Vol.99 大城 正樹
驚異の4連勝

2019年9月号

昨年は年間チャンピオンになられましたが、今年もまた絶好調ですね。
おかげさまで去年に引き続き自分のダーツが打てているので、今まで通りの結果を出すことができています。自分も変わらずという部分では今のところ満足しています。

JAPANのメンツは強豪揃いですからね。
本当に選手層が厚いと思います。それから、毎年上がって来る選手が変わるというのもJAPANの面白味のひとつなんです。

現在は10戦終わったところですでに6勝という成績です。60パーセントという勝率はすごいですね。
自分でも驚いてます(笑)。

この結果はちょっとあり得ないですね(笑)。
JAPAN側に聞いてないので分からないですが、もしかしたら1シーズンでの最多勝かもしれないです。

ステージ1で優勝、ステージ2は5位、ステージ3で優勝、ステージ4位は2位、そしてステージ5から8まで4連勝というのは、あまりにもすご過ぎて驚きますよ。
自分自身の調子が良かったのと、きちんと準備ができた状態で試合に臨めたという環境作りも良かったと思ってます。
周囲も驚いている4連勝ですが、ご自分でもすごいなと認識していますよね。
自分ではそれぞれの試合で「優勝できて良かった」という感情しか無かったんですが、しばらくしてお客さんやファンの方から「4連勝ってすごいですよね」と度々言われて、そこでようやく「4連勝ってこんなに言われるものなんだ」と、改めて自分でしたことはすごかったんだなと感じました。

対戦相手を振り返るとステージ7と8で浴本昇吾選手との決勝でしたが、どのような試合でしたか?
Dクラウン時代では浴本選手に勝てたことが無かったんです。でもJAPANでの浴本選手は、決勝に上がったのが今回のステージ7が初めてだったので、決勝の舞台に関しては経験している自分の方が少し有利かなと思いました。そういう気持ちの面で優位に立てたことが、勝ちにつながったかなと思います。
でも次のステージ8でまた浴本選手と対戦した時は、「これはちょっと…」とあせりました。浴本選手は初めての決勝ではないですから、正直負けも覚悟していた戦いでした。でも先攻を取れたおかげで勝つことができたので、改めて先攻の有利さを体感しました。
とにかく過去にほとんど勝てたことのない相手だったので、僕の方がかなり硬くなってしまったと思います。

ステージ10では初めてベスト16から洩れてしまいましたね。
34大会ぶりにベスト16から落ちてしまいました。次はまたロビンからです。

しばらく経験していないことですね。
そうなんです。2017年の後半以来なのでだいぶ空いてますね。その分楽しみといえば楽しみなんですけど(笑)。

また気合いを入れないとですね。
はい。今までと違った準備をしなくてはならないと思ってるので、変化させた練習メニューも加えていこうと考えてます。

今シーズンで一番印象に残ったのはどの試合ですか?
ステージ4で準優勝した佐藤祐太郎選手との試合が印象に残ってます。

佐藤選手とはステージ1でも対戦して、この時は勝利しましたね。
そうですね。

ステージ4が印象に残ったのはどうしてでしょうか?
僕がJAPANに参戦してから、佐藤祐太郎選手との試合は全勝してたんです。一度も負けたことが無かったので、決して彼のことを甘くみていた訳ではないですが、僕の「勝ちたい」という気持ちが弱くなっていたと思いました。反対に何度負けたとしても「絶対に大城に勝ってやるんだ」という彼の気持ちの強さに圧倒されたんです。自分の気持ちの弱さを痛感した試合だったのでとても印象に残っています。

佐藤祐太郎選手も浴本昇吾選手もダーツ歴の長い選手です。しばらく目立った活躍がありませんでしたが、ここ最近はまた頑張っていますね。
そうですね。もともとのポテンシャルが高い選手達だと思うので、なぜ今まで結果が出ていなかったのかがとても謎でした。今年に入ってからはすごく良い結果を残していて、特に佐藤祐太郎選手に関してはずっとランキング2位をキープし続けているので、僕には脅威の存在ですね。

ご自分のことをどのようなタイプの選手だと思っていますか?
過去を振り返ってみてもいろいろなタイプの選手がいます。その中でも僕は短期決戦好きですね。クリケットでも打ち合いをするくらいならカット行ってすぐプッシュみたいな感じで、早く終わって早く勝ちたいというショートバトル的な選手だと思います。

ゆっくり長い試合は嫌いなタイプなんですね。
はい。スタミナが無いというわけではないですが、やはり人間の集中力には限界があると思うんです。自分や相手の集中力が切れた状態での試合展開というのは、プロとしてはあまり見せたくないですね。
集中力がしっかり保たれた状態で、最高のパフォーマンスの試合を見てもらいたいと思っています。短い時間で上質なダーツを打って勝つというのが、僕の理想のダーツスタイルなんです。

