Vol.106 大和久 明彦
目標は年間チャンピオンになること

2021年1月号

僕は昔からストイックで有名なので練習あるのみです。
練習さえしていれば必ずプラスになると思っているので、努力を積み重ねて、一つずつプラスを増やして行くのが僕のやり方です。
もしもマイナスになることがあるとしても、そのマイナスは経験になります。

ダーツとの出会いを教えてください。
始めて投げたのは2005年です。元々ビリヤードをやっていたんですけど、そこにダーツがあったのでビリヤード仲間と投げ始めました。15年くらい前でダーツ歴は長いんです。

真剣に投げ始めたのはいつからですか?
すぐ真剣になりました。ビリヤードと違ってダーツはカードでデータ管理ができるじゃないですか。それで自分の数値を上げるのが楽しくなっちゃったんですよね。

プロになったのはいつですか?
2012年のJAPANができた年にライセンスだけ取りました。でも試合には出ていません。2015年からツアー全戦を回り始めました。

2019年は17位という成績ですね。満足されていますか?
満足はしてないです。でも、ぼちぼち土台はできてきたかなという感じです。

JAPANについてはいかがですか?
僕にはJAPANが合ってると思いますね。ダーツライブしか投げたことがなかったのでJAPANのプロの面子にも親しい人が多くて居心地がいいです。
ダーツライブの延長にプロが出来たので、一応取ってみようかなという軽い気持ちでプロ試験を受けたんです。当時はまさかダーツプロで生活できるようになるとは思いもしませんでした。

今までで印象に残っている試合はありますか?
初めて決勝に出て初優勝した試合ですね。2017年の名古屋大会で、相手は大城正樹選手でした。勢いに乗ってハイスコアで勝ちました。

ではその日は調子が良かったんですね。
いえ、それが全然良くなかったんです。予選から全然入らなくて渋い試合ばかりでした。勝てる試合ではなかったと思うんですけど運が良かったんですかね、あれよあれよという間に決勝に行ってしまったんです。
そうしたら決勝では快勝したんですけど、この日イケイケなダーツをしたのは決勝だけでしたね(笑)。すごく嬉しかったですね。

2020年はステージ18の岡山で終わってしまったわけですが、どういう気持ちでしたか?
この状況では仕方ないとあきらめました。
今までは試合に追われながら調整していたので、この機会に改めて自分を見直してみようと思いました。試合のできないこの期間に試せるものは全部試して、変えるところは変えて、一から調整してみようとプラスに考えました。ジタバタしてもどうにもならないので、だったら今のうちに出来ることをやろうと考え方を切り替えました。

ステイホーム中は家で練習していたのですか?
そうです。通信で対戦できるボードを買って、いろんな人と対戦しました。それから配信しながら投げたりもして、家でもなるべく練習できる環境を作りました。

いつもとは違う状況になってしまったわけですが、新しい発見や試みなどはありましたか?
ありました。技術的にも一段階か二段階は上がった手応えがあります。今までは怖くてできなかったグリップの変更や、セッティングも変えてみました。いろいろ試してみて以前より自分に合ったものが見つかったと思います。
カードのデータも凄く上がりました。

試合が再開された場合の準備は整っているわけですね。
はい、一日も早く試合がしたいです。技術的な面では上がってると思うのでいつでも本番に挑めます。準備は万端です。

ところで、スティールダーツは投げますか?
フィドができてからはちょいちょい投げてます。フィドのある所に投げに行ったりもしますし、最近はフィドのオンライントーナメントに出てみようかなと考えているところです。
今はそれしかできないので、出られる試合にはなるべく出場したいと思ってるんです。それでスティールを始めました。

ソフトとスティールは違いますか?
全然違いますね(笑)。僕の場合は刺さり方で投げ方が変わるのが難しいです。ソフトは真っ直ぐ刺さるのであまり気にしないですが、スティールの場合は立てるのか傾けるのかで飛ばし方の技術が変わってくるので、そういうところがソフトとは違うと感じますね。これを意識するということは、技術の向上につながります。

