Mitsumasa Hoshino-Vol.44.2010.7-Top

Vol.44 星野 光正
ホンマに壊れるまでやってみようかな

2010年7月

星野選手とも長いお付き合いになってきましたね。大会などで活躍するようになってから5年くらいになると思うのですが、当時を振り返ってみて改めてどう思いますか?
5年前というとちょうどDMCのダブルスで勝って、ちょっと名前を知られたかなという感じでしたが、その時はまだ今後自分がダーツを続けていくのかどうか目標などもなかったですね。当時はただダーツが楽しかったのと、自分が結果を残すと周りが喜んでくれるのが嬉しくて、それに応えたいという一心で頑張っていました。そのうち選手としてスカウトされてダーツ関係の会社に入り、トーナメントを回り少しずつ結果を残すようになったんです。

その後プロ試験に合格されて、やはり環境は変わりましたか?
5年前からはフェニックストーナメントのシリーズを回るようになったのですが、その頃から自分がどうこう思うよりも、周囲からトッププレイヤーだという目で見られるようになったと思います。それまでは地元でしか応援してくれなかったのが、遠征先で「応援してます」と言われるようになってきたんです。

その頃にはだいぶ名前も知られてきて、ファンの方も増えてきてましたね。
パーフェクトでプロができてから約1年過ぎた頃は、応援されることがどれだけ大事かということに気付いて、「自分がダーツをやるのは応援してくれる人のため」という意識で、とにかくそれに応えなければならないと強く思うようになりました。プロのトーナメントになって賞金が懸かってくるようになったことで、そんな自分のダーツのスタイルが変わってしまうんじゃないかと思ったこともありましたが、そうではなかった。それが分かってまた思い切りダーツにのめり込めるよ
うになったんですよね。

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どんな状況でもファンに支えられたとお話しされていましたね。
今に至るまでは故障やスランプやいろいろあって成績が落ちた時でも、ありがたいことに応援してくれる人たちはまだ付いてきてくれました。それによって「オレはまだ続けられる」と励みにもなったし、「ホンマに壊れるまでやってみようかな」という強い意志も持てたんです。特に大きな目標もなかった自分がここまでダーツを続けて来られたのは、こういう周囲の支えによるものが大きいと思います。
現在は選手という立場の中で、何かしら日本のダーツシーンを変えていくことができる部分があるかと、今も悩みながら少しずつ進んでいるという状態ですね。

いろいろな活動がある中でやはり大事なのはトーナメントだと思うのですが、トーナメントへの取り組みを教えてください。
やはりパーフェクトは主戦場にしています。ダーツを投げて賞金を得て、それを生活に当ててそしてまたダーツに向く。このスタイルは僕が一番望んでいた世界ですからね。それを実現させるためにもパーフェクトに重きを置いてるのは確かです。

DMC大会では昨年優勝されましたね。
DMCは地元大阪の大会というのもあり、特別な思い入れがありました。DMCは僕が最初に出場したビッグトーナメントなんですが、ダーツを始めてホントに一ヶ月もたたないくらいに出た大会なんです。僕を選手に向かせてくれた大会であり、一年ごとに自分の力を試す大会でもありました。去年やっと勝てたんですが、もうやっぱり泣きましたね。

もう亡くなってしまったんですが、僕がダーツを始めるきっかけになった人と毎年楽しみにしていた大会で、その人にダブルスで優勝するのは見てもらったんだけど、シングルスで優勝するのを見てもらえなかった。それだけが本当に心残りで、やっと勝てた時は墓前に報告に行きましたよ。それくらい嬉しかったです。地元の仲間が応援してくれてるのに獲れなかった大会だし、しかもプロ団体的な意味で今年はもう出られないんで、去年が最後の挑戦になったわけです。なんとか獲ってやろうと、そこに向けてひたすら練習してましたからね。