今年の夏は猛暑で選手の方は体調管理も大変ですね。
会場によってはクーラーの効きが悪かったり、クーラーを付けてしまうと風の影響でダーツが飛ばないなど、どちらに転んでも厳しい状況というのがありますね。ダーツに影響しない様にクーラーを弱めると今度は熱中症の懸念も出てくるわけで、運営側も大変だろうと思いました。

以前お聞きした体力維持のためのジョギングは続けられていますか?
下手にジョギングをすると筋肉バランスを崩してしまうので、最近はウォーキングに変えました。歩くことが嫌いではないので、だいたい一時間か二時間は歩きますね。
歳を重ねるごとにお腹周りの脂肪がなかなか落ちなくなってきた様です(笑)。今年に入って「最近太ったんじゃない」と言われることが多くなったので、なるべく運動を取り入れています。

その日によってどうしても調子の良くない時もあると思いますが、そういう時はどのように対処されていますか?
ダーツはメンタルスポーツなので、例えば「今日は調子が悪いな」と頭で意識してしまうと、それが尾を引いてしまう可能性があると思うんです。ですから僕は、調子が悪いと思った時点でそれは一旦置いておいて、「今の自分がこれなんだ」と受け止める様にしています。
本来なら17、18が打てるはずが今日に限って15、16しか打てないとすると、じゃあこの15、16のレーティングでどう勝つかという様に考え方を切り替えます。

気持ちの持って行き方を変えるということですね。
技術面では実際その場で投げてみないとわからない部分もあって、急に入る様になったり急に入らなくなったりするのがダーツだと思うんです。何が起こるか分らない試合展開の中で、今自分が持っている技術でどうやってこの強豪に勝っていくかと、そうやって気持ちの部分の切り替えで対処しています。

練習メニューや時間は決めていますか?
毎日はできませんが、メニューや時間は決めてそれをこなしています。

それは週に何回くらいですか?
僕はダーツバーのスタッフなので基本的に毎日ダーツは投げますが、決めたメニューをこなすのは週に2〜3日くらいですね。試合の間隔が空いた時は週3〜4日に増やす感じです。

具体的なメニューは?
20ラウンド、フルでブルを打ち続けて、ハットを約70〜80パーセントの確率で出せる様に練習します。

ノルマを決めて練習してるということですね。
そうです。何回やるとかじゃなくて、そのノルマが出来た時点でもう止めるんです。なので練習時間が30分で終わる時もあれば、ノルマが達成出来なくて、一時間とか一時間半かかる時もあります。

今ダーツのテクニックで一番大事にしていることは何ですか?
「変えない、変わらない」ということを意識しています。
もっと技術を高めるためにはどうしたらいいかと、いろんな選手が試行錯誤していると思うんです。僕としては、昨年年間チャンピオンを獲ることができたので、今年も同じスタイルを貫いていこうと思っています。そしてもしまた獲れたらこのままのダーツスタイルで行こうと。でもこれが通用しないのであれば、また何かを変えようと思っています。

好調の波を崩さない様にするということですね。
もっとこうした方がいいんじゃないかとか、日々のダーツシーンで思うことはあるんです。でもスタイルを変えることにはリスクとリターンがあるので、もしもリスクに傾いてしまうと良い結果が出せなくなってしまいますよね。
それならリスクもリターンもなしに今のスタイルを保つ方が、自分にはメリットがあるのではないかと、そしてそれが通用しなくなった時に自分がどう変わるべきかを考えようと思っています。

尊敬するプレイヤーはいますか?
実はいないんです。この人すごい、あの人すごいと思うプレイヤーはたくさんいます。
でも特定の誰かを「すごく尊敬する」と思ってしまうと、いざその人と対戦する時に自分がメンタル的に風下になってしまうんですよ。「この人と戦わなくてはならないんだ」「すごく強いだろうな」という気持ちが湧いてしまって、気持ち的に負い目を感じてしまうだろうと思うんです。
ダーツは風上に立たなくてはならないメンタルスポーツなので、戦う前から風下に立ってしまうのは避けたいんです。
尊敬するプレイヤーは誰だと口に出したり、自分の中でイメージを作ってしまうと、その人とは戦いにくくなってしまうんです。
ですから全員がライバルだという気持ちで、あえて「尊敬するプレイヤーはいません」と言わせていただきます。

ではライバル視している選手はいますか?
今は3人います。佐藤祐太郎選手、藤原徹也選手、そして柴田豊和選手です。

その理由はどうしてですか?
3人とも僕と同様に去年からどんどん成績が上がって来ているので、右肩上がりの選手というのはやはり意識しますね。中でも藤原徹也選手は同じDMCです。チームメンバーとして応援する気持ちはもちろんありますが、同じリーグで彼の技術力もよく分かっていますから油断ができないです。
とにかくこの3人は僕にとってはすごく脅威です。

