Fujio Honjyo-Vol.53.2012.1-Top

Vol.53 本庄 富士雄
「ライフ」そのものですね

2012年1月

ダーツ歴はどのくらいになりますか?
今年で10年になります。長いようですが実は中途半端でもっと長い選手も多くいますね。これからも続けていきますので、よろしくお願いいたします。

NDLももうすぐ10年を迎えますが、当時から活躍していて現在も残っている選手は数人しかいませんが…。
当時からこの雑誌を見てあこがれていました。ジョニーさんやアラシさんなどがインタビュー記事などになっていて、カッコイイナとあこがれていました。密かにいつか出たいなと思っていたんです。
今回特集していただけるということで、胸の内はドキドキ、嬉しく思っています。

誰でも最初は遊びで投げ始めて、何処かの場面で真剣にダーツに取り組み始めたと思うのですが?
ダーツに最初に接してから7〜8ヶ月の頃でしょうか。最初は通っていたお店で一番になりたかった。やがてハウストーナメントが盛んに開催されるようになって、強いプレイヤーってたくさんいるんだな、ということが分かって、もっと練習するようになりました。
かなり練習しましたね。気がつくと7〜8時間が経っていたことはよくありました。

2011年Dクラウン、シングルスは4位ですがダブルスは随分下位ですね。
2010年は組む相手がいつも同じだったので投げやすかったのですが、2011年にルール改正に伴い、毎回違った相手と組むようになりました。正直投げにくかった自分がいたと思います。またシングルスに重きを置きすぎていて、ダブルスの試合では既に疲れてしまっていた、というのが本当の気持ちです。それでもシングルス、ダブルスと両方で優勝しているプレイヤーもいるので、そこが僕の弱さですね。ダブルスが苦手なのかもしれません。

2011年はたいへんな1年でしたが、どんな年でしたか?
2010年はシングルス1勝もできなかったので、当初の目標はまず優勝、できれば3勝したいと思ってスタートしました。結果としては2勝でしたが、ダーツとしては納得のいく1年ではありませんでしたね。夏以降コンディションを維持できなくて、優勝が無かったのが残念です。でも全部予選を通ったのでポイントで総合6位になれたのでしょう。Dクラウンは全試合出ましたが、やはり長かったですね。皆勤賞ということではちょっぴり誇りにも思っています。でも他の選手はそれ以上に他の試合に出たり、ハードにも出たり海外に行ったり、感心しきりですね。

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先日開催されたDクラウン、パーフェクトの対抗戦についてお聞かせ下さい。
Dクラウン最終戦が終わってから、数週間後に開催されたのですが、ガチ緊張しました。当日まで自分の中でもの凄くプレッシャーになっていて、日本を背負う代表ではないんですが、団体を背負うのはやはりただのイベントとしては捉えられなかったですね。
注目度はひしひしと感じていましたし、多くの人々が後ろにいることを考えると、怖かったですね。出場できないプレイヤーがいたため、僕が滑り込みのような形で出場ということになったので、なおさら勝ちたいと思っていました。

終わった後、初めてジオさんの涙を見ましたが…
Dクラウンのプロとして2年やってきて、シングルス4本落とすなんて誰も予想してなかったと思うので相手を賞賛しますが、それにしても不甲斐なかったですね。
何か説明のつかない思いがこみ上げて来て…そして終わった、という責任から解放された気持ちもあり、本当に悔しさなどもあいまって涙、涙の最後の舞台でした。あの味わった事の無い感情はこれからの肥やしに必ずなると信じていますし、良い経験だったと思います。

ハードダーツは投げますか?
TDOとか昔は出ていたんですが、休みが合わないんですね。興味はありますが今は投げていません。

大会前の心がけ、調整方法などを教えて下さい。
昔は1ヶ月で1試合ぐらいしか無かったので、その頃はその間で調整できたんですね。徐々に試合に向けてピークを持っていくとか、十分に準備期間があって試合に臨めました。しかし今では間がほとんど無いので、まるで試合が練習のようになって来ていて、随分様変わりしました。
心がけているのは、大会前日はダーツを投げないようにしていることでしょうか。それと体調管理に気をつけるのは言うまでもありません。風邪を引けばダーツも風邪気味になります。