burn.はいかがですか?
burn.は僕の中ではお祭り的な部分があるんです。僕がダーツを始めた時にDVDで見た舞台なので、これは出るだけで心が躍りますよね。そういう位置付けにあるから、これを獲って自分の何かが変わるというのではなくて、逆に自分が変わらないために出る大会という感じです。始めた頃にDVDで見た憧れの舞台に立つことによって、その時の気持ちを毎回思い返させてくれる、自分が変わらないための大会ですね。
今のところ僕の場合はなんとかベスト8に残ってシード権を得ているけど、周りを見てると年々大変そうですよね。知り合いもたくさん出ている中で予選を勝ち抜いてくるわけですが、強いプレイヤーがどんどん出てきてますからね。そういう人たちには申し訳ないかもしれないけど、僕にとってはお祭りなんです。

PDJ東日本大会では見事予選通過されましたが、スティールに対してはどのように考えていますか?
まずはやっぱり夢がありますよね。ハードだからソフトだからという考えもそんなになかったし、その中でも自分はソフトで生きているという意識があったので、正直な話ハードに対してそんなに入れ込むことはなかったんです。でも世界というものに挑戦しようと思ったら、ハードは必ず通らないといけない道ですよね。それを見据えるようになってハードの大会に去年出たんですが、いかに自分がハードに弱いかというのを知って、それがとても情けなかった。それまでは「入ったらいいんでしょ」と考えていたものが、もっと奥が深いということを思い知らされたんです。ソフトは入ればいい、入れば勝つというのがあるけど、ハードはいろいろな戦い方があって、それが相手の心にじわじわきたり、本当に奥が深いということを気づかされましたね。

PDCはやはり意識しますか?
もちろんPDCの舞台に立ってみたいですよ。あれこそ頂点の舞台でしょう。まだ可能性は1%かも知れないけど、あの喧騒の中でダーツを打ってプレイヤーとして評価されるのは世界のダーツプレイヤーの夢ですよね。もしあの舞台に立ったら僕なんか終始笑っちゃうんじゃないでしょうかね。「もっと野次飛ばせ」くらい思うかもしれませんね。

パーフェクトでは初年度・2年目とランキングが1位でしたが、最近今ひとつ成績が伸びていないように感じます。やはり故障などが大きく影響しているのでしょうか?
故障したことが原因で、ガラッと変わりましたね。靭帯を切ってしまったのがフリーに転向しようと思った時だったので、すごい恐怖感が残っているんですよ。これでだめになったら大変だと思いますね。だからこそ定期的に医者にも通って毎回レントゲンも取ってるんです。故障してからは無意識に肘を庇ってたり、他の箇所にも影響が出てることもあるようで、やはり体の動きがすごく変わったと思います。残念ながらそういうことが結果に現れているのかもしれません。

その怪我というのはどのくらい深刻なんですか?
これは今の病院に通うようになって分かったことなんですが、肘を酷使しすぎた結果筋肉が骨を引っ張って、ちょっと剥がれちゃったんですよ。それはもうどうにもできないということで、治療法としては周りの筋肉を緩めていって、腕の振りの動きの衝撃に耐えられる筋肉を技能訓練で養っていくという方法を取っています。
肘を無意識に庇っているのと、見られる仕事でもあるので、毎回ストレスがたまるみたいなんです。だから肩が収縮して腕自体を引っ張る影響で、可動域が悪くなってきたようです。それも今治療している最中です。

本誌での連載コラムでも試合のことには触れていましたが、星野選手はいつも前向きで、そんなコンディションの悪さを感じさせないのはさすがですね。
そうですね、気持ちでは全然負けてないですから。来た人間は全員倒すっていつも思っていますから。まぁ運が悪い時もあるしね、なんといっても勝負ごとやから。