ところでDMCとはもう長い契約ですね。
本当に長いですね。今年でもう13年になります。
こんなに長く同じメーカーに在籍したのは初めての経験ですし、同時に13年も同じバレルを使わせてもらっていると、これはもう身体の一部になりつつありますね。

DMCがそれだけ居心地がいいということでしょうか。
居心地は自分で良くしましたね。環境というのは自分で変えなくてはならないと思ってますから。
居心地が悪いから他社に移籍する選手もいますが、例えば居心地が悪いなら、良くするために努力するのも必要だという考え方です。

これだけ好調だとバレルを出してもバンバン売れますね。
DMCは限定何セット販売というのを毎回繰り返すので、「いくらでも売ります」というスタイルではないんです。今回買えなかった人は次回の販売まで待たなくてはならないので、エンドユーザー的にはどうなんでしょうか(笑)。
僕としては、欲しい時に変えなくて待たせてしまうというのは、お客さんに対して申し訳ないなという気持ちがありますね。

この好成績なので他社からもオファーがあるのではないですか。
それが意外にないんですよ(笑)。他社からすると、DMCプレイヤーというのはなかなか移籍しないというイメージが強いみたいですね。だから声もかけずらいし、声をかけたとしても「DMCからは動かないでしょ」みたいな感じでしょうか。

結束が強いですからね。
本当にそうですね。

JAPANのステージの魅力は何だと思いますか?
JAPANでは優勝を目指す過程でベスト32という入れ替え戦がありますが、これは魅力というか見物だと思います。
入れ替え戦は優勝のだいぶ手前にもかかわらず、決勝戦と同様の空気感が張りつめる中、真剣に熱い戦いが繰り広げられます。
勝てばシードを貰えるけど負けたらまたロビンからという、天と地の差がある戦いなので、選手側としても力が入るんです。そこでいいダーツを打ってみんなに見てもらえて評価される、醍醐味のある試合だと思います。

ものすごい緊張感に包まれるわけですね。
試合が近づくにつれみんなの口数が減り、集中力がどんどん上がって行くのが感じられます。目標は決勝戦にも関わらず、決勝戦に近い感覚で自分も気持ちを高めていくんです。ベスト32の試合なのにまるで決勝戦みたいだなと思うことが多々あります。

前回はどの選手に負けてしまったのですか?
京都の林雄太選手という若手の強いプレイヤーに負けてしまいました。

新しい選手も出てきますね。
そうなんです。そこがJAPANの面白いところでもあるんです。そういう若い選手に負けない様に、ベテラン選手ももっともっと練習しないとならないと気持ちを新たにしますね。
負けて悔しい思いもしましたが、自分がもう一段階強くなるためには必要だったことだと思います。

スティールで世界を目指すというのは考えていないですか?
年間チャンピオンを獲ったら翌年はハードに取り組もうかと思っていたんですが、実際に獲ってみたらJAPANで二年連続優勝した人はまだいないので、それに挑戦したくなりました。その目標が達成されたら来年は少しずつやろうかと思っています。
未来さんからは「大城、まだハードやってないの?早くやりなよ!」とめちゃくちゃプッシュされてるんです(笑)。

鈴木未来選手の強さは別格ですからね。
本当に別格ですよね。「絶対ハードやった方がいいよ!」って言われるんですけど、まぁ僕は僕のダーツのスピードがあるので、自分で決めた道をゆっくり歩いて行こうという感じですね。

これだけ優勝しているわけですから年間チャンピオンもほぼ決まりじゃないですか?
いえ、そうじゃないのがプロツアーだと僕は思ってます。昨年は荏隈選手がラスト4大会で3回優勝してきて、ぎりぎり3位に入ったんです。ラストの数大会で何回か優勝すると一気にポイントが縮まるので、最後の18ステージが終わるまでは気が抜けないですね。

引き続き緊張感を持って後半に挑む感じですね。
昨年自分が取ったポイントを超えて年間チャンピオンにならなければ、僕は去年の自分より強くないわけですから。

ポイントでも目指すものがあるのですね。
そうです。少しでも前進しなくてはと思っています。

目標や夢を教えてください。
まずは年間チャンピオン二連覇すること。そしてそれと同時に、来年のスーパーダーツに初出場して初優勝することです。

最後に読者にメッセージをお願いします。
年間チャンピオン二連覇を目指して頑張っています。「大城のダーツいいね」「大城のダーツって面白いね」と言われる様に日々努力していきますので、今後も応援よろしくお願いいたします!