Kiyo Shimizu-Vol.66.2014.3-Top

Vol.66 清水 希世
何かに向かって突き進むというのが苦手

2014年3月

ダーツの出発点を教えてください。
22歳くらいの時にダーツを始めた友人から誘われたのが初めてです。飲みに行ったついでだったんですが、最初に行ったお店にジョニーさん達がいたんです。もちろん仲間に入れる様な状況ではなかったんですが、それでもハマって、自分からもいろんなお店に行く様になりました。

横浜は有名なお店がたくさんありますからね。
そうですね、横浜や川崎には有名店が10軒くらいありました。でも今みたいに雑誌やテレビなどで選手が取り上げられることもあまりなかったので、どの人が有名プレイヤーなのか分からなかったですね(笑)。

真剣に投げ始めたのはいつからですか?
7年くらい前です。途中3年くらい全然やってなかったんですけど、再開した時に初めて大会に出たんです。その時のレベルは下だったんですけど準優勝してしまって、それで「これは面白いな」と改めて思いました。

パーフェクトに参戦されたのはいつからですか?
4年前です。

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去年は4位で一昨年は9位ですがその前の成績はいかがでしたか?
たぶん20位圏内だったと思いますけど、あんまり覚えてないです。

去年の成績についてはいかがですか?
気がついたら4位になってたという感じなんですよね。自分ではハードで頭がいっぱいだったんで、正直ソフトのランキングはあまり気にしてなかったんです。全部に出られないのも分かってましたし。それが気付いたら「え、4位?」みたいな(笑)。

先週の開幕戦はいかがでしたか?もちろん今年は1位2位を狙いますよね!
パーフェクトの授賞式の時に、プレゼンターがうちのトリニダッドの社長だったんですけど、「来年は1位だね」みたいなことを耳元でポソッと言われて…(笑)。
でも私の場合は何かに向かって突き進むというのが苦手で、目の前のことをひとつひとつこなしていくタイプなんです。
「絶対1位を取る!」とか「優勝まであと何勝」とか目標を決めてしまうと、逆にくずれちゃうと思うんです。だからあまりそういうことは意識しないで、その日その日の試合をこなしていきたいと思います。

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ハードにも力を入れられているようで、去年はJSFDのジャパンオープンで優勝されましたね。
一昨年はスティーラーズで優勝してイギリスに行くことが決まったんですけど、その時はいつどこにどうやって行くのかもわからないままいきなり行ったんです。その時、実際現地で試合をしてみていろんなことを体感しました。まず海外の選手と比べると日本人男子は正直まだ差があるなと感じたんですけど、女子がトップ選手と肩を並べるのはそう遠くないという印象を受けました。だからもう一回絶対行って、海外選手と対戦してみたかったんです。
もう一度行くためにはとにかく優勝するしかないと思ってたので、何に負けてもこれだけは負けたくないという気持ちがすごく強かったんです。後から聞いたらランキングで行けたらしいんですけど、そんなことも知らなかったですから必死でした(笑)。

一昨年のハードの試合では今世界でトップ級のアナスタシア選手に勝ちましたが、その試合はいかがでしたか?
その試合は本当に覚えてないんです。基本的に私は相手のダーツとかも見ないので……。
ただパンフレットで二回戦でシード選手に当たるというのを見て「シード選手だから強いんだろうな」と、自分のベストを出さないと勝てないだろうという気持ちだけで臨んだ試合でした。

アナスタシア選手のことはご存知なかったのですね。
知らなかったです。試合が終わった時、日本人はもちろんですが知らない外人プレイヤーの人達もハイタッチしてくれて「みんなすごいフレンドリーだな」って思ってたんです(笑)。そうしたら相手はそんなに有名なプレイヤーだったんですね。だからアナスタシア選手を強く意識するようなことはなかったんです。
意識して戦ったのは、むしろ今年当たったデタ・ヘッドマンです。彼女は去年のマスターズで決勝までいった、私でも知ってるくらい強い選手なんです。すごい選手だというのは聞いてたし、ワールドカップの一回戦から当たるというのが分ってたんで「この人は強い人なんだ。この人に勝ちたい!」という気持ちがすごく強かったですね。この試合は内容も覚えてますし、印象にも残ってます。

海外の試合はいい経験になりましたか?
そうですね、体調管理が難しいとか長時間の移動で疲れるというのもあるんですが、私は普段から仕事が夜で大会は昼間というスケジュールをこなしているので、時差などの辛さはあまり感じなかったです。ただ去年は長時間の移動で腰痛になってしまったので、今回は最初からコルセットを巻いて飛行機に乗りました。

ご自分でどのようなタイプのプレイヤーだと思いますか?
マイペースだと思います。よく「どの選手が苦手?」とか聞かれるんですけどあんまりそういうのはなくて、相手が誰でも、いい戦いをした時の自分を思い描くようにしてるんです。「これをやれば勝てる」とイメージしたり、どう自分をポジティブに持っていけるかということだけしか意識しないんです。なのであまり相手のことは見てないかもしれないですね。相手が打っても打たなくても気にしないんです。

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朝までお店にいられることもあるとのことですが、試合前の調整や体調管理などはどのように気をつけているのですか?
地方に行く時は絶対前の日は飲まないです。日曜日が試合の時はどうしても金曜日の朝まで飲んでそのまま飛行機に乗ってという状態
なので、到着したらほとんどホテルから出ないですね。歳も歳なので、練習よりも体力温存です(笑)。できれば空いた時間はずっと投げていたいんですけど、でもそれをやっちゃうと試合で体力が続かないんです。若いプレイヤーはそれが出来るんで羨ましいなと、同年代の選手達と話したりしてます(笑)。