現在の練習時間や方法は?
投げる時は5~6時間投げますが、平均は集中しきった状態で3時間くらいでしょうか。
方法は、距離感を養うためにとりあえずはブルを打ちますね。それから特に今重視しているのは矢の飛びです。矢が整ってたら「投げてる」という感触がすごく出てくるし、無駄な力が抜けているというのもわかるので、飛びに関しては重点的に練習してます。腕に負担をかけないようにということを、無意識のうちに考えているのかもしれないですね。部分的なことでいえばトリプルを1から20まで回ることもします。

練習でもできれば長い時間投げ続けたいかと思うのですが、それができないことへのジレンマなどはありますか?
自分ひとりで練習するのであれば、集中力が続く限り長い方がいいとは思うんです。もっと長く練習時間を取れればいいなとは確かに思います。でも僕の今の立場は大会だけが生きる術ではなくて、いろいろな場所へ行ってお客さんやダーツプレイヤーを盛り上げたりという仕事もやっているので、実際はなかなか練習時間を取れないこともありますよね。そういうことが続くと練習できていないことが不安で、心から練習したいと思った時期もありました。でも今は事務所がよく理解してくれているのでそういう不安もなくなり、ある程度は投げれていると思います。だから年々上がっているレベルにも対応できているんじゃないかなと思うんです。

いかに効率よく練習するかということですね。
自分が故障して覚えたことは、ただ単に長く投げるのがいいということではないということですね。ダーツを始めたばかりの頃は、体を痛めるというのもある程度大事だと思うんです。こういう投げ方をするからここが痛めつけられるんだ、じゃあ痛めないためにはどうすればいいんだということを理解するために、長時間の練習も必要じゃないでしょうか。僕の場合は今はそういうことが全部分かっているので、あえて自分の体を痛めつけるようなことはしません。「これ以上投げたらまずい」というのが分かるのもキャリアで、練習の量も自分で判断できるようにならないとだめですよね。練習の時間をある程度抑えないと次の日にも残るし、下手したら次の大会にも残るというのが分かったから、より集中力の高まった状態で効率のよい練習を選択できるようになりました。

スランプについて教えてください。
一生懸命走っていてもちっとも前に進まないという夢を見たことないですか?経験ある人も多いと思うけど、夢の中で体を使うことをしても全然だめですよね。僕の場合はちょうどあんな感じでした。どれだけ投げても投げている感触がなくて、体勢は崩れるし、でも入る時もあれば全然入らない時もあって、一体それが何なのか全く分からなかったんです。
精神的にはずっと勝つ気持ちでいたんですが、体に対する不安と勝つ気持ちのせめぎあいの状態が、ちょうど2年前から去年にかけて続いたんです。本当に自分のダーツを見失いかけました。今思えばその時は確かに練習ができてなかったんですね。心には自信が持てたけど技術には自信が持てなかったので、どうやったら治るんだろうかと本当に悩みましたね。そのうち「なんでこんな苦しい思いしてダーツやるんだろう?」と、あの頃は精神的にも病んでいたかもしれないですね。

それはどうやって克服したのですか?
そんな状況を自分のブログで公開したんですが、一番気になったのは、自分が弱くなったことで自分から離れる人がいるんじゃないかということでした。僕は自分を応援してくれてる人を大事に思ってるので、そういう人たちが離れてしまうことが怖かった。何よりも周りの人たちに支えられて頑張ってる自分が分かってましたからね。でも実際はそうじゃなくて、「それも星野や」って言ってくれたのには助けられましたね。それで気持ち的に持ち直したんです。まだまだ自分には足らないところがあるのも思い知ったし、だんだん前向きに考えられるようになって、少しずつ快方に向かっていったんです。そのあたりからかな、崩さない練習を始めたのは……。ひとつのことに集中してそれが身につくように練習していくという方法に切り替えていきました。

星野選手というと多くのスポンサーがついていますが、スポンサーについての考え方を教えて下さい。
大変ありがたいと思っています。僕はダーツ選手のユニフォームというのは、F1のようにいろんなスポンサーさんがついて、自分が広告塔として活動するということを目指していたので、その考えに共感してくれた今のスポンサーさんたちにはすごく感謝しています。僕にしてみればどこもメインスポンサーですね。今はそれをいろんな選手もやってくれるようになったので、ひとつの方向性を示すことができたかなと思っています。

