2011年9月
今年1月に栄誉あるワールドチャンピオンシップで優勝なさったわけですが、今はどんな気持ちですか?
このトーナメントに出場していたプレイヤー誰に聞いても同じだと思いますが、やはりワールドチャンピオンになるということを目標に戦っているわけです。だから実際にそれが現実になってみると、本当に夢がかなったんだなと実感しました。そして今までの努力が報われたと思うと、凄く嬉しいです。
ワールドチャンピオンシップは12月から始まり、1月に終わる長い大会ですよね。クリスマス休暇をはさんで戦うというのはどういうものなのでしょう?
そうですね、確かに長い大会です。私たちダーツプレイヤーにとって、この時期に行われるワールドチャンピオンシップはとても重要なので、基本的にクリスマスはしばらく忘れて、大会が終わってからお祝いするんですよ。クリスマスの日は静かに過ごして、次の日にはもうロンドンに向かって車で出発するんですけど、その時はちょっと寂しい気分ですね。でも、それ以外は問題ありません。
今回の大会で一番辛かった試合は?
やっぱり、一番きつかったのは決勝戦です。決勝というのは、優勝がもうすぐそこにあって手が届きそうに感じるのに、やっぱりまだそれは自分のものではないという状態なんです。この感覚、分かってもらえますか?あと1ゲームで優勝が自分のものになるんです。準決勝のときはそんな気持ちにはならなかったんですけど。そのジレンマのような感覚はきつかったです。でも、なんとか自分なりに切り抜けました。
その決勝戦のことをお聞かせください。イメージ通りの試合が出来ましたか?緊張はしましたか?
決勝戦は、自分が思っていた通りの試合になりましたね。対戦相手は世界でトップに立つだけの資格を持った、素晴らしいプレイヤーだと分かっていました。実際には、やっぱり私も緊張しましたよ。誰でもあの場所に立てば緊張するんじゃないかな。厳しい試合になるとは予想していました。でもいざ始まってみると、結構良いプレイが出来て、自信が出てきたんです。それからだんだん、「これは、勝てるんじゃない?」と思うようになりました。
ワールドチャンピオンになって、何か変わりましたか?
私は今でも昔と同じ自分のままです。特に何かが大きく変わったとは思いません。でもあの大会で優勝して、信念を持てるようになったかもしれませんね。そうですね、変わったといえばそこでしょう。もっと多くのトーナメントに挑戦していこうという、強い信念のようなものを得ました。私はその後に開かれたプレミアリーグでは負けてしまいましたが、その信念は今でも残っています。
プレミアリーグへの挑戦はいかがでしたか?ワールドチャンピオンシップ決勝でも戦ったゲリー・アンダーソンとも対戦しましたね。
そうですね。同じ相手でした。プレミアリーグでは彼がリベンジした形ですかね。彼はあまり敵意むき出しというような感じではなく、落ち着いてプレイしていましたが、今回は私がやられてしまいました。彼のプレイが良かったんだと思います。プレミアリーグでは準決勝のとき、優勝出来るのではないかと思っていたんです。でも、残念ながらだめでした。彼は学習能力が高いですね。凄いプレイヤーですよ。
いつ、どのようなきっかけでダーツを始めたのですか?
私は17歳でダーツを始めました。そのころ建設関係の仕事をしていたんですが、金曜の夕方仕事の後にパブに行って、のんびりダーツを投げて遊んでいたんです。それがダーツを始めたきっかけですが、しばらくして、自分にはこのスポーツの才能があると気づいたんです。それから、真剣に投げるようになりました。
プロに転向したのはいつですか?
20歳のときです。ダーツを始めてまだそんなに長くは経っていなかったんですが、できると思ったんです。
プロに転向したきっかけは?
その頃、私はUKオープンの地区大会の予選で決勝ラウンドまで残ったんです。予選から勝ち上がる場合、地元プレイヤーのほとんど全員と戦うくらい大変なんですよ。それで地区大会に出る資格を得るわけですが、私はニューキャッスルの大会で準決勝まで進んで、そこで負けました。でも、その試合がテレビ中継されていたんです。それでプロになる決心をしたんです。自分の出る試合がテレビで中継されるというのは、プレイヤーにやる気と自信をくれるものなんですよ。それで、ダーツプレイヤーとしての将来を考えられるのではないかと、思うようになったんです。
ルイス選手は現在世界ランキング2位ですが、それについてはどう思われますか?
