2016年3月
安食 賢一 Kenichi Ajiki
あんなに上手かったのにどうしてダメに?
長い間トップを走り続けているジョニー選手ですが、さらに上を目指すために現在取り組んでいるテーマなどはありますか?
特にないかな…(笑)。「ダーツを投げて狙ったところに入れる」という同じことを何年も繰り返しているだけですね。
それでも5年前10年前と比べると投げ方は変わってきていますよね?
投げ方に関しては勝手に変わってきてしまうのと、自分で意識的に変えているのと両方ありますが、何かテーマを持って変えているというようなことはないです。
ダーツというのは横ズレするとダメージが大きいと思うんですが、最近は横ズレが大きくなってしまっているので、今は横ズレしない様に投げるためにはどうしたらいいのかを試行錯誤しています。
ジョニー選手とは本当に長いお付き合いでグリップに関しても何度もお話を伺いましたが、グリップもやはり変化はありますか?
今は握り込んでいるというか、4本で持つこともあります。親指が動いてしまう癖ができてしまって、投げようとした瞬間にダーツがすっぽ抜けて落としちゃうところまできているんです。「ここに入ったら次はこうでこう行こう」と、戦略を決めて投げている分には問題ないんですけど、少しでも集中力が欠けた時によくそうなってしまうんです。
「トリプル入れたら次はどこを投げようかな?」とか、迷いながら投げているとよく出てしまうんです。これを避けるために今はグリップを強く握るようにして、親指が動かないような投げ方をしています。
スローイングに関して意識していることはありますか?
僕の場合は、押し出して投げた方が入る時と、振った時に入るという2つのパターンがあるんです。身体が疲れている時は振りのダーツで感覚で投げた方がブルなんかにはよく入るんですが、大会などで気持ちが乗っている時は、前のめりになってどんどん押して行った方が入るんです。こういう形で投げるというよりも、入れることだけを考えて自然と動いた身体で投げ方が決まるといった感じですね。その時の気持ちに任せて投げています。
長い間日本のダーツ界を引っ張ってきたジョニー選手ですが、今でも練習はかなりしているのですか?
昔に比べたらしてないですね。今は週に2回投げたら良い方だと思います。
イベントが週に1〜2回入るので、それで満足だと思えればそれ以上は投げませんが、大会を控えて不安要素がある時は確認のために投げることもあります。昔のように毎日何時間も投げるということはしないですね。理由は日曜日の大会に疲れがたまってしまうのを防ぐためです。
年齢とともに疲れがたまるようになってきましたか?
そうですね。平日の練習で投げ過ぎて、日曜日の試合に影響するのでは本末転倒ですからね。練習は疲れない程度に少しだけ投げて、体調を整えて日曜日に持っていくようにしています。
一年間で各地に移動するとその地域によって気候なども違うわけですが、体調管理などで気を付けていることはありますか?
風邪をひかないように注意するという当たり前のことくらいでしょうか。僕は汗っかきなので冬の方が好きなんですが、なぜか夏の大会の方が良い成績を残せてるんです。夏は苦手なのに冬より良い結果が出るという、自分でも訳のわからない状況になっていますね(笑)。
プロ選手としての体調管理や、季節によって調整するというようなことは特にしてないですね。15年くらい前にダーツバーでひたすら投げていたプレイヤーがいるじゃないですか。ただダーツ投げてダーツ投げて……、というあの時の感覚のままですね。特にアイシングなどしてるわけでもないですし、アフターケアをすることもないです。
10年以上トップを走っているジョニー選手でもまだ自分にはこれが足りないと思うところはありますか?
シュート力など精度的なものは10年くらい前の方があったと思うんです。今は経験で「ここだ」という時に入れられるようになってきたので試合で勝てるんだと思いますが、やっぱり昔と同じ動きが出来る部分も取り戻していかないと、この先難しくなってくると思いますね。
今年は練習量を少し増やしていこうと、そして練習の中にハードを取り入れていくことを考えています。ハードダーツは的が小さいんで一生懸命狙わないと入らないじゃないですか。ということは丁寧に投げていることになると思うので、丁寧に投げる時間を多めに作ってそれがソフトに生きてくるようにしたいと思っています。
新しいプレイヤーが次々と登場してもトップのメンツはあまり変わらないのが現状ですが、それはどうしてだと思いますか?
僕の考えですが、今は結果を出すと賞金に繋がるじゃないですか。昔は大会で勝っても貯金出来る様な金額じゃなくて、あっという間に使ってなくなっちゃいましたよね(笑)。
それが今は大金が入ってくるようになったので、ダーツに対する強い思いというか、何かしら基本的なものが崩れてしまってるんじゃないでしょうか。そういうことも新しい選手が育ってこない原因の一つじゃないかと思うんです。
今トップにいる選手達は、賞金が入ったとしてもそれまでの生活レベルが変わる訳でもなかったと思うんです。それが今の若いプレイヤーの中には、一度勝って賞金が入るとそこで満足してしまって、その後が続かなくなる人がいるように感じます。1〜2回勝ってもそれから顔を見ないプレイヤー達も少なくないですからね。
「あんなに上手かったのにどうしてダメになっちゃったんだ?」とか「レーティング的に言ったら俺たちより全然上なのになんで勝ち上がって来ないんだ?」とか、みんなでよく話すことがあるんです。こういう若くて上手い選手がなかなか上がって来ないのは、もしかしたら今のダーツの環境的なもののせいかもしれないと思いますね。
最後に、トップに長くいる秘訣はなんですか?
1つはスポンサードしてくれる人達がいて成り立つことだと思います。非常に重要なことですね。
そして技術的にはよけいな動きをしないで投げるという、ダーツに対する消去法を知っていることも大事だと思います。
例えば前後に伸びしろがあるようだったら、めいっぱい手首を曲げてしまってこれ以上は曲がらないという状態を作ってしまえば安定しますよね。
腕もたたみきってしまえば中途半端なブレもないというように、僕の場合は「やってしまいそうだな」と思うところをどんどん省いて、単純な形で投げているのが良かったと思います。テイクバックがないのもそうですし、力加減にしても、とにかくシンプルにすることが大事だと思いますね。