Vol.109  東田 臣
不安なのはいつもグリップ

2021年7月号

僕はほぼほぼグリップで可怪しくなるイメージなんで、一番怖いです。
ダーツを投げるのに指は敏感な部分で、同じ処を同じように持つのが出来ないと、違和感になってそれが不安になります。
例えば人によって肘やテイクバック、フォローばかりを気にする人がいますが、それが僕の場合にはグリップだということですね。

初登場ですので最初のダーツとの出会いを教えて下さい。
18か19歳の時に居酒屋でアルバイトをしていて、そこのメンバーの方たちにダーツバーに連れて行ってもらって、始めたのがきっかけです。18年ぐらい前のことです。ダーツ歴も長くなって来ました。その時はまだお酒も飲めないですし、バーに行くだけでもドキドキする年齢でしたね。カウントアップで500点出したらマイダーツプレゼントで友人と頑張っていて、ちょこちょこ通う内に、気がついたらはまっていました。
アルバイトを始めて稼いだお金を使えるタイミングで、ダーツに出会ったので、気がついたら全部をダーツにつぎ込んでいました(笑)。最初から打ち込んでいましたね。

グリップ
グリップの最重要ポイントは何でしょうか?
不安にならない事でしょうか。僕はほぼほぼグリップで可怪しくなるイメージなんで、一番怖いです。ダーツを投げるのに指は敏感な部分で、同じ処を同じように持つのが出来ないと、違和感になってそれが不安になります。毎日同じようにグリップを持つことが苦手なタイプなのかもしれません。頭では同じグリップという考え方を、できるだけ排除しようと思っています。技術的にいろいろあるでしょうが、僕はもっと曖昧にしたいですね。重要なところだからこそ、大きく捉えるようにしたいです。
例えば人によって肘やテイクバック、フォローばかりを気にする人がいますが、それが僕の場合にはグリップだということですね。

今までにグリップは変えて来ましたか?
3、4回は大きく変えました。一時期すごく悪くなったので変えなくてはとなって、変えてみるとその後D1の頃ですがレーティングが18から8に落ちました。3年ぐらいそんな風になって、悪夢のようで苦しかったですね。迷いに迷ってコロコロ変えていました(笑)。

他人のグリップは参考にしますか?
遊び程度で真似するぐらいでしょうか。自分で探して追い求めるタイプですね。

グリップは日々違っているので、トーナメントではアップの時にその日の形を探すプロと、逆にいつものグリップで持ちたいとアップで確認するプロがいますが、どちらのタイプですか?
僕は毎日違うと考えているので、見ていては分からない程度で探します。調子が悪いと爪を切ります。それだけでもけっこう違いますよ(笑)。

グリップは季節によってコンディションが変わりますが、何か対策はしていますか?
してる時としてない時がありますね。し過ぎるとそれが無いと投げられなくなってしまうので、過敏にならないようにしています。集中していると手汗もそれほど気になりません。

立ち方
スタンスはどうしていますか?
サイドよりのミドルでしょうか。最初に右足に全部体重を預けて、そこから左足を置くのがベースの立ち方です。若干開き気味のスタンスです。

スローラインは真ん中に立ちますか?
僕は右目の下にテイクバックするので、そこがセンターになるようにして立っています。

両足の荷重はどうでしょうか?
9:1ぐらいですね。かなりつっこむ方なんですが、この荷重だと最初に足が疲れます。

前のダーツが邪魔な時はスウィッチする方ですか?
前のダーツの刺さり方によりますが、明らかにイメージが悪い時は立ち位置を変えます。

左足はどのように使っていますか?
左足が前に出過ぎると身体は正面を向きたがるとか、逆に内に入れすぎると左に向きたがるので大事ですね。


構えた時、肘の位置は高低いかがですか?
高い方だと思ってますね。元々セットアップがこれほど高くなかった時は、手を伸ばして構えていたんです。でもある時にグリップに矢を乗せて飛ばしたい、と考えるようになったんです。今でいうと野毛駿平プロや赤松大輔プロのような感じですね。手に乗せたものを前に出す投げ方がしたくて、手首の使い方を考えて今のような高い位置になりました。

構えた時、肘の位置をしっかり固めているプロと、柔軟性を大事にしてゆるくしているプロがいますが、どちらですか?
どっちでもいいんじゃないでしょうか。身体の流れですよね。僕はよく逆再生を言うんですが、出した後の手がどこから入って来るのかでイメージが変わるので、どちらもありますね。

肘はプロプレイヤーが怪我しやすい場所でもあるのですが、何かケアはしていますか?
長くダーツを投げて来ていますが、肘を壊したことが無いんで特別にケアはしていません。肘に負担のかからない投げ方だからだと思います。でも手首が時々、痛くなることがありますね。

テイクバックについて
始動はどのようにしていますか?
イメージとしては引ききった処から戻して、タイミングを作ってまた引いて来るようにしています。僕はライントレースしながらなので、円運動というよりは矢が斜めに入って来ることを意識しています。

