2018年3月
最近のダーツショップは、利便性の高いネットショップを運営しながら、実店舗を構えているショップも増えてきました。
気軽に利用できるネットショップ、足を運ばなければならないが実際の商品を手にとって選べる実店舗。どちらにもメリット・デメリットがあります。
今回は、より自分に合ったダーツを選んでもらうために活用してほしい実店舗の必要性について書いてみたいと思います。
「ダーツはマニアックな商品だ。分からないことが多すぎるから、ダーツを広く普及させるにはきちんとした説明ができる人材が必要」。当社の社長がダーツショップをオープンさせた当初から話していたことです。10数年たった今も、そこに変化はありません。
これは、僕がショップに立っている感覚の話ですが、「ダーツについて全く分からない・詳しくはわからない」という方が約7割、「見て触って自分で選びたい」方が約2割、いわゆるマニアな方が1割といった感じで、約7割の方は「ダーツについてよく分からない」というのがディースリーに来店される方の割合です。
マイダーツを買おう、買い換えようかなと思っている方のほとんどは、「狙ったところにダーツが投げられるようになりたい」と考えているのでは。もちろんそのために練習が必要なことはみなさん分かっておられると思います。「弘法筆を選ばず」の精神で、道具はなんでもいいと考える方も中にはおられますが、多くの方は少しでも狙ったところに投げられるようなダーツが欲しいと考えていると思います。
そのため、今の自分に合ったより良いダーツを選びにショップに来られるのですが、選ぶポイントや特徴の違いなど、選ぶ上でチェックしてほしいポイントについて、しっかり説明した上で、「投げやすい」と感じたものを選んで欲しいと思っています。
スタッフがお客さんと一緒にバレル選びを行う際、はじめの会話で心がけていることがあります。とは言ってもそんなに形式張ったものではなく、普通の会話の中でいくつかの選ぶポイントをプレイヤーさんから聞き出すということです。
ダーツの重さの話を例にしてみます。「重いダーツが欲しい」というお客さんがいたとします。皆さんでしたら「重いダーツ」と言われれば何gぐらいのバレルを思い浮かべるでしょうか。
最近のバレルの傾向でしたら20g前後を想像するかもしれません。しかし、10年ほど前であれば18gぐらいと答える方もおられるでしょう。また、貸し出し用のハウスダーツしか投げたことのない方なら、16~17gくらいでも充分に重いと感じるかもしれません。
例えば、「普段どこで投げているのか」「ダーツをどこで知ったのか」などの話から、ダーツ以外にやっていたスポーツや趣味の話に発展することもあります。一見ムダに見える「ダーツ以外の話をする」という行動は、お客さんと親密になりダーツの話がしやすい雰囲気を作るという目的もあります。ダーツの説明をする際、イメージしやすい話のネタを見つけたり、お客さんが考えているイメージをより正確に汲み取り、一緒にダーツを選ぶ際にとても役にたっています。
どんなダーツが良いかをイメージしやすくするための会話をしながら、自分が本当に欲しいダーツを選べるようにお手伝いをさせていただいています。会話を通じてスタッフと一緒にバレル選びができるのが、ディースリーが実店舗を構える理由の一つです。
もう一つ重要なのは、「試し投げができる」という点です。
バレルの違いの説明としてポイントとなるのは、主に「重量」「形状(太さ・長さ・テーパー・くぼみ)」「カットデザイン」の3つです。基本的にはこの3つの「バレルの違い」のポイントについて、投げる時にどう違いが出てくるのかを感じてもらいます。カラーやネーミングは好みの問題なのであまり重要ではありません。またプロモデルかどうかなども、あくまで付加価値ですから、選ぶポイントとしてはあまり重要ではないと考えています。
ここで活躍するのが、各メーカーから提供していただいている試投用バレルです。「重量」「形状」「カットデザイン」など、見た目と実際ではどの程度違いがあるのかを手に取って確認できるのは実店舗ならではのメリットではないでしょうか。ちなみに、バレルの違いとして「飛び方」や「バランス」といった説明はディースリーではあまり重要視していません。理由は簡単です。それらはバレルの違いではないからです。投げ方やセッティングなどの扱い方による結果の違いにすぎません。
