Vol.92 鈴木 未来
強さの秘密 特集

2018年7月

昨年からジャパンレディースではダントツの結果を残している。取材時ではなんと13連勝中だったが、まさに歴史に残る大快挙だ。その強さの秘密は何処から来るのか?何が原動力になっているのか?誰もが知りたいその謎を特集した。海外も含め多くのトーナメントに参加している様子や普段の生活の写真も提供していただいたので、すべての魅力をご紹介しよう。またテクニックについても多くを語っていただいたので参考にしていただきたい。

まず、どのような子ども時代でしたか?
小学校6年生頃まで田舎の方に住んでたので、結構活発でしたね。男の子に混ざって、野球やサッカーなどをやって遊んでました。

学生時代はスポーツなどしていましたか?
小学校の頃からやっていたバレーボールを少し続けていましたが、そんなに真剣に打ち込むというほどでもなかったです。

どのような学生時代でしたか?
ずっとバイトしてました(笑)。バイトするのが楽しくて、週に5日くらい働いてました。

どうしてダーツと出会ったのですか?
26歳の時にダーツをやっていた友だちに連れて行ってもらったんです。その時あまりにも下手で狙った的にまるで入らないのが悔しくて、それから毎日行って投げました。

最初の一年ですか?
そうです。始めてから一年間はもう投げまくってましたね(笑)。

やっぱり面白かったからですか?
面白いというよりも、「どうしてできないんだろう」という気持ちの方が強かったです。友だちは狙ったところにちゃんと入るのに、なんで自分にはできないのかと、でも「できないはずはない」と思って投げ込んだんです。

JAPANレディースに参戦されたのはいつからですか?
2013年度の最終戦からです。それまではPERFECTに出ていたんですが、次年度からはJAPANに移ろうと思っていたんです。それでPERFECTが12月で終わったタイミングで、予行練習のような感じでJAPANの最終戦に出てみました。

移ろうと思った理由はどうしてですか?
ゲームフォーマットも違うのでどっちが自分に合っているのかどうか、両方ともやってみないと分からないと思ったからです。

そして2014年はいきなり11勝して、ランキング1位という衝撃の成績で周囲を驚かせましたね。
2年くらい前から同じくらいレーティングはあったんですが、それが試合で出し切れてなかったんです。
JAPANレディースの名古屋大会で初優勝したんですが、その時をきっかけに投げ方が分ったというかメンタルの持って行き方が分ったというか、とにかく楽しく投げられる様になったんです。それから実力が出せる様になったと思います。

馴染んだということでしょうか。
2014年の最初の頃は、ロビンを抜けるとすぐ負けるというのを繰り返してたので、いまひとつ馴染めてなかったと思います。
それが一度優勝してからは時間の配分や使い方なども分ってきたので、そういう意味で多くを学んだ、というのがあるかもしれないですね。

成績ですが2015年は山口選手が1位を獲りましたが、続く2016年2017年は再び1位に返り咲いていますね。鈴木選手の名前は優勝の常連ですが、この好成績はどうしてだと思いますか?
2014年からの平均スタッツを見ると、ちょっとずつ上がっているので、実際少しずつ成長できてるんじゃないかと思っています。2015年に関しては、「去年1位だったんだから今年も絶対勝ちたい」という気持ちが強く出過ぎたのが良くなかったと思います。2016年と2017年は気持ちが振り切れてて、「自分のダーツができればそれでいいや」という感じだったのが結果につながったと思います。

特別何かがあったわけではないんですね。
特に何もないです(笑)。

左から:DartsGate初開催で初優勝! PDJ Ladies やっとできた~優勝! TDO TOURNAMENT 2016 優勝してサラウンドGET

今や男子選手からも一目おかれていて、先日は村松選手が「鈴木未来のように勝てる様になりたい」と言ってましたよ。
本当ですか(笑)。もう嬉しい限りですね。まだまだ男子のトッププレイヤーのレベルにまでは到達していないので、いつか肩を並べられたらといいなとは思ってますが(笑)。

