Story-Medalist Thai-Top

Vol.12 Medalist タイ工場訪問

2005年3月号

世界より最先端の技術部品を調達しタイで製造されていた

ダーツの雑誌を編集するようになって既に2年以上を経るが、以前よりソフトマシーンの製造過程やマシーンの内部について強い関心を持っていた。機械の部品の調達は?どんな処で?どんな風?読者の方々も普段ダーツをしていて、使用するマシーンについて、ふと疑問や興味を抱くことは多いことと思う。
そこで今回、日本ではダントツのシェアを誇るメダリストと接触、その工場の取材をお願いすることにした。メダリストというメーカーはアメリカのシアトルに本部を置く会社だが、世界に多くのマシーンを供給しているので日本にもメダリストUSA・ASIAという会社を設立している。物事はスムーズに運んだ。
メダリストUSAペパード社長及びメダリストUSA・ASIA長谷川社長と時期を合わせ、現在の生産基地となっているタイを訪れることにした。
バンコク国際空港を降り立ったのは1月中旬、思ったほどの猛暑でもなく、意外にも爽やかな気候だったのはまさに幸運。翌日の朝、長谷川社長自ら、市内より車で約1時間の距離にある工場を案内していただいた。工場の歴史やその規模、各セクションのパーツの製造過程など詳細を語っていただいたので、その全貌をご紹介しよう。
今回の取材に関して特に本誌の読者のために、あらゆる場面と場所の撮影許可をいただいたことにお礼を申し上げたい。ダーツマシーンの内部は今や精密機器で構成され、秘密にしておきたい部分も多くあると思われるからだ。日頃、気軽に楽しんでいるマシーンはこれほど多くの人々の手によって、造られていることを知ってもらうのは実に有意義なことと考える。
最後にペパード社長からメダリストというマシーンの始まり、タイに工場を移した理由、これからの展望などをインタビューしたのでお楽しみに。

タイ工場はダーツマシーンの他にビリヤード台の製造も大きな位置を占めている。ヨーロッパでは最近、ポケットゲームが流行しているので、各国から次々と受注が来ているという。写真のビリヤード台はほとんどが、オランダの会社からの注文でその行き先は英国とのこと。それにしても凄い台数に圧倒される。

 

Story-Medalist Thai-Top

 

ダーツマシーン完成までの行程

最初は大型機械による木材カットから

大型木材製材マシーンによって正確に基本のカットがされる。勿論、すべてコンピューター制御だ。機械のほとんどはドイツ製。

Story-Medalist Thai-2

 

中型の機械に移る

中型の機械に移ると、より細かい部分のカットが始まる。

Story-Medalist Thai-3

 

カットされた木材に黒の化粧を張る

 細かい部分の黒の化粧張りはすべて手作業。それの方が完成度が高いのは言うまでもない。女性スタッフたちは、実にテキパキと仕事をこなしていた。手作業といえどもパーツによって、仕事は分業化されているので、無駄がない。

Story-Medalist Thai-4

小さなパーツは小型機械で

研磨作業は大量の木屑が出るので、横に大きな吸引機が設置されている。また暑い時のために巨大な扇風機も置いてあり仕事は比較的快適な環境。

Story-Medalist Thai-5

 

組み立て作業は熟練工の出番

正確に裁断された木材に溝が刻まれ、それに枠を当て、すべての商品を均一に仕上げるのは、簡単なことではない。熟練した職人が仕上げた後でも、何回もチェックを重ねる。

Story-Medalist Thai-6

 

塗装は何度も違った行程で念入りに

細かい部分も含めると、ペイントは何度も違った行程で繰り返され、なかなか根気の必要な仕事。完成に近づいてもまたペイント…。

Story-Medalist Thai-7

 

 

ボディーができていく

ボディーが完成するのは全体の流れ作業の中では、ほぼ中間点。これから出来不出来の勝負が始まる。

Story-Medalist Thai-8

 

配線

ボディーが完成すると、上部と下部の配線作業に入る。

Story-Medalist Thai-9

 

 

工場内のあちらこちらで各パーツが…

Story-Medalist Thai-10

 

上部と下部を合体させて配線

別々に組み立てられ、配線された上部と下部が結合していく。各部分の不具合などをチェック。

Story-Medalist Thai-11

 

セグメント取り付け

ダーツマシーンの中でこのダーツが刺さる面、セグメントという部品は最も重要なパーツだ。メダリストではかつてタイや台湾で製造を試みたが、なかなかうまくいかない為、現在はアメリカ製を使用。このプラスティックで鋳造された精密な部分は温度や湿度などにも多大な影響を受けるため、ダーツマシーンを製造する過程において非常に神経を使うパーツだと言える。金型を起こし、すべてのデータが正しくても、均一の商品ができない、まさに精密部品だと言えるだろう。それ故、取り付けられるとほこりが入らないように、厳重に管理。

Story-Medalist Thai-12

 

完成前の入念なチェック

すべてのボタン操作を行いながら、確実にマニュアル通りに画面のチェックを行う。一つの欠陥マシーンも出荷しない、その心意気が伝わって来る。どんなにコンピューター化された現代でも、最後に求められるのは、職人の心意気。どんな商品でも同じだが、最終チェックはその会社の信用をも決めかねない、誇りを賭けた勝負の仕事。職人の意地と技術を反映させることができるかどうかの瀬戸際だ。それ故に、すべてのパーツ、配線、そしてその連動が幾たびもチェックされる。かつてエリートというマシーンが売り出された頃はバグについて、かなりのクレームがあったようだが、今では「絶対の自信がある」と、工場長は言っていた。

Story-Medalist Thai-13

 

