Vol.15 アメリカダーツ事情
BULLS EYE NEWS
編集長 ジェイ・トムリンソン

2005年9月

アメリカでダーツブームの兆しが見え始めたのは、1970年代後半から1980年代の前半にかけて。地域ごとにダーツ連合が設立され、独自のトーナメントなどを開いていた。しかし、これらの協会の大部分はハードダーツのためのものだった。ブームの加速とともに、ルールやトーナメントの統一化が必要とされるようになり、1976年ようやくアメリカダーツ協会(ADO)が生まれた。

ADOは今日存在する多くのダーツ協会の先駆者的存在だ。現在アメリカ全土181の所属連合からなるADOは、アメリカで行われるほとんどのハード大会をその傘下においている。ADO公認トーナメントでは参加制限を設けず、プレイしたい者は誰でも参加できるようになっている。賞金も多彩で、下は千ドル程度のものから上は3万ドルまでと幅広い。これらのトーナメントの中でも、毎年開催され人気の高いものに、2万ドルの賞金が掛かったデザートオープンなどがある。その他、ラスベガスデザートクラシック(賞金18万ドル)、ウィンディーシティーオープン(賞金2万1千ドル)、ペンシルバニアオープン(賞金2万5千ドル)、ヴァージニアビーチクラシック(賞金3万ドル)、USAダーツクラシック(賞金2万ドル)なども人気のトーナメントだ。

一方、アメリカでソフトダーツが紹介され始めたのは1980年代のこと。中でも、ダーツマシーンメーカーのアラクニッドは、初期のソフトダーツ産業の牽引役となって業界を引っ張った。その後メダリストゲームズ、メリットインダストリー、ヴァリーダーツといった新規参入も多くなり、様々なマシーンと多くのソフト団体が入り乱れ、国レベルでソフトのゲームを統一する必要に迫られるようになった。そんな要望に答え、ナショナルダーツアソシエイション(NDA)が設立され、ルールやゲームの規格化をはかるため各ダーツマシーンメーカーが一同に会した。現在でもアラクニッド、ヴァリー、メダリストの3社はNDA会員であるが、残念なことにメリットはソフトダーツマシーンからは撤退してしまっている。

NDAでは、毎年独自のトーナメントであるチームダーツワールドチャンピオンシップを開催。今年は20周年記念ということもあり、賞金も42万5千ドルと大きい。大会参加資格はNDAメンバーのみに与えられる。メンバーになるためには直接NDAに申し込むか、各地域及び世界のNDA傘下組織を通して申請して欲しい。大会前、全てのチームは、登録を済ませ費用を払い、参戦資格を得るわけだ。各プレイヤーはレーティング取得のため、その大会のシーズン中に規定数のゲームをこなしていなければならない。このレーティングによって参加クラスが決定される。この方式のため、メンバーでない人や当日参加などは認められないのだ。

NDAチームダーツワールドチャンピオンシップでは、国際チーム向けのイベントも同時に開催される。ワールドチャンピオンの称号を賭けて、世界から集まったプレイヤーたちがダーツの腕を競うのだ。このイベントに関しても参加資格はオープンではない。全てのプレイヤーが、あらかじめ登録しなければならないので注意して欲しい。

アラクニッドが今日でもNDAメンバーであり、ソフト業界第一人者であることに変わりは無いが、彼らが独自に一連のトーナメントを開催しているのも事実だ。ブルシューターワールドシリーズと名づけられた本シリーズには、アメリカ全土を席巻する各地域大会を始め、毎年シカゴで開かれるブルシューターワールドチャンピオンシップ(賞金12万ドル)なども含まれる。ブルシューターワールドチャンピオンシップにおいて最大の目玉は、なんといってもブルシューターインターナショナルカップチャンピオンシップだろう。名声を約束する勝利を目指し、毎年この大会を心待ちにしているプレイヤーたちが世界中から集結する。過去に参加経験がある国は以下のように多彩な顔ぶれだ。日本、香港、中国、オーストラリア、スペイン、カナダ、オランダ、スロバニア、UK、メキシコ、ポルトガル、ドイツ、ベルギー、イタリア、そしてもちろんアメリカ。アラクニッド主催のこの大会も今年で20周年という節目の年を迎える。