自分はどんなタイプのプレイヤーだと思われますか?
対戦相手から見ると嫌なタイプの選手じゃないかなと思います。よくあたって負けていたアニー選手の場合で説明すると、終わると僕がスコアラーをすることになります。そうすると明らかに僕とのゲームと違ったダーツを打つんですよね。例えばクリケットでこの点数差だと僕とのゲームではプッシュなのに、閉めにいくんですよね。僕も時々爆発したダーツを打つので、保険をかけて来ているなと感じました。

今までにスランプはありましたか?
毎年あります。きまって開幕時期は最初のスランプですね。これからシーズン戦う上でどうしようかな、と気がめいるんですよね。実は僕はメンタル弱いんで一生懸命、自分の背中を押すんです。でも開幕戦ではいつも空回りしてスタートしています。

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今までに印象深い試合はありますか?
3試合あります。まずはMJトーナメントでの星野選手との対戦。最後の場面で彼がバーストして僕にチャンスが回って来て、2本目アレンジに行ったのを外して、上がり目が無くなって負けました。星野選手を追いつめることが出来たということでよく覚えています。
次はburn.のノリニティー選手との試合。彼とは長い付き合いでとても仲がよくて、練習もよく一緒にしていたんですね。大逆転をくらって負けたんですが、楽しくてしょうがないダーツだったことを覚えています。burn.のグランドファイナルの舞台で友人と出来るのは最高です。
そしてDクラウンで初優勝したカツミショウ選手との試合。いつも3位だったので。勝利の喜びとしては格別でしたね。ダーツは勝負なんだなと学べた試合でした。

練習時間、方法などはどうされていますか?
実は最近ほとんど練習していないですね。ちょこちょこ程度です。自分の中でOKが出た時点で終了です。時間もあまり取れないですものね。決まったルーティーンなどもありません。

今、ダーツで一番大事にしているポイントは何ですか?
技術的なことで言うと「抜く」ということです。言葉として難しい表現ですが「離す」でも「抜ける」でもありません。ダーツが離れる瞬間は奥深いですが、僕の技術で言うと「抜く」となります。
この技術があってこそ、すべてのものがそれに付随して来るんだと思います。それが僕の柔らかいフォームの基本となります。抜きながら押すんですよね、バレルのカットなどとも大きく関係して来ます。自分では少しダーツの真理に近づいていると考えています。
多くのプレイヤーが教えて下さい、と僕を訪ねて来るんですがここだけの話、最近お断りしようかなと。特にプロプレイヤーに教えるとみんなあっと言う間に上達して、僕が勝てなくなってしまいますものね。
僕はダーツについて公式を作りました。例えばブルを狙うとすると数字で10となります。
僕のフォームでは1+3+6、アニー選手の場合だと5+4+1となります。僕のフォーム理論はここを90度にしなさいとかじゃないんですよね。人それぞれの骨格で全ての人にこの公式が当てはまるので、とても単純明快だと思っています。後でテクニックのページでより詳しくお話ししましょう。

KTMさんについて
彼は僕のダーツの父ですね。あの人がいなかったら、僕はダーツを含め全てがボロボロ、今誌面に登場するなんて状況には無かったと思います。
僕のダーツ理論は彼の理論の僕なりの解釈、パクリ(笑)、膨らませたものだと思っています。

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昨年、偶然ザッカでチャリティーイベントにてお会いしましたが…
あの時はかつみさん、赤松選手と一緒に、震災後なにか出来る事はないかと考えて、あのような形になりました。僕らは正直、客寄せパンダだと思うんです。利用価値があるのであれば利用して欲しいと思いました。可能な限り参加させていただきました。

2時間ビッチリ、参加者にダーツを教えていたのが印象に残っています。
現場で出来る事といえば、僕の場合はダーツを教えること、それは自分の義務だと思っていました。本当に楽しいイベントにしたい、と必死でしたね。後でただのお金集めだったね、と言われないようにいろいろ工夫したつもりです。募金と一緒に笑顔も届けたかったですね。

