2014年3月
日本のダーツプレイヤーと言うと、真っ先にその顔が浮かぶジョニー。
その存在感は、本誌が11年前にNDLをスタートした時から変わらない。
表紙にご登場いただいたのも、これで4回目となる。
世界のトップを走り続けるのがフィル・テイラーだとしたら、日本のトップを走り続けるのがジョニーなのだ。
昨年発表したバレルも大人気を博し、今も変わらずみんなの注目のど真ん中に存在し続けるジョニーの魅力を再確認したインタビューとなった。この人って、本当にすごい!
共に歩んで来た11年
弊紙も今号で11年目を迎えますが、ジョニーにはいろいろな記事で何度も協力していただいて一緒に歩んできました。これまでも数々のタイトルを獲られましたが、今年のジャパンでも2位という素晴らしい成績ですね。これはぜひ聞いてほしいとみんなから言われているのですが、どうしたらそんなに長くトップを保ち続けられるのでしょうか?
僕もよく聞かれるんですけど、まず『ダーツを投げていればいい』という環境が長く続いていることは大きいと思います。これが例えばお店をやりながらだったり、他の仕事をしながらだったり、ダーツ以外のことで頭を使わなければならないとすると、メンタル面でもいろいろあるかなと思うんですけど、僕はそういうことが意外に少なかったんです。
もちろん多少はありましたが、元々ちゃらんぽらんというか、お気楽な性格なので、3日もすれば忘れてしまうというのが良かったのかもしれないですね。とにかくダーツが嫌にならなかったし、今でも楽しいというのが続いているんです。海外の試合に出場するにしても、スポンサーが支え続けてくれていますし、こういった環境を変えてないということも要因の一つだと思います。
もう一つは、自分のダーツの理論というのがスランプに陥りにくい理論なんだと思います。上手く入れるというよりは崩さないという理論なので、すごく不調になってしまうということが無いのも大きいです。
今までダーツに飽きたことはないですか?
趣味のダーツから仕事に変わった時は違和感がありましたね。『投げなくてはいけない』という考え方に変わったので、投げてる最中でも正直溜息つく日もありました。でもよく考えてみたら「好きなことを仕事にできるというのは幸せだよね」ということがやっと理解できるようになったんです。そう考えるようになってからは飽きるということはないです。今でも投げるのが楽しいですよ。長くやってればもちろん良いことも悪いこともありますけど、さっきもお話したとおり3日もすれば忘れちゃうので(笑)…。
家庭を築かれましたが、それによって変化はありましたか?
結婚して子供ができたから仕事を頑張るというのは当たり前のことだと思うんです。これはどんな仕事でも同じで、子供は養っていかなくてはならないものだから、それによってダーツが変わったということはないと思います。
最初の頃は、夜になるといないとか土日になるとどっか行っちゃうということが嫁さんにはなかなか理解できなかたようですが、最近はもう理解してくれてます。そういうズレが無くなってきたので、今はすごくいい感じで投げてますね。
アメリカダーツ留学
今から10年くらい前にいきなりアメリカにダーツ修行に行かれましたが、アメリカの最初の印象はいかがでしたか?
あの頃の僕はイギリス人がハードを投げる映像ばかり見ていたので、自分の中で『白人=ダーツが上手い』という図式が出来上がってたんです。だからアメリカのダーツバーなんかで投げてる人はみんな上手いんだろうというイメージを持って行ったんです。英語が話せないというハンデもあるし、すごい強敵の中に乗り込んでいくんだという気負いもあって、とにかく最初はガチガチでしたね。今考えるとよく行ったなと思いますね。
場所と期間はどのくらいですか?
シアトル近郊のタコマというところに半年間行きました。ちょうどリーグのワンシーズン参加した感じですね。途中何回か帰ってきましたけど。
どのような生活をされてたんですか?
メダリストの仕事のお手伝いをしながらリーグに参加していました。日本に帰ってからディーラーをやることもあるかと思って、ディーラーの仕事というのはどんなものかというのを勉強していましたね。
当時のアメリカの事情はどうでしたか?
