Vol.40 PDJ START
赤松 大輔

2009年11月

PDC Challenge Tournament
松本 嵐 5-2 赤松大輔
勝負のポイント

Arashi先攻で始まった第1レッグはMachoが先にダブルを打つ。しかし、わずかに外れる。第2レッグは先攻のMachoがキープ。そのまま第3レッグも高スコアで走り、早い段階からダブルを打つも引っ張ってしまう。その間隙を突いてArashiがきっちりキメる。続く第4レッグでは両者の打ち合いになるも17ダーツでArashiが決めて3-1と試合が動く。第5レッグも壮絶な打ち合い。先攻のArashiが3連続100を打てばMachoも135、100、100と返す。乗ってきたArashiがまたもや17ダーツでついにリーチ。第6レッグは「決めれば勝ち」と「絶対に落とせない」をそれぞれ意識しているのか、互いにダブルが決まらない。そんな中、先攻のMachoが決めて4-2。試合は第7レッグへ進み、Arashiが貫禄の先攻キープで準決勝へ。第4レッグ以外は全て先攻キープで決まった試合だったが常にMachoが先にダブルを打っていた。ダブルの決定率が勝負を分けた。Machoは負けはしたが、安定感があった。この悔しさはきっと自分に磨きをかけるだろう。

このトーナメントに挑戦しようと思った理由はなんですか?
PDCに出れるかもしれない!自分の力がどのくらいなのか、試したい、挑戦したいという本当に純粋な気持ちからです。

スティールダーツはいつ頃から投げ始めましたか?
ソフトダーツを始めて半年くらいした頃です。自分の店でハードのリーグをやるという話が持ち上がって、そこから始めました。最初は、89残りを57ー32で決めるのを見て「えっ、すごいっ!」って感動してましたね。それが大体4年半くらい前ですね。

今回のこの挑戦のために特別な練習や調整はしましたか?
僕はもうずっとハードのリーグで投げてるので、特別な練習はしませんでしたね。ハードのリーグもそうですが、リーグ戦というとマックスで週に5回やってるんですよ。例えば土曜日に遠征の前入りして日曜日に試合して月曜日に帰ってくると、「はいリーグです」みたいな感じで、週に3回はリーグやってるんです。だから取り立ててすごく調整したというのはないですが、やっぱり投げる量が普段よりちょっと多いというのはありました。

予選はどんな試合でしたか?
僕は西で抜けたんですが、大試合でしたね。スポンサードしていただいてるバレルメーカーやアパレルメーカーの期待と、その時はまだワールドカップには行く前でしたが、JSFDの日本代表という肩書きのプレッシャーに潰されそうになったのが本音です。
関東から西まで行って、JSFDの日本代表というものを背負ってベスト8に臨む、トリプルエイトというバレルメーカーの名前を背負ってベスト8に臨む。しかも相手が僕と同じアパレルメーカーに所属してる選手だったんで、勝った負けたで比べられる部分が出てきますから、絶対に負けられないという思いなど、いろんな思いに押しつぶされそうになってたんです。
やっぱり日本代表というのが一番大きかったかもしれないですね。理由のひとつは、JSFDの日本代表というのは、一部の人たちからは『東京代表』と言われてるというのを耳にしてたからです。東京の人たちだけでやってて、東京の人しか代表になれないというような声を聞いてたので、それはちょっと納得がいかない、そうじゃないんだということをプレイで示したかったという気持ちも強かったんです。

そういうことでナーバスになってしまったんですね。
そうですね。その時は逆にいいテンションになって上手くいったんですけどね。

今回のファイナルに向かってはどんな気持ちでしたか?
ひたすら平常心を保とうと思ってました。僕は何にしても平常心でいないと普段の実力も出せないし、ましてやそれ以上の実力はなお出せないと思ってるんです。プラスの感情をどれだけ出せて、マイナスの感情をどれだけカットできるかの瀬戸際でずっとやってました。
今日はプラスの感情がすごく多かったですね。応援してくれる人の声とかが後ろで聞こえてすごく嬉しくて、逆にいいダーツをしたいという思いが強すぎちゃったかなと思います。

