Kenta Kaneko-Vol.81.2016.9-Top

Vol.81 金子 憲太
エンターテイメント性を求められる

2016年9月

Kenta Kaneko-Vol.81.2016.9-1

ダーツの出発点を教えてください。
中学生の時から仲良くしてくれた2歳上の先輩がいたんです。僕はその先輩とばかり遊んでいて同級生の友だちがいなかったんですけど、18歳になりたての高校3年生の時にその先輩が勧めてくれて始めました。そこからなのでダーツ歴は7年になります。

真剣に投げ始めたのはいつ頃からですか?
始めて行った時はハウスダーツで投げたんですけど、他の人がマイダーツを持っているのがすごく羨ましかったんです。すぐにまた先輩達と一緒にダーツを投げに行く機会があったんですけど、そこに行く前にゲーム機とソフトを全部売ってそのお金でマイダーツを買って行きました。だからたぶんあの時から真剣に投げるつもりでいたんだと思います。

プロプレイヤーになったのはなぜですか?
投げているうちにだんだん上達してきて、大会に出てみたいと思ったんです。その時は未成年だったんで出場できる大会はないだろうとあきらめていたんですが、MJという未成年でも出られる大会があって出場してみたらいきなり優勝したんです。
それ以降20歳になるまでの間は毎回優勝して3連覇したんですけど、2連覇した頃からもっと強い相手と戦いたいと、そのためにはプロにならなければダメだろうと思ったんです。それでプロになりました。

初優勝はいつですか?
今年の2戦目です。実は開幕戦の前に妻の妊娠が分って、嬉しい気持ちと同時に動揺もあり開幕戦が散々だったんです。それで第2戦は頑張らなくてはという思いがあったのと、ダイナスティーさんがスポンサーについてくれたお披露目の試合でもあったんです。この試合では自然体で自分の世界観のまま気持ちよく投げられたので勝つことができたんだと思います。

2012年から参戦されているとのことですが、2013年が21位、2014年が14位、2015年が11位、そして現在は4位ということで確実に順位を上げてきていますね。
初年度の2012年はスポットでしか出場できなかったんですが、年間ランキングというものがある以上はそれを追わなければならないと、次の年から全戦参戦することにしました。
やっぱり年間チャンピオンを獲りたいと思ってしまったんです。自分の実力がどうこうより、プロという名前がついている以上、一番を狙わなくてはならないだろうと、それを目指せないんだったらプロとして出るのはちょっと違うだろうと思ったんです。かなり硬い考え方ですけど、僕は頑固なんですよね。
最終目標は1位ですが、そこに辿り着くまでの一戦一戦を大事にしているので、試合の経験を重ねるごとに年々底上げしていることを感じています。以前はトッププレイヤーと対戦する時は緊張していましたが、今は自分をぶつけにいけるのでいろんな面で成長できていると思います。

悔しい試合もあった中で、先日の広島戦では今飛ぶ鳥を落とす勢いの浅田選手に勝ち優勝されましたね。
はい、やりましたね(笑)。

だいぶ自信がついたのではないですか?
そうですね。トッププレイヤーに勝てるというのはやっぱり嬉しいですよね。でも以前は「この人を倒したらすごいことになるな」という感覚だったんですけど、実際はそんなことないなと思いました。
僕はみんなからあまり期待されてないんだと思う様になってから、開き直ってだんだん勝てる様になってきたんです。もし決勝で浅田選手を倒せたら、周囲の見方も変わるかも知れないけど、何より自分が変わるだろうと思っていたんです。だから試合が始まった時、相手は浅田選手というよりは自分と戦っているという感覚でした。

