Hisashi Aoyama-Vol.49.2011.5-Top

Vol.49 青山 久
GRRM 代表 

2011年5月

GREEN ROOMのブランドイメージについてお話ください。
サーフィンでは世界の誰もが憧れる大きな波。その波が作り出す「TUBE」で、TUBEの中に入れた人のみが見られる神聖な場所でもあり、技を磨き勇気がある人が通れる空間…という事で「GREEN ROOM」と名付けました。サーフィンの世界でTUBEの事はBarrelと呼ばれていて、ダーツのBarrelとそこを通るハイレベルな技術ということに、選手モデルを噛み合わせようと考えたことがブランドイメージです。
立ち上げ当初からデザインはバレルだけでなく、アパレルを始めいろいろなグッズなども作っていく計画でした。その際もサーフィンと掛け合わせることでデザインがし易く、またプレイヤーにも受け入れられやすいだろうと思いました。サーファーにはダーツプレイヤーも多いということもあり、イメージ的にマッチするのではないかと思ったのも理由のひとつですね。
弊社のポセイドン以外のモデルは、有名なサーフスポットであるオーストラリア、バリ、カリフォルニア、ハワイの4つにちなんでデザインが構成されていて、パッケージもそれぞれのイメージカラーを持っています。各パッケージの中にいくつかの選手モデルがあるんですが、それにも各地域のサーフスポットの名前を付けていて、あえて選手名はつけていません。こうして全てのバレルをGREEN ROOM全体のイメージとして売り出すというのがコンセプトです。

ブランドを立ち上げられたのは具体的にはいつ頃の話ですか?
GREEN ROOMとして起動したのは今から3年前ですが、その前に企画などで約一年かかってますね。社内調整やデザインコンセプト、どのくらい費用がかかるか、どこで何を作ってどういうことをするのかということで、かなり時間がかかりました。

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GREEN ROOMならではの特徴は他にもありますか?
他社のバレルメーカーさんは分かりませんが、GREEN ROOMの場合は選手とプロ契約し、主戦場を決めさせ、全国にデビューさせたいというのが、大きなコンセプトの1つでした。だから当社のロゴを背負ってもらうからには選手の選定を独自の審査で評価し、契約します。プロ契約ということはそれなりの金額を支払うという事にこだわったんです。

GREEN ROOMといえばトッププレイヤーがたくさんいますが、契約選手についても特別な考えをお持ちのようですね。
そうですね。プレイヤーとプロ契約するという事は、選手自身の活躍がバレル販売に影響する事はあると思います。GREEN ROOMは契約した選手モデルを販売する事を基準にしており、プレイヤーとしては自分のモデルがデビューする事は嬉しい事だと思います。
購入するユーザーの中にはバレルのデザインや試投した時のフィーリングで購入する方も沢山いると思いますが、GREEN ROOMでは選手モデルの販売が主であり、その選手が活躍する事で憧れるユーザーもいると思います。だからこそ、選手との契約はプロ野球選手のような査定方式を導入していて、毎年面談し、査定を行い、更新しています。

弊社で決めている評価基準が5項目あるんですが、その5項目に沿って、選手の価値、スポンサード金額、そして更新をするかしないかというのを決めていて、毎年解除する選手もいれば新しく契約する選手もいます。去年は16名いた選手が4~5名辞めて現在は11~12名ですが、年末までには15~16名に増える予定です。その選手が誰かは今は公にはできませんが、いずれホームページなどで発表する予定です。

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その5つの条件というのは秘密事項でしょうか?
いくつかは発表できますが……(笑)。まずは、バレルメーカーのスポンサードを受けているということはやはり「露出」することが大事だと思うんです。「露出」とは試合の参戦数であって、年間何回試合に出るかということが重要なわけです。
先ほどもお話したと思いますが、選手が活躍する事は、映像にも露出するわけでその映像を見て、感動を受けたり、憧れたりすることがあると思います。そして選手としての品格も重要な部分です。選手には様々なスポンサーさんが付いていて、選手の言動、行動で信頼や信用を失う事もあります。そういう部分でのことも頭に入れて面談を行っています。
いくら強くても人間的に問題のある選手は、逆にイメージダウンにつながってしまいますからね。他の事項については企業秘密とまでは言いませんが、今はお答えできないです。

