Vol.68 PHOENIX SUMMER FESTIVAL 2014

2014年7月

今年も韓国で開催された世界最大級のソフトダーツ大会
世界から17の国と地域の選手がソウルに集結

いよいよ初日オープニング First Day July 5th
毎年恒例になっているフェニックスサマーフェスティバル。本誌としては唯一韓国に毎年取材に訪れる大会だ。この大会は色々な意味で、ソフトダーツ夏の目玉となる大会と言えるだろう。

まず、その華やかなステージに圧倒される。2日間を通して有名スターがオープニングアクトを飾るのだ。今年の初日は女性ポップグループSPICAが登場し、その表情豊かなステージで我々を楽しませてくれた。こういった演出はソフトダーツの大会ではあまり見られないものだが、プロフェッショナルな構成に観客の興奮も一挙に膨らむ。
もちろん大会のメインとなるのは、世界17の国と地域を背負ってやってきたプレイヤーたちの熱い戦いだ。初日はダブルスで、日本の浅田斉吾と松本恵ペアが優勝。さらには、リーグ戦でも日本のチームソロモンが優勝をさらい、まさに日本の力を見せつける結果となった。それにしても、会場にいるとソフトダーツは本当にすごいことになっているというのを肌で感じる。まさに爆発的な勢いだ。その本流に日本がいることは確実だし、それを誇らしく感じた。
このソウルの地にこれだけの違う人種の人々が集い、ダーツの腕を競うと同時に交流の花を咲かせるチャンスなど、そうあるものではない。日本の商品への興味を持った人も多くいて、商談に発展していくというケースもあり、あらゆる意味でソフトダーツを介したコミュニケーションがあふれていた。
ダーツと言えば上を目指してプロツアーに行きたいと願うプレイヤーも多く、それはそれで一つの究極の形ではあると思う。でも、こんな風にアマチュアのダーツの祭典で、「楽しむ」ダーツを再発見するのもうれしいものだ。人と人を繋いでくれるこの雰囲気は、ダーツの原点を思い起こさせてくれる、まさにダーツのフェスティバルだ。

世界各国より勝ち抜いた12チームが参加

大接戦の勝利
これまでは国別対抗戦という形で行われていたものが、今年は趣向を変えて国別対抗のリーグ戦としてこの大会のハイライトとなった。各国のリーグ戦を勝ち抜いてきた代表チームが、この場で世界一のチームの座を競うのだ。決勝に残ったのは日本とスペイン。スペインはPDCでも活躍する選手がいるなど、かなりダーツが盛んな強豪国だ。
そしてこの決勝戦が素晴らしい戦いだった。大接戦の投げ合いで、日本にとっても我慢の試合となった。だが結局は日本チームの勝ち!厳しい戦いだっただけに、嬉しさもひとしおだ。スペインチームは本当に手ごわかったし、良いプレイも随所に見られた。そんな強いチームを抑えて手にした日本の優勝は、ずっしりとした重さがある。
そしてひとたび試合が終われば、それまで戦った相手も友達に変わる。一緒に記念写真を撮ったり、メルアドを交換したりと、国際交流試合ならではの風景が見られて、さらに盛り上がったことは言うまでもない。

小野 恵太 (KEITA ONO) 門川 豪志 (TSUYOSHI KADOGAWA) 笹川 誓明 (CHIKAAKI SASAGAWA) 金子 憲太 (KENTA KANEKO) 沖山 祐一 (OKIYAMA YUICHI) 園田 俊雄 (TOSHIO SONODA) 浦 健司 (TAKESHI URA) 田之口 香織 (KAORI TANOKUCHI)

「soromon」 チームを代表して5人のインタビュー
「やったぜ、世界一!」
小野恵太選手よろしくお願いいたします。ここまで来るにはさまざまな苦労と努力があったと思いますが、リーグ戦での様子などをキャプテンとしてお聞かせください。
去年のフェニックスリーグの全国大会を見て「チーム戦ってすごく楽しそうだな」と思ったのがリーグへの第一歩だったんです。もちろんリーグをやるなら仲の良いメンツでやりたいと思って親しいプレイヤーを募って「全国優勝しようよ」ということで初めました。
まずシーズンで優勝して、去年の関東大会でも優勝して全国大会の切符を手に入れました。全国大会の決勝では去年の優勝チームが相手だったので、これで勝ったら文句ないだろうと気合いを入れて戦ったんですが、結果優勝する事ができました。
とにかくリーグは楽しく仲の良い仲間とやりたいから、普段から気の合うメンバーに声をかけて作ったチームなんです。もともと気心の知れた仲間でしたが、関東大会と全国大会に出場してチーム全体の雰囲気はさらに良くなったと思います。それが今回の優勝につながったかなと思いますね。

今回の韓国大会はいかがでしたか?
金子憲太 韓国はすごく人が温かい感じがしました。トーナメントでのマナーも良くて、ナイスダーツに賞賛してくれたりして気持ちよくダーツができました。街も良い街ばっかりで、もてなそうという気持ちが感じられたのでとても気分が良かったです。