僕が参加したリーグはハンデ戦なんですけど、リーグのスタッツを基にトーナメントのハンデを決めるんで、みんなリーグはハンデをもらおうと思って適当に投げてるんですよね。いまいち真剣味に欠ける感じがしました。
それが、最後のファイナルだけチームで勝つと賞金が出るんですけど、その時だけはみんな真面目に投げるんですよ。それまでは、ちゃらんぽらんに投げてた人たちが、その時だけめちゃくちゃ上手いんです。その変わりようには驚きましたね。
今までアメリカの大会にもたくさん出場されてますが、それらの大会についてはいかがですか?
ブルシューターのシカゴの大会は、ポール・リムからも「あの大会はノーハンデですごいぞ」と聞いていたので、行ってみたいと思ってたんです。それが行けるようになって初めて行った時は衝撃的でした。上手いプレイヤーがいっぱいいて、いつかこの人達に勝てるようになるのかな、というくらいレベルの差を感じました。スコットとかレイ・カーヴァーとかダリン・ヤングとか、すごい選手たちがいましたからね。
今では日本もアメリカといい勝負ですよね。それだけ日本人のレベルが上がったということですね。
そう思います。あの頃見てたダーツを、今はジャパンでやるプレイヤーがいっぱいいますからね。アメリカのレベルが下がったということではなくて、日本のレベルが上がって追いついたんだと思います。
ジョニーだから言える
この業界に長く携わってこられて、最初の頃と今とではだいぶ違いを感じられていますか?
ダーツを始めた頃に知り合った人たちは「ダーツを広めるぞ!」という勢いがすごくありましたね。ダーツ自体が流行ってたので金銭的にも余裕があったし、とても楽しい日々を過ごしていたと思います。でも最近はそういう人たちと一緒にいる場も少なくなってしまって、ちょっと寂しく感じますね。
最近は状況もだいぶ変わりました。僕は今年41歳なんですけど、新しいダーツメーカーの社長さんなんかは僕より年下の人が多いですからね。年上の僕にはなかなか絡みずらいのか、あまり声もかからなくて…(笑)。昔は遠征とかに行くと前日も当日も翌日もみんなでわいわいやって楽しんでたんですが、最近はそういうことは若い人たちに任せて、すっかりおとなしいものです。ちょっと寂しい気はするんですけどね。
ジョニーの試合を見てきた中で印象に残っている試合のひとつが以前開催された対抗戦なんですが、対抗戦はやはり他の大会とは違いましたか?
やっぱり気合いが入りましたね。他団体のプレイヤーが集まって試合をするというのは、ダーツファンにとっては一番見たいカードだろうし、両団体のプロにとっても特別なものはあると思います。ダーツ界を盛り上げるためにもぜひこれからも続けてほしいと思います。無くなっちゃったらもったいないです。
今ではあたりまえになったプロツアーですが、パーフェクトが立ち上がった時はどう思われましたか?
出たいと思わなかったと言ったら嘘になります。なぜかというと、優勝したときの賞金がその頃僕たちが出てた大会とは桁が違いましたからね。ただ魅力は感じてましたが、すぐに出ようとは思わなかったです。参加してほしいと誘われたこともあったんですけど、お世話になってるメーカーが違ったし、その時はプロという部分にも疑問があったんです。
それで、何年後かにまだパーフェクトがあってその時出たいと思ったら自分から、プロ試験を受けるのでそれまで頑張って下さい、という話をしました。上から目線というのではなくて、その時は出ることはできなかったけど、条件がそろえばいつかは出たいなと思ってました。
世界への挑戦
5周年記念のときにイギリスにご一緒してプレミアリーグを観戦しました。今改めてプレミアリーグについてどう思われますか?
プレミアリーグの舞台に立つというのはものすごく大変なことだと思うんですけど、イギリスのハードというのは魅力もいっぱいあるし、いつかは出たいという気持ちはありますね。ハードを投げてても投げてなくても、ダーツプレイヤーなら誰でもあの舞台で一度は投げてみたいと思うんじゃないでしょうか。
イギリスではフィル・テイラーにも会って一緒にインタビューしました。彼は今年ターゲット社に移ったことで大きな話題になっていますが、彼も同じようにずっとトップを走り続けています。フィル・テイラーについてはどのように思われますか?
