Shintaro Inoue-Vol.70.2014.11-Top

Vol.70 井上 晋太郎
楽しみながらというスタイル

2014年11月

ダーツの出発点を教えてください。
6年くらい前に遊びで先輩と投げたのがきっかけです。

『ジャパン』に参戦されたのはいつからですか?
2013年からです。

2013年の成績は38位と低迷していましたが、やはり最初はなかなか難しかったですか?
2013年は最初だったので全部回るつもりもなくて、近場の大会で結果が出せたらなという感じで参戦しました。頑張って入れ替え戦まで残れるようになってきたら、もっと勝ちたいという気持ちが出てきて、結局全試合出場することになってしまいました。入れ替え戦まではわりと残れたんですけど、そこからは勝てませんでしたね。まずは経験だと自分に言い聞かせた昨シーズンでした。

今年に入ってからいきなり2連勝されていますが、これは一体どうしたんでしょう(笑)?
名古屋大会で今年初めて16に残れたんですが、「この大会は絶対にこれ以上上に行くぞ」という意気込みで戦ったら準優勝できたんです。次の試合でまた決勝の舞台に立つことができたんですが、その時は前回が準優勝だったので気持ち的にとても楽に投げることが出来ました。特に調子が良かったというわけではなかったので、こうやって経験を積んで場慣れしていくことが重要なんだなと思いました。

さらに次の大会でも勝ち進んで、みごと二連勝されましたね。
それはお客さんや周りの人たちの応援のおかげだと思います。帰ってきたときも「次も頑張れ」とお祝いしてくれて、すごく楽しい気持ちで次の大会に臨めたからだと思います。

現在総合4位という好成績ですが、今の成績についてはいかがですか?
まだ短期間の結果なので、年間ランキングというのは今のところ意識していません。それを考えてしまうと自分で自分にプレッシャーをかけてしまいそうで……(笑)。
僕はメンタルが弱い方なので、まず一つ一つでいいかなと思っています。

先週の神戸でも3位タイという素晴らしい成績でしたね。
神戸大会では『三連覇』という周囲からの期待があったようで、無意識にプレッシャーを感じてしまって、入れ替えも必死でギリギリ勝ったような状態でした。
結局最後は負けましたが自分のダーツが出来たので、とりあえず気持ち的にはちょっとホッとして、今は次の試合に意識を向けています。

先日の『ザ・ワールド』ではダレン・ヤング選手との決勝でしたがいかがでしたか?
決勝の相手にやられたというよりは、いつもと違う会場の雰囲気に呑まれてしまったという感じでした。特に最後の方はふだん通りの自分のダーツが出来なかったのが悔しかったですね。
僕は先攻でしたが、今考えるともう少し粘れたんじゃないかと思います。でも初舞台だったのですごく良い経験になりました。

昨シーズンと比べて技術的に精神的に何か変わったのでしょうか?
試合においての精神的な変化が大きいですね。僕は昔からすぐ結果を出すタイプではなくて、アマチュア時代にロビンが抜けられない時期が続いていた時も、「来年はまずロビンを抜けよう」という具合に、長い時間をかけて少しずつステップアップしていくタイプなんです。
去年と比べて技術的に変えたところもないので、今年の結果というのは単純に場馴れして精神面が強くなってきたからだと思います。

今まで他のスポーツは何かしていましたか?
小学校から大学までバスケットをやっていました。

ダーツに通じるものはありますか?
技術的な共通点はないと思いますが、バスケはイメージしてゴールにシュートを打つので、そこのところが似ているかもしれないですね。ダーツもバスケも力で入れるわけではなく、届くまでの距離感などをイメージするというのは同じだと思います。

ご自分はどのようなタイプのプレイヤーだと思いますか?
ダーツを楽しんで投げるタイプだと思います。表情などが硬くなると良いダーツが出来なくなることがわかっているので、とにかく楽しもうと意識しています。それから本当に緊張しやすいので、精神的に負けないように自分で自分を盛り上げるタイプです。試合までにどれだけ自分を盛り上げられるかが重要なポイントなので、試合までの時間を大事にしています。

一年間かなりの数の試合があり移動も大変だと思いますが、体調管理などで気を付けていることはありますか?
体調管理は、今一緒に住んでる彼女が僕の食事や休息にとても気を使ってくれてるんです。栄養バランスを考えた食事を作ってくれたり夜遅くなっても送り迎えしてくれたり、本当にいろいろとサポートしてくれています。
僕自身は何か特別なことはしませんが、例えば多少調子が悪いとしてもあまり気にしすぎない様にして、とにかく次の試合に向けて意識を上げていくようにしています。

