Vol.107 吉野 洋幸
続けているうちに何かに出会える

2021年3月号

変な癖から抜け出すことができました。
狙う時に肘が内側に入ってしまったり、手首が内側に入ってイメージ通りの動きができなかったんです。
投げなかった2週間はダーツに触ってないというだけで、イメージトレーニングはしてたので、そのイメージ通りのことが出来る様になりました。

練習はどのようにしていましたか?
正直、僕は練習量がだいぶ減ったと思います。

それはモチベーションが保てなかったということでしょうか?
そうですね。モチベーションは落ちていました。僕の場合は試合があるから練習にも気合いが入っていたので、試合がないのにただ投げていても練習にはならないと思ってしまうんです。それから投げる場所が減ってしまったというのも大きかったですね。

試合がある時には練習されていたということですが、その時は練習時間やメニューは決めていましたか?
メニューはいろいろでしたが、時間は決めていました。ダーツバーで働いていましたが、お店が終わってからの2時間は必ず練習のための時間と決めていました。投げなくてもいいので、この2時間はダーツのことだけを考えるんです。

それは一人で黙々と練習していたのですか?
はい。毎週試合に行ってたので、試合を振り返りながら出来たこと出来なかったことをもう一度よく考えて、また同じ場面になったらどうしようとか、いろいろイメージするんです。イメージしたりそれを再現したり、復習みたいな感じですね。
僕は無理にでも時間を決めておかないとやらなくなってしまうので、自分自身の意識を保つためにもダーツの時間を作りました。
2時間で終わらない時もありますね。もちろんカウントアップなどもやりますが、投げないで考えているだけでも新しいことを思いついたりするんです。
投げ始めたらずっと投げ続けている時もあったり、とにかくダーツのためだけに好きな様に使うこの時間は僕にとって重要なんです。

その時間の中で追い求めるテーマはありましたか?
ありましたね。試合で使えるものをあれこれ考えてました。緊張した場面でどうするかとか、試合での一本の精度を上げるためにはどうしたらいいのかなど、毎回何かしらテーマはありました。

カードのアベレージは気にしていますか?
カードのアベレージを意識したことはあまりないんです。あくまでも試合を想定して、ここで欲しいと思った時に5本以上打てるのか、7本以上打てるのか、という感じです。試合になると勝負どころというのは毎ラウンドですからね。

結構自分を追いつめる練習方法ですね。
追いつめてますかね!?自分では自分を楽にするための練習という感覚なんですけど(笑)。そんなに追いつめてるわけではなくて、結構楽に練習してました。

このオフの間にフォームやグリップなど何か新しく試してみたことはありますか?
僕は投げない期間が多くなってしまったので、その期間が幸いしてかそれまでについていた変な癖から抜け出すことができました。

具体的にはどんなことですか?
毎日常に投げていると身体が覚えてしまっている癖を直すのは難しいですが、投げない期間があったことでそれまでのイメージがない状態でスタートできました。そのせいでやりたかったことが出来るようになりました。

リセットされたという感じでしょうか。
そんな感じです。なかなか抜けなかった変な癖が抜けました。

どういう癖だったのですか?
狙う時に肘が内側に入ってしまったり、手首が内側に入ってイメージ通りの動きができなかったんです。
投げなかった2週間はダーツに触ってないというだけでイメージトレーニングはしてたので、そのイメージ通りのことが出来る様になりました。

新しい発見はありましたか?
僕は試合に生かされてたんだと思いましたね(笑)。試合があったからこそ、あれだけ打ち込めたんだということがよく分りました。

試合が延期、中止など繰り返されましたね。
やるやらないを2回3回と繰り返した時に「もういいか」と、少し投げやりになってしまったこともありました。試合待ちで自分たちの行動を制限されていたので、やらないと決まった時は心からがっくりしましたね。
この状況だから仕方ないという思いと、この先どうなるのかという不安がありました。

気持ちを切り替えたのはいつですか?
昨年末に九州のリーグに出させてもらったんですが、そのチャンピオンシップがあるということで一旦気合いが入ったんです。でも結局中止になってしまって、その後FIDOダーツで試合があるということで、そこからはまたモチベーションが上がりました。

ではスティールも投げているんですね。それは以前からですか?
元々投げていました。本格的にスティールにシフトしようかなと思っていたところですが、パーフェクトも始まるという話もあるのでどうしようかなと考えてしまいます。

複雑な心境ですね。
そうは言っても今までソフトのプロで頑張ってきたので、やっぱりソフトをやらなくてはと思っています。

でもスティールも楽しいですよね。
楽しいです。でも僕はソフトと同じには投げられないのでやっぱり難しいですね。

何が違いますか?
先の重さですね。チップとポイントの重さで飛びが全然違います。重いせいで矢が走る気がするので、スティールを投げてからソフトを投げると的に届かないイメージがあるんです。
距離も違うしターゲットも小さいですからね。

ではこの期間中にフォームやグリップなどに変化はなかったですか?
意識して変えた部分が若干ありました。

それはどういうポイントですか?
グリップも多少変えましたし、腕や身体の使い方も変わったと思います。ポイントというよりも全体のバランスですね。
一番大きく変わったのはセットアップです。これは周囲からはわからないくらい微妙なものですが、自分ではイメージがガラッと変わってしまうくらいの変化なので、これに慣れるのも時間がかかりました。

ダーツのセッティングは変えましたか?
僕は以前から頻繁にセッティングを変える方なんです。今回も変えましたけど、一週回って結局元に戻った感じです。

この一年でアベレージがすごく上がってる人と落ちてる人の差が大きい様ですが、いかがですか?
僕はすごく落ちてるうちの一人だと思います。

どのくらい落ちたのですか?
17〜18あったのが一度16まで落ちました。数字では落ちてますが、真剣に対戦してメドレーなどをしなくなったので、そういう面で落ちたのかなと。真剣勝負をするようになればまた戻って来ると思ってます。それほど気にしてないです。

今年はプロツアーが再開されると思いますが、準備はできていますか?
今急いで間に合わせる様に準備してる段階です。ちゃんと練習を始めました。

時間があるので今は2時間以上できるのではないですか?
できるかもしれないですけど、今は試合がないのでそこまでできないです(笑)。例えば練習ですごく良くても試合ではまったく役に立たなかったというのを何度も経験してるので、試合がないのに練習だけすることに無理があるんです。でも試合が始まったら余裕で2時間くらいできるかもしれないですね。

2019年のランキングは4位でしたが、今年の目標はいかがですか?
もちろん4位以内を狙っていきます。2018年は10位で、その前の年よりも上位に入りました。基本的には前年よりも上位に行けることが目標です。常に自分を超えることだけを考えています。

2017年は何位でしたか?
22位でした。

では着実に上がってるわけですね。
はい。これがもし2年落ちたらやめようと思ってましたので(笑)。

やめようと思ってたんですか(笑)?
はい。2019年の4位というのは出来過ぎだと思っていますが、2017年より落ちたらやめようと思ってました。

2019年は4勝されてますね。
それを毎回出来るかと言われたら難しいと思うので、出来る時にはできるだけ頑張りたいです。もちろんチャンスは逃さず狙っていきます。

では読者にメッセージをお願いします。
みなさん楽しくダーツを続けてください。ダーツにはいろいろな楽しみ方があるので、もし何か出来ないことがあったとしてもあきらめないで続けてほしいです。僕も長く続ける中でダーツを通して楽しみを見つけたので、続けているうちに何かに出会えると思います。
これからも頑張っていきますので、応援どうぞよろしくお願いいたします。