自分のことをどういうタイプのプレイヤーだと思いますか?
面倒くさいプレイヤーでしょうね(笑)。しつこい。どんな状況からでも逆転を狙ってるから、どんなに不利でも試合を捨てることなんて絶対ないので、向こうからすれば面倒くさい相手かなと思いますね。

性格的にはいかがですか?
最近はだいぶ冷静な部分も出てきたと思っているんですけど、やっぱり感情的な部分が多いというか、熱いんじゃないでしょうか。カッとなりやすいとかじゃなくて、結構すぐ熱く物を言ったりするので、ちょっと冷静さが足りなめの熱いプレイヤーってとこですかね。
プレイ中に抑えて、本当にいいゲームをして勝つことが出来た時には、自然とガッツポーズが出るプレイヤーになりました。

ずっとトップを維持されていますが、何か特別な秘訣があるのでしょうか?
特別なことなんか何もないですよ。これは自分だけに当てはまることかもしれないけど、ひとことで言ってしまえばモチベーションですね。「自分がどうしてダーツをするのか?」常に自分に問いかけています。自分の中で目標をどんどん作っていって新しい何かを見つけていく、それはダーツなしではありえないんだということを改めて認識して、そこに向かって進んでいく。こういう考え方が出来れば維持できるんじゃないでしょうか。ただ単に相手に勝つとか負ける、ということ
だけを考えてると難しいと思いますね。

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プロダーツプレイヤーとして、普段特に気をつけていることは何ですか?
ソフトダーツでは、技術的な部分で考えたら今の日本はかなり高い水準だと思うんです。当然プロフェッショナルなものが求められるので、自分自身の調整というのがすごく大事になってきますね。僕の場合は故障などには特に神経を使っているので、肘や肩のメンテナンスには重点を置いています。

今ダーツで一番大事にしているポイントは?
やっぱり精神ですね。精神が整ってるからこそ意義のある練習ができる。大会で結果が出る。気のないダーツを投げてても何にもならないですからね。自分が何に向かってるのか、そのためには何が必要なのかということをはっきり理解するためにも、常に気持ちが整ってることが重要だと思います。

全国から若いプレイヤーがぞくぞくと登場していますが、彼らに何かアドバイスはありますか?
アドバイスですか、いやぁ正直言って面倒くさいですよね、みんな上手くて(笑)。僕たちが今のダーツを打てるようになったのは本当にキャリアだと思うんです。僕の場合は6年かけてここまで来たわけですが、今のプレイヤーは吸収が早いじゃないですか。理由はいろいろあるでしょうが、情報や教材が揃っているというのもあると思うんです。ハウツー本やDVDなど、僕たちの頃は何もなかったような物が、簡単に手に入るようになりましたよね。ちょうど今6年目くらいのプレイヤーが、自分たちで確立していったギリギリの世代かな。そのすぐ後くらいから雑誌やDVDがすごい出始めましたからね。

ダーツ教室というのもずいぶんできましたしね。
そうなんですよ。新しいプレイヤーというのは年の若さもあるし、それこそ始めて一年でもう一線で投げてる人もいるんですよね。変わったなぁと思いますよ。とにかく僕たち対戦する側からすると面倒くさいことで、正直しんどいなと思いますけどね(笑)。

いきなり知らないプレイヤーに負けたりしますからね。
ホンマですよ。参ります(笑)。でもそれだけレベルが上がってるということは、目指す人が多くなってきたということで、これはダーツ業界にとってはいいことだと思います。

