Vol.114 西谷 譲二
SETTING

道具を選ぶ時に考えてもらいたいのは、20ダブルを狙って投げた時に、そこまでちゃんと飛ぶかどうかということです。
アウトボードでもいいので、その近くまで届いてしっかり刺さるダーツを選ぶことが重要だと思います。

改めてダーツ歴はどのくらいになりますか?
12年です。

12年前というと、ちょうどいろいろな種類がたくさん出始めた頃ですね。
そうですね。まず僕が始めた頃はフィットが無かったです。コンドルやエイトフライトなども無くてLスタイル一択でした。

最初にマイダーツを買った時のセッティングは覚えてますか?
覚えてます。最初はいろいろあった中から選んだのではなくて、ダーツバーに置いてあったものを買いました。ターゲットの初心者向けのシリーズで、パッケージにはハイビスカスの絵があって女の子向けという感じでした(笑)。バレルにもハイビスカスの刻印があったので、女性向けのバレルがあるんだなと、当時は思ってました(笑)。
違うダーツが欲しいとは思っていたんですが、レーティングが12くらいまではずっとそれを使ってましたね。

セットは付属だったんですか?
そうです。当時はシャフトもカーボンが無かったですが、折れるとお店の人がくれたので、自分で買った覚えはないです。

今までセッティングはいろいろ研究されてきましたか?
当時はダーツは完成された競技だと思っていたので、道具ももう出来上がっているものと思ってたんです。
でもフィットフライトが出てきた時に、「まだ進化することがあるんだ」と改めて気付きました。
もちろんいろいろ試してみましたが、メーカー側も研究を重ねているので、それぞれ特性も全部違いますよね。

チップについては何を使われてますか?
今はスポンサーのターゲットのピクセルチップをメインに使っています。会場によっても左右されるんですけど、刺さりのいいもの悪いものいろいろありますね。リーグではそのお店のボードの痛み具合などでも変わりますし。お店によってはボードを痛めるのを防ぐために「このチップは使わないでください」という注意もあるので、そういう点にも配慮しながら使い分けています。

現在バレルはターゲットでフライトはエイトと契約されていますが、シャフトは何を使われてますか?
エイトシャフトです。

長さは?
260〜330の範囲です。平均的なものだと思います。

フライトは?
ティアドロップかシェイプのどちらかです。

セッティングによって飛びが変わりますか?
全然違いますね。

いろいろ試してみましたか?
一番短いのから一番長いのまで、ほとんどのセッティングは試してみました。村松治樹選手や知野真澄選手などの違ったセッティングも試しました。

それで今のセッティングに落ちついたのですね。
微調整はちょこちょこありますが、全体的なものは変わってないです。バレルの長さがちょっと変わったりはあるけど、全体像は変わらないというセッティングです。

スティールとソフトは同じセッティングですか?
今は同じセッティングでやってますけど、変えてもいいのではないかと思ってます。

スティールはあまり積極的には投げていない印象ですが?
そんなことはないです。コロナ禍が明けて大会が復活した時にソフトの大会がメインだったのでソフトに多く出場していましたが、これからFIDOやスティールの大会にも出場しようと思っているところです。
実は今ちょっと課題が見えているんです。コロナ中はスティールのオンラインの大会に積極的に出てたんですけど、その時に他の選手との差を感じました。僕の場合は特にスティールの上がりに問題があるなと感じて、それはソフトにも直結してたんです。
ソフトの大会でまったく結果が出なかったらまずいとそちらに意識が集中してしまってたんですけど、まずスティールでの課題をクリアすることだと気付きました。

セッティングとは自分の理想の飛びに近づけるということですね。
イメージ通りの軌道を描いて狙ったところに飛んで行ってくれたらいいというのは確かにありますが、どちらかというと感覚的なものがダイレクトに伝わってほしいですね。的のちょっと上に飛ばしたら入るセッティングとか、下の方を狙った方が入るとかそういう狙い方はしたくなくて、狙った場所にそのまま入るセッティングにしたいんです。
ですから僕の場合は、ちょっと上ずってるとか下目に付いちゃうとかを無くす時にセッティングを変えますね。
追い込まれた上がり目など緊張感がある時に、ちょっと上ちょっと下みたいな微調整はできないと思うので、常に狙った場所通りに入るセッティングにしていたいです。