今までに苦労されたことなどはありますか?
いろいろありますね。当初バレルメーカーを立ち上げようと考えた時は、正直ここまで大変だとは思いませんでした。
まずバレルの開発にはかなりの時間と労力が必要です。そして全国にまたがる選手の管理ですが、当初の予想を超えて大規模になってきてしまったので、嬉しい半面複雑な業務も多いです。GREEN ROOMとしてイベントを受けて選手を派遣しますが、そこではバレルのプロモーションおよび地域のダーツ活性化のお手伝いなど、お客さんが喜んでくれるようなイベントや講習会などを丸一日かけて行っています。最初はそこまでやろうという意識はなかったんですが、時代とともにあんなこともやろう、こんなこともやろうとだんだん規模が大きくなってきて、そうやって築き上げてきたブランドなんです。今では選手のスケジュール管理やマネージメント管理など、どんどん大変になってきましたね。

バレルの開発について教えて下さい。
弊社の場合プロトの設計をする時は、図面を作る段階から、必ず私と選手が一緒になってパソコンの前で設計するんです。例えば電話やFAXであそこをこうして欲しいとか、そういうことは一切なくて、とにかく立会いの元で設計を行います。ある程度の設計が決まってから、バランス、グリップ感など様々な要素を詰めていくわけですが、時にはひとつのモデルを作るのに試作を約20モデルくらいは作ります。0・2とか0.5ミリの世界で細かく感じるのが選手の持ってる素晴らしい感性なので、そこは慎重に作り上げていきます。
一般的にデビューするまでは最低でも10モデル、多くて15モデルは作りますね。1回に3モデル、それが3~4回目のプロトになった時点で初めて実用性を兼ねたデザインを加えながら、最終的なモデルをデビューさせます。
だから契約してから、早い人で8ヶ月、だいたいは10ヶ月から一年くらいはかかります。そのくらい時間をかけているので、こだわり抜いた最高のものを自信を持って市場に出しているという自負はあります。そこに評価をいただいているので嬉しく思っています。

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ダーツを入れるケースにもかなりのこだわりをお持ちですよね。
パッケージに入れるケースについても各ブランドによっていろいろな考え方があると思いますが、うちの場合コンセプトにしたのは、まずお洒落であるということ、そしてサーフスポットの名前をつけたからには、サーフィンにちなんだものを作ろうということでした。そして今までになかったものを作りたいということで、当時はどこにもなかった丸いダーツケースを作ろうとしたんですが、これが実に苦労しました。
最初に「丸いダーツケースを作ろう」と言ったら、周りのほとんどは「そんなのは流行るわけがない」という反応でした。
でも弊社は後発のメーカーなので、そのくらいインパクトがあってしっかりしたものを売っていかないとだめだろうというわけで、とにかくチャレンジしたんです。グッズを作っている方なら解ると思うんですが、丸いケースというのはとても大変なんです。生地取りにしても縫うことも、あの丸いラインをきれいに出すことが難しくて、まずそこで苦労しましたね。
昔のパッケージデザインは正六角形のキューブの形で、上下左右のデザインがそれぞれ違うというものでした。このデザインは、お店に並べたらきっとすごくきれいだろうと思い始めたものでした。
でもこれは組み立てるのが大変で、尚且つ11センチメートルの箱だったのですごくかさばるんですよ。最初はインパクトがあって良かったんですが、モデル数が増えて、販売スペースの確保が大変なのと、丸いケースはもう要らない、という話になってきちゃったんです(笑)。
これではそのうち店頭に置いてくれなくなってしまうだろうと思って新しいものを考えました。新しいデザインには3つのテーマがあって、壁などに掛けられる、少ないスペースに立てて置くことができる、見せられる、というもので、企画だけで4~5ヶ月かけました。
試作を重ねに重ねて、最終的に今の形になったわけです。

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そうして現在はかなり売れているブランドのひとつになられたわけですね。
おかげさまでいろいろな方々から「GREEN ROOMのダーツはどこにでもあるね」とか「選手が活躍してるね」とか言われますが、自分としてはそういう実感はあまりないですね。いつも数ヶ月、半年先のことを考えながら、ひたすら新しいモデルや仕掛け方を考えているという毎日です。
最近ではバレルの紹介には動画を取り入れて、ホームページのあるショップさんにはリンクを貼らせていただいています。うちは何でもそうなんですが、変わったことがやりたい、新しいことをやりたいというのが基本にあるんです。なのでバレルの広告にしても、ただ写真をポンと載せるのではなくて、よりインパクトを持たせるために動画に踏み切りました。今後は発売に関してはすべて動画でイメージ作りをしていくつもりです。その中で選手の映像を出したり、3Dでバレルを見せる工夫をしていきます。
例えばネットショップで販売しているバレルがほしい場合は、近くのショップを探してもお店がなく、使ってる人が近くにいなかったらネット上の情報で判断して買うしかないじゃないですか。でも動画を使えば、画像を立体的に回転させながら見せることもでき、お客さんには手に取るようにバレルの形状がわかってもらえると思うんです。動画によって全国のプレイヤーが、より多くのダーツを選べるようになることが目的なんです。
こうやってとにかく常にどうしたらいいかと考えながら、目先のことを一生懸命こなしてるというのが現状です。