最後に閉めたのが金子選手でしたが、その時の気持ちはいかがでしたか?
僕はずっと調子が良くなかったんです。リーグの全国大会ではすごく入ってたので自信につながってたんですけど、今回は同じことが全くできなくて初戦からずっと苦しかったんです。そんな状態でずっと我慢してたので、最後に僕で決められる状態になったのがとても嬉しいのと同時にものすごく緊張しました。しっかり決める事が出来て本当に嬉しかったです。

あまり緊張してる様には見えませんでしたが(笑)?
すごく緊張してたんですよ。決勝トーナメントに入ってからシングルスは特に緊張したんですけど、最後は自分と仲間の応援を信じて思いっきり投げられたので、難しい場面ではありましたが決める事ができました。

笹川誓明 自分にとって今回が人生で初めての海外でした。それが好きでやっているダーツを通じて来ることができたというのはとても嬉しいことです。
二日間試合をして、日本語以外はわからない状態でもジェスチャーなり片言の英語なりでみんなとコミュニケーションを取れたのが本当に楽しかったです。とにかくすごく楽しい二日間だったというのが一番大きな感想です。
正直な話、不思議な感覚なんですが、自分がいるチームが世界一になったことがすごく嬉しい反面、それ以上に悔しいという気持ちの方が大きかったんです。やっぱり本戦に出てないということは大きいのかもしれないですね。自分でも気付かないうちに、海外でダーツをするといういつもと違う環境が自分自身を見失わせたんだろうなということを、身をもって知ることができていい経験になりました。
みんなには言ってないんですが、帰り道にキャプテンの恵太にはいろいろな思いを全部聞いてもらいました。次は自分のためにもチームのためにも頑張りたいなという気持ちがよりいっそう強くなりました。

門川豪志 僕も海外は初めてでした。いろんな人が海外でダーツをしている話を聞いていたので、自分も海外に行くならまずは絶対ダーツで行こうと、遊びで行くのはその次と決めていたんです。なのでこういう形で行くことができたのはすごく嬉しかったです。リーグでは人数が揃わない時など「今日はやばいかも」と思いながらも勝ちを重ねて優勝する事が出来て、いよいよ世界大会にまで来ることになったわけで、とにかく「海外に行く、ダーツで行く」というのが楽しみでしようがなかったです。
予選から入ったり入らなかったりとチームのメンバーをドキドキさせてたと思います。たまにはいいダーツを打って「よくやった」という声をもらって、それを励みになんとかここまで頑張ってこれました。もうちょっと周りを安心させられるようなダーツが打てれば良かったんですけど、見てる方はきっとハラハラドキドキしながら応援してくれていたんじゃないでしょうか(笑)。
外国の選手と試合をしたことは何度かあるんですが、海外での試合というのはやはり少し違いますね。言葉が分からないので日本とはまた違った緊張感がありました。ただ単に自分が「入れなきゃ、入れなきゃ」という緊張だけで、周りの目はほとんど気にならなかったんですけど、これからはもっと経験を積んで、メンタル面を鍛えていかないとならないと思いました。

すごいハイオフさしましたね。
はい、168ですね。

ご自分でも驚いていたみたいでしたが、あの時の心境はいかがでしたか?
決勝の場面でチームの対戦成績が2ー2のタイで、自分が負けると次がかなりプレッシャーがかかってしまうという試合でした。ちょうどブレイクチャンスのゲームだったので、ここを決めればデカイとは思っていたんです。それでチャンスが回って来て、一本目ははっきり覚えているんですけど二本目はとりあえず手を出したら入ったみたいな感じでした。
それで最後は16トリプルを決めることができたんですが、投げた時は正直不安な気持ちがいっぱいで、これもとにかく手を伸ばしたら入ったみたいな感覚でした。僕は普段はあまりガッツポーズはしないんですが、あの時は「よっしゃあ!」という喜びが込み上げて来て自然とガッツポーズが出てしまいましたね。良い形で次につなげられたんじゃないかなと、その日のベスト試合でしたね。

沖山祐一 僕はダーツで海外に行くのは2回目なんですけど、ソフトダーツでは初めてです。出てみた感想は、対戦相手はほとんど外国の人でしたがすごく紳士的だなと思いました。
いいダーツをすれば「ナイス」と言ってくれて、終わった後も必ずにっこり笑って挨拶してくれて、全然殺気だってないんですよね。それがいいのか悪いのか分からないんですが、僕は結構いいなと思いました。
リーグについては、僕も仕事の関係で出場できる回数が少なかったんですが、今回はほぼ5人で試合を進めていった状態でした。でも応援してくれる人や普段のリーグが成り立たなければこの世界大会にも出場できなかったので、他で支えてくれたプレイヤーにもすごく感謝したいと思います。

