2019年3月号
ヨガは体幹を鍛えるために
インナーマッスルを鍛えれば代謝がアップして痩せるし、ダーツのフォームにもいいことだと思ったんです。
K では、百花にとってダーツの上がり目というのはどこなのでしょうか?
M 何処なんだろうな……。あんまり先のことを考えていないんですよね。先のこと考えてたらこんな生活してないと思います(笑)。
まずは年間優勝を狙えるポジションというのが目先の目標で、そこから先のことはそれからじゃないと見えないですね。
K 多忙な毎日の中で気分転換にヨガをしているということだけど、ヨガ以外には何かありますか?
M 読書。
K どういうジャンル?
M 私は自己啓発系は怖くて読まないし、社会問題についてもよく分からないので読まないです。基本的には日常に寄り添った小説やエッセイなどが好きです。そういう本を読むと人生をもう一つ楽しんでる様な気がして、得した気分になります。
あと、文章を読まないと書く気がしないんですよ。プロの人が書いた文章を定期的に読まないと、文字を書く意欲が湧かないんです。
K 本は表現力や言い回しの勉強になりますからね。僕は母に言われて「知識は腐らないから、本を読みなさい」というのは今でも守ってます。
M カツミさんは本当に物知り過ぎて怖い時があります。
K ところで、ヨガにハマっているというのは痩せられるからですよね?
M みんなからは「もっと太らないとダーツが安定しないよ」とか「太らないと体力が続かないよ」とか言われるんですよ。でも周りから何と言われようと、この体型を崩すつもりはないんです。私は人に見られる仕事をしながらダーツをやるって決めてるので、体型や見た目が崩れたら、アイドルやりながらダーツプレイヤーやってるって言えないで
すから。
それで、スタイルを維持しながら体力を落とさないために、体幹を鍛えようと思ったんです。インナーマッスルを鍛えれば代謝がアップして痩せるし、ダーツのフォームにもいいことだと思ったんです。ヨガはバランスを取るポーズも多いので体幹が鍛えられます。
ヨガを続けているのは太らない目的もありますが、代謝を上げてしなやかな筋肉を作るためでもあるんです。アスリートは必ず筋トレをするじゃないですか。それと同じ感覚です。
K 最初に会った頃はフォームがちゃんとできていなくて、まぐれで偶然入っているといった感じでしたよね(笑)。フォームを変える様に指摘してからはだいぶ改善されて、今は周りからも「百花のフォームはきれい」という声を聞くくらい見せられるフォームになっています。指摘されてからずっとその通りのことを守ってきたわけですか?
M はい、続けました。私は基本的にいろんなことをどうこう考えてないじゃないですか。だから言われた通りにひたすら投げ続けたら、自然にこうなっていたという感じです。だからどう変わったのかは自分でもよくわからないんです(笑)。
K フォームを変えたことにより不安定になって負けていても、ずっとやり続けていたのはすごいなと思いましたよ。
僕は何百人という女の子に「こうじゃないと勝てない」「人前で見せるダーツじゃなければ仕事にならない」と教えてきましたが、その中で言いつけ通りに守ったのはたったの3人だけなんです。百花はその中の1人ですよ。
M へ〜、そうなんですか。
フォーム改良に挑戦
ディーピットで「こんなフォームじゃ投げられない」と半分かんしゃく起こしながら投げてた時に「これでロートン出したらチョコレートあげるから」って言われながら真夜中に練習したんですよね(笑)。
K 正直最初は「どうせやめるんだろうな」と「教えても自分の好きな様に投げるんだろうな」と思ってたんだけど、実際は違って「これは根性座ってるな」と思いましたよ(笑)。
ダーツに対してストイックな部分がありますね。
M 正直、去年一年は大変でした。フォームを変えて、ダーツを的に届けるのが精一杯というくらいグリップの感覚が変わったし、インパクトのタイミングも全然違うんです。まともに投げられない状態だったのに「今月はイベントが15本入ってます」という感じだったので、本当にしんどかったです。
