Vol.78 TOP PLAYER
なぜ強いのか

2016年3月

村松 治樹 Haruki Muramatsu
試合で勝つには経験が重要

今より上を目指すために今ダーツに対して取り組んでいるテーマはありますか?
矢の角度ですね。今まで自分で真っ直ぐだと思っていたのが実は真っ直ぐじゃなかったというのが分かったんです。

上を向いていたんですか?下ですか?
上を向いてますね。投げ出した時のダーツの位置は自分の目線より上にあるじゃないですか。その状態で見えているダーツというのは、上向きになっていて初めてまっすぐに見えるんだということに気が付いたんです。

それはどうやって気付いたのですか?
スリムフライトがどうして投げられないのかがずっと分からなくて、そうしたらとんでもなく上を向いてしまう状態が続いていたのが原因だったんです。

スリムにして投げられるということは矢の角度がほとんど水平になっているということでしょうか?
今の段階ではまだまだなんですけど……。それが今技術的に改良している部分です。

それをどうやって練習の中に取り入れているのですか?
投げる度にチェックすることと、どういう動きをしたらダーツが真っ直ぐに飛ぶかというのを考えて投げる様にしています。今先端が上がっている状態なのでどうすれば下がるのかを試行錯誤しているところです。

それはなかなか奥の深い問題ですね。セットした時点で変わるということはダーツの飛行自体が変わりますよね。
そうですね。でもそれをやらないと思い通りに投げられないんです。

村松選手はふだんどのくらい練習しますか?
だいたい2〜3時間だと思います。

毎日ですか?
最近はどうしても投げられない日もあるのですが、ほぼ毎日練習する様にしています。

例えば肘やグリップなど細かい部分にスポットを当てて練習しているのですか?
そんなに細かく考えて練習することは少ないですね。お店に出てお客さんと投げることが多いし、そうやって遊びながら投げるのも練習の一つだと思っているので、そんな遊びの延長に練習があるという感覚です。お客さんと投げるのにいちいち首をかしげながら、ああでもないこうでもないとやっていたら、お客さんが楽しめないですからね(笑)。

海外での試合経験も豊富な村松選手は間違いなく日本のトッププレイヤーだと思いますが、ご自分で今足りないところはどのようなことだと思いますか?
僕は考えて考えて慎重に投げるタイプだと思うので、逆にあまり考えずに、感性や気合いだけで投げることがあってもいいのかなと思います。日本人はすごく考える方だと思いますが、海外の選手は違いますよね。もっと反復練習して、身体に徹底的に覚えさせるということに力を入れていくべきかと思っているところです。
ああでもないこうでもないと考えて、いろんな形を追求しながら投げ方を見つけるというのは、ちょっとの練習で上手くなろうとしている人のやり方じゃないかという気がするんです。感覚や感性で正確さを求めていくとなると、何千回何万回と投げ込んでいかなければならないと思うので、今はとにかく数をこなしていくことが大事かなと思っています。

いろいろな選手のダーツを見ていて感じることですが、ダーツを放す瞬間が力強い選手が多い中で、村松選手はリリースの瞬間がとても軽い感じがします。ダーツを放す瞬間はどのようなイメージなのでしょうか?
とにかく早く放そうと意識しています。どれだけ自分の顔の近くで放せるかを意識すると、どうしても軽い感じのリリースになるんです。これがなるべく長く持って前の方で放そうとすると、リリースする時は指でビシッとはじくような状況になってインパクトが残りますよね。
その反対に早く放そうとするとどうしてもすーっと軽く放すことになるんです。どの選手も手前で放せば軽いイメージになると思いますよ。

トップの選手達の顔ぶれはほぼ決まってきていますが、次に続く選手達がなかなか上に上がってこられないのはどうしてだと思いますか?
ダーツというのはコツを掴んだら外さないんじゃないかという気がするし、自分もそうやってコツさえ掴めばすぐにでもトップに立てるかもしれないと思っていました。でも今の状況を見るとやっぱり経験というのは大事なんだと思いますね。ただそれを上回る圧倒的な技術力というのが存在するのも確かです。
海外でも今まで無名だった選手が突然頭角を現して、そのままトップを走り続けるということもありますからね。経験というのは度胸が付いて肝が座るということだと思うので、経験を積んでなくても最初から度胸があればトップを走ることはできると思います。
経験を積まなければ絶対勝てないわけではないですが、今の日本の状況で安定してトップの座にい続けることは、やっぱり経験の違いが大きいかもしれないですね。

それでは最後に、長い間トップにいる秘訣を教えて下さい。
トップと呼ばれるプレイヤーの中に入れたのは嬉しいですが、入るまではすごく時間がかかりました。結局は一つ一つの試合を大事にしていくことの積み重ねの結果だと思うんです。トップに長くいようと思うより、目の前の試合を一生懸命頑張ることだと思います。