メーカーを移ったと聞いたときにはびっくりしました。移ったということはまだやる気があるということですからね。もうやめてしまうというのもひとつの選択だと思うので、まだまだやる気があるということですから、凄いですね。
移ったことによって調子が悪くなるんじゃないかとか、そういう噂が絶対耳に入ってくると思うんですよ。そうすると彼の場合、それに反発するためにもっと強くなるんじゃないでしょうか。今よりもっと強いフィル・テイラーが見られるのかもしれないと思うとワクワクしますね。なんといっても底力があるので、またいつ爆発するのか楽しみです。
今までソフトでもハードでも日本代表に選ばれて、ワールドカップやマスターズなどいろいろな世界大会に出場されていますが、印象に残った試合はありますか?
ハードではアジアパシフィックのシングルスで優勝できたのは嬉しかったですね。これはアジア圏の国が出場する大会なんですけど、良い選手も数多く出場しているんです。これをバネにイギリスでも活躍できる選手になりたいと思ったくらい、テンションが高くなった思い出のある大会ですね。
あとはやっぱりイギリスの大会は印象に残りますね。何回か出場しましたが、さすがにダーツの中心だけあって上手い人が多いです。僕も一回も勝てなかったわけではないので、勝てる相手もいるんですけど、ちょっと上にいくといきなり凄い選手が出てくるんですよね。イギリスは甘くないなと改めて思いました。
去年もマスターズに行かれてバンティング選手の決勝を観戦されたそうですが、どのような試合でしたか?
信じられないような試合でした。対戦相手も準決勝から見たんですが、かなり上手い選手だったんです。それがバンティングとの戦いではもうレベルが違うというか、圧倒的な力の差で勝利しました。負けた選手は急に60が入らなくなったんで、きっと硬くなってしまったんでしょうね。バンティングは飛びもさほどきれいなわけじゃないんですけど、グルーピングの半端じゃなさとか、とにかく凄かったですよ。
今年PDCに移ってすでに一勝してますよ。
えっ、もうPDCに行ってるんですか?僕もあの試合を見て、もうあんまり長くここにはいないだろうと思ってたんです。PDCに行ったほうが今とは桁違いに稼げるだろうと思いましたからね。
世界に挑戦するというのはどういう気持ちからなのでしょうか?
日本で一生懸命ダーツの仕事をしてるので、僕にとってのハードは趣味なようなものなんです。趣味くらいは好きなことをさせてもらいたいな、と思って出てます。でも何度か出場して経験を重ねれば、メンタル部分でも強くなって、いつかはあの人たちと同等に戦える日が来るんじゃないかという思いもあるんです。
やっぱり何よりも経験が一番だと思うんです。僕は今までに180を出したことがありますし、9ダーツはないけど10ダーツは出したことがあるんです。もし毎回10ダーツを出せれば優勝できるわけで(笑)、可能性的には0じゃないと思ってます。
とにかく挑戦ですね。ソフトと違った難しさもあって、その難しいものにチャレンジしてるということで、ソフトの試合でもモチベーションを保ってるというのもあるんです。海外の試合に出場することは、僕には必要不可欠なことだと思います。
海外の試合は楽しいですか?
楽しいですね。いろんな投げ方をする人がいますからね。投げ方は十人十色で、何がダメで何が正しいというのはないと思うんです。これだけは守れ、というのはあってもどんな投げ方をしてもいいわけですよね。世界には本当にいろんな人がいて、しかもちゃんと入れてくるというのはすごく勉強になります。
日本人って「おまえ上手いじゃないか」みたいに素直に褒められるとやっぱり嬉しいじゃないですか。僕は40にもなって褒められるともう嬉しくて……なんて、子供みたいなこと言ってますけど(笑)。そうやって認めてもらったりすると「またここに来よう」なんて単純に思ったりするんですよ。ダーツを好きでいるために海外の試合に出るというのもあるかもしれないですね。
プロツアーについて
プロツアー参戦でジャパンを選んだ理由は何ですか?
僕は5戦目からの参戦で途中からだったんですけど、正直な話をするとスポンサーの考えに沿ったという形です。もともといた団体をやめます、どっちか行きます、どっちに行ったらいいですか?という問いに対して「どちらでもいいですよ」というスポンサーの人もいましたけど、「こっちに行ってくれ」というスポンサーが多いほうへ、単純に多数決のような形で決めました。
初年度はいかがでしたか?
