2011年11月
今回は10月1日に開催されたPDCチャレンジファイナルを見て感じた事を。ダーツ屋どっとこむでスポンサードしている清水浩明も、9月のWorld Masters、World Cupに続き出場です。この大会で優勝すると世界の最高峰PDC World Darts Championshipに出場でき、清水が優勝したら再度12月にイギリスに応援に行く約束。
大会前日に予選のスタッツから組み合わせが発表になりました。スタッツ1位の清水の初戦の相手はスタッツ8位の田辺荘一。正直なところ、他の7人の中で最も嫌な選手でした。スタッツはあくまでも予選の数字ですし、清水と田辺選手の今までの対戦を見ていても苦手意識が見えるんですよね。それに、清水の性格や相性的には、村松治樹か勝見翔がいいなあと思っていたんです。嫌な予感は当たるもので4ー5で敗戦。正直なところいいダーツではありませんでした。緊張なのか、気負い過ぎなのか。西日本予選の時のようなダーツや、ワールドカップのシングルスの時のダーツが出来ていれば優勝できると思っていたんですが。
彼をかばうとしたら、PDCチャレンジまでの1ヶ月は非常にハードでした。World Mastersで1週間イングランドに行き、10日おいてWorld Cupで1週間アイルランドに。戻ってきて4日でPDCチャレンジです。付き添いとして同行した私もかなり疲れが溜まるくらいでしたから、試合をしていた彼は肉体的にも精神的にも疲労がたまっていたでしょう。
World Cup決勝戦の日、日本に戻る2日間、合計3日間は練習が出来なかったのも痛かった。
とにかくPDCの夢は来年以降におあずけです。
優勝したのは多くの方がご存知だと思いますが、1回戦で佐川研生を、準決勝で優勝候補筆頭だった橋本守容を、決勝戦で勝見翔を倒した村松治樹。
第1試合で清水が負けた後、私の心の中はなんとなく村松治樹を応援していたんですよね。彼とは仕事上の関係は特別無いですし、勝っても利益が有るわけでもない。今野選手以外は全員面識のある選手ですが、その中で彼を応援したくなる程、村松治樹の何が私を惹きつけるのか、試合を見ながら考え始めてしまったんですよ。
1つ思ったのは、彼は「喜怒哀楽」が見ている人に非常に伝わり、感情移入の出来る選手じゃないかって事。「喜」や「楽」が伝わる選手はたくさんいますし、「怒」が伝わる選手もいます。村松治樹は「哀」が特に伝わる、いや似合う選手じゃないかな。
私の中で彼の印象的な場面を思い出してみると、Super Dartsやburn.の決勝戦で橋本選手に負けて、苦虫を噛み潰したかのような、非常に何とも言えない表情。普通は大勢が見ているステージ上で負けた場合、格好悪い顔したくないと本能が働いて無表情を装うと思うんです。
それが彼にはない。相手に対し素で「バカー」と叫びたいのを必死で我慢している顔。感情移入の出来るダーツプレイヤー、彼の最大の魅力はそこなんじゃないかと、私の中では結論に達しました。
その反対が橋本守容。優勝して盾をもらって喜んでいても、本当に喜んでいるように見えない不思議さ。
多分嬉しいんだとは思うんですが、「優勝して当然」と本音では思っているんじゃないかと思わせてしまう彼のキャラクター。しかし、業界を盛り上げる為には、圧倒的に強い悪役って必要だと思うんですよ。悪人って事ではなく、憎たらしいくらいに強い壁の役目をする選手。それが橋本守容かなと思っていたのですが、今回の敗戦で少し違う印象を彼には抱きました。
「強い」選手ではなく、日本の中では圧倒的に「安定感の高い」選手。数字を見れば分かるんですが、彼の安定感は流石です。調子の悪い日でも、27PPDは出せますし常に30PPDに近いダーツをする事ができる。負けた試合も勝った試合もアベレージはほとんど同じ。
ただ、海外で試合を見てきた私の目には、彼に少し物足りなさを感じました。海外の強豪選手は対戦相手がゾーンに入っていいダーツをし始めると、ギアを一段上げたかのように更に入れる事が出来る。「強い」選手は相手がゾーンに入ったら、自分もゾーンに入れる事が出来る選手だと思うんです。
でも、村松治樹戦での彼にはそれが無かった。それが出来れば結果は違ったと思うのですが、良くも悪くも安定したダーツ。非常に高いレベルでの要望ですが、橋本選手には世界で戦おうと思ったらその辺も必要なのかなと思いましたね。
村松選手に話を戻しますと、準決勝では途中からゾーンに入ったのか素晴らしいダーツでしたが、その他のゲームは今ひとつ。一度経験しているのでわかっていると思いますが、あのゾーンに入った状態で勝負をしないと予備予選はともかく、本戦1回戦を勝ち抜くのは非常に難しい。過去2年が一方的なゲームだったので、勝てなくても「日本人ここにあり!」と思えるような試合をして欲しいですね。
それと田辺選手の応援は良かったですね。いや、憎たらしかった(笑)。
日本人の性格もありますし、他国のようにギャンブルとして見る側がテンションが上がっているわけではないので、PDCやBDOの試合のような盛り上がり方はできないと思うんですよ。田辺選手のお面と「TNB180」のTシャツを皆で作って、揃って応援したあの応援は日本的で良かったと思います。
応援や観戦は日本独自の盛り上げ方が見つかるといいなと思います。選手も盛り上がった方が投げやすいし、いいダーツが出来ると思うんですよね。
さて、PDC World Darts Championshipは12月。今年もPCの前で村松治樹を応援しようと思います。