今までスランプはありましたか?
特にスランプというほどのものはないですね。あえて言うなら、ハードの試合に初めて出た時に「これは狙わないと入らない」と、必死に狙い過ぎて負けてしまったことがあったんです。
そうしたら次の日から、ソフトも狙い過ぎて入らなくなってしまったんです。そういうことが一ヶ月くらい続きましたが、自然と治りました。今のところ長い期間スランプで苦しんだりしたことはありませんね。

今まで一番印象に残った試合は?
『ジャパン』の去年の北海道大会で鈴木猛大選手と戦った試合です。それまでは入れ替え戦だとだいたいフルレッグまでもつれて負ける事が多かったんですが、その試合は完敗でした。鈴木選手はものすごく場慣れしていて、しかも楽しんで投げているのが感じられて、「自分はまだまだだな」と力の違いを強烈に感じさせられた試合でした。

練習方法や時間はいかがですか?
投げ始めた2〜3年はすごく練習してましたが、今はまったくしていないです。ダーツを始めて2ヶ月くらいからダーツバーで働き始めたんですが、その頃はとにかく上達したかったので、店が終わってから毎日一人で練習してましたね。
そういう練習もだんだんしなくなって、そのうちお客さんとの対戦やリーグでの実戦が練習の場に変わってきました。カウントアップとかクリケットを練習としてやるということは今はないです。

今ダーツで一番大事にしていることは何ですか?
ダーツは個人スポーツかもしれないですが、基本的にはみんなと楽しく投げる事を大事にしています。例えば自分の調子が悪い時などは気分も落ち込んでしまうことがあるじゃないですか。でも試合には必ず相手がいるし、ダブルスならパートナーがいるわけで、そういう時周りに自分のマイナスの気持ちを見せたくないんです。
調子の悪い時ほど周りを楽しくさせて、そうしているうちにその輪の中でいつの間にか自分も楽しくなっている、というのがいいですよね。相手を楽しませるダーツが出来たら理想ですね。

プロダーツプレイヤーというものについてはいかがですか?
僕はまだ2年目で先輩方がたくさんいるので、プロについてあまり偉そうなことは言えないです。ただ、どうしても勝負事なので感情的になってしまうことがあったりして、そういう感情を周りに見せてしまうのはしかたがないとは思うけど、ちょっともったいないと思います。プロはいろんな人達から見られてるじゃないですか。ただ観客として見てる人もいればプロを目指してる人もいます。だから、「自分は見られているんだ」ということを常に意識して、悔しがったりイライラしたりの感情はなるべく誰も見てない所で出したいです。僕は楽しい雰囲気、まじめな雰囲気を伝えられるように努力したいです。

尊敬するプレイヤーは?
今はあまりプロツアーには出ていませんが、木下望さんを尊敬しています。木下さんは以前ハードの日本代表だった選手です。僕は中野で投げ始めたんですが、そこで木下さんに最初に出会って衝撃を受けたんです。「この人に勝ちたい」とずっと目標にして、木下さんが出していたバレルを5年半くらい使ってました。同じバレルを買い替えるというのではなくて、一度買った同じ物をずっと使ってましたね。

ダーツの魅力は何ですか?
僕の場合は店で働いているので、ダーツをしながらお客さんとコミュニケーションをとれるところがいいですね。ダーツのおかげで笑いながら楽しい時間を過ごせることが魅力です。

ダーツ以外の趣味はありますか?
今は土・日は大会で、お店の定休日も他の店でダーツをしているような毎日なんです。趣味とはいえないですが、定休日に常連さんを誘ったり誘われたりして飲みに行ったりすることが好きですね。でもその後も「ダーツしよう」ということになるので、結局はダーツしかないですね。

暮らしがダーツという状態ですね。
そうですね。365日ダーツです(笑)。

現在はコスモプレイヤーですが、コスモダーツについてはいかがでしょうか?
コスモダーツは四国の会社なのでプレイヤーも関西地域に多いんです。『ジャパン』でしか会えないこともあるんですけど、本当にプレイヤー同士の仲がいいチームだというのを感じます。
愛媛大会の時、新年会も兼ねてみんなで集まりましたが、みんなつながりが深くて、本当に良いチームに入れたなと改めて思いました。

今後の夢や目標を教えてください。
『ジャパン』はレベルの高い試合になるので、入れ替え戦で落ちてしまうこともあると思うんです。でも一度落ちたとしても、次の試合ではすぐ勝ち上がってこられるようなプレイヤーになりたいです。常に安定して上にいられることが目標です。

最後に読者にメッセージをお願いします。
自分の試合の動画を見て思ったんですが…。見る人はニヤニヤしながら投げてると思われるかもしれませんが、僕は相手のいいプレイに感心してつい笑顔が出てしまうんです。常に楽しみながらというのが僕のスタイルなので、この楽しさがみなさんに伝わってくれたら嬉しいです。