星野選手にとってダーツの魅力とはなんですか?
やっぱり人と人との出会いじゃないでしょうか。ダーツというものを知らなければ、極端に知り合う人が少なかっただろうと思います。例えば普通に働いてれば、人付き合いも会社がメインになってきて、違う業種の人と知り合うチャンスは減るじゃないですか。でもダーツはそういう枠を取り払ってくれるんです。
今はプロスポーツというカテゴリーになっているけど、それ以前にエンドユーザーからすれば、いろんな人と出会え、とんでもなく自分の世界を広げられる面白いものだと思うんです。僕はそれで救われたから、そこが最大の魅力ですね。それこそが自分がダーツを愛した理由です。

星野選手にとって、本当に素晴らしい出会いがたくさんあったのだろうということを感じますね。
なんで世界に挑戦したいのかというと、僕は今まで出会った人たちに、その姿を見てもらいたいからなんです。「これだけ打てるようになったんだ」と、辛い時に支えてくれた人達にも見てもらいたいですね。そして例えば職種が違う友人にとっても、「あいつがあれだけ頑張ってるんだからオレもこの世界で頑張っていこう」という、希望になれたら嬉しいですね。

今後の夢や目標は?
最初の頃は応援してくれる人のためだけに頑張ってました。それは今も変わらないけど、その気持ちを保ちつつ、もっと大きなものを目指したいですね。まずはダーツを日本の中でメジャースポーツにしたいです。本当のスポーツだと認めてもらえるように、選手としての生き方も、これがプロダーツプレイヤーなんだと思ってもらえるよう努力していきたいです。
選手としてはやはり世界というものを見たいです。最初は日本一になりたいと思ってましたが、何人かは日本一と言ってくれる人もいたので、じゃあこんどは世界一を目指そうという考えに変わってきました。選手である限りはそこを目標にしていきたいです。より大きい舞台で活躍したいと、ダーツに対してより貪欲になってきたように思いますね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。
昔から応援してくれている人も、最近応援し始めてくれた人も、これからも宜しくお願いします。自分は絶対裏切らないことを約束します。「星野はこういう人間なんだ」と、人間星野というものも見てもらいたいです。日本の中でのダーツを変えつつ、世界にも挑戦していきたいと思っているので、これからも末永く宜しくお願いいたします。

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【ダーツ テクニック】

GRIP
グリップの強さは振りに負けない程度
グリップは親指と人差し指がベースになってますね。僕は基本的に3フィンガーでグリップするのですが、セットアップの時は4フィンガーに見えるようです。それは、矢を支えるために指を添えているからなんです。でも、あくまで僕のグリップは親指と人差し指をベースにして、中指を添えているというのが基本なんです。持ち方は、握るというより挟む感覚ですね。挟んで、上側に隙間が出来るように持ちます。これは、抜けたりミスショットしたときでも縦にぶれるようにする為です。横に引っ掛けないようにしようというイメージを持っているので、こういうグリップになったんだと思います。
今のグリップは、ダーツを始めた頃とかたちは変わってきましたが、基本の概念は同じです。僕が初めてグリップについて考え始めたのは、5年くらい前ですかね。僕のキャリアを6年と考えると、5年前からはグリップの基本は変わっていません。ただ、過去の映像などを見てもらえばわかるように、フォーム自体は変わってきているので、そういう意味では、ダーツを持つ位置と言うのは変わっているかもしれません。例えば、バレルの持つ位置が真ん中だったのが、少し後ろに下がったとかいうのはあるし、グリップのかたちは変化したように見えるかもしれませんが、考え方そのものは昔と同じですね。
グリップの強さは、振りに負けない程度という感じです。軽めに持つということでしょうか。指先に力が入れば全体にも力が入って、ダーツを離す反応が遅れたりもしますので、そこには気をつけています。振りにさえ負けなければしっかり投げられるので、その程度の強さで持つように心がけています。