今年のスーパーダーツ2018では紅一点で出場されましたね。
本当に光栄なことでしたが、もっと出来たかなと思う部分のある結果でした。

今年はフィル・テイラーが出場したこともありすごい盛り上がりでしたね。
本当にすごかったですね。素晴らしいゲームばりでした。

ステージはいかがでしたか?
とても楽しかったです。また機会があればぜひやりたいと思うくらい楽しいステージでした。
もちろん緊張もしたんですがガチガチになるほどでもなくて、適度な緊張感がある中で楽しみながら投げることができました。

左より:DLO inラスベガス 松本嵐プロと準優勝 対戦相手はボリス&ソルジャー! ALL JAPAN 2018入賞3人チームL-style! 年間一位記念写真! 普段撮らない貴重写真(笑)

THE WORLDにも参戦してますね。
はい、行ける所へはなるべく行こうと思ってます。

男子とも対戦していますが、それについてはいかがですか?
実力の差を思い知るんですけど、目標にする選手もいるのでやっぱり楽しいです。打たれることも楽しいし、そうするとますます勝ちたいと思いますからね。

外国人選手からも注目されていますよ。
THE WORLDに参戦し始めた2015年や2016年は、私のことを知ってる選手はほとんど
いませんでした。でも最近は結構話をする選手も増えました。でもメチャメチャ打たれるんですよね(笑)。

かなり刺激になりますね。
そうですね。今年はラスベガスから一戦目が始まって、今までの中ではスタッツ的にも打てたんですけど、それでもサクッと負けちゃうんです(笑)。そうするともっと頑張らなくてはという気持ちが沸き起こるし、海外の強い選手と戦うことが今のダーツのモチベーションでもあるんです。

このインタビュー時点では、去年から続けて何連勝中でしょうか?
13連勝中です。

すごいですね。敵知らずですね。海外の試合に出ることが刺激になるんですね。
はい。スティールの試合もとても刺激になります。PDCアジアツアーも韓国とマカオの2カ所で参戦しているんですが、今のところ前回のマカオで16まで行けたのが最高です。やっぱり強い選手が多いのでそういう雰囲気の中で投げることは引出しが増えるというか、良い経験になります。
日本で頑張って勝って賞金をもらい、その賞金で海外の試合にたくさん行ける様にと思っています。

WORLD MASTERS 2017でガリバーさんを囲んで

この前のマカオではイラガン選手が二連覇しましたが、見ていていかがでしたか?
いやぁ強かったですね。私は二日目ではイラガン選手のスコアラーをしたんですが、本当にすごかったです。「やっぱり強いなぁ」と、近くで見ているだけですごい刺激になりました。

現在日本では圧倒的な強さですが、ライバルというと誰でしょうか?
昔から聞かれるんですけど、もともと私はあまり敵対心がないんです。テニスや卓球などいろいろなスポーツがありますが、ダーツは個人競技で交互に投げてますよね。だから、結局は自分が自分にプレッシャーをかけさえしなければ良い結果が出るんじゃないでしょうか。
ライバルという特定な人はいませんが、打たれれば基本的には悔しいので、私に勝つ人は全員ライバルです(笑)。

では、尊敬するプレイヤーはいますか?
ポール・リムさんやフィル・テイラーやアナスタシアや、日本でも素晴らしい選手がたくさんいるので、そういうトッププレイヤーはみんな尊敬します。でもそういう人達を超えて一番になりたいと思ってるんです(笑)。

神戸でのワールドカップで鈴木選手が対戦した相手は、前日のレディースで優勝した選手でしたが、あまり意識している様子がなかったですよね。
全然知らなかったくらいです(笑)。私は『誰と対戦している』とかは、あまり考えないんです。投げる時は基本的に、自分が今できることを出し切ることしか考えてないんです。だから特に意識する選手はいないです。
自分がやれることを全力でやりたいので、相手が打ったら「私も打ちたい!」とは思いますが「打たれたからどうしよう」とはならないです。「すごいな、私もすごいと思われたいな」と思って投げるんです(笑)。