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過去に最も印象に残った試合はありますか?
2014年の第13戦札幌大会で小野恵太選手と対戦した試合です。小野選手はすごく近い存在で、僕のダーツの扉を開けてくれた方でもあり、とてもお世話になっているんです。過去に何回も負けているんですけど、この頃は特に僕の中では完全にヒーロー過ぎて、一人の選手として見られない様な存在でした。
この時の試合では5レッグまでいった最後のクリケットで僕が完全に優勢だったんです。そういう流れの中で一本目に続き二本目もアウターブルに入ったんですけど、それがインナーに反応して試合が終わっちゃったんです。その場合戻す機能がないのでやり直しになって、結局負けてしまったんです。自分の集中力も限界だったと思うんですが、この時は「まだ早いぞ」と言われた時がしました。
もう一つは2015年の最終戦で知野真澄選手と戦った試合です。年間ランキングがどんどん確定していく時で、僕は微妙なポイントの差で順位争いをしていたんですが、この試合に勝てば逆転して10位になれたんです。それを意識し過ぎない様にしていたつもりだったんですけど、優勢で進んでいた最後の最後に10位というのがちらついて、その瞬間入らなくなり逆転負けしてしまったんです。
僕は勝った試合よりも負けた試合の方が印象に残るタイプですね。反骨精神が強いというのもこれから強くなれる秘訣かもしれないと思っています。

本格的に参戦して4年めですが、この間技術的や精神的に大きな変化というのはありましたか?
技術的に成長しているとは思いますが、そこまで大きく変わってないです。2014年頃から今とほぼ同じ実力にはなっていたと思うので、自分で実感できるほどの変化はないですね。どちらかというと精神的にはすごく強くなったと思います。相手のことを必要以上に気にしなくなりました。
今は試合をしながら自分の勝ち方や持って行き方を勉強中です。しっかり自分の世界観を作り上げることができれば、もっと勝てるようになると思っています。

ご自分でどのようなタイプのプレイヤーだと思いますか?
僕はとにかく頑固だし、試合になると自分以外はすべてが敵だと思ってしまうんです。投げている時は自分だけの時間なので、それを邪魔するものは全員敵なんです。試合中だけはすごく熱いプレイヤーかもしれないですね。

試合中はすごく集中するということですね。
はい。集中するためにわざと目つきを変えたりしています。怒った顔をすると集中できるということが最初の頃わかったんですよね。逆に変に落ち着こうとすると気が抜けたダーツになってしまうんです。
人間としてではなくプレイヤーとしてはまだ若いと思います。勢いを付ければ強いけどまだ勢いの掴み方を知らないというか、ゲームメイクの仕方が分ってない。まだまだ発展途上のプレイヤーだと思っています。

一年間のツアーを回るための調整や体調管理などで気を付けていることはありますか?
前日は絶対投げたくないですね。できれば前々日まで投げたくないという先輩プレイヤーがいますが、その時のイメージが当日まで残ってしまうそうです。その時調子が良かったとしたら「良かったのに全然入らない」とか、悪かったら「調子悪かったから投げる気がしない」とかなっちゃうから投げないと。
僕も前日に投げて力が入りすぎると同じ様な感覚に陥ってしまうので、投げない様にしています。リラックスした時間の延長で好きなダーツに行くという感覚にしたいので、現地に着いたら食事だけしてなるべく早くホテルに入り、12時までには寝る様にしたいんです。
それをちゃんと実行できたのが今年からなんですけど、なんだか眠れないんですよね。12時までに寝ることは寝るんですけど起きるのが3時とかで……。平常心を保とうとしているんですけど、たぶん興奮してるんですね。だからなるべくリラックスして、落ち着かせる様にしています。

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普段の練習方法や時間は?
練習時間はあまり取れないので、お店でお客さんと対戦することが練習になっています。相手によっては思い切り投げますが、そうでない時はあまり集中し過ぎない様にして、例えばこのラウンドではトンパチ出そうとか、このタイミングでは馬出そうとか、オンオフの切り替えと瞬発力を意識して投げています。あまり集中し過ぎない様にしないと僕は爆発してしまうので……。