初年度は13位でしたが、初めてのシステムだったので、すごくやりづらかったというのが正直な感想です。でもそこでガタガタ言ってもルールを変えてくれるような雰囲気はなかったので、もう慣れるしかないと気合いを入れ直して戦いました。後半戦からはどういうふうに試合運びをするかなどをいろいろ考えて試してみた結果、自分の中で答えが見つかってなんとか投げられるようになりました。それが今年の結果に繫がったと思います。
今年は2位という結果でしたが、それについては満足されてますか?
もちろん1位より下というのには満足できないです。1位が最高なわけですから、そのひとつ下というのは悔しい思いはあります。でも1位をそんなに強く狙ってたわけではないんですよ。これがもし1位を狙ってたとしたら、たぶん去年と同じ10位くらいになってたんじゃないかな。僕は、上手く勝ち上がるための秘訣は、1位を狙わないというのもあると思うんです。ただやっぱりプロなので、稼がなければならないという部分では上位を目指していたことに間違いないです。
もうちょっとこうしておけば勝てたんじゃないかという試合はいくつかあったんです。来期ははそういうことがないように、3月の開幕戦からしっかりやっていきたいですね。そうすればもしかしたら1位を狙えるんじゃないかというのもあるんで、とにかく来期につながる2位だと思ってます。
ジャパンの楽しさなどを教えていただけますか?
16位に残ったらシードというシステムは、ある程度コツをつかんでしまえば、後は体力的にも楽なんじゃないかと思います。プロとしてちゃんと稼げて、遠征にも回れるようになると思うので、メンツが濃いとか言わずにぜひチャレンジしてもらいたいです。優勝・準優勝がスポットを浴びて3位以下は影みたいな勝負事が多い中で、16位以上に光が当たるというシステムは画期的ですよね。普通の大会で16位なんていったら「えー」みたいな感じでがっかりすることがあっても、ジャパンの場合は16位に入ればシード権を取ったということですから。若いプレイヤーなどは本当に生き生きしてます。
年齢層は若い子が多くて、30代前半の選手たちが頑張ってるんで、僕なんかホントおじさんなんですよね。今度は18歳なんて選手も入って来ますから、おじさんホントに負けられないんですけど(笑)。若い人もそうですが40歳過ぎても活躍できる場なので、40歳以上の人も試験受けて入ってきてくれたらいいなと思いますね。
PDJ
PDJについてですが、今年こそ今年こそと思いながら毎年惜しい結果に終わってしまうのですが、ジョニーに期待してる人も多いと思いますが。
期待してる人も多いよって言ってくれる人もいるんですけどね。
とにかくみんな上手いです。60のシュート率も日本の中で上がってますし、ソフトを投げてた人がちょっとハードに持ち替えただけで、当たり前のように60に入れて来ますからね。アレンジうんぬんよりもシュート力が上がって来てると思います。そんな中でアベレージも身に付けている人たちにはどうしても負けてしまいますね。もっと練習して、気持ち的なものも少し上げないとなかなか勝てないと思います。
僕の中で12月末にイギリスに行くという怖さが頭のどこかにあるんです。この大変なときにイギリスに行くのか、もし勝っちゃったらクリスマスに帰って来られないぞとか、子供たち大丈夫かとか……どうしても頭をよぎるんです。そんなことを理由にするなと怒られそうですが、もし勝っちゃったら正月も向こうだぞなんて(笑)。やっぱり日本人としては正月はおもち食べてのんびりしたいな、なんて……。もし日程をずらしてくれたら、もう少しやる気になるかもしれないですね(笑)。負け惜しみかな?
でもやっぱり一回は行ってみたいですけどね。行けるまでチャレンジすると思います。
人物像
それではジョニーの人物像に触れたいと思います。自分でどのようなタイプの選手だと思いますか?
勢いで行くタイプだと思います。調子のいい時に勢いに乗って勝つことが多いんです。調子が悪いんだけど、のらりくらりやってなんとなく勝ったという試合はあまりないです。頭でどうこう考えても絶対勝てないので、とにかく勢いで押していくタイプですね。
負けてしまったときの様子を見ていると、以前とはだいぶ変わって落ち着かれた印象なのですが、やはり年齢的なものでしょうか?