TAKEBACK & FOLLOW THROUGH
同じ動作を繰り返せるかという問題
テイクバックは目のラインに沿って、目に近づけていくように引きます。ダーツが飛んでいくのに、目で見た位置から出るのが一番わかりやすいと思うんです。ダーツは同じ動作を繰り返すものなので、この単純な考え方が一番良いようです。僕の場合、利き目が右なので、右目の中心線をダーツが通るように引きます。昔は腕そのものを目線の先に延ばすことを考えていたんですが、今は腕ではなく、ダーツをこのラインで出していくように、自分の目線に合うように心がけています。このラインは目とターゲットをつなぐ、自分が理想とするラインなので、これにダーツが乗ってさえいれば多少肘とかが曲がっていても、大きな問題ではないと思います。あくまでもダーツを主体として、手を離すまではこのラインの上を通るということを考えるんです。
フォロースルーは、ダーツが飛んでいくであろうポイントで離さなくてはいけないので、そこに向かってダーツを持っていく感じです。こうでなければいけないという考え方はしないで、ダーツを持っていって、自然と手を伸ばせばそれでいいと思います。後は精神面とか、同じ動作を繰り返せるかという問題になりますね。

SET UP
投げる前の準備
セットアップとは投げる前の準備ということですよね。それは、毎回同じに投げるためには、同じ形で入るべきだということだと思います。僕は腕も目も右利きなので、それらをターゲットに向けて自分の最短距離に合わせていくというのがあります。スローラインの真ん中に点が打ってあることがよくありますが、それが常にブルへの真正面ではないので、自分の目や腕の感覚にしたがって、自分の右足・腕・目からの最短距離をあわせるようにしています。構え方としては、ターゲット、矢、目をあわせて、そこからスタートするんです。

SHOULDER
ターゲット、グリップ、目と一直線
ターゲット、グリップ、目と一直線にあわせるので、肩もその線上にあるように持っていきます。つまり、目の位置が肩の位置になるわけです。

RHYTHM
体内時計
リズムは本当に難しいですよね。自分の中でも、毎日投げる中で知らないうちにマイナーチェンジしていっていると思います。本当に無意識の内に変わっているんですよ。それって体内時計ってことなんじゃないでしょうか。このリズムは毎日変わるものなんですよね。だから、自分の調子がいい時のタイミングを覚えておかないと、同じようには投げられないんです。タイミングがズレると結果は違ってきますからね。僕は数を数えたり、色々考えたりして、良いリズムを作れる目安を探せたらと思っています。
僕はイップスになったことでユーミングするようになったんですが、これが幸いして今ではこのユーミングで自分のタイミングを取るようになりました。一回腕を振った状態が自分のリズムの取りかたになってきています。これは全員に当てはまることではありません。僕のユーミングのように自分の中で何かそういうものを見つけるといいと思います。リズムが狂うと全ての動作に影響して、ほんとうに入りませんから、そこを皆見直して見るといいかも知れません。

DARTS
最高到達点でダーツが刺さる
僕も飛びにはこだわっています。発射角度からまるで静止画を見ているような飛び、というダーツを投げたいですね。その為には、ダーツのティップをターゲットに向け続けるというのが大事ですね。僕の場合ダーツは目の下からリリースされるので、一番高い位置でターゲットに当たるように考えています。つまり、軽い放物線を描き、最高到達点でダーツが刺さるというのが理想です。

SPIRIT
勝つのは俺や!
ダーツは何だかんだ言っても、入らないと負けですよね。僕は今まで練習してきたことや、やってきたことは間違ってないという自信の元にプレイしているので、当然入るはずだという気持ちで毎回ダーツを投げます。アレ?って思うときもたまにはありますけどね。でも、そういう気持ちが無ければ身体を上手く扱えないし、ダーツは入らないと思います。
大きい大会などでも、「勝つのは俺や!」と信じて向かいます。その根拠となるのが、「これだけやってきたじゃないか」という気持ちですね。その根拠があれば身体も動くし、ダーツも入るんです。自分が勝つことを疑った時点で絶対負けですよ。