今までに印象に残った試合はありますか?
先ほどお話しした、去年のワールドカップでのデタ・ヘッドマンとの試合です。彼女はワールドカップでの優勝もありますし、ほとんどの試合で決勝まで行ってる選手なのですが、自分のベストを出せば勝てるかもしれないという気持ちで挑みました。
試合は2つ獲って2つ獲られての最終レッグで、13ダーツトライからの20残りだったんですけど、アウト、アウトでワイヤーにはじかれて相手に上がられて負けたんです。なので、これで負けたらしょうがないという部分と悔しい部分とが残りました。
嬉しかったのは、イングランドの選手も「いい試合だったよ」と抱擁してくれたり、最後にデタ・ヘッドマンに自分のフライトを渡しに行ったら、彼女が自分の指輪をくれたんです。その指輪は今でも大事にダーツケースに入れて宝物にしてます。
その後私達もイギリスに行って、デタ・ヘッドマンに当たるまでは絶対負けないと思ってたんですけど、残念ながら負けてしまってリベンジは出来ませんでした。

海外の試合は楽しいですか?
野次とか何を言ってるのか分らないので、その分集中しやすいかもしれないですね(笑)。全然知らない選手でもいい戦いをすると素直に応援してくれるのは嬉しいでよね。

練習方法や時間を教えてください。
大きい声では言えないんですけど、ほとんど練習してないんです(笑)。仕事では常に投げてますけどそれでもみんなでワイワイ投げる程度なので、自分で練習するのは一週間に一回30分くらいでしょうか。飽きっぽい性格なので長い時間ダラダラ練習しても身にならないタイプなんです。
方法は、カウントアップでもなんでも試合を意識して、集中して何本と決めて投げます。あとはやっぱり対戦が多いですね。

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技術や精神面で大事にしていることはありますか?
気持ちをポジティブにもっていくことです。ポジティブなんだけど頭のどこかで「外してあたりまえ」と思いながら投げてるんですよ。それがへこまない理由かなと思います。ハットが出た後にブル一本だとしても「まぁそうだよね」みたいな(笑)。
よく外して「クソッ」ってなるプレイヤーがいるじゃないですか。でも、もしまったく外さなかったら世界一になれるわけで、そんなのありえないじゃないですか。だから、私の場合はあきらめてるわけではないんですけど、あまり自分を追いつめない様にしてるんです。気持ちの切り替えができるので、次の試合までひきずらないんだと思います。

尊敬するプレイヤーはいますか?
ジョニーさんやゆかりさんなど昔からずっとトップにいる選手です。私は去年ハードで2〜3回優勝したら「出たら優勝するのはあたりまえだよね」みたいに言われるようになって「私だって人間なんだから負ける時だってある」って言いたくなったんです。
だから、そういう環境にずっと居続けるひとはすごいなって改めて思いました。周囲からそういう目で見られている以上プレッシャーだって感じるだろうし、精神面でもかなり強くないと厳しいですよね。そういうプレイヤーの方は本当に尊敬します。

ダーツの魅力はなんですか?
う〜ん何でしょう?今まで考えたことがなかったんですけど……。この身近さでしょうか。ゴルフとかに比べたらいつでも投げられる身近さはいいですね。今は投げようと思えば24時間いつでも投げられますから、その気軽さは魅力です。

ダーツ以外の趣味はありますか?
ドライブです。運転が大好きで、休みの日はどこかその辺の山を走ってます(笑)。私のじゃなくて彼氏の車なんですけど、この前は新潟まで下道で行きました。一番遠い所だと白川郷とか伊勢神宮まで下道で行ったこともあります。それがストレス発散なんです。

結構飛ばしてるんですか?
いえ、飛ばし屋ではないですけど、コーナーが多ければ多いほど好きです(笑)。

これからの目標や夢は?
私は今年でもう36歳なんですけど、もう2年くらい前から「今年でやめよう、今年でやめよう」と思ってたんです。結婚もしたいし子供も欲しいので、そうなってくると自分がやりたいからやろうという環境じゃなくなってきますよね。去年は、何よりも試合が最優先というのを一年間やらせてもらって、すごい充実感もありました。これからはダーツ以外の生活にも少しずつ目を向けていきたいと思いますね。
海外は年齢層がすごく高いじゃないですか。この前もラスベガスに行ったらトップの選手が58歳で驚きました。もちろん体力が大事とはいってもダーツは他のスポーツに比べれば年齢に関係なくできるものだと思うので、どういう形になるかはわからないけどずっとやっていきたいと思っています。
プロを続けられるのはあとどのくらいか分からないけど、普通の生活とダーツをうまく折り合いをつけて頑張っていきたいですね。

最後に読者にメッセージをお願いします。
ダーツを楽しんでもらいたいです。私はダーツに出会ってすごく世界が広がったし仲間も増えました。もし、プロのトーナメントだけで常に結果を意識してる状態だったら、ここまで続かなかったと思います。リーグ戦やお店でみんなとワイワイ投げるのが緩和剤になって、そういうダーツが楽しかったからここまで来れたんだと思います。勝ち負けにこだわらないで楽しむダーツというのも大事だと思うので、一生懸命やりすぎないでダーツを楽しんでください。