Vol.110 DRAルールブック
日本語翻訳プロジェクト改訂版発行

2021年9月号

日本のスティールダーツ業界全体での統一ルール化と世界進出を考えているプレイヤーにとって必読必須のルールブック

古畑 潤 Jun Kobata
自己紹介
初めまして、DRAルールブック日本語翻訳プロジェクト監修をしております古畑 潤(こばた じゅん)と申します。
今回、ダーツカフェDOLLiSの灰田さんからのご紹介で筆を執らせていただくことになりました。
私は大阪府在住の39歳で、2007年にソフトダーツを始めて、3年前まではプロツアーJAPANに参戦しておりました。
スティールダーツを本格的に投げ出したのは2012年からで、当時の仕事で千葉県によく滞在していた関係で千葉県ダーツ連盟のリーグに参加させてもらってから今年で9年になります。
スティールダーツを投げ始めた当初はソフトダーツと同じ感じで投げておりましたが、本格的にリーグや大会に出始めたらソフトダーツよりも歴史が長いスティールダーツなだけあってルールとマナーが細かく規定されていて格式や重みがあるなと痛感しました。

DRAとは?
そもそもDRAとは何だと思われる方も多いと思うので簡単に説明させていただきます。
DRA(ダーツレギュレーション機構)は英国のNPO法人でスポーツにおけるダーツ競技を優れたガバナンスシステムで守られるために存在しています。
DRA理事会のメンバーは元キャリア警察官、法曹関係者、酒蔵メーカーの元代表、元プロダンサーなどの様々なキャリア出身のメンバー達で構成されています。
そして、PDCおよびPDC傘下の関連団体の規律に関しても管理を行う第3者機関として、選手への制裁を科す機関でもあります。
PDCアジアンツアーやPDJのジャパンチャンピオンシップの大会はすべてDRAルールの下で行われます。
WDFでもDRAと同じような内容のルールが設定されております。

DRAルールブック日本語訳ができるまで
私が思うにスティールダーツの競技人口が増え始めた1つのきっかけは2009年から始まったPDCチャレンジトーナメントであると思います。この大会の東日本予選、西日本予選、ファイナルを動画配信で見る機会が増え、優勝者にはPDCワールドチャンピオンシップの出場権が与えられるという夢の大会で、このPDCチャレンジトーナメントを機にソフトダーツしか投げてなかった人がスティールダーツに触れる機会になり世界を目指せたと思います。(実際、私もその一人であります)
その中で大会やリーグでのルールは有るのに、共通ルールって無い事に気づいていましたが、ダーツという競技の特性上で必要なかったのかと当時は軽く思っていましたが、時がたつにつれミドルの際のブルに刺さっている状態で抜くのを希望する選手、抜かずにそのまま投げる選手が居たりして、統一的見解って無いのかなって再び思い始めた時に灰田さんがDRAルールブックの存在を紹介されていて、DRAのサイトに入って見てみても英語の辞書みたいなサイトで翻訳のページ使ってもニュアンスが無茶苦茶で(泣)
これは日本語訳が有ったら良いなと思っていたところ灰田さんがツイッターで「DRAルールブック日本語訳プロジェクト」を立ち上げられ、自分も何かお手伝いがしたいと灰田さんに申し出て、正式にプロジェクトがスタートしたのが、2018年11月2日でした。
当時、私は釣具の輸入販売の会社でバイヤーとして、ほぼ毎日のようにGoogle翻訳を使い倒してアメリカと英文でやり取りしていたので、英語の読み書きができない割には抵抗感が無かったです。

実際にプロジェクトが動き始めると翻訳を担当してくれた宮木慶彦、瀧川諒の両名は膨大な英文の翻訳をし、本当に大変な作業だったと思います。お2人の作業が出来上がり、私は上がってきた翻訳を纏めて読みやすく意訳する修正とルールブック文章全体のまとめ作業をしておりました。
そして、本プロジェクトに協力をしてくれた割石將弘さん、そして残念ながら今年の5月に亡くならました村瀬秀昌さんにも大変お世話になりました。この場をお借りし改めまして、お2人への感謝と村瀬さんのご冥福をお祈りいたします。
そんなこんなで、完成したDRAルールブック日本語訳を2019年2月12日19時に公開。
公開直後から「あの部分はこの解釈でいいのか?」とか、「この文面の意味が気になっていたのだよね~」とかの連絡を頂いたり、多くの叱咤激励(ほとんど激励)を頂戴しました。
そして、2018年から開催されているPDCアジアンツアーもDRAルールの下で開催されているので、自分も含め参加選手に貢献できたと勝手に思っております。
そして、発表直後に判明したのですが、DRAルールブックが改定されていたことに(泣)
翻訳作業がひと段落した熱も冷めやらない間の出来事でしたので、そのまま継続的にスタートしました。
現在のコロナ禍で外出も儘ならずに自宅でスティールダーツを投げる方がさらに急増し、またFIDOダーツの大会も開催される状況が多くなり、本ルールの改訂版を一刻も早く出さなければという思いはありましたが、私個人もこの3月より転職したばかりで、他のメンバーもそれぞれにコロナ禍での仕事や家庭の事情等もあり、改訂版を出すのに時間を要しました。

