Hiroshi Watanobe-Technique-Top

Vol.23 渡部 紘士
独自のダーツセオリー

2007年1月

グリップについて一番大事に考えていること、注意していることは…
グリップの一番大事なポイントは二本の指(親指、人差し指)が効いているかどうかということに尽きます。ダーツが指から放れる瞬間に、親指と人差し指が「利いているか利いていないか」で飛びが全く違ってきます。唯一、ダーツと人間が接する箇所なので上達に大きな影響を及ぼすことでしょう。基本の中でも最重要ポイントです。

私は二本の指を深く持つことをお薦めします。浅く握っていると重要な場面でダーツがすっぽ抜けたりして、あらぬ方向に飛んでいったりします。あまり力を入れなくてもしっかり持てる、握れるグリップを研究して下さい。練習の時に絶えず意識してほしいと思います。人の手は大きさも違い、指の形状も様々ですから色々なプレイヤーのグリップを参考に工夫してみてください。

握る強さはどの位でしょうか?
強すぎず、ダーツの重さを感じるくらいが理想ですね。そうすれば思うように飛ばせると思います。違った強さで握り投げてみて下さい。結果は一目瞭然ですよ。強く握り過ぎるとフォームがぎくしゃくしたものになりがちですので気をつけて下さい。

ワンタン氏はスリーフィンガーですが、それに至った過程は…
最初は四本でした。しかしどうしても私の場合は投げるときに薬指で跳ねてしまいます。投げるたびに考えてしまうので、それならそんなことを考えなくてもいいように三本指(スリーフィンガー)に変えました。テイクバックの時は二本を基本で握る感じになり、三本目はダーツがぶれない様に支えているフィーリングです。また、指はいつもバレルの同じところを持たなければいけません。さらに忘れていけないのはダーツを持つ手も大事ですが、逆の手も残ったダーツの先を揃えて持っている方が良いということです。右手で左手のダーツを持つときにダーツ自体を見ないで持てるように、また同じタイミングで構えることができるようにするためです。左手に持っているダーツをバラバラに持っているといちいちダーツを確認する必要が生じてしまいますからね。

Hiroshi Watanobe-Technique-2

スタンス・腰・肩・効き目
スタンスにもオープン・スタンダード・クローズドとありますがワンタン氏が今のスタンスに落ち着いたのは…

以前はダーツボードに対して前足を垂直に構えていました。ある時に、エリック・ブリストルの影響を受けたのですが…ダーツ自体の飛びが悪かった時に、どうしてもより身体をボードに近づけたかったので、足をスローラインと平行にしました。かかとがスローラインの後ろにあるのと、より近い場所にあるのとでは、構えてみてボードとの距離が随分違うではありませんか。しかし足がボードと平行、身体が垂直ではどうしても投げづらい。(よほど身体が柔らかい人間ならいいが)やはり投げ易いのは斜めが投げ易い、というのが私のたどり着いた考え方です。

ダーツの場合なるべく力を入れなくて、より多く狙った場所に入れるためには、身体自体にあまり力を入れないようにする方が狙った場所に入る感覚があります。長い試行錯誤を経て、自然に前足のかかとを斜め後ろにという位置で落ち着きました。

腰の位置はどうですか?腰の位置はどう重要だと思いますか?上半身を動かないようにするためには腰が非常に大事だと思いますが…
PDCのプロ選手も見ているとしっかりと腰を構えて(固定して)投げていますね。腰を重点に上半身が振れているという印象でしょうか。腰から下は絶対に動いてはいけません。映像などで見ると外国の有名選手の腰の構えがどっしりしていて動かないフォームは本当に素晴らしいものがあると思います。

それと関連した動作で肩の開きはどうしていますか?ボードに対して垂直の選手もいれば全く正面を向いて選手もいるし、少し肩を開いて斜めに構えている選手もいると思いますが…
先ほど述べましたが、斜め位がベストだと思いますね。ボードに対して垂直の肩で構えるということはまさに至難の技だと思います。世界には稀にそういう選手がいるかもしれませんが、一般的には難しいでしょう。利き腕・利き目によっても違ってくるとは思いますが、なるべくなら斜めが良いでしょう。

