Vol.114 森窪 龍己
SETTING

2022年5月号

改めてダーツ歴はどのくらいになりますか?
14〜15年になりますね。

最初にマイダーツを買った時のバレルやセッティングは覚えてますか?
う〜ん、最初のマイダーツですか。買ったというよりたしか頂いたものだと思います。始めた時はスティールだったんですが、そう記憶しています。ソフトも同様にいただいたもので、多分アサシンだったかなぁ?なんのこだわりも無く、その与えられたセッティングで投げていました。当時はきっと多くの方がユニコーンやハロウズを使っていたんじゃないでしょうか。すみません、あまり覚えていないです(笑)。
当時はコミュニケーションのためのツールだったんで、ダーツ自体は何でもよかったんです。例えばフライトは変わった形のものを見ると、おっ!これカッコいいな!みたいな感じで使っていました。それで飛びが変わるなんて知識は無かったですね(笑)。

それからダーツにはまって、10年ほど前からは商品もたくさん出てきて研究するようになりましたか?
セッティングについて考えるようになったのは、プロになってからです。
それまでは、どのバレルを使っても同じセッティングでした。何がどう違うのかも分かっていませんでしたし、気にもなりませんでしたね…。ダーツを始めてから3~4か月たった頃に、自分にダーツを教えてくれた人がいて、その方が自分モデルのバレルを作成してプレゼントしてくれて、その時に使っていたセッティングはナイロンのミディアムシャフトに折り畳みフライトのスタンダードでした。
その当時はミディアム、インビト、ショートが主流になっていたと記憶していますが、メーカーによって微妙に長さが違っていたので困惑しましたね(笑)。
Lスタイルがスポンサーについてからは、ガラリと変わりました。最初にシャフト、フライトに関して全種類で試投できる機会をいただきました。それからはセッティングについて、悩んだり考えるようになりましたね。

これだけ多いと奥深いですね?
いやぁ、Lスタイルだけでもたくさん出ているので全てを検証するのはたいへんです。シャフトではナイロン、カーボンなどの材質があって長さもいろいろあって、スピンやロックもあります。フライトも同様でほぼ無限です(笑)。僕の場合は半年ぐらい迷いに迷ったですね。
そこで思うことは幸せな時代になったということです。これだけ選択肢があるのは素晴らしいことです。自分が始めた頃とは比較できない程の情報量があるので、いろいろ試して楽しめますしね。

変えることで飛びは凄く変わりましたか?
大きく変えると全然変わります。僕はまず大きくセッティングを変えてトライして、少しずつ細かくしていきました。フライトの形では最後にここで落ちるんだとか、ここで伸びるんだとか人によって飛びは様々ですが、多くの発見がありました。
セッティングはダーツの一つの醍醐味ですね。今でもいろいろ変えて練習しています。

今は基本的なセッティングで試合に臨んでいるんですか?
そうですね。基本はあるんですが、コンディションによって変える時もあります。今日はこの飛びなのでシャフトの長さを変えたり、フライトは同じ形で素材を変えたり臨機応変に対処しています。その日のイメージに合わせていますが、直前でも決まらないこともありますね(笑)。

チップは何を使っていますか?
メインで使用しているバレルがNo.5なのでPremium Lippoint No.5を使用しています。刺さりも強度もいいですね。

シャフトはいかがですか。
ソフトとスティールで違う長さを使用しています。理由はバランスに比重をおいたからですね。ダーツが飛んでいく過程で、フラフラしないようなセッティングだと思います。ソフトはプレミアカーボンで225がメインです。前のバレルでは普通のカーボンの260でしたが、プレミアにすると短くてもバランスが取れるからですね。

フライトはどうでしょうか?
KAMIフライトのシェイプです。以前はプロフライトのシェイプでした。KAMIフライトの方がぶつけにいった時に弾かれにくいように感じています。PROフライトも良いのですが、前者の理由で今はKAMIフライトを使用しています。

