Vol.88 WDF WORLD CUP XXI
2017 Kobe Japan

2017年11月

2017年 10月3ー7日 日本ダーツ界が新しい歴史を刻んだ
ダーツ世界組織として最も歴史のあるWDFが主催するワールドカップがついに日本で開催された。
今までに多くの国に日本代表を送ってきたがホスト国として今回はどんな大会が準備出来たのか?
日本代表の戦いは?各部門優勝者、WDF代表などのインタビューを通じて大会の全貌をお伝えしよう!

まず知っておこうダーツの世界組織の存在
1976年設立 ダーツを繋ぐ世界組織 WDF(World Darts Federation)
WDFは世界の約69ヶ国と地域で構成された国際的なダーツ組織。1976年に設立され、会員数は50万人ともいわれる。アマチュアの国際大会では最高峰であるワールドカップもWDFが開催しており、2年に一度奇数年にワールドカップを開催し、遇数年はヨーロッパカップ、アメリカカップ、アジアパシフィックカップを開催。2010年と2016年には日本がアジアパシフィックカップの開催国となった。
また、WDFは国際スポーツ団体連合(GAISF)やWADA(世界アンチドーピング協会)にも加盟し、ダーツを国際スポーツとしての不偏的な地位確定を目指している。また、世界のダーツプレイヤーからの$1募金運動を背景にオリンピック競技になるように各界に働きかけ、日本ではJSFDがその役割を担っている。
※GAISFとは世界3大陸30ヶ国以上が加盟している、国際競技団体(IF)が集まってできた世界最大の国際スポーツ連合組織(世界約100団体)。

WDF (World Darts Federation) / 世界ダーツ連盟)実行委員会
Executive会長 BILL HATTER(カナダ)
副会長 BUDDY BARTOLETTA(USA)
名誉会長 OLLY CROFT OBE(イングランド)
財務 SABINE SHANAHAN(ドイツ)
事務局長  SIJIMON TIMMERS(オランダ)
渉外  TAINA NURMELA(フィンランド)
カップディレクター ROY PRICE(ノルウエイ)

JSFDはWDFより公認されている日本唯一の組織
WDFの規定により1国1窓口となっているため、日本ではJSFDが全ての権利を有する。勿論WDFより認められた国際大会を開催できる組織はJSFDだけとなる。

JSFDが有する権利
・WDFワールド・カップ出場権
・WDFアジア・パシフィックカップ出場権
・BDOワールド・マスターズ出場権
・加盟各国WDFランキングトーナメント出場権

JSFDの理念 「全てはプレイヤーのために!」
世界への窓口であるJSFDは日本中のプレイヤーが平等に参加できるように、全てのダーツ団体、プレイヤーに門戸を開いている。選手は登録することにより世界へ挑戦する第一歩となる。
・世界の窓口としての責任を全うする。
・スポーツ競技として社会貢献する。
・ダーツの社会的地位の向上を目指す。
・プレイヤーのレベルアップを図る。
・日本ダーツ界の更なる繁栄と発展に協力する。
・営利を目的としない健全な競技の運営を行う。
・日本でワールド・カップを開催する。

世界各国から30ヶ国以上、スタッフを含めると500名以上が来ているだけに会場は熱気に溢れていた。言葉は通じないがダーツのルールには国境が無い。真面目一方でプレイする選手やニコニコしながらプレイする選手、それぞれに個性が光っていた。それにしても日本は世界からすると地理的には遠くに位置する国だ。本当に来日していただいたことに感謝したい。多くの選手とお話をしたが、素晴らしい人たちだった。改めてダーツの輪は広くて大きいことを思い知らされた。

毎回ワールドカップではその国の特色が出るが今回の神戸大会では神戸学院大学の生徒たちの力は大きかったのではないだろうか。英語に堪能な学生が多く、選手たちとスムーズにコミュニケートすることが出来た。会場内はほとんどゴミ一つ落ちていない、など本当によく働いていた。残念なことは英国が参加しなかったことや会場立地条件などで観客が少なかったことだろうか。また大きなニュースとなったが開始直前にマーカー問題などが起き、かなり大会が危惧されたが、結果としてはたくさんの経験ある日本選手が会場に訪れボランティアでその大問題を解決した。日本はやはり素晴らしい国、誇りに思いたい!