2017ラスベガス空港やっと着いたー

前回は2015年の9月号で登場していただきましたが、それから何か変化はありましたか?
2014年から今に至るまでで気付いたことは、私の場合毎週試合がある方が調子が良いということです。2016年2017年と成績を維持できているのは、出場している試合数が増えたからだと思います。
2016年は年間50試合だったので、ほぼ毎週試合があるという状態でした。次の試合まで間が空くと結構緊張してしまうんですが、毎週試合をしていることによって同じイメージを保っていられるんです。これがもし一ヶ月とか空いちゃうと、すごく緊張してコンディションを崩しちゃうかもしれないですね。

JAPANレディースの舞台裏はどのような感じですか?
私はオンとオフをきっちり分けるタイプなので、試合になると試合に集中して、終わるとスイッチをオフにして舞台裏では結構ワイワイしている方だと思います。
入れ替え戦のあたりからは控室でもいい緊張感が漂うので、それもまた楽しいです。

最近は男子より女子の試合の方に注目度が集まっている様に感じますが。
そうですね。女子選手のレベルも年々上がってますし、決勝戦が近づくにつれて見応えのある試合が増えていると思います。

女子選手が注目されることについてはどう思われますか?
すごく嬉しいことですね。もっともっと注目されて、女子だけの大会が開催されたりしたらもっと楽しくなると思いますね。

左より:.2016 The Worldフランス まよんぬとラロシェルのパン屋さんで朝カフェ 2017 World Mastersのコーラーの方と

ファンとの接し方などについて気を付けていることなどはありますか?
私は基本的に素の状態なので、あまり造ってるつもりはないです。試合に行く時はもう集中に入っているので、声をかけずらいかもしれませんね。下を向いて歩いてるので誰とも目が合わないです(笑)。

ファッションやメイクなど気にしていますか?
ネイルもしますし、メイクもちゃんとするようにしています。メイクをすると気合いが入るんです(笑)。朝、「今日も頑張るぞ!」と思いながらメイクしてユニフォームを着ます。試合の日は決まったルーティーンがあるので、その通りにしますね。

プロダーツプレイヤーについてはどう思われますか?
ダーツを始めてから約10年になりますが、最初からすでにプロというものがありました。その環境で育ってきたので、無かった頃とは比べようがないんです。プロがあるおかげで今ここまで来れているので、今後も今まで以上にプロが注目されるようなシステムができてくれると嬉しいです。
入れ替わり立ち代わりたくさん選手が増えて来るので、これからも強い選手がどんどん出てくるんだろうなと思うと怖いですね(笑)。

左より:2016年初めてのWorld Masters対戦相手のマリアさん ラスベガスのダブルス戦で必死に話してます(笑)

ダーツ界でどのような存在になりたいですか?
夢としては男女の関係なく世界一になりたいです。今はそれに向けてできることをちょっとずつやっていってる状態です。やるからには「鈴木未来すごいな」「鈴木未来はちょっと違うよな」と言われるようになりたいので、まだまだ足りないと思ってます。

以前にもお聞きしましたがだいぶ時間が経っているので改めて、印象に残っている試合はありますか?
スーパーダーツの試合は印象に残ってますね。
最近では前回のJAPANレディースのステージ2で、清水舞友選手と戦った試合が印象に残ってます。すごく打ち合うことができたので、本当に楽しかったです。今までで一番いい試合をしたんじゃないかと思えるくらいの一戦でした。

今までにスランプはありましたか?
勝ち始める2014年より前には、肘を壊したりイップスになったりしたことがありました。そんなに大きなスランプに陥ったわけではないですが、強いて言えばそれがスランプだったのかもしれないです。
試合中にダーツが届かなくなったことがあって、その時は周りから「未来さん、イップスなんですか?」と聞かれたりしました。でも、「そうなんだよね、持病みたいなものだから(笑)」という感じであんまり気にしてなかったので、そこまで深刻にならなかったのかもしれないですね。
肘は壊さない様に注意してますね。変な投げ方をすると肘が痛くなりやすいので気を付けてます。

今年から始まったPDC Asian Tourに参戦してます!