テイクバックの最終点は決めていますか?
目の下の頬にフライトが当たるので、決まっています。長い間に自然と同じ場所に引くようになりました。

スローについて
どんなことを考えていますか?
理想としては動きの流れの中で形になっていれば、入ると思います。ピッチングやバスケットのスローなどと一緒で、点で考えるよりも一連の運動ですね。自分で描いているスローのイメージがあって、それが出来れば入るという確信を持っています。

リリースポイントについてはいかがですか?
僕はセットアップが高いので、早く離し出せればいいと思っています。実際のリリースポイントがどこかはあまり分かっていないですが、指の開きは早くしています。早く離したときの方が結果は良いですね。

投げきった後、手は伸ばしていますか?
投げきった後は下を向いています。投げる時に手を伸ばすタイプではなく、振り切る方ですね。昔は長く持って肘を跳ね上げるという理論がありましたが、きっとフィル・テイラーの影響でしょうか。僕はマーク・ダドブリッジから入って、エイドアン・ルイスに辿り着いて、2009年頃ですがその映像ばかり見ていました。完全に振り切っていましたね。今はYou Tubeのダイジェスト版を見て研究しています。

最後の手の形は気にしていますか?
半々です。自然とその形になるのが良いんですが、ならない時は途中経過が違っているということなので、意識してそうなるようにします。

ダーツの飛び
気にしていますか?
あまり気にしていないです。ありがたいことに、数年前ドリーさんに動画できれいな飛びとして取り上げていただきました。僕としては海外のプレイヤーのように、飛びはいつも一定していればそれで良いと思います。

回転はいかがですか?
左回転で飛んでいっています。自然にかかる時と意識してかける時がありますね。やはりグリップです。今のグリップだと絶対に左に回転するはずなんです。リリースで早いと自然にかかりますが、遅い時は意識してかけます。

リズム
ダーツには1本のリズム、3本のリズムなどたくさんありますが、どう考えていますか?
これも半々です(笑)。お客さんに6本投げてリズムを意識して、自分のリズムを掴むようにアドバイスするのは練習して見つけてもらうためです。でも投げていれば自然に身につく面もあります。リズムは重要なテーマですが、意識した時点で変わってしまうので、とても微妙ですね。いつもの練習通りがいいのではないでしょうか。

試合ではプレイが早い人、遅い人などいますが気にしますか?
3本ともに早い遅いなどは良いんですが、3本のリズムがバラバラの人は嫌ですね。変な間が空くので苦手です。僕は1、2本目が外れたとしても3本目は同じリズムで投げたいタイプです。逆に緊張するような気がするからです(笑)。

ソフトではゼロワンとクリケット、どっちが好きですか?
クリケットでしょうか。ゼロワンで強くなりたいですが、クリケットは遊べて楽しいですね。

スティールとソフトの違いについて
できるだけ同じとして捉えたいです。違いは的が小さいことだけですかね(笑)。

練習
メニューを教えて下さい。
ソフトだとまず10〜20分だらだら投げてから、本格的にカウントアップを始めます。僕の場合3段階に分けていて集中して出る点数、5回連続1000点、3回連続1100点、1回1200点出すかですね。その日によって調子があるのですが、それを続けます。時々というか1200点が出ない日の方が多いです(笑)。飽きてくるとジャパンのプロテストをやります。
一人で練習する時間は毎日約2時間、休んでも1日空けるぐらいです。

スピリット
トッププレイヤーになると技術的にそれほど違いは無くて、勝つ精神力が重要だと言われますが、どう思いますか?
やはり技術的な開きがあると思います。僕と浅田斉吾プロを比較したら明らかに差があります。チャンスが無いわけではないですが、勝つ確率を考えると僕の方が低いですね。1試合だけでしたら時の運もあるでしょうが、年間になると追いつけないような気がします。
むしろメンタルは練習段階から始まっていると思います。自信を持って試合に臨める日がトータル何日あるかが大事で、ガッツだけじゃ勝てないですね。

FIDOに出場していかがですか?
あかん時はあからさまにダメですね。先日の松田純プロとの試合は頭の中がグチャグチャになってしまって、リズムで押し切ろうとしたんですが通用しませんでした。暴れたくなるぐらい悔しかったですね。
その後にも試合があって吉野洋幸プロとの対戦で負けたんですが、内容はアベレージ82ぐらいあったので納得はしています。暴れずに済むぐらいの悔しさです(笑)。
オンライン独特の間合いがありますが楽しんでいます。

プロツアー準備は出来ていますか?
練習はコンスタントに続けているので、試合感や調子の波を除けば出来ているつもりです。

これからの夢や目標を教えて下さい。
PDCの舞台に1回は立ってみたいですね。僕は子供が3人いるのでPDCツアーを周るのは難しいでしょうが、アノ舞台はやはり夢ですね。本気でダーツをやっている人は、誰もが絶対に経験したいでしょうね。

読者にメッセージをお願いいたします。
真面目に喋り過ぎて申し訳ないです(笑)。You Tubeでけっこう発信しているんですが、そちらでは自由にやってます。この機会にもし興味を持っていただけたら、ぜひ応援お願いいたします。