利き目については?
私の場合は右目です。とても思い出深く残っているのですが、以前対戦したジョン・パートは凄かったですね。「なんでこれで入るんだよ!」と本当に感心しました。彼は右手をまっすぐ左目に引くフォームなので、頭がものすごく斜めに構えていますよね。まるで重心の外にあるように見えます。右利きで右の目が利き目の人にはなんとなく見慣れないフォームですが、彼はしっかりそれを身につけ世界の頂点に立っています。左が利き目の方には大いに参考になるのではないでしょうか。私はよくダーツ講習会に招かれるのですが、そこでもみなさん利き目の事を質問してきます。いつも「いかに投げ易くすることが大事で、無理がある投げ方をすると、いずれ限界が生じてくるので続かない」、と答えています。投げ易い感覚でそれにあった練習をしていくことが大事だということですね。

構え方・ダーツの軌跡
構え方で一番大事なことは…
初心者でも上級者でもそうだと思いますが、最初に構えができると満足してしまいます。(それで的に入ると思ってしまう)。構えはあくまでもそこから始まる動作(肘の高さの位置等)の最初のプロセスの一つに過ぎません。そこからテイクバックし、狙った所にフィニッシュしなければならないという事を忘れてしまっているように感じます。トータルフォームの一部分として構え方は考えて欲しいですね。

日本人のダーツプレイヤーは構え方が奇麗すぎるような印象を受けます。すごく上手なのかな、と思ってみているとその後はあまり…なんていうケースが多いのではないでしょうか。

よく出る例え話で、ボードからリリースポイントまで一筋の線が描かれていると表現されますが、それをイメージして練習するには…
とても大事なことです。私が非常に良い状態のときは、構えた指先からボードまでの距離が非常に短く感じます。(ラインより前に立ってるわけじゃありませんよ…笑)まるで1m位(全然距離が無い感じ)に感じてしまう。もう「ちょんと投げたらすぐに的に当たる」感じ、だから力を必要としません。その状態が自分にとってはベストな状態ですね。そうするために「ダーツの飛び」を強く意識して日頃から練習しています。

良い状態になるにはグリップを始め全てができていなければなりません。調子が良い時にはダーツの軌跡が短く、悪い時には長く感じられると思います。良い状態になると精神的にも落ち着き、思い通りのゲームをすることができるので、ダーツってなんて楽しいスポーツなのかと再認識できます。

Hiroshi Watanobe-Technique-1

テイクバック
最近私もあまり良くないんだけれど。これは「投げるタイミング」が要素として絡んできます。自分の目元まで引く動作がゆっくりだと(ゆっくり狙って引いてくると)その先が早くなってしまいがちです。構えからテイクバックで引いて来て投げるまでのスピードが一定の方が良いと思います。あまりにも慎重になってゆっくり引いてくると、ダーツが飛ばない感じがイメージされて、その先の動作が速くなってしまいます。常に同じリズムで、スムーズに引くことを身につけて欲しいですね。

リリースポイント
リリースの位置…構えた位置。いつも解らなくなってくると構えた位置に戻ります。ダーツを放すポイントを意識するのはなかなか難しいことです。先のテイクバックで逆にリリースポイントが決まるということでしょう。同じリズムで投げられれば、自然と同じ位置でダーツは手と放れます。

Hiroshi Watanobe-Technique-3

フォロースルー
さきほどの軌跡にダーツを放すイメージを大事にして下さい。よく思い切り腕を伸ばそうとしているプレイヤーも見ますが、そんな必要は全くありません。無理にフォロースルーで腕を伸ばしたりすると、リリースポイントがずれてしまいます。基本的にフォロースルーは、狙った所に指が行く感じを大切にして、あくまでもリリースポイントを大事にしています。以前はフィニッシュで手を下に向けていました。テイクバックしてそのまま「ぽっーん」という感じで投げてフィニッシュの指先も下を向いていました。ところが次第にもっと狙った所に入れたくなってくると、フィニッシュで指先を狙った所に合わせるようになってきました。
つまりこの指先(人差し指)が、狙ったポイントに入れば良いという風にスタイルが変わってきたのです。自然に狙った所に指が行く感じです。狙うポイント、構えた指先、テイクバックを終えた指先、この3点を軌跡で結び、その軌跡でリリースし、後は自然にフォロースルーが続くのです。

