Vol.78 TOP PLAYER
なぜ強いのか

2016年3月

小野 恵太 Keita Ono
上位選手の技術はほとんど同じ

現在小野選手が次のステップとして取り組んでいるテーマはありますか?
技術面と精神面を共に良い状態に持って行くことです。技術的には4年前くらいが一番良かったと思うんですが、逆に精神面は今の方がずっと強くなっているんです。
例えば昨年の浅田斉吾選手は技術的にも精神的にも絶好調だったのが、周りから見ていてもよくわかるほどだったじゃないですか。斉吾さんのようにどちらも完全に伴ったベストな状態というのが今まで僕にはないんです。特に今はフォームに関してあまり良い状態ではないんです。

理想とするフォームの形というのがあるのですか?
一本目だけなんですが、テイクバックをした時にリズムが上手く取れないんです。引いて来た時の『ため』がちょっと強くて、構えて引いて投げるというルーティーンが上手くとれないんですよ。そのせいで失敗する一本目が多くなってしまっている状態です。そこの改善ができてくればその上のステップに行けるかなといろいろと試行錯誤している最中なんですが、なかなか身体がイメージ通りに動かないという状況が続いてます。
それもあってここ2年くらいスランプ気味なんですが、自分の中で上手く調整できた時は試合でも勝つことができているんです。去年の11月がいい例なんですが、パーフェクトの横浜大会ですごくいいイメージを持って優勝できて、次の日のPDJもその勢いのまま勝てました。
そのようにフォームのストレスが出ない時は入れることだけを考えられるので試合に集中できるんです。それが試合中にフォームのことだけを考えてしまうことが多くて、そうなってしまうと思い通りのダーツが打てなくてだめですね。なんとかそれを無くしていこうとしているんですが、今のところどんな方法を試しても上手くはまらなくて苦労しています。

三本あるダーツを同じリズムで投げるのは重要なことですが、最初の一本目が上手くいかないというのはなかなか深い問題がありますね。それを改良するために具体的にどのような練習をしているのですか?
投げるタイミングの取り方だと思うんです。構える時に手を一度合わせてから引くじゃないですか。もともと僕は合わせる前に狙って、合わせたらすぐ投げてたんです。
それが自分でも気づかないうちに、最初に合わせて引いてきた時にもう一回狙う様になっていたんです。狙い過ぎが原因かなと思っているんですが、試合だと入れたい気持ちが強いので特にそうなってしまうんですよね。
今の成績は4位が精一杯なんですが、その状態が顕著に現れてると思います。パーフェクトの上位ランカーにはそんなことを考えてる選手はいないと思うんです。そういう意味では今はちょっと我慢の時期かもしれないと耐えているところです。

1位の浅田選手と2位の山田勇樹選手はそういうことはもう克服していると感じられるわけですね。
知野真澄選手もそうですが、彼等は今僕が抱えている様な問題は全く感じないでしょうね。インタビューの趣旨とはちょっと変わってきてしまうんですけど、上位の選手の技術はみんな似たり寄ったりだと感じますが、終盤になってくると精神力の勝負になってくると思うんです。
僕も昔はやらなかった駆け引きなどをするようになったし、もし自分がやられたら嫌だなと思うようなゲームの攻め方を相手にするようにもなりましたから。なのでいかに精神面と技術面をバランス良く両立させながら上達させていくことが重要かということを感じますね。

以前から感じていましたが小野選手はすごくダーツを強く投げますよね。日本人プレイヤーにしてはちょっと珍しいくらいだと思いますが、特に意識しているのですか?
昔からそう感じていましたか?以前もですが最近特にそうなのかもしれません。テイクバックの方にストレスがあるのでリリースの時に力がかかってしまっているのかもしれないですね。
もともと僕はダーツはリリースだと思ってるんです。プロになったばかりの頃は、ダーツを放す場所さえ同じなら絶対に入ると、ただそれだけだったんです。それがそこから上位の選手になっていくためにはもっとフォームも気にしなくては、といろいろ考え出してから感覚がおかしくなってしまったんです。
現在はスランプというほどではないですが、じゃあ絶好調かと聞かれたら決してそうではない状態です。でもこれを克服した時は確実に何かが変わっていると思っているので、今は抜け出すための努力をしているところなんです。

そうは言ってもトップランカーであることに変わりはないですが、トップを走り続けるための秘訣を教えていただけませんか?
僕は試合では毎回常に同じことをするように心がけています。

ルーティーンですか?
生活などもいろいろあるのでルーティーンと言えるまで絶対同じではないですが。何日前までに身体をケアして前日は必ずこの時間までには布団に入る、そして朝は何時に起きる、というのを決めています。
試合当日も予選が終わって決勝トーナメントの時間が決まったら何分前からしっかり投げ始めるとか、食事や休憩なども試合に関してはしっかり決めごとを作っています。こうやって同じことを続けていると、決勝トーナメントの一回戦目で毎回違う状態になるということがないですね。
一番最初からどんどん調子を上げていきたいじゃないですか。そのためにも準備をあせってやると上手くいかないんですよ。もちろん調子の善し悪しもありますが、あまり早く負けたくないしできれば優勝したいというのがありますからね。