これから目指していきたいものは何ですか。
現在、色々な大会に選手がエントリーし、またブースの出店も行っています。GREEN ROOMはプロ契約選手のブランドとして夢を持ってダーツのプロを目指しているプレイヤーや、現在のプロの選手にもGREEN ROOMの契約選手になりたいといってもらえるブランドを目指しています。まだまだ知名度では他のバレルメーカーさんが有名で、自分自身も憧れている選手が沢山いますので、これからも1つのサーキットにこだわるのではなくて、色々な大会に参加し、頑張りたいと思っています。
同時に新しいプレイヤーの育成にも力を入れていきたいですね。それは必ずしもGREEN ROOMに選手を入れるというのではなくて、もっと地方の選手にも夢を与えられるような環境作りをしていきたいんです。よく地方のイベントなどに行くと「GREEN ROOMさんは敷居が高いですね」とか「どうしたらGREEN ROOMさんに入れるんですか」とか聞かれることがあります。GREEN ROOMは強くないと入れないと思われているようで、それは大事な1つの要素ですが、必ずしもそれだけではありません。GREEN ROOMはごくわずかなプレイヤーのためだけにあるブランドではないんです。強い選手はもちろんですが、プロとしての品格や人間性の備わったプレイヤーのブランドを作ることで、より様々な人達に身近に感じてもらいたいと考えているんです。
GREEN ROOMは敷居が高いというイメージが強すぎる部分もあるので、それなら選手育成枠の新しいブランドも作ったりとか、そんな企画も温めています。とにかく「頑張ればバレルメーカーの契約選手になれるんだ」と、各地域のプレイヤーがモチベーションを上げられるような仕組みを作っていきたいと思っています。

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最後に何かメッセージはありますか。
弊社をはじめ、他のバレルメーカーさんにもやって欲しいことは、契約選手になるための条件を公開するということです。バレルメーカーの契約選手というのは、ダーツプレイヤーにとってひとつの憧れだと思うんです。でも私の知る限り、契約に至る条件をはっきりと公開しているメーカーは無いのではないかと思います。こういう情報を公開すれば、全国のプレイヤーに夢を与えることができると思うんです。
現在うちの選手になるのは一年間に20名くらいで、それは推薦や面談で決めているんですが、私はどこかのタイミングで公開して、応募を受けるようなシステムにしてもいいんじゃないかと考えています。それぞれの事情があるのもわかりますし、もちろん契約金額のことまで発表しようとは言いません。例えばサラリーマンじゃだめなのかとか、どういう大会にどのくらい出ることが条件なのかとか、そういったものを発表できる場があるといいですよね。

今回の震災の対応について
みなさん様々な形で支援されていると思います。GREEN ROOMでもお世話になった地域や、お店の方々に何が出来るかと考えました。その中でやはりお金で支援させていただくことが最良だろうということになり、いろいろな意見がある中、大きな地域というよりはピンポイントで支援できる形を取ろうということになりました。
具体的な方法としてはプロトモデルを販売して、その金額を全額義捐金とすることにしました。本来であればプロトモデルというのは企業秘密であって、開発段階のものを表に出すというのは、他のメーカーさんも絶対やらないと思うんです。でもその希少価値を利用して、少しでも力になれればと考えました。プロトモデルというのは1種類2セットくらいしかないので、1セット一万円で大会のブースに出して販売していきます。震災の2週間後くらいから取り組み始めましたが、結果が出るまでにだいたい2~3ヶ月かかるとみています。そうしたらその売り上げを持って東北に行こうと思っています。他には選手などもチャリティーダーツを行ったりしていますが、お世話になった方々に、何かしら恩返しがしたいという気持ちが強いです。

GRRM をよろしくお願いいたします