私はカッコ悪い姿を周りに見せるのが嫌なので、下手な自分をみんなの前でさらさなければならないのがすごく恥ずかしかったです。わざわざお金払って来てくれている人達は、私のこんな姿を見たいわけじゃないですよね。
特に去年は、一昨年の最終戦で3位だったので、強い私を見たくて呼んでくれたお店もあったと思うんです。フォームを変えたのが3位になった直後からだったので、そこから突然崩れ出したんですよ。
でもフォームを変えるなんてこっちの都合なわけで、お店からしたら全然関係ないわけですよね。
言い訳もしたくなかったし「ちょっと上手く投げられなくてすみません」と、申し訳ない気持ちで投げていました。本当に辛かったですけど「これは泥水をすするということだ」と思いながら頑張りました。
K 僕からするとあれは「試し」だったんですよ。周りの講師達からは「ちょっと可哀想なんじゃないか」「今の百花に勝てるフォームを教えることはないんじゃないか」「イベントもたくさん入ってるし、今のままの百花でいいんじゃないか」という意見がありました。
でもこれは僕の「出題」に対して百花がどこまで応えるかということだったので、もし本気で勝ちたいと思っていないなら、そこで僕の態度も変えようという気持ちで続けたんです。
今の百花のフォームについてはいろんな人が「すごく良くなった」と言ってますよ。
M 今でも忘れないんですけど、ディーピットで「こんなフォームじゃ投げられない」と半分かんしゃく起こしながら投げてた時に「これでロートン出したらチョコレートあげるから」って言われながら真夜中に練習したんですよね(笑)。
そういう恥ずかしい思いとかしんどいことがあると、頭の片隅では「しめしめ」と思っちゃうことがあるんです。
「今メチャメチャ恥かいてるし超しんどいけど、これでダーツ上手くなって結果出せたりしたらめっちゃカッコいいじゃん」みたいな(笑)。「そっちの方が感動するじゃん」と思ってる自分もいて、だから耐えられたのかもしれないですね(笑)。
K いろんなブランドからオファーが来たと思うけど、どうして『ハイパーエレクトラ』を選んだのですか?もともとバレルメーカーに対してはあまり興味を示さなかったみたいだけど。
M 私は道具にこだわりが全く無かったので、バレルメーカーを付けるという発想がなかったんですよね。スポンサーを付けるということ自体あまり考えてなかったです。
K でもいくつか付いてましたよね。
M スポンサーというのがどういうものかよく分かってなかったんです。お世話になってるお店などは「何か役に立てるかもしれない」と思って付けてただけなので、自分のためにスポンサーを付けたいという考えはなかったです。
『ハイパーエレクトラ』に誘われた時も、最初はあまりピンときてなくて「何するんだろう?」「何が変わるんだろう?」と思ってました。入った理由としては「新しかったから」というのが大きいかもしれないですね(笑)。
声優の事務所を受ける時に教わったんですけど、すごい大手のめちゃめちゃ人数を抱えてる事務所で一番になるよりも、仕事の量は少なくても小さな事務所でナンバー1に立てた方が、それから開花したり有名になれる可能性があると。そういう気持ちもあったからだと思います。
素晴らしい大人達に囲まれて影響を受けている
いつかはそれを逆にしたいですね。今与えてもらっているものを人に与えられるようになりたいし、「この人の影響を受けたいな」と思われる人間になりたいです。
K よく言うことですよね。
M 私は「面白そう」というのが無いと嫌なんです。アイドルユニットに入ったのもバンドを始めたのも「面白そう」と思ったからなんです。『ハイパーエレクトラ』に関しては、とにかくいろんなことが「これからなんです」という感じだったのが、聞けば聞くほど「面白そう」で、だから入ったんだと思います。
でも初めて自分のフォームを監督してもらって、自分の手に合うバレルを作ってもらってそれで投げた時には「バレルってすごい!」って感動しました。
K 今2年経ってみてどうですか?