World Cup Results



World Cup – MEN 優勝 Australia

World Cup – Women and Youth 優勝 Netherlands

World Cup 日本代表男子インタビュー
日本初開催のワールドカップはいかがでしたか?
榎股 正直なところ、もっとプレイに集中出来ればと思いました。
雰囲気はワールドマスターズやレイクサイドに近いですね。チーム戦に関しては、難しいの一言です。相手も強かったんですけど、オーダーの組み方などを次に生かせる様にしたいです。ペア戦は惜しかったんですけど、ダブルを確実に決めないと勝てないですね。
日本のスティールではダブルをしっかり練習するように言われると思うんですけど、20トリプルと同じ感覚で入れられるようになるまでにはまだ時間がかかるかなと思いました。シングルスも同じ様な負け方をしてるので、結局ダブルになってくるんでしょうけど、そのダブルをいかに楽に投げられる様になるかの練習が必要だと思います。

左より:榎股 慎吾 饗場 克也 樋口 雄也 小川 祐一郎

饗場 私は4年前のカナダ大会にも出させていただいてるので今回は二回目になります。初の日本大会は、スタッフの方々の努力もあり成功したと思います。
自分ではもう少し出来たのではないかと思いつつ、やはりまだ世界との差を感じますね。決め切らないと勝てない。ダブル云々ではなく、ダブルに至るまでの経緯も含めて、決め切らなければ絶対勝てないです。で、相手に回ってしまったらもう回って来ない、という圧倒的なレベルの違いを感じました。
全体的なレベルをもう一段上げないと世界から離されてしまうので、今後はその課題を含めて、もっと頑張っていきたいと思っています。

樋口 開幕する時のオープニングセレモニーで僕たちが入場して来ると、各国の選手達がスタンディングオーベーションで迎えてくれました。ホスト国の代表に敬意を表してくれることに鳥肌が立って、こういうところに世界の文化的な高さを感じましたね。
日本の各地域から駆けつけてくれた人達が「世界のダーツとはこういうものなんだ」と感じられたことにも、日本開催の大きな意義があると思いました。
世界とのレベルの違いに関しては、一足飛びに同等に出来るとは思っていません。例えばサッカーもそうですが、世界の強豪国と対戦して同レベルのプレイをすることは出来なくても、まったく勝負にならない訳ではないですよね。僕たちもオランダのペアと最後までほぼ対等に戦えましたし、そこの差を少し縮めれば充分勝負することは出来ると思いました。
ただレベルに差があるのは間違いないので、個人レベルでもチームとしても今後ますます頑張っていかねばならないと思っています。

小川 今回初めて日本代表としてワールドカップに参加させていただきました。個人的には雰囲気に呑まれてる部分もありましたけど、日本での開催という点では安心出来るところもありました。自分の中で緊張感が上手く保てない様な、つかみどころの無い雰囲気でした。
世界との差については他の3選手と同じで、もっとやれたのではないかというのもありますし、足りない部分も十二分に感じました。同時にこの大会で感じた差を一つ一つ埋めていく努力をしながら、また挑戦したら次回は勝てるという自信にも繋がりました。

World Cup 日本代表女子インタビュー
今回のワールドカップはいかがでしたか?
川上 今回はチーム戦とダブルスとシングルスの3つに出場させていただきましたが、チーム戦で3位に入ることが出来ました。日本はワールドカップでのチーム戦は初出場で、そこで初入賞出来たのは本当に嬉しいです。正直ここまでの道のりは簡単ではありませんでしたが、みんなで力を合わせて頑張れたので良かったです。