内部

Story-Medalist Thai-13-2

 

完成

完成したマシーンは最後のチェックも終え、世界の市場に向けて用意万端。その姿・形は実に壮観ではないか。さらにダーツプレイヤーを増やし、いろいろなドラマを作り出すことだろう。ハードダーツは長い歴史を誇るが、このソフトダーツマシーンというゲームが生まれて、飛躍的にプレイヤーが増えたのは疑う余地がない。これから先、どのように進化していくのか、いろいろな世界の分野の人達が注目している。

Story-Medalist Thai-14

 

世界各国に発送

完成したマシーンは再び上部と下部に解体されて梱包。工場横のコンテナに積まれ、世界の市場へ。部品も世界各地より、市場も世界各地へ、世界のグローバル化がどんどん進んでいることが、ゲームマシーンからも読みとれる。

Story-Medalist Thai-15

 

工場長 インタビュー

忙しい時間を割いていただき、トキ工場長へ、インタビューをお願いした。

現在、工場ではどのくらいの人数が働いていますか?
…約120人、就業時間は朝7時30分から午後3時30半までが基本です。

ダーツマシーンは月産どのくらいですか?
…一時のピークを過ぎ、今は約300から400台ほどでしょうか。

昨年の合計出荷台数は?
…約3000台を世界に出荷しましたが、昨年は日本が大きなシェアを占め、90%近くだったように記憶しています。

今年は?
…マーケティング部、セールス部からの報告によるとインド、ベトナム、スペイン、中国、韓国、台湾からもオーダーが来ているので出荷先は世界各地に広がることになると思います。

これからの目標は?
…私どもは、プールテーブル、フーズボールテーブル、ダーツマシーンというプロダクトを基本に生産し世界各地に出荷していますが、市場からの需要は非常に旺盛です。そのため、年内に工場を倍の規模に拡張する計画をし、その土地も既に確保致しました。

最後に日本の読者の皆さんに
…タイ工場では日本のダーツプレイヤーの皆さんに、より楽しいゲームをしていただけるように日々、新しい工夫を重ね、厳しい品質管理の元、最大限の努力をしております。出来るだけ期待にお応えできるように、世界のどのメーカーのマシーンにも負けないように素晴らしいマシーンを製造していきますので、よろしくお願い致します。

Story-Medalist Thai-16

 

リー・ペパード社長 インタビュー

ゲームマシーンビジネスに何時から携わっているのですか?
…1971年、台湾でコントラクトファクトリー契約を結びフーズボールを始めたのが最初です。それが大ヒット、最盛期には年間10万台もアメリカ向けに出荷しました。

ダーツマシーンは?
…1982年、アメリカで最初の生産を開始しました。それまではダーツマシーンのディーラーをしていて、一時期は1000台も保有していたのですよ。1986年にジェネシスの生産を開始、何回ものモデルチェンジを経て今に至ります。

タイ工場の始まりは?
…アメリカではダーツブームは安定期を迎え、これからはアジア市場だと思った時に、たくさんの人々とお会いしました。勿論、縁の深い台湾なども有力な候補地ではあったのですが、輸出入関税の問題、民族性など各種の条件をクリアしたのが、この地、タイのバンコクだったのです。いろいろないきさつがあったのですが、最初の出荷は2002年横浜に向けてだったことを今も鮮明に記憶しています。メーカーの私どもにとっては感動的な日でした。今年は新しい投資家を迎え、工場を倍にする計画も始まり、タイで上場も予定しています。本当に正念場を迎えるでしょうが、現在のスタッフや様々な環境を考えると必ず成功すると信じています。

タイ工場での苦労話は?
…セグメントというパーツには泣かされました。いわゆるダーツが刺さるプラスティックの部分ですね。タイでも台湾でも製造を試みたのですが、同じ型からでも温度や湿度の影響で均一の製品を造るのは、本当に難しいことだという事を勉強しました。そのため、現在はアメリカ製です。それとソフトの開発でしょう。今はタイの博士号を取得した優秀なスタッフには満足しています。

良いマシーンを製造する秘訣は?
…執念と努力。今、ゲームマシーンは世界でいろいろ生産され、競争も激しさを増すばかりです。それ故、良い製品を適正な価格とサービスで供給すること、それがメーカーの使命だと思っています。理念の無いメーカーは即席にマシーンを製造しても世界市場では通用しないことでしょう。世界各国から常に優れたパーツを探し、日程に合わせて供給と需要のバランスを取るのはそんなに楽な事ではありません。メダリストという会社は私が社長でいる限り、世界中に散らばるスタッフに最大級の努力とサービスを求めていますので、どうぞご信頼いただけるようお願い致します。

日本のプレイヤーに。
…日頃、メダリストのマシーンをご愛用いただきありがとうございます。心配な要素として、日本ではまさに各種の新ダーツマシーンが登場、プレイヤーの方々もスタッツの問題など煩雑な面もあり、少しダーツに対して後ろ向きにはなっていないだろうかと言うことです。このような傾向に、私どもはむしろ、プレイヤーの皆さんがマシーンおよびゲームにおいて、選択肢が増える事は素晴らしいことと歓迎しています。是非いろいろなマシーンで各種ゲームを楽しんで下さい。そしてプレイヤーがさらに増え、楽しいダーツの世界が築かれることを期待しています。
これから将来においても日本では紆余曲折が予想されますが、長い歴史のあるハードダーツの面も残しながら、多種のゲームを楽しめるソフトダーツは素晴らしいゲームですので、きっと支持され続けることと信じています。メダリストも、より楽しいマシーンを開発していきますので、よろしくお願い申し上げます。