2020年11月号
1,ご自身の自己紹介をお願いいたします。
大野智秋です。旧姓が中島だったので、ニックネームで「nakka」と呼ばれています。
n01のnは「nakka」の頭文字から来ています。現在45歳で一児の父です。ダーツ以外の趣味は子供と遊ぶことです。妻とはダーツが縁で結婚しました。仕事は三軒茶屋のIT企業でエンジニアをしています。出身は大分県大分市で10代は大分で暮らし、就職する時に上京しました。
2,ダーツとの出会いはいつ、どんな場面だったのですか?
2003年に飲み会の2次会で初めてソフトダーツを投げました。そこからソフトダーツにはまり、下北沢や三軒茶屋で毎夜ダーツを投げて1年ほどでスティールダーツのリーグに参加するようになりました。
その後、2008年にDMCとプレイヤー契約をして、D-Crownでプロ活動をしていました。現在は、プロではなく趣味で投げている程度になっていますが、また機会があればプロとして活動したいと思っています。
※ JDOの静岡トーナメントで3年連続シングルス優勝。最後の年はシングルスとダブルスのダブル優勝。海外のソフトダーツトーナメントにも何度か参加したぐらいダーツにはまっていた。
2007年~2012年は精力的にリーグやトーナメントに参加していました。スティールダーツやソフトダーツのトーナメントでの優勝経験は多数あります。特に印象に残っているのはJDOの静岡トーナメントで、3年連続シングルス優勝した事です。最後の年はシングルスとダブルスのダブル優勝できました。
海外のソフトダーツトーナメントにも何度か参加しました。そこでは当時の日本では味わえない圧倒的な強さを持ったプレイヤーと対戦できて良い刺激になりました。
3,なぜn01の開発を始めたのですか?
ソフトダーツを始めて1年ほどした時にスティールダーツのリーグに誘われました。その時に既に同じようなスコアリングアプリはありましたが、新しい環境では動かないことや、もっと細かいデータを見たいという欲求からn01を開発しました。
開発してすぐに当時のスティールダーツのトッププレイヤーに助言を頂き、さらに細かいデータを見れるようにブラッシュアップしていきました。
練習用にコンピュータ対戦の機能を付けたのもn01が最初でした。当時海外のスコアリングソフトでもコンピュータ対戦できるものはありませんでした。
リーグではゲームフォーマットが変わっていくためスケジュール機能を付けて、リーグを簡単に進行できる仕組みを搭載しました。
最初は自分の周りのダーツバーで使ってもらっていましたが、徐々に浸透していき今では沢山のダーツバーや自家用として利用して頂いています。
4,元々大野さんには開発するスキルがあったのですか?
プログラムは1985年(当時小学5年生)に初めて触れて、そこから色々勉強して今の会社で本格的にスキルを身につけました。そのため、プログラム開発歴は35年になります。小学生から中学生の頃はゲームを作っていましたが、20歳過ぎてからは自分が便利になるツールを作るようになりました。このスキルを活かしてn01のみではなく沢山のフリーソフトウェアを公開して沢山の方に利用して頂いています。
5,n01が最初に完成したのはいつでしたか?
2004年にWindows版のフリーソフトウェアとしてリリースしました。当時はダーツバーで古いPCが使われていたので古いPCでも快適に動作するように作りを工夫しています。プラグイン機能もあり個人スタッツを管理したり、音声を再生したり、スコアシートとして出力できたりします。
n01はさまざまなプラットフォーム向けにも開発しています。NTT docomo携帯のiアプリ版を2005年にリリースし、2010年にiPhoneアプリ版をリリースしました。2015年にはWebブラウザで動くWeb版をリリースし、機能拡張としてn01オンラインをリリースしました。
n01トーナメントは、2020年のコロナ禍の中でn01オンラインの需要が高まり、オンラインでトーナメントができるシステムとして開発しました。n01トーナメントの構想は2015年に考えたものがベースとなっています。その時は構想のみ考えて実現する時間がありませんでした。
6,開発にはどのくらいの期間を要しましたか?
ファーストステップとしては1ヶ月程度で開発しています。その後、定期的なバージョンアップにより機能を追加しました。そのため全プラットフォームで総合すると16年間も開発を続けていることになります。
iPhone版のアプリや、n01オンライン、n01トーナメントも同様に1ヶ月程で開発して、その後に機能追加を繰り返しています。
まずは自分で使うことを目的として作っていますが、利用者が増えていくと沢山の要望を頂くようになり、便利になる要望などは取り入れています。
7,開発中で難しかったこととは何だったのでしょうか?
