2015年11月号
この舞台は本当に楽しい
男子決勝は圧巻のストレート勝利
ついにPDCの舞台に挑戦できる
小野 恵太 Keita Ono 優勝Interview
PDJ優勝おめでとうございます。
ありがとうございます!
昨日はパーフェクトの試合でしたが結構ダーツ飛んでましたね。
はい。昨日も気持ち良く勝てたんですよ。
今日もいいところまで行くだろうなという感じでしたが予想通りでしたね。
昨日一日通して12〜13試合あったせいか、今日の序盤は体がいまいち動かなかったんです。でも試合を重ねるごとに少しずつ思いきって投げられるようになってきたなという感覚があって、最後は最高でしたね(笑)。
PDJFINALの挑戦は何回目ですか?
2回目です。最初は2013年で、その時は準決勝で橋本選手に負けて3位タイでした。
今年は特に選りすぐりの選手が集まっているようでしたが、その中で戦うことについてはいかがでしたか?
僕は最後の最後の一枠をいただいた感じだったので、本当に拾ったなと思う反面、一番思いきっていけそうだという感触はありました。
決勝はストレート勝ちでしたね。
決勝はとにかく思いきって投げようとそれだけでした。PDJではまだまだ僕はチャレンジャーで、未だ経験のない優勝を求めていくという感じだったので、気持ちよくダーツが出来たらいいなと思ってました。
負けたら終わりで勝ったらイギリスですが、あまりイギリスを意識し過ぎないようにと思いました。そうしたら最後は「なんか狙った所に入るな」というような感じで……(笑)。そこが昨日とは違うところですね。昨日は2年ぶりのパーフェクト優勝が欲しいと思って投げてましたから。
昨日のパーフェクトでも自由自在に投げてるような印象を受けました。
昨日はトーナメント表もかなりきつかったんですよ。きつい山だからこそメンタルが徐々に強くなっていって勝ち進んでいくという感覚でしたね。きつい山だと負けちゃう可能性もあるんですけど、勝つと自分がどんどん強くなっていくような気がして、昨日はそれがかなり上手くいったと思います。
今日は一試合目こそ硬かったなと思うんですけど、試合が進むにつれどんどん腕が振れるようになってきて楽に投げられるようになりましたね。
準決勝では263から170にしましたが計算してのことですか?
イメージ的には一本目に19投げて、入ったらそのまま19投げようと思ってたんです。そうしたらシングルだったので60にいこうと投げたら、狙いにくいシングルに入ってしまったんです。それで計算したら93点で170ぴったりだから、これの方がいいなと思って投げたらきれいに入ったんです。次は気持ちよく170いこうという感じでしたね。
これでいよいよPDCのワールドチャンピオンシップに出場できるわけですが、お気持ちはいかがですか?
いやもうわくわくしかないですね。BDOのワールドマスターズでは派遣の経験があるんですけど、PDCといったらダーツがある程度出来るようになってからはずっと憧れでしたからね。自分が行けると思うと本当に心が躍ります。変な試合をして負けたらどうしようという気持ちより、この人達と同じ舞台で真剣なダーツが出来るのかという楽しみの方が全然大きいです。
橋本選手と村松選手に続いて3人目のニューフェイスとして出場する意気込みはいかがですか?
ハードの方が思いきっていけるんで、とにかく思いきって投げたいですね。ソフトは変なプライドがあるんですけど、ハードは過去のイギリスの経験でも余計なことは考えないで思いきっていけるんです。勝っても負けても気持ちよくプレイしたいと思っています。
プレリミナリーを突破するとさらにすごい選手がたくさん登場してきますね?
いくら良いダーツをしても負ける可能性はあるので、「抜けなくちゃ」というより、PDCの空気感を楽しみたいという気持ちの方が強いです。こういう経験はそんなにできるものではないので、良い経験が出来る、自分の今後のダーツ人生において大きなプラスになるだろうという気持ちが大きいんです。PDCの素晴らしい舞台に自分が立てるという事自体が誇らしいし、そこでもし勝てるものなら一つでも勝ちたいと思っています。
小野選手には期待の声も大きいと思いますので、ぜひ頑張って新しい扉を開いてほしいですね。
「この試合に勝ったら日本人初」というのを意識するのではなくて、一つ一つ段階的に勝ち進んでいけたらいいと思っています。
ソフトの試合もまだ残っていますが、これからはハードの練習もしないとならないですね。
そうですね。でも「ハードやらなきゃ」と変に構えるよりも今の自分を出せる方がいい気もするんですよね。もちろん練習もしますけど、とにかく楽しみな気持ちが強いんです。だってそうじゃないですか、緊張したってしなくたって勝てないものは勝てないですから。今は自分のレベルがどこまで通用するのかというのが楽しみなんです。
応援してますので頑張ってください。
ありがとうございます。頑張ります!