とはいえ、全く関係しないわけではないので試し投げをした際、「こっちの方がよく飛ぶ」、「こっちの方が綺麗に飛ぶ」などという現象が起こることがあります。お客さん本人が納得できることが一番大事ですが、「これはバレルの性能ではなくて、そのような力が伝わるための手法がうまくいっているから」という説明を加えます。
道具の違いは扱い方によって感じ方が変わるものです。スタッフによっても感じ方が違うので、考え方やオススメにも違いがあるのも面白いところです。あらためて考えてみると、これは特にダーツに限られたものではないはずです。
話は逸れますが、ハイブリット自動車というのは燃費の良い車と言われています。実際に乗ってみると、ガソリン車と比べ燃費は良いかもしれませんが、皆が同じ燃費ではないと思います。
燃費を向上させるには上手なアクセルワークなどが必要です。燃費が良くなるのはありがたいですが、運転の度にあれこれ考えなくてはならないとなると、運転そのものに煩わしさを感じる方もいるかもしれませんよね。
ダーツに話を戻します。例えば「鋭く飛ぶダーツ」と言われているダーツがすべて鋭く飛ぶというわけではありません。鋭く飛ぶ力を正確にバレルに伝えるスキルがなければそうはならないのです。
僕がショップに立ち始めた頃メインに扱っていた海外メーカーのダーツには「売り文句」というものがあったのか、よく分かりませんでした。メーカーのカタログやホームページを見ても、重さと全長、最大径程度の情報しか載っていなかったので、僕の主観が「売り文句」となっていました。
徐々に国産メーカーが増え、メーカーから発信される「売り文句」が日本語で伝わるようになってくると、この売り文句を大いに利用していました。先の話にあった「鋭く飛ぶ」という売り文句が書いてあれば、「このダーツは飛ぶよ」と言ってオススメしていた時期もあります。
しかし、実際に試投してもらうとボードにすら届かないこともあったりしました。「あれ?(苦笑)」ってなりますよね。これだと、ショップの立場はおろかメーカーの信頼まで落としかねないと思いました。
メーカーは「狙いやすい投げやすいダーツ」を目指して作っていると仮定します。そのメーカーは「狙いやすく投げやすいダーツ」について考え、いろいろなアイデアを形にします。それがメーカーの役割だと考えます。そして商品をアピールするための「売り文句」を考えることでしょう。メーカーが自ら考案したダーツを「投げやすいダーツ」と言うのは当然のことです。メーカーが思う「狙いやすい投げやすいデザイン」というのはもちろんあると思います。しかし、ショップはそのまま「投げやすいダーツ」とだけ説明して販売するのでは、実店舗としては不十分だと思います。正しい情報をきちんと伝え、お客さんに幅広い選択肢を持っていただき、良い意味で悩ませるのが実店舗の役割だと思います。
ですから、「お客さんに合ったダーツを選ぶ」とまでは言いませんが、「お客さんにとって相応しいと思うダーツの選択肢を提供する」ということはできるのではと考えています。
メーカーの考える「売り文句」をそのまま伝えるだけなら、商品はもっと簡単に説明できるし、簡単に売ることができるかもしれません。しかしそれではネットショップと何ら変わりがありません。わざわざ足を運んでいただく理由がありません。
ダーツの専門店としてあり続けるためには、ダーツ自体の本質をしっかり伝えていかなければならないと思っています。それはダーツを長く続けてもらうため、ダーツがうまくなるための道であると思っていますし、皆さんに選び方をきちんとお話しすることで、ダーツを道具選びから楽しんでもらえるようになってほしい、と考えているからです。
ダーツに限った話ではありませんが物を買うことに関して、ネットショップは本当に手軽で便利になったと思います。近くに実店舗がなければネットショップしか選択肢はありません。
ダーツが普及するためにも、この「手軽さ」はなくてはなりません。しかし、マニアックながらも楽しいダーツ選びが、「手軽さ」に埋もれてしまうのは少し残念な気がしています。
ダーツに興味を持ち、もっとダーツ人口が増えていくためには、物の販売だけでなくきちんと情報提供のできるネットショップや実店舗は必須ではないかと思いますし、こういったところにも、ダーツ普及のカギがあるかもしれません。
お客さんとの会話の中にもダーツに関するヒントがある気がします。接客をしていながらも、日々勉強です。より良い情報提供ができるように今後とも努力していきたいと思っています。