それもあると思います。若い頃は単純に負けて悔しいと思ってイラついたこともありましたが、僕が負けて怒る時というのは、対戦相手以外のことでなにかあった時に怒るんです。例えば舞台袖で何かがあったとか、試合中にこんなことがあってはならないということがあると、それによって気が散ってだめになってくるタイプなんです。それさえなければもっと集中していいダーツができたかもしれないと思うと怒りがこみ上げてくるんです。
でも何もなければ、対戦相手に対しては悔しい気持ちがあったとしても笑って終われますよ。この前の松本選手との試合もあまりにも相手がいい上がり方をしたんで、素直に「すげえなこいつ」と、楽しい試合だったなと笑いながら終わりました。だから昔から気持ちよく負けて、笑いながら終わった試合もずいぶんあるんですよ。
以前も試合の後でマシンを片付けてたり、携帯が鳴ってたりするとイライラしてる様子がありましたよね(笑)。
たぶん他のプレイヤーは、感じてたとしても顔や態度に出さないんでしょうね。僕は顔や態度や言葉に出しちゃうんで。良くないことだとは思ってるんですけどね。
正直でいいじゃないですか。
そう言ってくれる人もいるんですけど「いい年してまだそんなことやってんのか」と思う人もいるでしょうから(笑)。でも真剣勝負をしてますから、勝ち負けだけじゃなくプロとして稼がないといけない立場でもあるので、必死に頑張ってるんです。
プロダーツプレイヤー
改めてプロダーツプレイヤーというものについてはいかがですか?
今、開催されているソフトダーツのプロ大会は主催者側がたくさんの選手が参加出来るよう窓口を広げた形で試験を行っていると思います。要するになりたいなって思えば大抵の人はプロの試合には出られるんですよ。
でもプロの試合に出れば全ての選手が同じプロ、とはちょっと違うのかなって思います。僕の周りには年間全ての試合に出場して挑戦している選手が多くいるので、プロとはこうであるべきだと思ってしまいます。
地元開催のみ参加するプロの資格を持った選手もいるでしょうが、色々事情があると思うので否定はしませんが絶対に負けたくないと強く思います。年間全てを回るのは金銭的な負担だけじゃなく、時間も犠牲にしていますので…。
全戦勝ちにこだわり参加してくる選手達を戦友と思いますし、本当のプロダーツプレイヤーだと思います。プロ資格を持ってる選手とプロダーツプレイヤーは違うかなと思うのです。
僕もプロ、プロと言ってますけど、今の日本のプロ団体には疑問もあります。だからもう少し何か違った言い方があってもいいのかなと思いますね。ジャパンに関してはまだ始まったばかりなので、これからいろいろと変わってくるとは思っています。
運営側も、もちろん頑張ってるとは思いますけど、選手ももっと頑張っていかないとならないですよね。例えば選手会を作ったりとか、そういう動きもまだないですし、そんなところからスタートして、胸を張ってプロといえるような団体にしていかないとならないですね。
「じゃあおまえもしっかりしろよ」と言われそうですが(笑)。僕ももっとしっかりするのでみんなも頑張って、自分の地域だけではなくてなるべく数多く試合に出るようにして欲しいです。まぁ金銭的に難しいこともあると思うのですが、おこずかいや食べ物を減らしてもツアーに回ってる選手もいると思うんです。そうやっているうちに結果が出て来てスポンサーがつくこともあると思います。
もう少しハングリー精神をもったプレイヤーがたくさん出て来てくれるといいですよね。ほとんどの地域を夜行バスで回ってるプレイヤーもいますし、そういう話を聞くと凄いなと思いますよね。
前回のダーツエンジェルの田中美穂選手は大分から東京まで車で15時間かけて挑戦している、と言っていました。何人かで行くとずいぶん安くなるようですが、きついでしょうね。
そうしてまで頑張ろうという気持ちは凄いことですよね。もちろん1回2回しか出られないプロが適当かといえばそうばかりではないと思うんですけど、やっぱりプロというライセンスを取ったからには一試合でも多く参加して、団体を盛り上げる力になってもらいたいですね。
最後に
尊敬しているプレイヤーはいますか?
