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Vol.38 山田 勇樹
ダーツは集中すること

2009年

7月ダーツを始めた時期ときっかけは?
もともとはダーツの無い普通のバーで働いてたんですが、そこにダーツを置くことになったのがきっかけです。僕はブルシューターの社長と知り合いだったんですが、社長のお父さんが僕のいる店によく来てくれてたんです。
ちょうどその頃ブルシューターを立ち上げるという話の中で、僕のいる店にダーツを置くことになり、そこで僕は一年くらい投げてました。だから、最初はダーツをする気などなくて、ほとんど仕方なく投げてた感じですね。

それはいつ頃ですか?
6年前です。

今の練習時間は?
週に6~7日は投げてるんですが、練習となると週2~3日かな。これは自分の甘いところなんですが、集中して練習すると調子がよくなるので、自然と練習しなくなっちゃうんです。どうも練習する月としない月のバラつきが大きいので、それは反省するところです。

練習内容は?
まずはカウントアップ、それからクリケットカウントアップ、ハーフイットまでやって、あとはダブルの練習です。今パーフェクトがダブルアウトなので、最近はダブルの練習を入れてます。

レーティングは?
ライブは17、フェニックスは15です。トーナメントはそれで出るようにしています。

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今一番の課題は?
安定性ですね。今までで負けた試合というのは、自分のダーツができていないからなんです。これはもう人と戦う以前の問題ですよね。ちゃんと自分のダーツができていれば勝てたんじゃないかと思うんです。だから、メンタルの安定が一番の課題ですね。
技術はひたすら練習することで向上してくるものだと思うので、僕は技術的な課題というのはないと思ってるんです。それより試合の時ずっと同じ感覚で投げられるようにすることが大事です。あせってだめになったり、外れたとき動揺して、その次のラウンドも外すというのは問題です。だから、安定してずっと同じ気持ちで投げ続けられるような力が欲しいです。
毎回そう持っていこうとしてるんですが、負ける時はやっぱり自分の気持ちがざわついてますね。最近は緊張というよりも、集中できていないで負けることが多いんですよ。自分の世界にしっかり入り込んでないから負けたわけで、とにかく今はメンタルを鍛えることが課題ですね。

トーナメントへの取り組みは?
まずは会社のトーナメントには参加します。そして3年前から始まったパーフェクト。これはすごいチャンスだと思って出場してます。今年に入ってからは、ライブのスーパーダーツにも参加させてもらってますし、burn.は今予選を抜けてる状態です。
僕は昔から、可能性があれば何にでもチャレンジしたいという気持ちがあったので、何か一つに絞ってというのではなくて、チャンスのある試合には全部出たいと思っています。そして全てに勝ちたいですね。

このインタビューの時点でパーフェクトでは一位ですが、それについては?
もう3年目なので、パーフェクトランキング1位は絶対狙いたいところです。1位を取るためには優勝しなくてはならないし、いいところに上っていかなければならないのですが、今はルールも変わってどうなるか全く分からない状況ですね。
以前と何が違うかといえば、勝つ可能性のあるプレイヤーが増えたと思います。技術だけが上手いとか、メンタルだけが強いとか、すごく練習してるとか、それだけで勝てるルールではないですね。高い技術も持ってて、すごく練習もしてて、さらに調子が良いプレイヤーだけが勝てるんだと思うんです。そういうプレイヤーが増えてますね。

今年からルールが変わって不安な部分もありましたが、なかなかどのプレイヤーもいい試合をしてますね。
予選を見るとそうでもなかったりするんですが、さすがに決勝トーナメントになると、インブルフィニッシュが狙えるプレイヤーがたくさんいますね。集中してくると平気で二本とか入る……そうなると4ラウンドで上がらないと負けたり、5ラウンドではあたりまえの感じになってきてますね。ルール改正もあって、始まるまでは不安でしたが、僕の場合は今のところ対応できてるほうじゃないかと思います。あとはより細かいところを狙えるように技術を上げていけば、安定して勝てるようにはなるんじゃないかと思ってるんですが。

開幕戦イタル選手とでしたが、どちらもゆずらない試合でしたね。
イタルさんは今年から参加したプレイヤーなので「これは勝っとかなきゃいけないな」という気持ちはあったんですが、負けてしまいました。結局最後は根負けしたというか、集中力が続かなかったのがダメでしたね。決勝まで上がって飛びたいという気持ちは強かったんですけどね。
ああいう試合ができたのも自分の中ではすごく自信になりましたし、「これはいつかどこかで勝たなきゃな」という気持ちも芽生えました。いろんな意味で刺激になる試合でしたね。