今回の改訂版での変更点
まず、今回の改訂版でいくつか変わった点があります。まず、ルールブックから喫煙の項目が完全に無くなりました。以前までのルールブックでは「メディアに映る場合のみ喫煙してはならない」と書かれていましたが、昨今の世界における喫煙事情を鑑みたのか項目自体が完全に無くなりました。英国では2007年に屋内での全面禁煙になり、日本でも2020年の東京五輪開催に合わせて健康増進法が2018年に改正になり原則屋内での禁煙が初めて法制化されましたので世界的に禁煙に関しては奨励されている分野ですね。
次に罰金について明文化されていたのが消えました。これも1度の違反で多額の罰金発生の可能性が高くなりました。DRAでは過去にステージ上で過激なパフォーマンスを行ったガーウィン・プライスに対して懲罰委員会が日本円で300万円の罰金と7ヶ月の試合出場停止処分を下しました。と言うことは、PDCアジアンツアーやPDJのジャパンチャンピオンシップでも違反行為や懲罰対象行為が発生した場合はDRAのルールに従い処分される事もあるので、参加を予定している選手の方々やメディア等で観戦される人達にも改めて改訂版を読んでいただけたら幸甚に存じます。
そして使用ダーツ用具関連の変更ですが、以前は細かなパーツ名が表記されておりましたが、本場PDC参加選手や欧州諸国のプレイヤーの成型フライトの使用率が格段に上がり、中にはシャフトとフライトが一体化されている商品もあるので、文面全体が変わりました。
そしてアンチ・ドーピング規則ですが日本でも一般社団法人JSFDがJADA(日本アンチ・ドーピング機構)に加盟したのは記憶に新しいですが、DRAもUKDA(英国アンチ・ドーピング機構)に加盟しており、DRAのアンチ・ドーピング規則はUKDAのルールを適用しております。日本のJADAも英国のUKDAも同じWADA(世界アンチ・ドーピング機構)傘下の団体に加盟しておりますので、JADAのサイト(https://www.playtruejapan.org/)にも一度目を通していただきたいです。
今回の改訂版ではアンチ・ドーピング規則の中でβ(ベータ)遮断薬の項目が特記されました。こちらはDRAだけでなくWDFでも禁止薬物指定ですので今後、国内のJSFDの大会にも適用されると思います。
最後に文面に関しては今回一番時間を費やしました。何故かといいますと、前回の翻訳版のテーマでも柔らかい文面を意識して監修したつもりですが、後々自分で読み返していても、硬い文章感が強いなと反省しておりましたので、今回は更に柔らかくしてみました。意訳って簡単そうだけど本当に難しいです。

今後の展望
翻訳版の改訂作業が終わり、翌日から監修の後記を書いておりますが、個人的な今後の展望としてはDRAルールブックの日本語訳改訂版作業に当たり、もっと沢山の方に協力を仰ぎたいです。
少人数で動いているプロジェクトですが、皆さんのご協力を頂き、いつでも誰でもルールブックを手に取っていただき、これから先に行われるPDCの関連大会、PDCアジアンツアー、PDJジャパンチャンピオンシップで世界を目指す方や各地域で行われるトーナメント大会、各地域でのリーグ戦を含めた日本のスティールダーツ全体の統一ルールになっていけたらいいなと思います。
このDRAルールブック日本語訳の版権は全てDRAに属します。この日本語訳版の使用や閲覧はフリーです、自由にお使いいただいて結構です。
最後になりましたが、新型コロナウイルス感染症による状況下で何かと不便の多い日々が続いておりますが、この状況が一日も早く解消され、平穏な日々が戻りますようお祈り申し上げると共に、解消された際は会場や各ダーツスポットで一緒にダーツしましょう!

ダーツレギュレーション機構 公式ルールブック(日本語訳)