※ 2015年開発当初は参加人数はそれほどでもなかった。しかし今年はコロナ禍で海外ではロックダウンになり自宅で留まる人が増えたため、参加者が爆発的に増加した。不眠不休でなんとか乗り切ったが、多くの人にn01オンラインが周知されたのではないだろうか。
n01オンラインは2015年に開発してから1日の参加人数は300人前後、同時参加者は30人程度で推移していましたが、2020年のコロナ禍で海外はロックダウンになり自宅に留まる人が増えて、n01オンラインの参加者も爆発的に増加しました。
最初は普段の倍の600人が参加し、同時参加者は200人くらいになりました。元々貧弱なサーバでしたので200人近くになると重くなる現象が出始めました。まずはDBの高速化やプログラムの改善で対応しましたが、参加者は日々増えていき10日後には1日の参加者が6000人を超え同時参加者も300人以上となりました。
次は同時参加者が300人になると重くなるのでサーバの設定を試行錯誤して乗り切りました。しかし、まだまだ参加者は増えていき、最終的に1日の参加者は2万人、同時参加者は2000人規模まで膨らみましたが、サーバ台数を増やして乗り切ることができました。
今はまた落ち着いていますが、それでも一日の参加者は4000人前後で、同時参加者は500人で推移しています。
日々増えていく参加者に対応するため寝る間を惜しんで対応した結果、ある程度、人が殺到しても耐えられる仕組みになりました。
これはこの後に開発したn01トーナメントにも活かされています。その他、n01オンラインで、オンライン対戦する相手とカメラで繋げる機能があるのですが、Webブラウザの機能を使うためWebブラウザによって動きが異なるので対応するのに苦労しています。
8,ではn01について詳しく教えて下さい。
n01の基本はダーツのスコアを入力することです。付加価値としてアベレージや勝率などのスタッツを管理できます。
スティールダーツを始めたばかりの人にはスコアリングの手助けとなり、スティールダーツのベテランの方には自分のスタッツを知る事でレベルアップの手助けとなります。練習用にコンピュータ対戦の機能や、リーグ用にスケジュール機能などシーンに合わせて柔軟な使い方ができるようにしています。n01は無料で利用できます。(iPhoneアプリのみ有料)
スティールダーツのリーグでは、リーグ中のスコアリングとして利用して頂く事が多いです。スケジュールモードにより自動的にリーグフォーマットに合わせて開始スコアや試合数が変わります。
スティールダーツのトーナメントでは、決勝で観客にスコアを見てもらうのに利用して頂いています。トーナメントなどで使える残り点数と試合状況を表示するプラグインもあります。
※ n01は世界で利用されているが、本場イギリスでも好評でPDCでも採用された。ハウストーナメントから規模の大きなトーナメントにも対応しているので、ぜひお試しいただきたい。
n01は世界中で利用して頂いており、ダーツの本場イギリスでも沢山の方に使って頂いています。PDJ の決勝トーナメントで使って頂いた関係で、PDCでも一時使われていました。
PDCでは、2009年と2010年のWhyte & Mackay Premier Leagueで使われたり、2014年と2015年のCoral UK Openで使われています。他に、各国で開催されるPDCトーナメントでも使われています。
その他n01オンラインでは世界中のダーツプレイヤーとオンラインで対戦ができます。カメラとマイク機能があるためオンラインなのに同じ場所で対戦しているような臨場感を味わえます。
n01トーナメントでは自分でトーナメントを開催できます。トーナメントは自動で運用されます。n01のスコア入力と連動しているためトーナメント表の対戦カードを選択するとスコアリングが始まり、勝敗が決まるとトーナメント表では自動的に勝者が次に進みます。仲間内のトーナメントから、ハウストーナメントや大きいトーナメントで利用できます。結果入力のみという使い方が可能なためソフトダーツのトーナメントでも利用できます。
n01トーナメントの実績としては2020年度のPDJトーナメントで利用して頂き、トーナメント進行はスムーズにいき、トーナメント参加者や視聴者からも高評価でした。
その他、FIDO ONLINE CUPでもトーナメント進行に活用して頂いています。
海外ではオーストラリアで開催されているオンライントーナメント「Dart Stream Live」で利用して頂いています。元々はn01オンラインを使ってトーナメントを進行していましたが、n01トーナメントがリリースされてからはn01トーナメントを使って進行しています。オーストラリアのオンライントーナメントは高アベレージのプレイヤーが沢山集まっており、PDCプレイヤーも参加しています。オーストラリアのSimon WhitlockやDamon Heta、イギリスのMichael SmithやDave Chisnallが参加しています。
最近は日本人も多く参加するようになり、先日は鈴木徹選手がベスト4に勝ち進みました。日本人が参加するにあたっては、最初に西谷譲二選手や鈴木未来選手に手探りで参加してもらいオーストラリアのオンライントーナメント参加への道を作って頂きました。
その後はL-styleが中心となり日本人プレイヤーがオーストラリアのオンライントーナメントに進出しています。
9,これからの目標は何でしょうか?
いくつか構想中のものがありますが、まずは新しいプラットフォームが出るたびにそれに合わせたn01を出せていけたらと思っています。
これからも利用者が増えるように機能を追加していくことは考えています。ただシンプルであることが重要なので余計な機能を追加することは考えていません。n01はあくまでスコアリングの補助とスタッツの管理がメインですので、その部分を伸ばして行けたらと考えています。
これからも皆さまからのご要望にも対応し、ダーツ界で必要とされるものを作っていきたいと思っています。