Vol.40 PDJ START
安食 賢一

2009年11月

PDC Challenge Tournament
橋本 守容 5-4 安食 賢一
勝負のポイント

誰が想像しただろうか。3-0でAnnie優勢。しかしそのままでは終わらない。JonnyがKINGの意地を見せる。第4レッグ、第5レッグと決め3-2と追い上げる。続く第6レッグでは140,140,100と3連続TONで勢いに乗るもののAnnieが値千金の110ハイオフでリーチ。残り3レッグ、Annieは勝ちに近づいた。が、さらに牙をむくJonny。先攻の第7レッグを16ダーツでキープ。続く第8レッグを15ダーツと猛追。ついに4-4で迎えた最終レッグ。両者一歩も譲らない展開。そしてアレンジの駆け引き。Jonnyのダブルがわずかに外れ、Annieが見事に1本で仕留める。試合が終わった後、会場から漏れた感嘆のため息と大歓声が全てを語っていた。それほどまでに壮絶な戦いだった。

このトーナメントに挑戦しようと思った理由はなんですか?
ハードを投げてる人だったら理由なんか全くなく、誰でも挑戦しようと思うでしょ(笑)。

PDCという大きな目標にチャレンジしたいということですね。
そうですね。みんなそう思って投げてると思いますよ。

以前からスティールダーツは投げていらっしゃいますが、始めたきっかけは何ですか?
月末になるとお金がなくなるんで、ハードダーツだと500円で投げ放題だったので始めました(笑)。もう8年前くらいから投げてますが、本腰を入れたのは6年前くらいからですね。

この挑戦のために特別な練習や調整はされましたか?
調整はしましたね。具体的にと言われるとわからないですが、毎日寝る前に「こうして投げてみよう」とイメージしました。で、次の日実践して、ダメだったらまた新しいことを考えてその次の日実践する。普通にただ淡々と投げるのではなくいろんなことを考えながら投げてましたね。これは東日本トーナメントが始まる前からそうでしたが、これで僕のハードのレベルは成長しました。

東日本予選で抜けられましたが、予選はどんな試合でしたか?
いろいろなプレイヤーが出場していましたが、上手いプレイヤーは分かってるので、出来る限り上手いプレイヤーとは当たらないような山になることを祈ってました(笑)。誰と当たるのかを気にしてましたね。
結局みんな上手くて、とにかく入れなければ負けるので、入れることに集中してました。

4人の中に残ったのはさすがだなと思って見てました。
ありがとうございます。嬉しいです。

来年も挑戦しますか?
もちろんです!今回は来年につながる負け方だと僕は思っています。負けてこんなに笑ってられるのはそうないですね。1レッグ目から自分の力を出せなかったのは悔しいですけど。最初3レッグ取られてから「そう簡単には勝たせないぞ」という意地は見せられたんで大満足ですね。

最後61からアウターをはずしてインナーに入ったじゃないですか。あの時何を思いましたか?
61の一つ前の65の3本目ですね。40にアレンジしようと思ってブルを狙って投げたダーツがはずれて4に入ってしまったんです。それで次のラウンドの1投目のアウターは気持ちよ~く投げられたんですが、気持ちよ~く投げられた結果一番いい所に入っちゃったという……インブルに入ってしまいました。
だから決してミスしてはずしたというのではなく、気持ちよく最後の3本も投げられたんです。運もあるだろうけど、それが僕の実力かなと思いますね。僕はアウター、インブルを打ち分けられないので、仕方ない事故かなと思います。

この大会に向かって今日までどんな気持ちでしたか?
正直言うと不安でした。1レッグも取れずに終わってしまうんじゃないかという不安もあって、その不安がいきなり3ー0で現実になりかけた時にはあせりましたね。
僕はアニー選手がソフトダーツも含めて上手いのは認めてますが、もしアニー選手が勝ち上がっていくとしても「そう簡単には行かせないぞ」という気持ちでいました。そういう自分に対する試練もありましたがそれも出来たので、不安も乗り越えて自分のダーツができたいい期間だったと思います。

今日の試合は全体的にどうでしたか?
予選の時から思ってたんですけど、僕は切羽詰らないとグルーピングが上がらないんですよ。ケツに火が点かないとダメなので、いかに1レッグ目からケツに火を点けようかと思ってました。来年度はそのへんを勉強しながら、一発目から全力を出せるようになりたいと思います。
本当に予選の時から調子が上がってくるのが遅かったんですが、本選でもやっぱりそうで、「遅いわ」と……。今日も2レッグまでならまだチャンスはあったと思うんですけどね。

今日の勝負のポイントはどこだと思いますか?
さっきも言いましたが、65残りの3本目が4に入ってしまったというところですかね。例えばあれが5だったら60残りでシングル、TOP。6でもシングルで、どこでもいけたんですけど、4という数字がね……。61残りで2本目からダブルを打つにはどこかのトリプルかダブルかブルを入れなくてはいけないという結果になってしまったところが敗因でもあり、それが僕らしいのかとも思いました。

今回の挑戦で何かダーツは変わりましたか?
変わりましたね。もうすごく変わりました。

それは今まで感じたことがないですか?
そうですね。僕でもここまで打てるのかと。今まで日本のハードはレベルがどうとか言われてましたけど、もうちょっと頑張れば日本のレベルだって向こうで通用するようになるんじゃないかと思いましたね。ソフトが通用するようになったのと同じに、ハードも投げてる人間が多くなって挑戦する場が増えれば、おのずとレベルが上がってくる。まさにその上がりかけてるこの時に、僕はダーツ投げてるんだということを実感しますね。

ダーツに対しての夢や目標は?
PDCの舞台というのは夢物語のようにテレビで見てたので、ダーツの夢といえばあそこの舞台に立って一つでも多く勝ち進むことですね。ただ立つだけではなくあそこで勝ち続けて決勝へ、そして優勝するということが夢です。

今日来てる8人もやはり同じことを思ってるでしょうね。
そうですね。それが最高の舞台で、夢となるとダーツにおいてはそれしかないですからね。

日本でもこういう舞台が用意されるようになったというのは大きなことですね。
挑戦しやすい環境を作ってもらったのはすごく喜ばしいことですね。今までもあったんですが、ちょっと挑戦しずらい環境だったじゃないですか。今は誰でも挑戦できるという環境なんで、この環境を生かして夢だったものを現実に、夢じゃなくしたいですね。

今回ワイルドカードで誰かが行って一勝でも二勝でもしてくれたら、ホントに涙が出るほどに感動してしまいます。
そうですね。ワイルドカードももちろんそうなんですけど、予選から勝ち上がっていくプレイヤーもいてくれたら嬉しいですね。この予選を取れなかったプレイヤーの中で「PDPAリーグに行くぞ」というプレイヤーが年に一人でも二人でも多くなってくると、僕の夢だった、僕じゃないかもしれないけど誰かしら決勝の舞台に立つ日本人が現れるんじゃないかと思いますね。

最後に何か特別におっしゃりたいことはありますか?
このPDCチャレンジトーナメントに出て、僕はハードダーツのレベルがすごく上がったと思うんです。考え方もそうですし、精度も上がりました。なので、みなさんもPDJのこの大会じゃないにしても、何か「この大会に出るんだ」という目標を持ってそれに向かって努力すると、確実にレベルが上がると思いますよ。一人一人のプレイヤーがそうやって目標を掲げることは、日本全体のレベルにも影響してくるんで、ぜひ頑張ってもらいたいです。「ただ投げてるだけじゃもったいないよ」と、「挑戦していこうぜ」といろんなプレイヤーに言いたいですね。