自分でも、本当に凄いことをやってのけたと思っていますよ。そしてもっと上を目指し、ナンバー1になるために日夜頑張ってます。でも、テイラー選手がいまのところ1位で踏ん張っているので、それを止めるのは難しそうです。それにダーツ界には強い選手がたくさんいますから、まだまだ頑張らないとだめですね。
テイラー選手とは良い関係を築いていると聞いていますが?
ええ、そうですね。テイラー選手と私はとても良い関係だと思いますよ。一緒にいると、あれやこれやおしゃべりの話題も尽きません。大会に出たときは、一緒に練習もします。今回のプレミアリーグでもそうでした。テイラー選手は本当に素晴らしい人です。
PDCについて聞かせてください。ルイス選手にとって、PDCとは?
PDCは世界最高峰のダーツプレイヤーが集まるところです。同時に、世界で最も厳しいダーツの団体でもあると思います。もし試合で気を抜いたり、良いプレイが出来ないようだと、すぐに自分の場所は他の選手に取って代わられてしまいます。私の意見ではPDCはそういうところですね。
今年はPDC全部の試合に出場しているのですか?
いいえ、全部には出ていません。スポンサーの仕事や、エキシビション、家庭のことなどもありますので、全部には出られませんね。基本的に、自分にとって良いと思える大会を選んで出場しています。今年は今のところ、それで上手くいっています。
今年、参加した大会の結果を教えてください。
今のところ1つの大会で優勝しました。それから、他の2~3の大会では決勝で負けてしまいました。もっともっとダーツを精進しなければならないという証拠ですね。テレビ中継された試合は特に力を入れています。ワールドチャンピオンシップ、プレミアリーグ、ヨーロピアンファイナルズなどでは、決勝まで進みました。こういう結果を考えると、さっきも言ったように、やっぱりまだまだ私は成長しなければいけないなと思います。
でも、テレビで有名になった効果は上がっているようです。あちらこちらで人が私に気付いてくれたり、話しかけてくれたりします。それも、PDCがあって、ダーツプレイヤーはスポーツ選手だからというのも大きいと思います。みんなスポーツには結構入れ込みますし、おかげで私も有名になれたんでしょうね。
ルイス選手は、ご自分をどんなダーツプレイヤーだと思いますか?
私は、ダーツに全力を傾けているプレイヤーです。それから、自分の能力を信じていますね。今後長い目で見れば、私はもっとたくさんのメジャータイトルを取れると思います。
ダーツ以外に何か趣味はありますか?
ええ、幾つかあります。まずはサッカー観戦ですね。それから釣りも好きです。ゴルフやスヌーカーもやります。私はスポーツ全般が好きなんです。色々なスポーツをやりたいと思っています。でもサッカーは見るだけで、やるのはちょっと無理ですね。激しい運動系は苦手なんです。
今までにスランプの経験は?
そうですね、スランプなら何度かありますよ。まあ、ダーツプレイヤーなら誰でも経験することじゃないですか?私のときは、自信を取り戻せるまで出来るだけたくさん練習しました。以前持っていた自信を回復することが大事なんです。たくさん練習して自信が戻ってくると、また調子も上がってきました。
ルイス選手にとって一番記憶に残っている試合は?
やっぱり、今年のワールドチャンピオンシップ決勝戦しかないでしょうね。
練習方法や時間などについて教えてください。
私は同じPDCプレイヤーのアンディー・ハミルトン選手とダーツ仲間なんです。二人で一緒に練習することが多いですね。練習は毎日します。お昼の12時頃から始めて、4時くらいまでやります。よくやるのはフィニッシュの練習ですね。121から始めて、ナインダーツでいくつまでやれるかを練習するんです。
大きな大会の前はどんな気分ですか?何か決まってやることなどはありますか?
私が思うに、大きな試合の前にナーバスにならない人なんていないんです。一度ステージに上がってしまえば、もう逃げることは出来ません。だから、戦うしかない。そう考えればいいでしょうね。私には、「よしやるぞ」と心の準備が整う瞬間があるんです。
試合の3~4時間前には準備万端にして、その時心の準備も整います。特にいつもやる儀式とか決まった動作とかはありません。早く会場に入って、「刷り込み」作業をするんです。リラックス効果を上げることですね。iーpodを持っていって、エルトン・ジョンやM&Mなどを聞きます。ゴージャスな感じの曲や、ダンス系はだめですね。自分がリラックスできる音楽を詰め込んで、流すんです。ほんと、効きますよ。落ち着きます。
毎年2月から12月まで毎週試合があります。前向きなメンタリティーと健康はどのように維持していますか?