左より:齋藤 尚美 新 亜紗子 鈴木 未来 川上 真奈

鈴木 今回私はワードカップ初出場でした。チーム戦は特殊で、体力以外のものをものすごく消耗していたようで、当日の夜は本当にくたくたになりました。
次の日がダブルス、その次の日はシングルスでしたが、もう少し頑張れるだろうという予想に反して結果が出せませんでした。このことを教訓にまた練習を重ねて、次回は全部の種目でメダルを獲りたいと思います。

新亜紗子 こんなにたくさんの国の人達と、同じ会場でプレイすることが日本では初めてのことだったので、すごく新鮮で楽しかったです。

齋藤 日本代表になること自体が初めてだったので、とても緊張してこの場に来ました。チーム戦は他の3人が引っ張ってくれて自分のダーツが出来ましたし、ダブルスは私が全然ダメでしたがペアの川上真奈ちゃんに助けてもらってなんとかやれました。いろんな国の人とダーツをすることがないので、とても楽しかったです。

世界レベルのダーツを見てどう思いましたか?
川上 一週間前にBDOとレイクサイドの予選に出させていただいたんですが、その時に世界のレベルの高さが痛いほど分りました。普段ソフトしか投げていない環境の中で、常にハードを全力で投げているプレイヤーに適うはずはなくて、そこでまず違いが明らかに出ていました。
かといって今の自分がスティールメインに投げることは難しいですが、もし来年また海外で試合する機会があったら、どういう形にせよ今の何倍も成長して挑みたいと思いました。
正直、入れる感じは全然負けてないと自分では思いました。決定的に足りない部分は、上がりが出来るだけ速く回って来るようにアレンジする力と、上がりをミスしないようにすることです。
今回日本人選手は上がりのミスでほぼ負けていました。そこを鍛え直して、「入れて当たり前」というくらいになれるまで頑張りたいと思います。

鈴木 私も先週イギリスに行っていたので、世界にはいろんな選手がいて、日本よりも強い選手がたくさんいることはよく分っていました。ワールドカップはみなさん各国の代表なので、知らない選手でもさすがに強かったですね。でも削りで負けているかと言うと、決してそうでもなかったと思います。今回のワールドカップでは、ダブルの考え方を改めようと気付くことが出来ました。

新亜紗子 ここ数年海外に行かせていただくことが多かったので、海外のレベルの高さは分っているつもりです。それに比べるとワールドカップは、各国の代表として国を背負ってプレッシャーを感じているのか、普段よりも若干硬い印象の国も見受けられました。
逆にチャンスも感じられて、「まだ戦える」という印象が垣間見えました。
それよりも驚いたのはユースのレベルの高さです。今後日本がスティールで世界を狙うなら、若い選手達の教育を他の国に倣ってやっていくことが重要だと思いました。そうしなければいつまでたっても、差は埋まらないどころか広がっていく一方だろうというのを強く感じました。
ダーツ業界も真剣に若手を育てるということに目を向けないと、この先追いつくことは難しいだろうと思います。とにかくコーチがしっかりしていて、飛ばし方もアレンジもほぼミスが無かったです。一体誰が教えてるのか、どういう教育を受けているのかと、もう興味しかないですね。

齋藤 投げ方も選手によってそれぞれで、本当に入れるダーツをしていた印象でした。ダブルも全然意識しないで、上がり目が出たら上がるというのが当たり前で、日本とは感覚が違うのかなと思いました。あとはアレンジもそれぞれあって、みんな得意な数字を持っているのかなという印象がありました。

Bud Brick Memorial Tournament
Women Single優勝 鈴木 未来インタビュー
バドブリック・メモリアルトーナメントでの優勝、おめでとうございます。
ありがとうございます!