結局、自分の理想とする飛びに合ったセッティングを探すということですよね?
自分の理想とする軌道を実現させるために探すことでしょうね。それができると単純にストレスが減ると思います。道具を信じられるのでゲームに集中できます。セッティングが助けてくれる面もあって、本当に重要なテーマですね。疑いながら投げていて弾かれると、やはり違っているのかと疑心暗鬼になって自信もなくなって悪い連鎖が起きます。
それが毎回違うように感じるというのが、このテーマの奥深さですね。
よく「悩みすぎると沼にはまる」と言われますが、無理も無いことです。

人によっては試合中でもセッティングを変えているケースがあるようですが、ご自身はいかがですか?
僕はそっち側のタイプですね。自分の中で何種類かセッティングパターンを持っているので、不安を感じた時点でパターンを変えますね。

それはシャフトですか?
僕のバレルは幾つも出させていただいているので、バレルごと変えることもあります。重さ、長さ、カットも少しずつ違います。違和感があるとそんなこともあるので、日頃からセッティングには出来るだけ時間を割いて試して、特徴を理解するように努めています。道具の研究はきりがありません(笑)。

ソフトとスティールではセッティングは違うのですか?
スティールの方が短くしていて、フライトもスタンダードを使っています。スティールのポイントはソフトのチップよりも長くて、その分全体を縮めているイメージです。重さとバランスを考えてみると、フライトも多少大きい方が良いですね。シャフトはLAROを使うことが多いです。

初心者にセッティングの助言をお願いいたします。
いやぁ、難しいですね。最初の頃は多分自分のダーツが飛んでいく軌道を把握、イメージができていない方が多い印象があります。その中で使っているバレルに、見た目がいいなと思ったセッティングから試してはいかがでしょうか。自分の判断でこれがカッコいい、と思ったらそれでいいと思います。可愛いな、投げやすい感じがするなどでも良いですね。
入り口はそこで、少しずつ広げていくことをお薦めします。
理屈だけじゃなくて、ダーツはそれで楽しめる面があります。経験を積むことによって、各パーツの性格も分かるようになるでしょうから、さらにダーツが好きになりますよ(笑)。

中級者以上にはいかがですか?
幾つかのセッティングで違いが分かるようになると、迷う段階に入るんだと思います。今日のコンディションはこうだから、このセッティングだと決められるようになる前の状態ですね。
例えばAは飛びがとてもいいけど、Bの方がグルーピングがいいなどの場合です。飛び方を求めるのか、結果を選ぶのか難しいです。そんな時はさらに道具を追求して中間点のものを探すか、両方満足できるものを見つけるかしかありません。さらに極める姿勢と努力、それに尽きると思います。

ご自身のバレルについて教えて下さい。
今出ているのはDRAGOONⅢ 森窪龍己モデルとして5タイプあります。バレル先端と最後部には超繊細なマイクロカットを施し、メインに海外選手が好むローレットカットのバレルです。きついカットではなくて、特徴で言うと引っかかるというよりも安定して滑らせることができるのが特徴です。物足りないと感じる人がいるかもしれませんが、コントロール性を大切にしているからです。引っ掛けて飛ばすのには不向きですが、振り切って投げる人には使いやすいと思います。バキバキのカットじゃないので寿命も長いです。
同じカットなんですがソルというのが出ていて、それは僕がダーツを始めた頃に主流だった重量が16・5gの2BAと16・8gのスティールです。今は20g以上のソフト、22gを超えるスティールが増えている中で昔に回帰しました。
重たいバレルが増えたことによって、肘を痛める声を聞いていたという理由もあります。重たいと自然に力が入るんですよね。僕自信軽いバレルが好きなので、リリースさせていただきました。

さてプロトーナメントが再開されましたが、どうですか?
この長いコロナ禍の影響で、試合の雰囲気が随分変わったと思います。僕の場合は緊張感が保てていないです。個人の主観ですが、あまり集中できていなくて、悩まされています。久しぶりの対人戦なのでもっとシャッキとすると思っていたんですけどね…。今は困惑している状態です(笑)。
試合が動き始めたことについては嬉しく思っています。
以前よりも制限があり、まだまだ気持ち的にも適応できていないのですが試合をさせて頂ける事に感謝しながら努力して成績を残そうと思います。期待して下さい!