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Vol.10 John Lowe
各国で1000以上のタイトルを…

2004年11月号

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ダーツとの出会いと、今までの経歴を教えて下さい。
僕がダーツに興味を持つようになったのはかなり遅くて、21歳の時でした。それまでの僕はバイクレースに明け暮れていました。ダーツとの出会いは本当に偶然で、ある時イギリスで大きなバイクレースの大会があって、レースの後パブに寄ったんです。そこでダーツをやっている4人組に出会ったのですが、一人がトイレに行っている間代わりに投げてくれと頼まれました。僕は気軽に引き受けたんですが、それ以来すっかりダーツにはまってしまったというわけです。

初めて大きな世界大会で優勝したのは、1976年のワールドマスターズでした。世界のトッププレイヤーと呼ばれるようになったのは、それから更に数年後です。ワールドマスターズを勝ってからの6ヶ月間に、ブリティシュオープンとブリティシュペンタスロンという、2つの大きなトーナメントを立て続けに勝ちました。その後は勝ちに恵まれ、結局今までに15のチャンピオンシップ優勝杯を手にする事ができました。

1979年には初めて世界大会で優勝しました。ファイナルの相手は良き友人でもあるレイトン・リーズでした。僕は世界タイトルを3つ持っているのですが、ファイナルに5回も進んだのだから、3つというのはちょっと少なかったかなと思うこともあります。イギリスチームのキャプテンは7年間努めましたが、その間負け知らずでした。試合数は100を越え、今でもその記録は破られていません。1994年にトッププレイヤーが参加禁止にならなければもっと記録を伸ばせたと思います。1994年以降はプロとしてサーキットを回っています。現在でも世界ランキング24位でがんばっています。2005年は僕のプロ生活30周年なのですが、世界中を回ってエキシビションマッチなどをやりたいと思っています。この記念すべき年に、日本にも行けたらいいなと思っています。
以前、日本シチズンウォッチという団体のスポンサーシップを受けて、3回ほど日本に行ったことがあります。その間色々変わった場所でエキシビションマッチをやりました。政府関係の建物でダーツをプレイしたこともあります。初めて行った時には東京の狭い路地に迷い込んでしまい、日本語を全く話せない僕は4時間もうろうろ歩き回ったのです。ホテルで待っていた世話役のベイナード・ブリックは、「だから一人で歩き回るなといっただろう」とあきれていました。まあ、僕の経歴を要約するとこんな感じですね。

あなたはダーツの世界で成功を納めたわけですが、今後はどのような活動をしていく予定ですか?
確かに僕はダーツの世界では名が知られるようになりましたが、それはやはり僕が今までそうなれるように努力してきたというのが大きいと思います。各地で1000以上のタイトルを取ったというだけでなく、数多くのエキシビジョンマッチを世界中で行い、スポーツとしてのダーツを広めるよう努めてきました。あちこちに行ったおかげで、色々な人と出会い、その土地独自の文化を楽しみ、自分自身の視野を広げることが出来たと思います。1990年にユニコーンの招待で訪れたロシアは特に印象的でした。すっかりロシアびいきになった僕は、その後3度もロシアに行っています。3度目にはクレムリンの中まで案内していただき、もう少しで大統領の執務室をノックできそうなところまで連れて行ってもらいました。アメリカにもよく行きました。全部で65回ですよ!その内33回がラスベガスで、殆ど全てでダーツをプレイしました。
今後の活動に関しては、色々な可能性があると思っています。世界を回り、タイトルを取り、友達を作るという今までの活動をやめるという訳ではありませんが、今後は大きな大会からは退き、1年くらい続けてエキシビジョンサーキットを回るのもいいな、と考えています。シニアやダーツの偉人達を集めたトーナメントが開かれるようになるのも、そう遠い未来ではないと思いますので、そんな時がきたら僕もぜひ参加したいですね。
僕にとって未来とは常に自分のビジョンを形にしていくものです。これからも自分にとってベストの選択をして、未来につなげていきたいと思います。