決勝の試合はどのような感じでしたか?
特に緊張したりはしないで、いつも通り投げることができました。

相手の選手はワールドカップ女子シングルス優勝スウェーデンのヴィッキー選手でしたね。試合はどのような展開でしたか?
削りが良かったので4―0でストレート勝ちしました。相手が調子を上げて来る前に終われたかなという印象の試合でした。彼女に勝てて自信が付きました。

ワールドカップが初めて日本で開催されましたが、全体的な印象としていかがでしたか?
シングルスももっと出来たかなと思います。ダブルスもチーム戦も全てにおいてまだまだ頑張れると自信になりました。

今回は最後のバドブリック・メモリアルで優勝されましたが、ワールドカップでも何か獲ってくれるんじゃないかと期待してましたよ。
そうですね。もっと強くなりたいと思います。自分でも力を出せなかった感じはありますね。

世界の選手と対戦した印象はいかがでしたか?
どの選手も削りが速くて、簡単に上がって来るという印象だったので怖かったです。さすが各国を代表して来ている選手達だなと思いました。

男性は投げるのが速いですが、今回は女性選手のスピードの速さに驚きましたね。
そうですね。日本のプレイヤーは遅めの選手が多いので、比べると外国選手は速めですね。きっと普段の練習のスピードもあのくらいなんでしょうね。

日本の選手とはリズムが違いますよね。
リズムも違うし削れる量もスタッキングも違いますね。そういうところをこれから身に付けていきたいと思いました。

鈴木選手はジャパンレディースでは絶対的な強さがありますよね。
そんな、結構しんどく戦ってるんですけど(笑)。

改めてソフトとハードの違いを何か感じましたか?
ハードは削れていても上がらないと意味が無いですよね。削れていくと結構安心するんですけど、上がり切らないと勝負には勝てないです。ソフトも同じなんですが強いて違いを言うなら、外す怖さか、入れないといけないという怖さの違いでしょうか。

普段はソフト中心だと思いますが、ハードを投げることもありますか?
練習としては地元のリーグに出たりしていますし、家で投げるのはほぼハードです。でも割合で言うと8割はソフトですね。

ハードとソフトでは、どちらが好きとか得意とか、違いはありますか?
切り替えには多少の時間がかかりますが、同じ様な感覚で狙っているので特に違いは感じないです。

世界規模では日本人選手はまだ弱いという印象ですが、鈴木選手は今回見事に優勝されました。今後もタイトルを獲れるという手応えはありますか?
世界でも通じるかなという部分があるので、それをどれだけ出し切れるかだと思っています。これからも来年再来年とずっと海外に挑戦し続けていきたいと思っているので、まずは代表選手になってマスターズに出る権利などを狙っていきたいと思っています。

ソフトではジャパンレディースで年間チャンピオンですが、世界の舞台ではどのような目標をお持ちですか?
『ザ・ワールド』にも出場しているんですが、現在女子の最高が32位なので、もう少し順位を上げることがソフトの目標です。

ハードでも近いうちに大きなタイトルを獲りたいですね。
はい。ハードではワールドマスターズやレイクサイドのタイトルをまず狙いたいと思っています。毎回出場できる様に、一年かけて自分の実力を伸ばしていくように頑張りたいと思っています。

最後に読者にメッセージをお願いします。
本当にたくさんの方が日本の応援をしてくださって、すごく力になりました。シングルスもダブルスも、みんなでポイントをたくさん取れば全体的な順位を上げていけます。
次のワールドカップは二年後ですが、そこに向けて一生懸命練習していきますので、これからも応援よろしくお願いいたします。

Ending
今回のホスト国日本代表が壇上に上がると会場全体から大拍手!代表選手はそれに応える満面の笑みでワールドカップ会場はすべてのイベントを終えた。さてこれから日本のダーツレベルはどのように進化するのか?このような世界ステージでも常に優勝を争うような強国になれるのか?ヨーロッパではスティールダーツがメインだが、そこにアジア選手は風穴を開けることができるのか?これからも見守っていきたい。

Party
最終日の夜に場所を近くのホテルに移してパーティーが開かれた。選手たちは各テーブルを移動して乾杯で挨拶。終盤に差し掛かると自然に会場中央で選手たちが輪を作り始めた。そして大合唱!We are the World、We are the children…。ダーツを通じて言葉を乗り越えた瞬間だった。次回は2年後のルーマニアで予定されている。誰もが再会を誓い合ったことだろう…。