プロダーツプレイヤーについて。
プロの資格があるので勿論、僕もプロプレイヤーです。ここ数年の歴史なので、僕たちは今まだ先駆者という存在だと思うんですね。もうちょっとがんばらなければ、と思っています。技術のレベルは確実に上がっては来ていると思いますが、プロとしてのあるべき姿、結果などより厳しい環境が必要じゃないかとも思います。
ちょっと前までのように上手かったということで、チヤホヤされる時代はまもなく終わるでしょうが、まだそうじゃない状況もあるようなので、より厳しくなればダーツプロの世界はもっと成長できると思います。まぁ自然と結果が出ないプレイヤーはメディアの露出が減り、各団体からのイベントの誘いも減るでしょう。

尊敬するプレイヤーはいますか?
奥さん子供のために戦っているプレイヤーは尊敬していますし、大好きですね。それでトップにいる選手はしびれますし、僕もファンの一人です。あの人たちを見ていると羨ましいですね。僕も家庭、作ろうかな、もっと強くなれるかな?(笑)

ご自身にとってダーツとは何ですか?
「ライフ」そのものですね。僕からダーツを除くと何もないんです。普通のオッサンですよね(笑)。他に見事に何も持っていません。

ダーツの魅力とは?
やれば分かります。投げれば自ずとハマリます。

今年、プロの舞台が増えるようですが、どのようにお考えですか?
プレイヤーが何処に出るのかなど、世間を騒がしていますが、僕自身は楽しみにしています。5年後、10年後に発展できてれば、いいんです。僕がダーツを始めた頃はプロなんて考えてもいませんでした。これを機会によりダーツは注目され、メジャーになっていくのではないでしょうか。より良いダーツ界になれることを期待していますし、必ず通る道ということなのでしょう。

今後の目標、夢などをお聞かせ下さい。
ダーツを投げながらダーツに携わる仕事がしたいですね。その時に奥さんや子供に囲まれていたら、もっと幸せですね(笑)。今、ダーツで時の人と言えばかつみさんですが、僕もそんな存在になりたいな。目標として夢として思い描いています。

最後に読者にメッセージをお願いいたします。
もっとスマートに紳士のスポーツとして、かっこ良くダーツで遊んで欲しいですね。お酒も入りますので、羽目を外すことはあってもいいですが、ダーツしてる人って、みんなクールだね、なんてイメージが定着できたらいいな、と思っています。

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ダーツは公式も考えたほどの理論派

グリップ
グリップはニュートラルな状態で持たなければならない、と思っています。ニュートラルとは自分でグリップを作らない、という意味です。難しいでしょう?形があることなので、言葉で表現するのはかなり困難ですね。
要するに自分のテイクバックのエンド、それがその人の理想のグリップだと思います。身体がそうさせるもの、勝手にその形になるものなんです。一番ストレスの無い状態、と言っていいでしょう。グリップでは親指と人差し指の接する面で言うと、「つかむ」でも「押さえる」でもなく、自然にそのようになるものなんです。

フォームの逆再生
ストレスという言葉が出ましたが、それはフォーム全てにおいて重要なことです。
僕の理論ではこのフォロースルーがしたい、とするとフォームはその逆再生です。まず上体や胸の角度、そして下半身、足の角度へとフォームは形成されるものなんです。
ですから部分部分での分析は必要ないんです。無理をしないフォロースルーをするために理想のフォームは決まっていくものなんです。肘、肩、セットアップを個々で考えないで全ては逆再生させて、その目標から逆にこう有るべきだ、という理論です。
視覚から形だけを追求しても、結果はついて来ません。

機構+火薬+発射角、この公式でいつも同じところにダーツは飛んでいきます。例えば大砲は狙う位置を決めて発射させますが、まず大きさがあって、そして火薬量、そして発射角度を決めて打ち出します。まさにそれと同じですね。この理論を自分に当てはめて練習、努力、鍛錬すれば、必ずダーツは思った的に刺さるんです。ジオダーツ理論、ご興味ありますか?ぜひお店を尋ねて下さい、詳しくご説明したいと思います。

メンタル
僕はもの凄くメンタル弱いんです。自分のためにだったら、とっくに挫折してるでしょうね。だから僕は応援してくれる人のために勝つぞ、と考えるようにしています。だからこそ家庭を持ちたいんですよね、もっと強くなるために、お嫁さん欲しいな、よろしくお願いいたします(大爆笑)