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そして2戦目の広島では優勝されました。
はい。広島では去年も優勝させてもらって、土地柄的にも相性がいいのかなと思って試合に入ったんですが、本当に調子が悪かったんですよ。でも僕はいつもそうなんですが、調子が悪い時ほど勝つんですよ。集中力が途切れないんです。調子が悪いからちょっとでも気を抜くと負けるという思いがあるので、ずっと集中して投げてるんですね。
この試合はシュウイチさんとだったんですけど、自分の中で「打ち合えた」と思える試合でした。僕は今まで打ち合えながら勝った試合というのがなくて、こういういい試合をする時っていつも負けてるんです。イタルさん、星野さん、前回のシュウイチさんの時も、最後にかけられる言葉はいつも同じで「惜しかったね」と……。だからこの試合に勝てたことはすごい嬉しかったですね。競った試合でやっと取れたみたいな、自分の中では大きな進歩でした。

スティールは投げますか?
家で練習する時や、ショップでソフトが空いていない時に投げる程度ですね。2年くらい前はトーナメントにも出てたんですけど、九州ではいまいちハードが盛り上がってないし、他県まで遠征して参加もできないので最近は全然です。
でも興味はあるし、試合も出てみたいですね。全然ダメだろうとは思うけど、でもどこまでいけるんだろうという気持ちもあったり……。ハードはアレンジも難しいけど、今のパーフェクトの試合にも役に立ちますからね。

トーナメントで忙しいと思いますが、普段はどのような生活をされているんですか?
ダーツの会社で働いているので、ロケ先のハウストーナメントにはなるべく出るようにしています。今はロケーションが300近くあるので、日曜日が空いてることはまずないですね。ロケのハウストーナメント、もしくは主催のビッグトーナメントに出つつ、パーフェクトに出場するといった状況です。最近は平日にトーナメントをする店も出てきたので、そうすると平日2回と土・日がトーナメントという週もあり、ほとんどがトーナメントですね。パーフェクトのある週にハウスが入ってしまうともう練習もできないので、僕の場合は、そういうハウストーナメントが与えられた練習の場と思って頑張っています。

3年前と比べて去年、去年と比べて今年と考えると、ご自分でどのように成長していると思いますか?
試合の運び方を覚えてきたんじゃないかと思います。まず、一回戦に弱いという弱点を克服するためになるべく早くから会場入りするようになりました。僕の場合は一回戦に重点を置くので、一番集中する試合が一回戦なんです。最近はそんなに一回戦で負けることが無くなったんですが、その分集中せずに負けた試合が増えてきたのが悩みです。それでも以前に比べると、自分の実力を最大限出せるようになってきたと思っています。
技術的な面ではそう変わっていないと思います。どちらかといえば昔のほうが練習はしてましたね。最近はつい手を抜いてしまうこともあるので、もっと練習して技術的にワンランク成長させたいです。

今までで印象に残った試合は?
まず一つは、Bフライトで初めて決勝の舞台に上がった5年前のトーナメントです。決勝まで残って余裕だと思ってたのに、いざ舞台に上がったら思うように動かなくて、この時は自分の体じゃないと思ったくらいです。
それから昨年の広島での決勝です。決勝までいくと僕はあまり緊張はしないんですが、なぜかこの試合ではシビレてた……。あまりにシビレてたので印象に残ってるんですよ。

フェニックスのトーナメントでも星野選手とは対戦することが多いと思うのですが、星野選手はライバルとしてどういう存在ですか?
星野さんはやっぱり星野さんですよ。なめてかかったりしたら絶対負けます。星野さんが最近勝ててないのは、みんなが星野さんだと集中するからだと思うんです。集中しないで「最近星野さん調子悪いから…」なんて気持ちで戦ったら確実に負けます。
ちょっとした気のゆるみがあったら星野さんには勝てませんね。そのいい例がスーパーダーツの決勝です。僕は決勝まで進んだということで、なんとなく満足してしまった気持ちがあったんです。でも星野さんは二連覇を狙ってて、そこで気の入りようが違うじゃないですか。それも負けの原因の一つでしょうね。
いつも意識しているわけではないですが、星野さんの動きというのはやっぱり気になりますね。予選はどうだったんだろうとか、今は勝ってるかどうかなどはチェックしますね。とにかく二年連続一位ですからね、やっぱり強いプレイヤーです。

今までに他のスポーツは何かしていましたか?
高校の途中までは野球で、それ以降はラグビーをしていました。

それはダーツに役立っていると思いますか?
そうですね。野球に関しては物を投げるという動作が共通していると思います。
ラグビーとはメンタル面が似ていますね。ラグビーをしている時はアドレナリンが出てて、試合中相手とぶつかっても何をしても全然痛くないんですよ。ダーツを投げてる時も同じ状態になってるんじゃないかと思うんですよね。