アラクニッドのレーティング方式はプロとそれ以外に分れていて、ブルシューターワールドチャンピオンシップでは地域戦からそれぞれのカテゴリーで戦うこととなる。参加のためには、毎年資格を取得しなければならない。通常のリーグ戦などを経てこの資格を得るわけだが、そのほかにもリーグのオペレーターやディストロビューターを通して与えられる場合や、ブルシューター地域戦での高得点フィニッシュなどでも取得可能。この資格を得ると、プレイヤーは4〜5のメインイベントに参加でき、トップガンシングルスやトリプルといった付随するイベントには参加し放題。各地域戦は参加自由で、大会当日の登録もできる。

アラクニッドに並び、メダリストゲームズもソフトダーツ普及に尽力している会社であり、地域ごとのチャンピオンシップ大会を主催している。さらに、毎年メダリストワールドチャンピオンシップトーナメントを開き、その賞金額は40万ドルにも及ぶ。これらの大会に参加するためには、メダリストプレイヤーでなければならない。もちろん対戦レベルを決めるレーティング取得も絶対条件だ。各参加チームは大会当日朝エントリーを済ませ、メダリストワールドチャンピオンシップメインイベントへ望む。惜しくも敗れたチームは、その後夜開かれる別イベントに参加が可能だ。このモンスター大会出場のため、毎年世界各国からソフトダーツのプレイヤーがラスベガス目指してやってくるのが恒例になっている。

もう一つ忘れてはならないアメリカ国内のダーツ協会がある。アメリカンダーツアソシエイション(ADA)だ。この団体は12年ほど前に結成され、ソフトだけでなくハードのリーグもその傘下においているのが特徴だ。彼らのトーナメントでは、アメリカで唯一ソフトとハード両方のイベントが同じトーナメントの中で戦われる。更に、ソフトハード共に一般リーグだけでなくハンディをつけたリーグも開催し、アメリカダーツ団体の中でもユニークな存在となっている。ADAではこのハンディのつけ方をニュートラライザーシステムと呼んでおり、各プレイヤーのスキルレベルによってレーティングが決まる。ADAは地域トーナメントに並び、年に一度全国大会となるナショナルチャンピオンシップも開催している。しかし、参加資格はメンバーのみに与えられるものだ。ADAのメンバーは、あらかじめチームとしてナショナルチャンピオンシップにエントリーすることによって、他の様々なイベント参加資格を得る。

アメリカにある各種のダーツ団体は、ほとんどのところでシーズン毎のリーグ戦を催している。これらは通常週一回行われるもので、シングル、ダブルス、チームでの対戦方式を採用。団体毎にプレイされるゲームのタイプは違うが、ほぼ何処でも301のダブルインダブルアウトと501のストレートインダブルアウト、そしてクリケットとチーム戦の01ゲーム(1001などという高いレベルもあり!)などがプレイされている。ソフトハードに限らず、どの団体でもプレイヤーのスキルレベルによってレーティングを定めており、同レベルで6〜10チームが対戦できるようなレベル分けになっている。アメリカでは、どの街にも必ず1つはダーツバーがあるので、手軽にゲームを楽しんだり友達の輪を広げたりすることができる。

過去4年にわたって、プロフェッショナルダーツコーポレーション(PDC)が、ラスベガスで開催されるデザートクラシックハードダーツトーナメントを主催してきた。このトーナメントはビッグな賞金18万ドルに加え、テレビでの生中継でも話題の大会だ。ステージ上でゲームができるベスト32(女子の場合ベスト4)にクオリファイされるチャンスが4回もあり、誰でも参加自由。だが全てのプレイヤーが、締め切り日までにエントリーしておかなくてはならない。メイントーナメントのみならず、予選にも賞金が出るのがこの大会のうれしい特徴だろう。PDCはアメリカにおいても、才能あるプレイヤー達がテレビ中継などを通して自身の実力を示し、プロとして活躍できるような環境を作るべく、この大会の門戸を全てのプレイヤーに向かって開いているのだ。

ブルズアイニュースは、アメリカで刊行されているダーツ雑誌。各ダーツ団体やディストロビューターの情報ソースとして広く親しまれている。毎号トーナメント日程を完全網羅し、プレイヤーのトーナメント選びに大きく貢献している。PDCデザートクラシックには特に力を入れ、毎年7〜8月号には参加申し込み用紙の付録や、同大会のプログラムも付いている。トーナメントの広告掲載も多く、プレイヤーにとっては参加資格などの詳細情報が一目瞭然だ。アメリカでトーナメント出場を考えているなら、参加資格情報や正確な日程などを知ることが不可欠。皆さんの情報源としてブルズアイニュースが大活躍すること間違いなし!まずは一度ウェブサイトを覗いてみて欲しい。
※現在は廃刊となっております。