日本ではダーツといえばソフトということになるのですが、ハードとソフトの違いはどんな所だと思いますか?
ソフトダーツの台頭は、ダーツというスポーツにとって革命的な出来事と言ってもいいでしょう。初めの頃は、ぱっと流行ってすぐに廃れるだろうという意見が大半を占めていましたが、僕はそうは思いませんでした。ソフトダーツはこれから流行るだろうし、ダーツの主流になっていく可能性もあると、常々発言してきました。
ソフトとハードの違いというのは一目瞭然でしょう。初期のソフトボードは17グラム以上のダーツに耐えられませんでしたが、ボードの発達とともにもっと重いダーツが使えるようになりました。したがってボード自体の使い勝手は、ハードに近づいていると言えるでしょう。ソフトの利点はなんと言ってもスコアを自分で計算する必要がないことです。世界的に伸びてきている大きな理由はそこだと思います。しかし一方ソフトは、プレイする度にお金が掛かるというのも事実で、これはハードでは必要ないことです。
今後10年の間には、ソフトを使ったワールドチャンピオンシップ大会が開かれるようになると、僕は本気で信じています。もしかしたら、最初のチャンピオンは日本人プレイヤーかもしれませんね。

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イギリスでのソフトダーツの人気はどうですか?
イギリスではソフトはプレイしませんね。もう100年以上の間、伝統的なハードのボードがイギリスのパブの壁に掛けられてきたんですよ。伝統とはなかなか変えられないものです。特にソフトをプレイするのにお金が掛かるとなったら尚更ではないでしょうか?今後イギリスでもソフトが流行するかどうかに関しては、これからの世代に掛かってくることでしょう。コンピューターゲームとともに育った新しい世代の人々にとっては、点数計算をやってくれるソフトダーツは魅力的かもしれません。もしくは、賞金の大きなソフトの大会がテレビ中継されるようにでもなれば、イギリスのハードプレイヤー達も早速、ソフトダーツ一式買い揃えることでしょう。

日本では現在ダーツがブームになっていますが、今後ダーツが流行りそうな場所は何処だと思いますか?
多くの人が同じ意見だと思いますが、中国でダーツが盛り上がったら面白いでしょうね。中国は最近めまぐるしく発展していますから。中国で開かれる次のオリンピックでダーツがプレイされたら凄いでしょうね。勿論正式種目は難しいでしょうが、PDCのワールドグランプリの一環としてでもいいから、見てみたいものです。

読者のみなさんにプレイに関するアドバイスをいただけますか?
初心者とか上級者とかに関係なく、僕がいつも言っているのはダーツを正しく始めてほしいということです。そのためには、信頼できるダーツとボードを使って下さい。ちゃんとした道具をそろえたら、次は正しく立つということが大事です。しっかり、ぐらぐらしないように、頭が動かないようにしましょう。自分にとってコンスタントに投げやすいフォームを見つけて、それを維持するように心掛けてください。ラインに立ってボードまでダーツを投げるのは、そんなに難しい事ではないのです。自分が必要以上に体を動かしたりすることによって、かえって投げ辛くなってしまいます。
試合に関しては、早めに会場に入ることが重要です。5分前に駆け込むなど、もってのほかです。それから、長い時間立っていられるように、足に合った靴をはきましょう。試合は長く掛かることもあります。足が痛くては話になりません。でも、なによりも大切なのは自分を信じて、絶対勝つ気で試合に臨むことです。自分が自分を信じなければ、周りがどう思おうと成果が上がるはずないですから。自分は運がいいと思い込むのもいい手かもしれません。

11月に来日なさるそうですが、日本にいる間はソフトもプレイなさいますか?
日本ではハードのデモンストレーションプレイはするかもしれませんが、主にプレイするのはソフトになると思います。それから、僕の家内カレンもいつものように僕と一緒に日本に行きますので、気軽に声を賭けてあげてください。でも、彼女もなかなか手強いダーツプレイヤーですので、日本女性のみなさん、覚悟していてくださいね。

読者のみなさんにメッセージをお願いします。
僕は最近自伝を書き終え出版される予定なのですが、僕の人生のダーツに関することも、そうでない

ことも、深い内容になったと思います。きっとみなさんにも気に入っていただけると確信しています。
ニューダーツライフの読者のみなさん、ダーツを楽しむことを忘れないで下さいね。

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