Vol.26 BULLSHOOTR XXII
Chicago

2007年7月

世界中から集うソフトダーツトーナメント
「フゥーっ」日本から12時間のフライトの予定が、昨夜からのストームのおかげで(3回目の取材だが初めてのこと)途中2時間も飛行機の中に缶詰となり、結局16時間も掛かってやっとシカゴ・オヘア空港に着いた「うぅ…腰が…痛い」。
重い荷物を引きずりながら会場までのバスに乗り込むと、バスの中では陽気な声が…スペインチームだ。前回出会った懐かしい顔もあり、バスの中では退屈せずに済んだ。今回の会場も、毎度おなじみ「ハイアットリージェンシー・オヘア」とても立派なホテル(空港からバスで約10分)。ホテルのエントランスに到着すると、日本から参加するメンバーと会いホッとした気持ち。そして香港などで会ったブルシューターの面々、いやあ本当に世界中からダーツのために集まっている。

BullShooterが開催するイベントの中でも特別な意味を持つこのトーナメント。5月24から28日の5日間で行なわれ、世界各地のBullShooter支部で活躍しているプレイヤーが一堂に会して腕を競い合いながら大いに国を超えた交流を楽しむ。出場する各国は、地元アメリカを始め、日本、オーストラリア、ベルギー、カナダ、中国、コスタリカ、クロアチア、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、香港、イスラエル、オーストリア、韓国、マカオ、メキシコ、ポルトガル、スロベニア、スペイン、スイス、トルコの23カ国でどの国も強者ぞろい。
今回は特別ゲストとして、PDCで活躍している「ジョン・パート」も参加。

さて今年のこのイベントでは、どんな光景を目撃できるのか?今年こそは団体戦の決勝で日の丸を見たい!!そのためにも時差ぼけの頭を早く解消しないと…。

飲み、騒ぎ、踊る、そして勿論ダーツ
会場の雰囲気は実におおらかそのもの。日本のトーナメントも年々洗練され、演出もかなりクオリティの高いイベントにはなっているが、国民性の違いなのか?この雰囲気はなかなか日本では味わえない。カメラをもってコントロールの前を通るだけでも、オフィシャルのスタッフが直ぐにポーズをとって、しかたなくシャッターを押す羽目になってしまい、まるで皆がハリウッドスターのよう。

トーナメントは朝早くから深夜遅くまで行なわれ、参加者は無駄なく、きちんとブレイクを入れながらゲームを消化していく。入賞者へも賞金が直ぐに手渡され全く後ろめたさなんて微塵も感じさせない。
会場にはダーツバレルやグッズの販売、観客を楽しませるためのゲームスポット、食事にしても会場の外で、いかにもアメリカらしいファーストフードが並び、ドリンクも会場内外で沢山の種類のものが用意されお腹も満足(ドリンクはチェリーコークがお薦め)。
プレイヤーにとっては設備も環境も最高…あとは成績次第なのかぁ?…っともう一つお伝えしたいイベントが…26・27日の土日に開催されたDancing Party。
楽しさ一色でゲームを終了したプレイヤーが(中にはゲーム途中で抜け出して大騒ぎしていたプレイヤーもいた…)大音量80sミュージックの中で、明け方3時頃まで大いに飲み・騒ぎ・躍る…我々も一晩一緒になって騒いだのだが、翌日のゲームを心配したほどだった。
これってとても大事なイベントだと思う。一年をおいてこの大会に来たのだが、ほとんどの各国のプレイヤーが覚えていてくれた…やはり嬉しいし、取材だって断然やりやすい。全く知らないで写真をパチパチ撮っていると「誰だ!おまえ」と敗戦の後ではなりやすいもの。このトーナメント、集まっている面々もゴージャスだが、遊びだってかなり伴っている…アメリカの心を感じるな。

好ゲーム続出
世界各地から選抜されたトッププレイヤーが集まっているだけに、好ゲームが目白押し。たくさん予定されているゲームの中でも、特に男女ダブルス・シングルスA、インターナショナルワールドカップチャレンジに注目。
女子のそれぞれの決勝進出者は、ダブルスAが本誌のコラムでお馴染みステイシー・ブロムバーグとマリリンポップvs ポーラ・マーフィーとテリッサ・サリバン。女子シングルスがポーラ・マーフィー vs マリリン・ポップ。今大会ではポーラ・マーフィー(アメリカ)の活躍が目覚しく、ダブルス、シングルスとも優勝を飾った。

それぞれ決勝に進出したプレイヤーは体格も良く(身長も横幅も…)圧倒されそうな雰囲気があったが、ゲーム自体については日本の女子トッププレイヤーが追いついていけない感じは持たなかった。近い将来日本の女子選手がAグレードの舞台で活躍する日もそう遠くないと思う…イベントの終盤戦、そんな可能性を想像させてくれる光景が眼に飛び込んできた。

女子ダブルスクリケットBの決勝に、日本から参加している保土田 マリ選手と中川 カズミ選手が決勝に進出し、アメリカのダブルスチームと好ゲームを展開してくれた。惜しくも敗れはしたもののとても爽やかなイメージが残り、次のチャンスに期待を抱かせてくれた。保土田 マリ選手はアラシ選手と組んだプロミックスクリケットでも大活躍。アラシ選手の活躍はもちろんのこと、正確にダブル・トリプルを決めたマリ選手の活躍で、準決勝ではアメリカのダリン・ヤング、ステイシー・ブロムバーグ組の強豪を破ったのだ。優勝は逃したものの価値ある2位入賞だった。
試合後ダリン・ヤング選手にコメントを求めると、マリ選手のことを Greatと何度も褒めていた。マリ選手、カズミ選手にとっては忘れられないシカゴになったに違いない。
男子は、名だたる選手が目白押し。PDCランキング上位プレイヤージョン・パートを始めとして、ダリン・ヤング、レイ・カーバー、ジョニーK、スコット… その他オランダやスペインにも実力選手が…。特にめったに目にすることの出来ないPDCプレイヤーのジョン・パート(前週行なわれたPDCのアメリカオープンで4位入賞)には大注目!! 順調な勝ち上がりを予想したが、何とトーナメント序盤であっさり敗戦。ジョンパートが…こんなに早く負けちゃうなんて…結局、敗者復活で決勝まで進んだものの、決勝でもジョニーKに敗戦。スーパープレイヤーでもコンディションの調整が難しいことを感じた一場面であった。