PDJ FINALで感じた事
ついに歴史が塗り替えられた
Darts Cafe Bar DOLLiS 灰田 裕一郎 Yuichiro Haida
今年もPDJファイナル観戦してきました。ワールドチャンピオンシップに日本代表として出場選手を決める試合、その会場で緊張に包まれた空気に触れ、ハイレベルなダーツに興奮しました。いちダーツファンがPDJ FINALを振り返ります。
今年のPDJで個人的に注目していた点は:
日本初となるPDCイベントジャパンマスターズが6月に開催され、本場の雰囲気を多くの人が体感したが、それがPDJに影響するかどうかということ。
そしてやはり注目選手として6回中4回の優勝を誇り、今年PDPAツアーカードを取得した村松治樹選手も目が離せない存在。
また今まで団体からの代表選出をボイコットし続けていたJDAが初めて団体代表を送りだしたことにより、12名により争われる初のPDJファイナルとなったこと。
さらにはお馴染みPDCコーラーのラス・ブレイがいない初のファイナルであること。
これらの注目点を主に今回のPDJ FINALを振り返りたいと思います。
「PDC初開催後のPDJということ」
例年PDJファイナルの会場内はとても静かです。
PDCへ代表を出すためのPDJということでPDCと比較されることが多いPDJですが、会場の雰囲気は本場PDCとはまったく違います。今年PDCジャパンマスターズが開催された時はPDJのこともあり、まったく盛り上がらないんじゃないかと心配されましたが、蓋をあけたら本場イギリスのPDC会場に負けず劣らずな盛り上がりで関係者を驚かせました。
そんなこともあり、今年のPDJファイナルの会場はガラっと雰囲気が変わるんじゃないかという淡い期待をもっていました。PDCのように盛り上がるかもと。
しかしそんな期待はどこへやら、今回のPDJファイナルも例年と変わらず仮装もなければ歌も合唱もないいつも通りのPDJでした。PDCの会場で仮装して叫んだいた人たちもPDJでは仮装せず大人しく観戦されていました (笑)。
やはりPDCはPDC、PDJはPDJのようです。ここは日本だし、日本人の観戦スタイルはこれなんだなと。独自のしずかな雰囲気も緊張感があって悪くないし、これが日本ならではのPDCチャレンジトーナメントということでしょう。
昔のburn. JAPAN TOUR 2005の決勝会場もそうであったように、こういう試合は静かに見入ってしまうのが日本人なのかもしれません。PDCを真似て無理して盛り上げるものでもないでしょうし、ハードダーツが今後さらに浸透していけば自然と変わってくるのかもしれませんね。
「出場選手と試合の流れ」
いつものことですが、今年の出場者も誰が優勝してもおかしくない顔ぶれでした。開会式直後の4試合を見て今年も確実にレベルアップしていることを感じました。そして試合が早いなという印象も。投げるリズムもそうですが、各選手アレンジ、点数計算などに戸惑うことが少なくなっていること、そしてスタッツの上昇が要因でしょうか。
2回戦目に入りPDJマスター村松治樹選手が登場。PDJ史上最高となるスタッツを叩き出しての完勝でした。初戦を観てやっぱり今年も村松治樹なのか?そう思った人は多かったんじゃないでしょうか。それぐらい素晴らしいダーツをしていましたね。
1回戦がシードだった選手は4名、うち2名が初戦を落としました。見ていて思ったのですが、負けたシード選手2名は1回戦を勝ち上がってきた相手に流れで乗り遅れてしまったように見受けました。
そしてセミファイナルで歴史が動きましたね。山田勇樹選手がPDJの絶対王者 村松治樹選手に勝利!今回のPDJで一番のキーポイントになりました。この時は会場も湧きましたね。山田選手が勝ったこと、そして新たな歴史が動きはじめたことへの期待感みたいな空気でした。もうひとつのセミファイナルは井上晋太郎選手と小野恵太選手。