どうやって飛ばそうか考えますか?
僕は自分の飛ばし方でこう刺さるというのがあるので、それに合わせてるんです。ソフトだと下に外した方が重ねられるのでいいですが、スティールだと僕の場合は立って刺さるので、下に外すとシャフトとフライトが邪魔でターゲットが見えなくなるんです。ですから外すなら上に外して、それに当ててスタッキングさせる投げ方なんです。
絶対に下に外しちゃいけない投げ方で、もし下に外したらすぐ19にスイッチするとか、とにかくソフトとは全然違いますよね。

去年はほとんどの大会が中止になる中でPDCだけは再開されましたが、試合は見ますか?
見ます。ワールドチャンピオンシップも全部見てました。参考になる技術がたくさんありますからね。

日本人選手も出場しましたが、試合を見ての感想などはありますか?
もちろんすごいなとは思いますけど、僕は他の選手の勝敗はあまり気にならないんです。自分も選手である以上自分が勝たなくてはならない立場じゃないですか。そう考えると試合の見方も少し違うんですよね。
結果とかはあまり興味がなくて、選手の技術だけに注目してしまいます。だから自分が見たい選手の試合は真剣に見ます。特によく見るのは最近はやっぱりガーウィン・プライスですね。彼は安定した投げ方ですごく強いです。僕も筋トレしようかなと思いますよ(笑)。
僕は試合中は感情を押し殺すタイプなんですけど、ガーウィンの試合を見ていると「今年はもうちょっと感情を出して
いこうかな」と思います。いろんな人からもその方がいいよと言われるんですよね。

PDCから送られて来る写真を見るとガーウィンはだいたい吠えてる写真ばかりですが、ゲイリー・アンダーソンなどはガッツポーズすらしてないですね。
ゲイリー・アンダーソンもカッコいいですよね。大好きな選手です。彼はもう50代ですがまだまだトップ選手なので、40代の僕にはとても励みになります。ポール・リムは60代でもまだ現役ですし、そうやって年上の選手が世界で活躍してくれているのは嬉しいですよね。選手生命が長いスポーツなので、自分もまだまだやれるんだと気合いが入ります。

ご自分でどのようなタイプのプレイヤーだと思いますか?
試合の時は感情を押し殺していますね。ほぼノーリアクションです。

相手の投げるリズムなどは気になりますか?
以前は相手のプレイスタイルが気になりましたけど、鈴木未来選手にメンタル面についていろいろ教えてもらってからは変わりました。
どういうリズムで投げる相手であれ、自分を崩さなければ大丈夫なわけですよね。とにかくどんな相手にも対応できる力を付けろと言われ、それを意識するようになってからは気にならなくなりました。

試合に臨む前は何か特別な準備などされていますか?
試合前だからといって特に何もしないです。お店で投げる時でも常に試合を想定して投げているので、自然と準備ができていると思います。
普段はスローラインに立つまではふざけてても、スローラインに立ってからは手抜きダーツは一切しないです。相手がどういうレベルのプレイヤーでもあまり関係なくて、投げる時は自分のダーツをすることしか考えていないです。相手をあなどらないためにも、レーティングが高かろうが低かろうが同じダーツをすることを普段から心がけています。

試合当日の特別なジンクスなどはないですか?
ジンクスは特にないですね。前日は楽しく過ごすということで、仲のいい人達とごはんを食べに行って早めに解散するというのがいつものパターンです。

試合前のアップはどのくらいしますか?
僕の場合は身体が温まればOKなので、そんなに長い時間ではないです。身体がほぐれればいいので入る入らないはあまり意識しないです。とりあえず一試合やってみないとその日のコンディションはわからないですからね。
試合前にアップ台で投げ込んでいる選手もいますが、どちらかというと僕はブースを見に行ったり先輩に挨拶に行ったり他の選手と話したりしています。リラックスすることが基本なので、身体もほぐしつつなるべくリラックスできるように心がけています。
僕はお酒が飲めないので、朝からドリンクを買うために並んだりもしません(笑)。体質的にコップ一杯も飲めないです。もし飲んだら頭痛と吐き気でダーツどころではなくなっちゃいます。