では初心者の方にセッティングのアドバイスをお願いします。
セッティングとか細かいことはまだできないと思うので、しばらくは最初に手に入れたダーツをそのまま投げてみるのがいいと思います。しばらくしてある程度的が狙えるようになって自分のダーツを覚えてきたら、改めてセッティングについて考えてもいいと思います。
道具を選ぶ時に考えてもらいたいのは、20ダブルを狙って投げた時に、そこまでちゃんと飛ぶかどうかということです。アウトボードでもいいので、その近くまで届いてしっかり刺さるダーツを選ぶことが重要だと思います。
狙える狙えないより先に、届かないものを使うと感覚がずれてしまいます。頑張らなくても的に届くものを選べば、それから狙うことに集中できるようになります。
ダーツが難しいのは、狙う、投げる、飛ばすを同時にやるということなんです。外す理由のほとんどはダーツが届いてないからだと思うんです。出力不足や、ダーツに力を伝えるのが難しかったり滑ったりで、ふわふわと飛んでしまったりきりもみ状態になってしまったり、とにかく的に届かないというのが多いと感じます。ですから思いっきり投げるというよりは、軽く投げたつもりなのにすごく上に着いちゃったというダーツを選んだ方が、丁寧に投げた時には的に入りやすくなると思いますね。
ダーツは左右を狙い分けるよりも上下の方が難しいと思うんです。上を狙える人は優しく投げれば下も狙えるけど、下は入るけど上は入りにくいという癖をつけてしまうと、頑張っても上に入らなくなってしまう心配がありますね。
よく「飛ばすと投げるでは何が違うんですか」と質問されることがあります。そういう言葉のあやに引っかかる人もいるので、初心者の方に説明する時は気を付けて言葉を選ぶようにしてるんですけど(笑)、とにかく届けばいいんです。大事なのはちゃんと刺さること。20のダブル近くを狙って投げて、アウトボードしてもいいから届くものを選ぶのがいいよとアドバイスしますね。
シャフトやフライトなどの細かい形状などはそれからです。安定してもっと楽に投げられるようになってから、その人の好みや癖で選べばいいと思います。例えば双児だとしても全く同じ物は使わないかもしれないし、投げているうちにだんだんとその人の個性が出てくるんじゃないでしょうか。

プロトーナメントが再開されましたね。
まずはありがたいです。プロトーナメントは、一般のお客さんと地元の主催するスポンサーさんがいて飲食があってと、いろいろな人のおかげで開催されてます。その地元のお店やそこで働いてるスタッフもコロナで大打撃を受けて、再開するにあたっても大赤字の中での開催だと思うんです。それでも業界のために再開していただいたことには感謝しかありません。
それから、今のJAPANのレベルはものすごく高いですね。PERFECTから上位ランカーが続々と来ているので、日本でというよりアジアで一番厳しい大会だと思います。
ここ10年くらいに活躍していたプレイヤー達がほとんど集まっていて、年間ランキング100位くらいまでは名の知れた選手ばかりという「なんじゃこれ」みたいな状態です(笑)。

厳しい戦いですよね。
はい。でもみんなが集まるいい機会にもなって、コロナで受けた大打撃からの復興とでもいいますか、今まで以上に盛り上げていかなくてはと思っています。
他の選手の意気込みもすごいです。観客は入れられないんで見てもらえないんですけど、気持ち悪いですよ、みんな全然外さないですから(笑)。

そんな中で決勝に何回も進みましたね。
3回行きました。3回行って3回負けました。凡ミスして負けてしまいました。

今のダーツの課題は何でしょうか?
いろいろな事が変化して新しい時代になったと思うので、それに対応して行くことが大事だと思っています。プロとしての活動も、コロナ前と同じことをしているのではダメですね。まだ制約はありますが、その中で例えば初心者の方に何ができるか、プロとして自分たちをどう売っていくのか、新しいニーズに合った活動を探していきたいと思っています。

最後にご自身のバレルについて教えてください。
ラフターⅠとⅡがあって、カットと最大径が少し違います。それぞれグラム違いもあるので、その違いを感じてほしいです。
僕はこのカットの違いを季節や会場によって使い分けています。例えば狭い会場にたくさん人数が集まれば湿度が上がってべたつくとか、逆に乾燥して指がかさかさになるとか、湿度と気温に合わせて変えています。グリップワックスなどで対応する選手もいますが、僕は道具を変えるのが一番早くて簡単だと思うタイプです。みなさんもいろいろ試して自分に合う投げ方を探してみてほしいです。
今後も進化した新しいモデルが出て来ますので、ぜひ期待してください。