現在プロダーツプレイヤーは男女を問わず注目されていますが、それについてはどう思われますか?
すごく嬉しいですね。プロとして見られている人は、どうしてもエンターテイメント性を求められると思うんです。そういう意味ではダーツでもヒールタイプの選手なんかがいたらもっと面白いと思いますね。
僕はアメリカンプロレスみたいな大げさなプロレスが好きなんです。あの世界ではヒールとヒーローがはっきり分かれてて、それが裏切ったりするからいきなり湧いたりするんですよね。ダーツの要素として同じことを求めるのは難しいと思うんですけど、何かの見せ方を考えることも必要じゃないかと思うんです。でもこれは一人が何かをしても波は起こせないですよね。団体が2つあることでその波を止めてる気もするんですが、逆に大きい波に流されない堤防になってる気もするし、難しいところですね。僕はパーフェクトしかプロツアーを回っていませんが、2つの団体どちらもファンの人が面白いな、見に行きたいなと思う様な何かをすることが大事だと思います。

現在はダイナスティーがスポンサーになっていますが、スポンサーについてはどのように思われますか?
とても有難いと思っています。
誤解されそうな言い方になってしまいますが、僕はファンもスポンサーも付いて来るものだと思っているんです。魅力のある選手じゃないとファンは応援してくれないし、企業としてお金が動くスポンサーはなおさらですよね。やっぱり選手として自分の色をどれだけ強く見せられるかということだと思うんです。スポンサーはそれを見て付いてくれたわけだから、僕は自分の思う通りに進もうと思っています。
スポンサードしていただいたり応援してくれるファンが声をかけてくれたりしたら、そこには責任が生まれますよね。だから自分の色を出すにしても絶対に迷惑をかけるようなことがあってはならないと思っています。スポンサードして良かった、応援して良かったと思われる選手でなければならないと思います。ダーツを始めた頃の自分に聞かせたいですね。だいぶ丸くなりました(笑)。

今年はジョニー選手も加わってますますパワーアップしそうですね。
僕は移籍発表後すぐの第2戦で優勝できたので良い広告になったかなと自負していたんですけど、すぐジョニーさんにかき消されてしまったので(笑)、ちょっと悔しいなと……(笑)。

尊敬するプレイヤーはいますか?
結婚して子どもが生まれたから言うわけではないですが、ダーツを仕事にしてしっかり家族を養っているプレイヤーはすべて尊敬しています。名前を挙げたらきりがないです。大好きなダーツを一生懸命やってそれで大金を稼ぎ、自分の生活だけでなく愛する人と二人の間にできた子どもを養う、これには本当に感動してしまうんですよね。
すべて自分だけのためにやるというのは限りがあると思うんです。誰かのために、何かのためにやるという人の方が伸びるというか、天井が高いと思います。

これからの夢や目標を教えてください。
まずはパーフェクトで年間ランキング1位を獲りたいです。これは何年かかってもいつかは獲りたいです。それにはまず年間争いにちゃんと入らなくてはならないですが、今は浅田選手が独走なので2位争いのトーナメントになっている状態です。これを崩せるようになりたいですね。僕はまだ若いと言われる世代なので、僕のようなプレイヤーがこういう流れをかき乱すことができれば、さらに下のプレイヤーにも火がつくと思うんです。
同時に上の世代のプレイヤーからも一目置かれるようになれば、全体的にもっと盛り上がってくると思うので、ダーツに関してはそこを目指しています。

最後に読者にメッセージをお願いします。
はじめまして、金子憲太です。パーフェクトというプロ団体でプロダーツプレイヤーをやっている一選手です。
大好きなダーツで勝ち負けしながら仲間ができて、自分自身も感動しながらもしかしたら誰かを幸せにすることができるかもしれない。そんなダーツで少しでも注目されるプレイヤーになれたことはすごく光栄だと思っています。
これからプロになる人やイベントなどでお会いする方に僕がこういう人間だということを分ってもらえたら、その方達に何かを届けられる様に頑張っていきます。これからもよろしくお願いいたします!