練習方法や時間について教えてください。
自粛前まではあえて一人の練習時間を作っていましたが、自粛中は必然的にそういう状況になってしまったので練習に集中できました。そのせいでここ数ヶ月は技術的に安定しているので、今はほとんど対戦ばかりですね。
今調子がいいので、身体に負担のかかる投げ込みなどは避けています。この調子を崩さないためにも、なるべく疲れない様に気を付けています。

今ダーツで大事にしていることはありますか?
僕が頼れるものは自分の技術だけなので、技術を向上させることに集中しています。たとえ気持ちが落ちたとしても、普通の人には負けないくらいの技術を身に付けるために日々頑張っています。
カードの数字で言ったら今たぶん日本で一番か二番なんですよ。

それは試合がないのは本当に残念ですね。
残念な面もあるんですけど、いろいろ試してスキルアップにもつながっているので、逆にチャンスだと思ってます。この期間をどう過ごすかによって、次に試合が始まった時にだいぶ入れ替わるんじゃないでしょうか。
今まで当たり前に投げてたのにほとんど一年間試合をしないわけですから、感覚も鈍ってしまいますよね。

ではお仕事について教えてください。
どこかのお店の常勤スタッフなどはしていません。バイト感覚でお店のプレイヤーとして数時間入ったり、あとはスポンサー料だけです。
今は賞金がないのできついですね。その分税金と遠征費がかからないのはいいですが、やっぱり大変です。コロナ禍になったのがちょうど実家にいるタイミングだったのでそれは助かりました。

尊敬するプレイヤーはいますか?
僕は誰かを見て育ったわけではないので、特にいないです。
トッププレイヤーがburn.とかで活躍していた時代でもプロにはあまり興味がなかったですね。ほとんどが年下の選手ばかりでしたし、自分は自分という考え方だったので、この人の技術を真似たいという選手は日本にはいなかったです。

フィル・テイラーとかに憧れませんでしたか?
もちろんすごいと思いますけど、現役でチャンピオンになってた頃のフィルは知らないんです。僕が興味を持った頃にはもう現役引退という話が出ていた時期でしたから。
僕がPDCに興味を持ち出した頃はマイケル・ヴァン・ガーウェンがビシバシの時期だったので、強いて言えば彼がすごいと思いますね。

彼は独特の投げ方をしますよね。
手が柔らか過ぎますよね。骨がないんじゃないかと思うくらいです。彼のダーツは狙ってる感じがしないです。狙うという行為をした時点で身体に力が入っちゃうからでしょうか。

ガーウェンの投げ方を見ていると、離す位置を意識しているのではないかと感じますね。
僕が思うのは動きなんです。動きを一定に保てれば狙わなくても同じ所に飛んでいくので、ターゲットに向かって手を振ることだけを意識しています。

昨年リリースされたバレルの売上が好調のようですね。
おかげさまで好調です。このコロナ禍で買っていただいた方には本当に感謝しています。これがなかったら大変だったので本当にありがたいです。youtubeに出るようになってから売れるようになったので、その効果が大きいかなと思っています。

今はいろいろな選手が一生懸命SNSで発信していますよね。
僕はyoutubeに出るようになってからツイッターのフォロワー数が1万人くらい増えました。

改めてダーツの魅力はなんでしょうか。
以前から思っていたのは、言葉の壁を超えて外国の人と仲良くなれるのが魅力です。僕は英語が全く分らないですが、海外から来るプレイヤーもすごく仲良くしてくれるんです。もしダーツをやってなかったら、僕の人生で外国人と仲良くなるなんてことはなかったと思います。ダーツ3本の力はすごいなと思いますね。

今後の夢や目標を教えてください。
目標は年間チャンピオンになることです。それだけを目指して頑張ってます。

現在のデータがそれだけいいと可能性も高いですね。
どうでしょうね。やってみないと分からないですね(笑)。

最後に読者にメッセージをお願いします。
僕は昔からストイックで有名なので練習あるのみです。練習さえしていれば必ずプラスになると思っているので、努力を積み重ねて一つずつプラスを増やして行くのが僕のやり方です。もしもマイナスになることがあるとしても、そのマイナスは経験になります。練習をしないとプラスもマイナスもないので、これからも日々練習に励んでいきます!