見てくれてる人たちを喜ばせたいという気持ちが空回りしてしまったということでしょうかね。
そうですね。そういうところがあったと思います。

今日は全体的にどんな試合でしたか?
たぶん全部僕が先にダブルを打ってたと思います。だけど決定力が足りませんでしたね。
僕は、最後のフィニッシュを決めるときに、何かに置き換えようとはしないんです。例えば、このダブルはダブルスタートだと思って投げる人や、このダブルを入れたら楽になるとか、そういう風に置き換えることができなくて、むしろ「このダブルを入れて俺は勝つ!」という気持ちで投げるんですが、それが未熟でした。自分を信じて投げてたつもりだったんですが、どこかで雑念が渦巻いてましたね。相手の点数が気になってたり、自分の今日の調子と相談してしまったりとか……。もう土壇場なんだから調子と相談したってしょうがないし、雑念なんかあったってマイナスになるだけなのに、それを振り払えなかったんです。そうして自分の心の中での戦いを始めてしまって、すごくマイナスになってしまったという感じです。

それがブレイクチャンスを決められなかった理由でしょうか。
本当にダブルの決定率だと思ってます。嵐選手もあんまり調子がいいとは思えないダーツだったので、ブレイクチャンスが2回来た時に1つでもモノにできてればまた流れは変わったんでしょう。でもそこで自分が下り坂になっちゃったことが一番ダメでしたね。
とにかく固かったですね。1レッグ目と3レッグ目のブレイクチャンスを2回とも逃した時点でもう気持ちがインに入り始めて、守りに入ってしまったんですね。ブレイクはできなくてもあたりまえだと、先攻キープにしろという考え方に変わってきたところがまたダメなんですよ。常に攻める気持ちを持ってないと、絶対どこかで弱気になる自分が出てくるんですよ。もう間違いないですね。

嵐選手も若干固かったのでしょうが、長年トーナメントに出場している経験の分だけ差が出てるかなという印象ですか。
そうなんです。嵐選手はああいう舞台と、こういう状況においての自分のダーツというのを分かってるなという感じはしましたね。
確かブレイクされたのは96残りを60ー36かなんかで、その時「これは完璧にやられた」と思ったんです。

赤松選手32残りでしたものね。あとはかなりいい勝負だったと思いますが。
僕見ちゃったんですよね、嵐君のダーツを見ちゃったんです。あれを見ないで常に18ダーツとか15ダーツで上がっていこうという気持ちで臨めれば、たぶん普段どおりのダーツができたと思うんですけど、嵐君の調子を見て自分の調子を考えて、そこで勝負しようとしてるところが間違いなんですよね。
途中から冷静になって見ないようにはしてたんですが、そこからじゃもう遅いんですよ。

そうですか、見ちゃいましたか。
そう、見ちゃってるんです(笑)。それで嵐君が入り始めるとやばいやばいというのが頭の中を渦巻いちゃって……。ホントダーツってメンタルスポーツですね。今更ですけどね。
いやぁもう悔しいなあ!フルレッグくらいまではいきたかったんですけどねー。

今回の挑戦で何か変わりましたか?
2週間くらい前から、投げるテンポやタイミングを変えてみたんです。今まではしっかり1本ずつ狙ってたのを、3本ひとまとめにくくってやっていこうと思ったのが案外よかったんですよ。
僕が全然ダメではずす時は、考える時間が長かったり投げ方を気にしだすことが多かったんです。なので、もう3本ひとくくりにして投げてしまおうという風にやってみたら削りが良くなりました。でもいろいろありますよね。1本目が入るか入らないか、例えば離れたダブルを打つときにテンポを置くか置かないかとか……。
今回の挑戦で思ったことは、まだ僕には伸びしろがあるということです。経験と練習の伸びしろがまだまだあるなと正直思いました。例えば次にハードダーツの試合に臨む時にそういう経験を生かして、自分でどうやったら一番入る確率が高いかを模索しながらやる。そうすればフィニッシュが強くなる素質は、まだ十分あると自分では感じています。

来年もこの大会に挑戦しますか?
もちろんです。こんな舞台で投げさせてもらえることは他にはないですからね。

ダーツに対しての夢や目標は?
できればダーツ一本で食べていきたいというのが目標ですが、現状ではそれは難しいということはわかってます。でも夢といったら大きく持ちたいので、日本を脱出して海外でダーツを投げて、それで食べていける選手になりたいと思ってます。

最後に何かおっしゃりたいことはありますか?
超悔しいです!それだけです。普段のダーツ以下どころの話じゃなくて、ひどかったですね。期待してくれてた方や、応援してくれた方たちに申し訳ないです。