重要なのは精神的な部分です。常に「ハングリー」精神を心がけています。勝ちたいという気持ちがあれば、いつでも次の試合にスタンバイできますから。前の試合からは早く立ち直って、次を見据えて準備することです。これからもし私が、何週間も長い期間ずっと勝ち続けることがあったなら、「ちょっと休んでもいいんじゃない?」と、自分に言うかも知れません。
テイラー選手は、10試合中9試合は勝っていますが、それでも次の週はまた闘志を燃やして戦いに挑んできます。そこが彼の凄いところですよね。普通だったら、ちょっと気が緩んで休みたくなるものです。でも彼はいつでも「ハングリー」なんですよ。やる気満々です。彼が15回もワールドチャンピオンになれた理由は、それなんでしょうね。
試合の前にはアルコールは飲みますか?
私はあまり飲みません。神経を落ち着かせるために、2杯程度飲むくらいです。7000~8000人の観客の前でプレイするときには、やっぱりアルコールが少しあると落ち着きます。
ダーツの技術面で一番重要なポイントは何ですか?
私が技術面で一番重視しているのが、左右の感覚をしっかり認識することです。ダーツという競技は縦運動だからこそ、大事なんです。意識すると腕が少しこわばる感じがしますが、それが位置の感覚をつかんでいることになるんです。それから、集中して、どんなダーツを何本投げているかを把握しておくのも大切です。
尊敬するダーツプレイヤーはいますか?
テイラー選手は、その全てにおいて尊敬しています。唯一無二の存在です。それから、ハミルトン選手のことも尊敬しています。もちろん、全ての先輩ダーツプレイヤーに尊敬の念を持っています。あのステージに上がってプレイすることがどんなに厳しい体験なのかということは、実際にあの場所に立って実感するまでは分からないものなんです。それをやってきた先人たちを尊敬すのは自然なことですよね。
ルイス選手には来日の経験がありますが、日本の印象はいかがでしたか?
数年前にユニコーンのソフトダーツイベントで日本に行きましたが、本当に大好きになりました。日本では色々なことが凄くスムーズに動いていて、人々もとても丁寧で親切でした。楽しい滞在でしたね。
日本の文化や食べ物はいかがでしたか?
テーブルが私にはちょっと小さめでしたね(笑)。足がはみ出してしまいましたよ。部屋に上がるのに、靴を脱ぐのにも驚きました。お箸もあまり上手く使えませんでした。特にご飯を食べるのが難しかったですね。終いには、ナイフとフォークを持ってきてもらいました(笑)。
日本人プレイヤーの印象は?
何人か素晴らしいソフトのプレイヤーにお会いしました。ハードの選手とは手合わせする機会が無かったのが残念です。でも、本当にソフトの選手のレベルは高いですね。みんな、頑張ってるね!
最近ルイス選手はスポンサーをユニコーンからターゲットに変えましたが、そのいきさつを教えてください。
変化の時が来たということでしょうね。私はターゲットのゲーリーのことも知っていましたし、私のマネージャーのキースはターゲットの選手だったんです。そのキースが、ターゲットのダーツを使ってみるのはどうかと提案してくれて、そのアドバイスに従ったんです。良い選択をしたと思います。新しいダーツで新しいチャレンジをするというのは、ワクワクするものですね。ターゲットチームの一員として、色々なことに挑戦しています。今は、新しいダーツで出来るだけ多くのメジャー大会で優勝することを、楽しみにしています。
あなたにとってダーツとは?
ダーツは私の仕事、キャリアです。そして、私の全てでもあります。ダーツと家族が私の全てなのです。今まで私は、ダーツに精魂をこめて取り組んできました。人間は自分の人生を生きるために、何かに打ち込んでそれを切り開いていかなければならない…それが私の場合、ダーツということです。
あなたの夢や将来の目標は?
私の夢は、もっとたくさんのメジャートーナメントで優勝することです。全てのメジャートーナメントで勝ちたいですね。でもまずは、10月に開かれるワールドグランプリに集中したいです。今はそれに向けて頑張ってますから。とにかく、出来るだけたくさんのトーナメントで勝ちたいです。あ、でも、宝くじに大当たりしたら話は別ですけどね(笑)。
最後に読者の方々にメッセージをお願いします。
ダーツを真剣にプレイするなら、良いスポンサーを探すことが大切です。そして、イギリスに来てPDCの大会に挑戦してみてください。きっと楽しいですよ!日本のダーツプレイヤーのみなさん、頑張ってくださいね。
今日はどうもありがとうございました。これからも素晴らしいダーツを見せてください。
はい、またお会いしましょう。応援お願いいたします。