Koichiro Ueda-Top

Vol.22 上田 康一郎
よりデザイン性のあるダーツを…

2006年11月号

マイダーツを選ぶ際に「Samurai」「Tiga」というブランドはどのダーツプレイヤーでも選択肢の中で頭をよぎることだろう。実はその両方ともが株式会社MGMという会社より産まれ、販売されているという事実は知られていない。
この号よりスタートした新企画「とっておきの人物紹介」の最初を飾るのは、まさに時の人「人物」、その会社を率いる上田、代表取締役社長。
最初にダーツバレルを始めたきっかけ、なぜ急速にプレイヤーに浸透し、成功を収めるまでに至ったのか、その秘訣は、背景は…。

どうしてダーツバレルの開発を始めたのでしょうか。
私は単に一ダーツプレイヤーでした。最初はダーツをしていてビジネスよりも、より「デザイン性」のあるダーツを造りたいな、と思ったのが最初の発想です。私は長いことずっと部品の設計、開発の仕事に従事してきました。部品のデザインの製造知識があったというのが大前提ですが、手にとって喜ぶプレイヤーの姿が見たい、というのが夢としてあったわけです。ものをつくる人に共通する心、情熱ですね。

立ち上げの苦労話。
金属の知識はあったのですがタングステンという材料を実際に扱うのはたいへんでした。あらゆるつてを使ってその入手ルートを探し、そして失敗を重ね、最初のダーツを発表するまでには、結果としてやはり半年以上かかりました。当時は少々いらだっていましたが、今振り返ってみると、案外早かったのかもしれないと思っています。発案からデザイン、試作、実際に工場で生産、パッケージ、プロモーション、出荷…メーカーというのは多くの手順が必要です。人にも、時期にも恵まれたと言っていいでしょう。2社で共同で立ち上げたのも分業ができて良かったと思います。

プロモーション方法について。
まず、ホームページの制作でしたね。そして雑誌の広告、プロモーションビデオ制作、各トーナメントへの積極的なブースの出店でした。当時は忙しかったですね。一気にやり遂げたという達成感はあります。

開発のポリシーは。
弊社はいっさい他ブランドのプロダクトを研究しません。時々、疑問に思うこともあるのですが、それが真実です。一般にメーカーは他メーカーの商品を徹底的に研究し、より市場性のあるものを開発してゆくというのが常道ですが全くそんなことは行っていません。その証拠にココには他ブランドのバレルなど何処にもないでしょう?重量において参考にさせていただいたことはありますが、「自社のデザイン性」「性能も同時に高い」を最優先のアイデンティティーと考えています。

最初のプロダクトは「Samurai」。
そうですね、最初のブランドは「Samurai」で、今年の11月でちょうど2年になります。製品発表後、約半年ほどで生産体制、販売などが軌道に乗りました。センスが良くまた製品の完成度が高いという評価…喜んでいただけたということ…勿論、嬉しかったですね。

一躍、ダーツ界で知られるブランドに育ちました、順調なスタートでしたね。
よくそう言われます。しかし、信じられないかも知れませんが、ビジネス的がどんどん発展する中、私の心中は不安が広がっていたのです。この売れ行きはただの一時的なブームなのではなかろうか。いや、ダーツそのものが長続きしないのではなかろうか…。そうして悩んだ結果、行き着いた結論はダーツという競技の定着です。長く続けられるようなスポーツとして根付くこと、それが次の目標となりました。「ダーツ界に貢献したい」なんて言うととても陳腐ですが、ダーツを愛し、プレイヤーにテクノロジーとデザインを供給していく、それを使命と思って努力していきたいと思っています。ライフワークとして、やりがいのある素晴らしい事業ですよ。できるだけの努力を惜しまない覚悟です。

日本、世界、ダーツトーナメントにかなり行かれていますが。
世界のトーナメントというと最初の大会は2月にラスベガスで開催されたスティールダーツのトーナメントでした。誰も知り合いがいないので、一人で行って、現地でダブルスの相手を探し、かなりの珍道中でしたよ。いやあ…楽しかったなあ。ジョン・パートとも対戦したし、今も心に残っています。これはサムライの発売以前です。次にPDCのワールド世界チャンピオンシップに視察に行きました。ショックでしたね。あんな、環境はまだまだ日本では考えられないでしょう。子供もいるし、若い人から年輩の人まで、観客の質が全く違います。またプロダーツプレイヤーの存在、選手とプレイヤーの一体感…羨ましい限りです。その後、BDOのエンバシーの大会にも赴きました。文化の背景の違いを思い知らされましたよ。日本の大会には時間が許す限り顔を出すようにしています。最近はほとんど毎週末というのが実情です。サムライ契約プレイヤーの応援、市場調査、情報交換、そして自分も参加します。

そして「Tiga」をリリース。
2005年12月、Tigaを市場に出しました。このブランドは実は以前から存在していて、スタッツノートなどから発展させた商品です。成功した理由はパッケージのデザインと価格でしょう。一番、ニーズのある価格帯に合わせ開発したわけですが、時期がピタリと合致しました。

samuraiとTIGAのブランドの違いについて。
勿論、開発はどちらも全力で行っています。TIGAにはプレイヤーモデルはなく、様々なテストプレイヤーとの意見交換にて開発、より多くのプレイヤーに使っていただくためのベーシックモデルです。独自のブランドイメージを確立し、生産はイギリスで、梱包、品質管理は日本で行っています。Samuraiは所属プレイヤーと開発を進め、国内生産で高品質のハイエンドモデルです。海外に通用するトッププレイヤーを育成したいと思っています。また商品開発にも協力してもらっております。

今も開発中ですね。
「Tiga」は現在11種類です。この後、タングステンシリーズを4種類、他のデザインとコラボレーションしてキャラクターシリーズを2種類、予定しています。おもしろい企画だと思いますので、お楽しみに。「Samurai」は現在7種類、引き続き開発中です。

ダーツ界、これからの展望は。
ダーツって友達、できやすいですよね。人によってトーナメント指向のプレイヤーもいれば、ただ遊ぶゲームと考えるプレイヤーもいると思います。でもみんなが一つになれる。気軽にできる競技だし、老若男女、問いません。なかなかそんなスポーツありませんから、もっと多くの人にプレイして欲しいと思います。

これからの目標は。
今までダーツに関係していない企業とのコラボレーションを積極的に進めていきたいと考えています。新しいヒント、アイデアの鍵があると思うからです。遊び心のあるダーツシーンっていいじゃないですか。