小野恵太 僕はまだ年齢が若いというのもありますし、自分がキャプテンという立場は、国際試合の代表戦でも今まで一回もなかったんです。「お前がエースだよ」ということはありましたが、キャプテンというのはまた全然違いますよね。
僕はチームの士気を上げることはキャプテンの力だと思うので、自分に回ってきた試合は日本に流れを持ってくるために勝たなきゃと、普段の試合とはまた違ったプレッシャーを感じていました。
チーム戦というのは流れがあって、キャプテンはその流れを作らなければならないと思うんです。なのでただ試合をするのではなくて、メンバーの力を借りながらメンバーを盛り上げて、ここで決めたら流れがこっちに来るというのを考えながらやりました。とにかく今回は自分にとってすごく良い経験になったリーグ戦でした
今日はチームのみんながいいダーツをしてくれたので、僕はだいぶ楽にやらせてもらえました。応援だけで来てくれている人もいるし、試合して喜びを分かち合える仲間もいるし、世界一になって改めてリーグっていいなと思いました。「やったぜ、世界一!」

Second Day July 6th
二日目も豪華な舞台でスタート
2日目は、オープニングに韓国のスーパーアイドルであるガールズ・デイが現れて、会場は騒然とする。やっぱり、その華やかさは半端ではない。ダーツを見に来たことを忘れて、しばしそのステージに酔う。その後憧れのアイドルと一緒にダーツを投げられる抽選会などもあり、盛り上がりは最高潮へ達した。

そしてこの日、日本人プレイヤー達も、昨日に引き続き大活躍を見せてくれた。ダブルスでは浅田斉吾と小野恵太ペアが優勝を飾り、シングルスのフェニックスカップでも浅田が優勝、小野が3位に入賞した。浅田はこの大会、優勝を総なめという感じだ。女子のフェニックスカップも日本人プレイヤーが素晴らしいプレイで1位~3位を独占。1位に今野明穂、2位に大城明香利、3位に松本恵が入った。
世界でますます大きくなっているソフトダーツのムーブメントだが、日本の実力はその中でも突出している。そのことを、改めて認識させてくれるチャンスにもなったこの大会。ひと時の夏の夢のように、世界中のプレイヤー達の笑顔が心に残った。

DART PARTY 世界のプレイヤーの交流パーティー
TiTO BOSS 福永 正和 INTERVIEW
久しぶりのインタビューになりますが、よろしくお願いいたします。
こちらこそよろしくお願いいたします。

ますます多方面でご活躍ですが、この大会は何度目の参加になりますか?
今回で3回目です。

毎回少しずつ印象が違うと思いますが、今年の大会はいかがでしたか?
韓国の大会はいろいろな面で洗練されてきましたね。以前は進行が遅かったりイベント的にちょっとちぐはぐなところもありましたが、そういう部分も解消されて、日本の流れの良いトーナメントに近くなりましたね。本当に発展していると思います。

フェニックスを扱っている各国が集合していますが、アメリカやマレーシアの方に聞いてみるとそれぞれの国で大成功している様ですね。
そうですね。フェニックスのシェアが世界一になったことで、いろいろな面でフェニックスに対する世界的な親近感が増してきたような気がします。

ボスは大会では全ての試合の実況中継をユーストリームで放送されています。いつもお話ができないくらいお忙しい様で、すごく大変そうですね。
私達は当初からパーフェクトを立ち上げて、みんなでプロ組織を強くするということを一生懸命やってきました。それからパーフェクトをより身近に感じてもらうために放送を始めたんですが、それをもっと分りやすく、一般の人にも見やすい放送にしようと努力しているところなんです。
最近は多少くだけてきて面白い放送になってきたかなと思っていて、ダーツの人気の高まりとも相まってなかなか好評です。大変な部分もありますが、ダーツをより活性化させるためにも頑張っています。

ディーラー業をはじめ、ダーツの開発や販売もなさっています。トリニダードは以前からの人気商品ですが、コンドルもとても売れている様で、大成功しているのではないでしょうか?
ダーツ人口も増えているので、選択のニーズがより広がっていけるように商品には取り組んでいます。プレイヤーもそれぞれいろいろな好みがあるので、いい選択肢が増えてダーツの活性化にもつながっていると思います。

トリニダードのプレイヤーは海外でも増えているようですね。
シェアを広げたいという気持ちももちろんですが、国内のプレイヤーの糧になればというのもありますね。トッププロを維持するのは大変なので、そういう支援等は世界各国でやらせてもらっています。

先ほどもハワイのプレイヤーと名刺交換をされていましたが、ボスは人間関係をとても大事にされているという印象を受けますね。
選手に対しての細かいケアまでは出来ないので、そういう部分はスタッフがやっていますが、とにかく自分がダーツ好きなので、プレイヤーの大変さは分かっているつもりなんです。
ダーツを高いレベルで維持し続けることがどれだけ大変かがよく分るので、そういうことをふまえていろいろなサポートを考えています。

最後にひとことお願いします。
まず『エンジョイダーツ』というのを心がけてほしいです。それから夢を持ってプロを目指したいとか、もっとメジャーになりたいという人もいっぱいいると思います。
あきらめないでやり続けてほしいですね。頑張って投げていれば必ず成長すると思うので、鍛錬しつつダーツをエンジョイしてください。