勿論います、年下がほとんどなんですけど(笑)。尊敬というより「やるな」みたいな感じでしょうか。やっぱり凄いなと思うのは、橋本選手ですね。彼は僕が前にやってた会社で唯一スポンサードした選手なんですけど、Dクラウンの頃からずっと強くて安定感もあったし、ハードでもいいダーツを打てるじゃないですか。彼は尊敬しますね。
ダーツの魅力は何ですか?
ダーツの魅力は横の繋がりだと思います。もちろん狙った場所に入ったときの爽快感とかもありますが、そういうのは他のスポーツでもあることですよね。
ダーツは横の繋がりや出会いというのが、他のスポーツに比べて多いというのが魅力です。……もう少し競技的なことを言ったほうがいいですか(笑)?
まだ先の話ですが、いずれ引退された時にはやっぱり何かしらの形でダーツの仕事を続けたいと思いますか?
そうですね。僕は解説とかレッスンとかが苦手なので、じゃあ何で食べていくんだということになるんですけど(笑)。希望は軽井沢あたりで喫茶店かペンションでもやりながら「おれ昔はすごかったんだぜ」と言いながら、お客さんと一緒に投げてるというくらいがいいかなと思ってます。
北は北海道から南は沖縄までダーツで知り合った人たちがいるので、そういう人たちがいつか遊びに来てくれるような店をやれたらいいですね。海外で知り合った人たちも遊びに来てくれるように、観光地でのんびりやりたいです。僕にはたぶん、大会の運営とかレッスンだとか解説はできないと思います。
フィル・テイラーが再出発したという話をしましたが、同じようにジョニーにも夢や目標はありますか?
フィル・テイラーは僕より年上なので、僕も彼の年くらいまでは、ああやって強いダーツが打てるように頑張っていきたいと思いますね。フィル・テイラーが引退する年までは僕も頑張ろうと思ってますけど、いったい何歳で引退するのかと……(笑)。
でもそこまではやらなきゃならないと自分で勝手に思い込んでますから。まだまだ可能性はあると思ってます。
最後に読者にメッセージをお願いします。
今はソフトダーツでも世界でいろいろな大会があってそこに目が向きがちですが、日本でも頑張ってるプロがたくさんいます。生放送だけでは全員の選手の試合が見られるわけではないので、サイトで動画をチェックするなどして、今まで知らなかった選手にも目を向けてみてください。
そして気に入った選手がいたら、近くで大会があった時にはぜひ会場まで見に行ったりして、いろんな選手を知ってほしいと思います。
結構若い選手で、16位に入って半べそかきながら喜んでる選手もいたりするので、そんな姿を見たら応戦してあげたり、逆に「これならおれでもいけるんじゃないかな」と思ったら、プロ試験を受けてチャレンジしてもらうのもいいと思います。 いろんな形で日本のプロ選手に注目してもらいたいなと思いますね。
これからも一生懸命ダーツ投げますので、応援よろしくお願いいたします。
【ダーツ テクニック】
この11年の間でテクニックは変わりましたか?
そうですね、投げ方はもちろん変わってますし、イメージの仕方も変わってます。でも入れる基準という部分ではさほど変わってないですね。最初の3年くらいはカウントアップでは毎日1000点でしたが、今はまず最初に800点くらいからスタートして、1000点出る日もあれば出ない日もあるという感じです。入れる技術というのは、もしかしたら昔のほうがあったんじゃないかなと思いますね。ただメンタル的なものは確実に成長して、試合の時は練習よりも入るようになりました。
昔に比べて練習方法や時間は変わりましたか?
全く変わりましたね。昔より投げなくなりました。昔は夕方5時から次の日の朝3時頃まで毎日ダーツバーで投げてましたけど、今はたぶん言ったら怒られちゃうくらい投げてないですね。
僕の練習は大会に合わせる形なので、大会がある日曜日の前の週に、調子が良ければ1回か2回、調子が悪くても3回くらい投げるだけです。時間はだいたい4時間くらいですかね。
練習のときのルーティーンはありますか?