M 今めっちゃ楽しいですよ。2年経って改めて絆のようなものができてきて、すごく居心地が良いですし、心から良いメーカーに入ったなと思ってます。先輩たちが本気で支えてくれるし、私も先輩たちを支えたいと思ってますから。
こういうふうに思えるのは、克己さんや岡本さんなど決定的に安心感のある大人達が側にいてくれるからだと思います。
K 岡本社長はチャ借りしているけど、僕はどうかと思いますけどね(笑)。
M でも、「面白いだけ」なんてすごいと思いませんか。例えばどんな会社でもなんでも、絶対に不安というのは付きまとうと思うんですよ。それが手放しで「面白い」とだけ思っ
ていられるなんて、私にとってはすごいことなんです。
K 僕が言うことは特殊ですからね。「ユニフォーム姿は絶対撮るな」とか「笑うな」とかね。写真撮る時に「笑うな」というのは、百花が今までやってきたジャンルではあり得ないことでしょう。それについてはどう思いますか?
M だからいいんじゃないですか。それがファンの人からしたら新鮮じゃないでしょうか。人間はいろんな面を見せないと飽きがくるじゃないですか。だから『ハイパーエレクトラ』にいる時は『ハイパーエレクトラの牧野百花』でいいんだと思います。
K どちらかと言うと試合では緊張してる方ですよね。
M 超緊張してます。
K そんなに緊張することをわざわざやるなんて嫌じゃない?それなのにどうして試合に出るのでしょうか?
M 私はドMなので、嫌なことに耐えれば耐えるほど達成感があるんです。負荷が大きい中で結果を残すというのが、私にとっては大事なことなんです。
優勢過ぎる試合で勝つより、緊張して手が震えたけど最後の一本が決まって勝った試合の方が嬉しいじゃないですか。その緊張感が大事なんです。
私はライブでもすごく緊張するんですよ。緊張し過ぎてライブ前に吐いちゃうこともあったり、ステージでもマイクを持つ手が震えてるんですけど、どこかでそれを楽しんでるんですよね。
様々な状況といろんなコンディションが重なった瞬間にその緊張感が生まれるわけで、それって結構面白いなと思うんです。
K それが求心力になってるのかな。その緊張の中で結果を出して、その成果を知ってしまったというか。
M そうですね。そういう試合もいっぱいありましたからね。
あとはここ数年で気付いたことなんですけど、私は緊張感がないとゾーンに入らないんですよ。だから私にとって緊張感はすごく大事なんです。
練習する時もPERFECTの試合を思い出しながらするようにしていますが、そうすると集中できますね。
K 素晴らしいと思いますよ。
M いっぱい褒められるな、今日は(笑)。
K 昔、佐藤哲行という、天才と呼ばれた超有名なダーツプレイヤーがいたんですけど、家で練習する時でも常に試合をイメージしていたそうです。
トーナメント表を書いて架空の相手を想定して「この人はこのくらい打つだろう」と考えながら投げていたと。そうでなければ練習にならないという考えだったんですね。
M 結局のところ、あのスローラインが一番の大舞台なので、私はあそこで一番良いパフォーマンスを見せなければならないんです。あのスローラインで一番上手に打ちたい、私にとっては武道館みたいなものなんです。
K いろいろ聞いてきましたが、百花にとっての将来の夢みたいなものはありますか?
M 具体的には何にも考えてないです。
K なんとなくでいいですよ。
M 抽象的になってしまうんですけど、今私はいろいろな素晴らしい大人達に囲まれて影響を受けて、それが体の中で共鳴してアウトプットしている状態です。
いつかはそれを逆にしたいですね。今与えてもらっているものをいつか人に与えられるようになりたいし「この人の影響を受けたいな」と思われる人間になりたいです。
「イケメンな生き方」をしたいです。カリスマになりたいとは思わなくて、私はイケメンになりたいんです(笑)。カッコ良くなりたいです。