それぞれの決勝進出者は、プロシングルがジョニーK(アメリカ) vs ジョンパート(カナダ)、プロダブルスがシーン・ダウンズ、スコット・バーネット(共にアメリカ) vs マイケル・アンドリアノス(オランダ)、フランシスコ・ジャビアゴンザレス(スペイン)。
特にプロダブルスは見ごたえ十分。マイケル、フランシスコの戦いぶりは際立っていてなんと3ゲームがパーフェクト。若さ溢れるマイケルの強烈なダーツと正確無比なフランシスコダーツは圧巻。1レグ目のマイケルのフィニッシュには、会場の観客からもやんやの大喝采。マイケルは風貌も良くスター性を十分もった好青年の印象。一方フランシスコはもの静かなおじさんとの印象だった。まさに BullShooter Finalにふさわしい内容のゲームを見てかなり満足。

インターナショナル国別対抗戦
ブルシューターでも呼び物のイベントとして人気の国別対抗戦。今回は地元アメリカや日本を含め10カ国が出場した。それぞれのチームが国旗を振って国家をバックに入場し、会場の雰囲気は最高潮に。オープニング後は優勝トロフィーを横目で見つつ、各国揃って記念撮影を行い、選手・観客とも笑顔一杯でゲームはスタートした。
昨年優勝のスペイン、優勝奪還を狙うアメリカ、実力ある選手が揃うドイツ、オランダ…うぅーん強豪国揃いなのは織り込済み。ジョニー、タロー、アラシ、アニーの日本最高峰プレイヤーの日本チームも負けてないぞ!!
ゲームは戦前の予想通りアメリカ、スペイン、ポルトガル、もちろん日本チームも…上位に上がってきた。日本チームは、予選リーグで惜しくもアメリカチームに敗戦。しかしその他のゲームを全勝し、見事に準決勝進出。
準決勝の相手はプロダブルスでも活躍したフランシスコ率いる昨年優勝のスペイン。粘り強い戦いと選手の気合の強さがスペインを上回り「おっしゃー」決勝進出だ!!ジョニー選手の雄たけびが会場にこだまする。「リベンジ!!…」「予選の借りを返すぞ!!」

決勝はメインステージに大勢の観客を集めいよいよゲーム開始。日本チームは気合の声を出しながらアグレッシブにゲームをプレイ。一方アメリカチームは、実に淡々と「勝つのは俺達だ」と言わんばかり黙々とゲームを進めていく。
ビッグネーム揃いのアメリカチームはやはり強い…しかしジョニー選手が意地の20トリプルを決める。観客席から見ている手にも汗がにじむ。
一進一退の好ゲームが繰り広げられるが…残念ながら日本チームの健闘実らずアメリカチームに一歩及ばず惜敗。アメリカチームの歓喜の声が会場に響き渡る。ダリン、レイ、ジョニー・K、スコット選手優勝おめでとう。両チームの選手がお互いの健闘を称えあう。
アメリカの選手達は、優勝カップに並々とビールを注ぎ大騒ぎで酒を飲み干していく。会場に詰め掛けた観客も大いに国別対抗の決勝戦に酔いしれた…。
しかしアメリカ代表も以前と比べるとずっと真剣にプレイしていた。かなり実力は伯仲してきている。ガツンと言わせられる日はもうすぐそこまで来ている…間違いない。

最後に…
アメリカのダーツプレイヤーは、日本のプレイヤーに比べると、ゲーム中も実に楽しそうにダーツをプレイしている。ダーツに余裕を持ってゲームに望んでいる感じ。アメリカのトッププレイヤーも日本のトッププレイヤーも、個人がこのレベルに達するまでに、同じ様に相当な努力や試練を経験したに違いない。負けた試合の後にアメリカ、日本それぞれのプレイヤーにコメントを求めると、アメリカのプレイヤーは、「今日は運が悪かったな」「対戦した相手が強かったんだよ」とあきらめ顔で答えてくれる。反面日本のプレイヤーへはコメントすら求めづらい様子で、話を聞けたとしてもあまりコメントは返ってこないし、負けたことへの反省の言葉を聴くことが多い。日本のプレイヤーはアメリカのプレイヤーに比べて、本当に生真面目。
それが実り世界のソフトダーツ最強国になりたいものだが…。

とは言え、日本のトッププレイヤーが海外でのゲームにも臆することなく実力を発揮できるようになった背景には、日本のダーツ業界で苦労されている関係者と、プレイヤー自身の努力の結晶が実を結び始めていることに違いない。今大会を見て感じたように、世界にはアメリカを始めとしてダーツのレベルの高い国がまだまだ沢山存在する。日本のダーツシーンも早くこの世界レベルに到達し、追い越して欲しいなぁ…ちなみにこの大会でのMVPには、女子がポーラ・マーフィー、男子がジョン・パートが表彰され、歴史ある2007年のBullShooterの大会は締めくくられた。
ダーツの世界には、更なる大きな舞台もその先にはある。…「PDC」あそこで活躍する日本人プレイヤーを早く取材したいなぁ。