これだけ有名になるとイベントの数もすごくないですか?
どうなんでしょう……。他の選手に比べるとそんなでもないと思います。
でも確実に増えてはいますね。2015年は月に2回くらいにしておこうと思っていましたが、今はバグースやIDSなど月に何回か固定で決まっているので、それもあって増えました。あまり試合に支障のないようにしたいんですが、素の私を知ってもらうのはイベントしか無いので、やはり大事にしたいと思っています。
試合しか見たことがない人からは「もっと怖い人かと思ってました」と毎回言われるんです(笑)。真剣に投げてるのでどうしても怖い顔になっちゃうんですけど、「こんなに明るい人だとは思いませんでした」とよく言われます(笑)。本当の私を知ってもらうためにも、イベントでいろいろな人と触れ合うことは必要ですよね。

イベントではどんなことをするのですか?
チャレンジマッチとかワンポイントレッスンとかです。

ではご家族についてですが、以前からご主人のサポートが大きいということでしたね。
そうなんです。主人のサポートも、母の力も大きいですし、子どもも応援してくれます。今はすごくいい環境だと思います。

特にご主人はいろいろなことをされているようで、周りからも評判を耳にすることもあるんですが、具体的にどのようなご主人様なのですか?
主人はすごいと思います。私にはできないなと思うことをするんです。メンタル系の講習会とかスポーツトレーナーの講習会とか、最近では足ツボの講習会にも参加して、そこでいろいろ学んだことをやってくれるんです。
今より良くなるようにとか、スタミナが切れない様にとか、とにかくすごくサポートしてくれます。例えば試合中に疲れてきて肩が動きにくくなった時は「こういう動きをした方がいいよ」とか、そういうことを勉強して私に教えてくれるんです。

ダーツ意外の趣味はありますか?
そう聞かれる時はだいたい「カラオケです」と答えてます(笑)。カラオケが好きというよりも、大きい声で歌うとすっきりするんです。ストレス発散してリラックスできるので試合の前日に行くこともあります。
試合の前日は「明日は頑張ろう」「早く試合やりたいな」と、緊張というよりワクワクしたりして眠れなくなることがあるんです。
でもカラオケに行って大声を出してストレス発散するとぐっすり眠れるので、これは自分で発見し
たストレス発散方法であり趣味なんです。

毎年撮ってる家族写真

改めて、ダーツの魅力は何でしょうか?
たくさんの人と交流できることはもちろん、頂点までが長いので「まだまだだな」と「まだまだやることはいっぱいあるな」と思えるのが最大の魅力です。
ずっとやっていけるし伸びしろもいっぱいあると思うとすごく楽しいので、たぶんずっとダーツを投げていくんだろうと思います。

これからの夢や目標を教えてください。
まずはソフトダーツ女子の中で、日本、アジア、世界で一番になって、スティール女子でも一番になりたいです。そしていつかは男子の中でも一番になりたいです。最終目標は世界一です!霊長類最強です(笑)!

最後に読者にメッセージをお願いします。
ここまで順調に来ていると思われるかもしれないですが、やっぱり考えることもあり、その都度たくさんの人達に支えられていることを実感します。これからもまだまだ挑戦し続けるので、ぜひ応援してほしいと思います。ダメな時もあるかもしれませんが、必ずまた這い上がります(笑)。

この号ではダーツテクニックも語っていただきましたのでテクニックページにてお読みください。