Hiroshi Watanobe-Technique-4

練習方法
漠然と練習をしていても進歩はするとは思いますが、飛躍的な上達は望めません。やはり自分なりの目標を持って練習をすることが大事だと思います。例えば大会に出場して優勝する場合に、どういうダーツをすれば優勝できるか?「ブルを3本入れれば勝てる」のであればそこを重点的に練習するとか…。また自分の目標よりもさらに上に狙いを定めて練習する事も大事ですね。日本チャンピオンを目指すなら…世界チャンピオンを目指しなさいと言う事です。

初心者に助言は?
それぞれのレベルで練習方法は違ってくると思いますが、まず初心者の方は・・・楽にダーツボードに届かせるようにすることが大事です。フォームにこだわり過ぎると思うように飛んでいかないものです。最初はフォームを大きく心がけて楽に投げられること、そこからダーツが始まるのです。その次に狙っている場所に入れるためにはどうするか?…そうすれば、あまりフォームが大きくないほうが良いとか、肘の位置はどうしたら良いかとか徐々に技術を積み重ねていけば良いと思います。あまり無理することでダーツが嫌になってしまうことの無いようにして下さい。

ハードとソフトの違い
日本ではソフトダーツが殆どですが、世界的に見ればダーツと言えば主流はスティールダーツなのが現状です。今日、日本の現況をどう感じていますか?

私はソフトもスティールも同じダーツだと捉えています。ソフトダーツは一般の方がダーツに入り易いと思っています。初心者の方にとって点数のカウントは面倒ですが、ソフトの場合はマシーンが計算してくれるではありませんか。ゲームの種類も豊富で楽しい要素がたくさんあります。ソフトダーツから競技人口が増えてくれればダーツ界にとっては良いことに間違いありません。競技人口そのものが増えていけば次第にハードの人口も増えていくと考えています。プレイヤーは上達してくるとハードを競技するようになるものです。どっちがどっちではなくて、両方とも同じダーツだと思います。要するに多くの人にダーツを知ってもらえればいいのです。

Hiroshi Watanobe-Technique-5

ワールドカップ
ワンタン氏はワールドカップに数多く出場されていますが、特に思い出に残ったことは?
ワールドカップへは11回出場しています。ダーツ教室でよくお話しますが、ワールドカップの練習中にテリーとエリックが私を呼んで面白いことを見せてくれたことがありました。テリーがボードの前でチョークを垂直に投げてエリックがそれにダーツを当てて狙った場所に入れるというのです。一本目が5に入り、二本目は1に行きました。そして3本目にパーンとチョークに当ててなんと20のトリプルに入ったのです。自分でその光景を見ていて信じられなかったことを思い出します。(これは使える!)こんなことが自分で出来たらダーツのSHOWが出来る、などと冗談半分で感じたことを思い出します。ちなみにテリーは右手でも左手でも180のスコアが出せる勝れた選手です。

何処が思い出深かったですか?
スコットランドのエジンバラに行った光景は今でもよく覚えています。エジンバラの市庁舎に用意された美しい会場に招待され、バックミュージックにはクラシックのオーケストラが演奏…(本当にロマンチック)、日本ではとても考えられないシーンでしたね。英語が喋れなくて日本人同士で隅のほうで小さく食事をしていたことを思い出します。

また違う日に、出場した選手がバスで地方を回る(スコットランド)機会があり、昔のディスコで一般の方とダーツを投げた記憶があります。ダーツの試合後、皆で地元の民謡に合わせて踊るのですが、当時はまだ日本人自体が珍しかったのでしょうか、地元の方に身体をやたらに触られた記憶があります。ただ心残りだったことは、せっかくエジンバラまで行ったのに、セントアンドリュース(全英オープン開催ゴルフ場)でゴルフしてこなかったことです。実は行かないかと友人に誘われたのですが「試合が終わるまでは行けない…」と国際大会だったせいで緊張もあったのでしょうが、断ってしまい残念なことをしました。

この時に学んだ事はやはり世界の舞台に出るのなら、言葉も知識を得て世界の有名プレイヤーと少しでもコミュニケーションをとることも技術上達の一つだと感じました。

結局このワールドカップでは、二回戦か三回戦で負けてしまい、凄く悔しい思いをしたことを覚えています。「クソッ英語が喋れなくてもダーツで勝ってやる」という気持ちが湧き、私のダーツの扉が開かれたのかもしれません。