコン世代というんでしょうかね。途中でリセットして、はい次、みたいな、まぁそれもわからないでもないんですけど……。
 6~7年前にブームになった時は、バーが主体で人と人とのつながりで広まってきたわけですが、今はアミューズメントスペースで広まっていて、バーのダーツじゃなくなったなと思います。
 僕は人と接するのが好きなのでこの仕事をしているわけなので、これからも人と人とのつながりを大事にしていきたいと思います。

 

※たいへん残念なことですが諸事情により現在RED TAGは既に閉店しています。振り返って考えてみるとこの頃からダーツバーの環境は大きく変革期に向っていました。

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