Vol.96 牧野 百花 特集 4
KTM.が語る「ももか」

2019年3月号

プロデュースなんて一切してないですよ(笑)
達成しないといけないリストは本人が一番わかっていることでしょうし、
それが言葉の端々に伝わってくるのでこちらからは敢えて言うこともないかなと。

牧野選手とお会いした時の第一印象は?
初めて会った時に、偶然ASAHI(滝沢あさひ)とASAKO(新亜紗子・旧姓檜山)が話しているお店に顔を出したんですよ(笑)。星野(星野理絵)も同席していたので、突然大先輩3人に囲まれるという状態になって、まぁほとんど会話らしいやり取りはなかったですね(笑)。
普通にビビっていたので、とりあえずどういうブランドなのかの説明をして、もし興味があったら連絡してねという感じで。その後、数時間後にすぐ連絡があって加入してくれると。多分、あれだけの先輩達に囲まれてたから断れなかったんでしょう(笑)。
第一印象を見るというよりも、「この子引き強いな〜」と思いましたね。

どうして彼女のプロデュースを始めたのですか?
プロデュースなんて一切してないですよ(笑)。「百花はとにかくフリーで好きにやって」と今でも言っています。ただ、彼女の場合には「アイドル」という職業もやっているわけですから、ダーツの中では「俺、笑った顔とかはあまり撮らないから」と伝えたくらいかな。
まぁキャラが立っているので、どのテイストにも映えるんですよ。だから、ポスターとかのデザインをしている側としては非常に楽ですし、撮影も異様に早く終わりますね。彼女もどういうテイストで撮りたいかすぐに理解してくれて、後は好きなようにさせてくれている。
撮影するのも僕は本職ではないので、牧野百花というキャラクターを撮ることでむしろ勉強させてもらっている感じです。圧倒的に百花の方が撮られ慣れしていますし、場数も踏んでいますからね。
なので、相談しながら色々と制作しているという感じの方が強いですね。だから、今評価されているのは彼女の日々の努力の賜物であって、僕なんて何にもしてないですよ(笑)。

2年余り経ちましたがどのように思っていますか?
実はお互いに結構タイトにスケジュールが入っているので、会うといっても年に数回なんですよ。ただ、相談とかの連絡くれたりはしているし、合同のグループLINEである程度把握していますから、会う時には「そろそろ撮影でもするか」という感じで。彼女がハイパーエレクトラというブランドに加入してくれたおかげで、僕がこの業界でやりたかった表現とか、そういうやり残したことを実現させてくれたという感謝の気持ちはありますね。
展開の広がりを見せてくれたのも、アイデアというか感性と頭の良さは素晴らしいなと思います。
本人は時事ネタとかそういう知識は皆無に等しいですけど(笑)。人としての能力の高さはダーツにおいても、表現するということにおいても尊敬しますね。
勝つためのアレンジのチョイスは早く完璧に身に付けてほしいですけど…。

彼女の一番の魅力はどんな面でしょうか?
僕から見ると「隠れた狂気」ですかね(笑)。
見た目から判断すると「狂気が表に現れてるじゃん」と思われがちですけど、話してみると常識人な一面があり、でもその奥にそれがわかった上での「スクラップアンドビルド」が見え隠れしている。
普通じゃないって、普通がわかっていないと「外して評価を得ることは出来ない」し「新しいものも作れない」じゃないですか。
そういう面では一般的な意見や評価を冷静に組み込んで、その上で外していくのが上手い。
それを感覚でやっている時もあると思いますし、計算してやっていることもあるでしょうし。そのどちらかを判断するのは出来ませんけど…
結果的に違うものを見せ続けるという作業は非常に大変で、でも自分の中の芯はちゃんとブレないでおいておかないと、その人の「味」や「個性」に繋がらない。
だから楽しいですよ、その隠れた狂気が垣間見える時が。そんな狂気がありながら、ちゃんと空気が読めるし。

逆に彼女において苦労する面は?
全くないですね(笑)。あ、あるとすれば転んだ時に受け身を取れないくらいじゃないですか?(笑)

トーナメント会場では多くのファンに囲まれるようになって来ていますが…。
表面的なことから言えば、あれだけイベントの依頼が絶えないということは「今必要とされている子」だからでしょうね。
大体慣れてくるとイベントのこなし方って型にハマってくるんですけど、そうしない彼女の努力もあるでしょうし、丁寧に人と向き合っているからでしょうね。自我ばかりを通す人は時代が必要としなくなれば、必然的に周りの人間もサッといなくなる。
時間って残酷で、普段から工夫しない人間にはある時に「タイムアップ」を告げる。そうなる前に気付ける人はいいんですけど、まぁ大体は変化することが怖いですから単純に「工夫をしない継続」を選ぶ。
継続自体すごいことなんですけど、人に必要とされる立場に居続けるには、常に変化していかないとダメだと思うんですよね。
その人間のスキルもそうですし、ただ同じことを繰り返しているだけなら、いつかはそれが「当たり前」になって「過去のひと」と呼ばれる。
そういうのを別の業界で散々見てきたんじゃないですか?多分。だからセルフディフェンスがしっかりしている。
変化し続けるものって見ちゃうじゃないですか?彼女はそういう意味でこれからも変化していく能力値が高いですから、今があるんでしょうね。

これから彼女に望むことは?
正直、あまりないですね(笑)。達成しないといけないリストは本人が一番わかっていることでしょうし、それが言葉の端々に伝わってくるので、こちらからは敢えて言うこともないかなと。
僕が必要な時には連絡来るだろうし(笑)。

ダーツ界においてプロデュース業とは何なのでしょうか?
自分的にはプロデュースしているつもりはないんですよねぇ、正直。敢えていうならブランディングと言えばカッコいいでしょうけど「何でもデザイン屋」でしょうね(笑)。
大会企画にしてもバレルブランドにしても、選手にしても。別に誰でも出来るんじゃないですか?一般的に流行っているものを取り入れたり、他の分野では当たり前に行われていることをやっているだけですし。
ただ、自分でモノ作りできるスキルといざとなったら現場に出られる知識は求められるでしょうね。大会運営1つにしたって、マシン運ぶことから知ってないと誰も相手にしてくれませんし。バレル作りだって、ただ作れればいい訳じゃなくて、それをどういうテイストでどういう手法で告知するかとかわかってないと、仕事をくれる訳ないし。
狭い業界ですし、高い広告代が出せる時代でもないですから、外注だって出来ないでしょう。もう2回目のダーツバブルは崩壊したんだから。
だから撮影だったり動画だったりを、ここ2年で覚えてスキルを上げようと努力はしています。そうしたら外注いらないですからねぇ。
コンセプトもブレないし。外注出したりすると、段々とコンセプトがブレる時があるんですよ。それがとてもいい効果だったりを生み出すこともあるんですけど、ブレるときも多々あるので、だったら自分で出来た方がクライアントがお得かなと(笑)。
勿論、そのそれぞれの職人の域にまでは足元にも達していないので、まだまだ僕も勉強中の身ですけど。
だから、僕のテイストが好きな人もいれば嫌いな人もいて当然。バニラ味を全員が好きな訳じゃないし、チョコレート味もしかり。
それでも、僕の作ったものを好きといってくれる人がいるうちは続けられるでしょうけど、いつ干されてもおかしくないですからね。
僕一人が居なくなっても、明日もダーツは続きますからね。