井上選手はハードダーツの経験はまだ浅いですがソフトダーツの国際大会で大活躍している、今乗ってるプレイヤーのひとり。そして小野選手はもともとハードダーツでの実力も認められているうえにイギリスでの試合経験もあるプレイヤー。PDJファイナル前日のパーフェクト横浜大会で久々の優勝をして乗り込んできているということで注目カードでした。この試合から小野選手はT20が合ってきてました。それに加えこの試合は井上選手のダブル決定率がよくなかった。井上選手が力を発揮する前に小野選手が振り切り決勝へ。
「圧巻の決勝戦」
山田選手と小野選手というどちらが勝っても初の代表という決勝でしたが、決勝はもう小野選手のスイッチが完全に入ってしまいました。小野選手のT20、D20がもう完璧に合ってました。
6ー0というスコアがその凄さを物語っていますが、チェックアウト率、アベレージも素晴らしかった。PDCへ日本代表として送り出すのに、誰もが納得の内容でした。ワールドチャンピオンシップでも小野選手の素晴らしいダーツを期待したいと思います。
「シード制のトーナメント」
予選上位者のシードシステムに関して少し自分の考えを。現在のシステムでは東西予選で1位、2位だった選手が1回戦シードということになっているのですが、はたしてこの1回戦シードというものが有利になっているのかどうかということを再検討した方がいいのではないかなと思いました。
シード選手が初戦に相手する選手はすでに1度試合をして勝ち上がってきた選手です。当然会場の雰囲気にも慣れているし、1試合こなしている有利性があるように思うのです。
実際、何人かのシード選手に「1回戦から試合するのと1回戦シードではどちらがよいか?」と尋ねると「1回戦から試合をしたい」「同じ条件でやりたい」と答える選手の方が多かったです。
予選で高い成績を残した選手に対し、ファイナルで優位性を与えるのは良いことだとおもいますが、1回戦シードにするのではなく、組み合わせ枠から好きなところを成績上位者から選べるようにする方がよいのではないかなと思いました。
また現在の12人制でのファイナルを16人制にする方向性も考えてみていただきたいと思ってます。現在は予選通過者が東西で8名、これに各団体選出者の4名です。
案としてはこれに日本国内を4つに分けてそれぞれの地区ごとの地方代表4名を加えて16名にする。ファイナルは2日開催にして1回戦の8試合を前日に行い、決勝日はベスト8から。レッグ数増やしてもいいし、BDOのように2レッグ先取の1セットを3セット先取で行うというのもありじゃないでしょうか。今後PDJファイナルの進化系としてこういう方向性もぜひ考えていただけると嬉しいです。
「ラス・ブレイの不在」
代役のビル・ロングが本当にがんばっていらっしゃいました。あれだけの試合数をひとりでコールするのは容易いことじゃありません。ラスの不在を彼なりに埋めてくれていたと思います。本当にお疲れ様でした。
「ダーツ界の将来を見据えて」
これまた個人的要望なのですが、いずれはユースやシニアの人たちの試合もPDJファイナルで行って欲しいなと。すぐは無理かもしれませんが、検討していただきたい案件です。
日本ハードダーツ界は世界的にみてユース育成が遅れています。そして高齢化が進む中、生涯スポーツとしてのダーツが注目されつつあります。
これからのダーツ界を考えると、この2つの世代の方たちは外せません。PDJは国内のスティールダーツで間違いなく一番のイベントだと思います。なので今後はレディースとあわせてユース育成、シニアの支援も考えていただきたいと思います。2日開催になれば実現できなくもないと考えてます。
「最後に」
日本のソフトダーツはburn.というトーナメントによってすべてが加速しました。そして日本のハードダーツはPDJによってレベルがあげられているといっても過言でないでしょう。
PDJはいまや日本のスティール界には不可欠なイベントになりました。これからもワールドチャンピオンシップに選手を送り出すだけのトーナメントにとどまらず、スティールダーツ界を牽引するビッグイベントに成長していってほしいとダーツファンは願っています。
大会関係者様をはじめ、予選から参加されたすべての選手、かかわった多くの皆様、お疲れ様でした。
そして小野恵太選手おめでとうございました!ワールドチャンピオンシップでもぜひ活躍してくれることを期待しています。