カウントアップはブルから投げます。大会がファットブルの場合
は、ブルで1000点を出すまでまず投げます。それからクリケットを一人でやって、全部ベットが出るまで投げます。
僕は基本的に人と対戦するのが大好きなんで、お店に行って一緒に投げられる人がいたら、すぐ対戦しちゃいます。誰もいなかったら通信で対戦するんですけど、その前に少しは練習して、自分である程度ルールを作って投げるようにしてます。
現在テクニックで一番大事にしていることは何ですか?
最終テイクバックの位置です。腕を引ききったところからリリースするまでの手の動きを大事にしています。逆にそこしか気にしてませんね。
具体的にはどのようにしているのですか?
的に向かってまっすぐになるようにしています。最終テイクバック位置からリリースポイントと的までを、まっすぐなライン通りに手を動かします。目で見てラインを引くのではなくて、最終テイクバック位置から的に向かって直線的なラインを自分でイメージして、そのライン通りに手を伸ばすんです。
ピッチャーでいうと頭の後ろから手を出してきて、目で見えないところで離すじゃないですか。それと同じような感覚で、この辺から手を出せば入るだろうと自分でイメージして、その通りに手を動かすんです。ダーツを飛ばす軌道を考えるんじゃなくて、手を動かすラインをイメージするということです。言葉にすると分かりづらくなっちゃうんですけど、やってることはずごく単純なことなんです。
今までにスランプはありましたか?
スランプというほどどうしようもなくなったことはありませんが、なんか最近調子悪いな、というような時はありました。そういう時は3~4日投げないでいると、投げたときには調子が悪かったことも、もう忘れてるという状態です。
あまり悩まないんですね。
悩まないですね。悩んだらやめたくなっちゃうんで(笑)。練習だと思って投げに行って、調子が悪くてイライラしながら投げてたらもっと悪くなっちゃうと思うんです。だから「今日はだめだな」と思ったらさっさとダーツしまっちゃいますね。30~40分しか投げてなくてもさっさと帰っちゃいます。
ジャパンの試合は年間約20戦余あってスケジュール的にもハードだと思いますが、体調管理などどうしていますか?
もう昔みたいに元気じゃないですからね。昔は大会の前日はその地域のダーツバーに行ってずっと投げてましたけど、今は顔出しする程度にしています。前日にダーツを全く投げないで試合に挑むときもありますね。ジャパンのシステム上16位に入ると試合が夕方からなので、いくらでも当日で調整できるんです。なので、あえて土曜日に投げる必要もないなと。前日は体力温存ですね。でも16位入りしてないと朝から試合なので、そういう時は多少前日も投げて調整したりします。
何か特別なトレーニングはしていますか?
特に体を鍛えたりはしてません。何かしたほうがいいかなとは思うんですけど、腕立て伏せを始めてかえって体を壊してしまった選手などもいたので、逆に怖くてできないですね。ただ、ぎっくり腰をやった時に整体に行ったんですけど、体のバランスが崩れてると言われたことがあって、もう少し気にしたほうがいいかなとは思っています。
最近は大会の会場にマッサージする人が来てるじゃないですか。その時に、ここの筋肉をもう少し鍛えたほうがいいですよとか言われるので、やっぱり長く続けていくためにはそういうこともしていかないとならないですよね。それから健康のためにも、もう少し痩せたほうがいいとも思ってます。
これはみんなが聞きたいことだと思うんですが、ダーツはどうやったら上手くなるんでしょうか?
それは僕が聞きたいです(笑)。上手くなるかは分からないですけど、以前映像会社をやってる時に気がついたことは、自分がイメージしてる投げ方と、実際の動きとが違ってる人がほとんどなんです。
映像を撮ってあげると「え、おれこんな投げ方してるんですか?」っていう人が7割くらいいるんですけど、まずはそこからだと思うんですよね。自分のイメージ通りに手が伸びてるかとか、ダーツが自分のイメージ通りの軌道で飛んでるのか、そういうことを知ることが大事だと思います。
上手くなるためには自分のダーツをよく知ること、知っただけでもだいぶ違うと思います。僕も自分の映像を撮って、ずっと見ながら投げてた時もあったんですけど、自分でできてると思ってることが全然できてなかったり、逆にしてないと思ってることをしてしまってたりするんですよ。
だから、だまされたと思って一度映像を撮ってみて、まずは自分のイメージ通りにちゃんと動いているかを確認してみる、客観的に見てみることが上達の近道だと思います。