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ダーツの魅力はなんですか?
まずひとつは最初から上手い人がいないということですね。誰もが勝つ可能性を持ってるトーナメントの仕組みも面白いと思います。だから始めたばっかりの人でも溶け込みやすいし、仲間になりやすいじゃないですか。そこが魅力で、僕はダーツというものを仕事にしようと思ったんです。
プレイヤーの視点としては、人と戦ってるんだけど実は自分と戦ってるところが好きなんです。ダブルスやチーム戦などの団体競技もありますが、結局は自分自身との戦いですよね。野球もラグビーも団体競技で、勝った時はもちろん嬉しいですが、ダーツで勝った時のほうが嬉しさの度合いが大きいんです。特にプレイヤーになってからの勝ちというのは、自分が頑張って勝ち取った勝利なので、その嬉しさは特別です。次の日の朝思わず一人でにやけたりしますね(笑)

これからの目標や夢は?
とりあえずチャレンジできるものには全てチャレンジしたいです。例えばハードの大会があって、会社から出てもいいと言われればすぐにでも出たいです。
ダーツは常に上を目指し、チャレンジする気持ちを持っていないとダメになる気がするんですよね。調子を悪くした人や、一線を退いた人をこの6年で何人も見てきましたが、その人たちはチャレンジする気持ちがなくなった人じゃないかと思うんです。ずっと昔から上手い人や、結果を残し続けてる人は「この位置を守ろう」じゃなくて「次はもっと上を目指そう」という気持ちを持っている人たちじゃないでしょうか。だから僕も、もし今年満足のいく結果を残せたとしても、それを維持したいとは思わないです。来年はさらにその上を目指して頑張りたいです。

多くのプレイヤーが海外に目を向けていますが、海外に興味はありますか?
機会があればもちろん行きたいと思ってます。もっとも国内も海外もあまり関係ないですけどね。もし海外で大きなトーナメントがあって、オープンだったりしたら参加したいし、国内でまた新しい試みの大会があるなら必ず出場したいと思ってます。

読者にひとことお願いします。
ダーツを信じて頑張ってほしいですね。僕は全てを捨ててダーツの世界に入ってきたんですが、読者の方もまずはダーツを楽しんでみて、もし真剣に取り組んでみたいと思う人がいたら、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 

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【ダーツ テクニック】

スタンスで気をつけていることは?
必ず同じ位置に立つようにしてます。僕の場合はブルの正面なんですが、基本的に一度立ったらもう変えないので、とにかく最初に立つ位置が必ず同じということを意識しています。それは台が変わっても場所が変わっても同じです。

肩は?
テイクバックするポイントに入れます。例えばテイクバックするポイントがブルから真っ直ぐな位置なら、その真っ直ぐなところのやや内側に入れます。

フォロースルーは?
手を振ろうとか手を伸ばそうという意識は全くないです。力が入ったら手が止まるので、力を抜いて投げるだけです。そうすると自然に手が伸びますよね。それから自分が思い描いてるラインにダーツを乗せるイメージを持つようにします。

テイクバックは?
手を引く過程でダーツが横にずれないように気をつけています。クセでフライトが右にずれがちなので、そうならないようにテイクバックします。

リズムは?
一定のリズムで投げるようにしていますが、特に意識はしていません。昔から「リズムがいいね」とか「リズムで投げるタイプ」とか言われることもあったので、なんとなく体に染み付いてるんじゃないかと思います。意識はしていませんが、出来上がってるんじゃないかと思ってます。

ダーツの飛びについて
僕はダーツの飛びもあまり意識しません。「今日飛びが悪いから飛びを直したい」ではなくて、どちらかというと「今日は入らないから入るようにしよう」という気持ちのほうが強いですね。力を抜いて投げることを意識して、あとはダーツを真っ直ぐ引ければ真っ直ぐ飛んでいくと思っているので、そのことに重点を置きます。飛びは無理に気にしなくても投げ込んだら良くなっていきますね。

精神統一について
昔はいかに緊張をほぐすかが課題でした。方法としては、相手が投げるときに「最高のプレイをしてくれ」と思うんですよ。ゼロワンだったらハットを出してくれ、クリケットだったらナインを出してくれと思いながら投げてました。それでもし相手にハットが入らなかったらすごい楽な気持ちで投げられたんです。こうやって緊張をほぐす方法をいろいろ模索してやってました。
最近は集中が足りない場面が出てきたので、相手のダーツがどうこう考えるんじゃなくて、変なことを一切考えないようにしています。ただ構えて引いて出す、それだけを考えて自分の世界に入る努力をします。