Vol.109 鈴木 康太
どんなゲーム展開でも絶対諦めない

2021年7月号

自分だけで練習できることと、対戦では大きな違いがあると思っています。
練習では出来たのに、緊張すると入らない場面を多く経験してきました。
入れたい時に出来ないことを練習しても意味が無い、と思うようになったんです。
ここは絶対外せないという局面に追い込まれることで、よりスキルアップ出来ると常日頃考えています。
そんなことから実践形式でできるだけ練習しています。

初登場ですので最初のダーツとの出会いを教えて下さい。
僕はお店を経営しています。元々はバーとして営業していたんですが、お客さんで来ていた方からダーツマシンを置いてみませんか、というお誘いをいただいたのが最初です。お客さんの遊び道具になるかな、と導入してみたら自分自身がどはまりしてしまいました(笑)。それが2010年のことなので、ダーツ歴も約10年ということになりますね。
初めの印象は楽しいゲームだなと思いました。でもダーツ経験者が来店した際に対戦してみたところ全く相手にならず、その方もつまらなさそうにしていたので、練習をせざる得ない状況になりました。単純にダーツ置いたのに、そこのスタッフがへただとまずいよね、という発想でした。それから練習に励むようになりました。最初の2ケ月はオフラインだったんですが、その後オンラインにすると上達は避けて通れなくなりましたね。

グリップ
グリップの最重要ポイントは何でしょうか?
僕は親指のグリップが深いんですが、浅いと指先でコントロールしたくなるので、そうならないように深く握っています。手全体で持って、指でつままないようにしています。

今までにグリップは変えて来ましたか?
始めてから3〜4回大きく変えていて、毎日でも微妙に違います。

他人のグリップは参考にしますか?
メチャクチャします。グリップ特集号ではいろいろ真似して研究していました。グリップは静画で見て再現できますからね。フォームは見てもなかなか同じように投げる、とはいかないと思います。

グリップは日々違っているようですが、試合中でも違和感があると変えることもあるんですか?
試合でも練習でも、まずアップを始めて昨日のグリップを思い出します。それが合っていれば引き継いで、今日はイメージが違うなと感じた時は当日のグリップを探します。見つかるとその日はそのグリップで通します。さっきの試合は良くなかったから変えよう、というのは無いですね。

グリップは季節によってコンディションが変わりますが、何か対策はしていますか?
僕は乾燥が不得意でカサカサした時には、保湿するようにしています。季節というよりは、場合によってという感じですね。特に最近気をつけるようになりました。

立ち方
スタンスはどうしていますか?
かなり台に向かって左側に立っています。僕はけっこう右肩開いて背中側に重心があるんですが、右肩をブルに合わせたいんです。45度ぐらいのオープンスタンスですね。身体が固いのでクローズにして肩を開こうとすると、窮屈になってしまうからです。6〜7年ほど前から左に立っています。

以前小野恵太プロにインタビューしたら左側に立っていたのを、最近真ん中にしたと言っていましたね。
たぶん彼の方が僕よりも左ですね。僕はとりあえずスローラインの左端で収まっています。でも変えるのはたいへんだったでしょうね。

場面によっては立ち位置を変えますか?
あまりスウィッチが得意ではないんで、できるだけ同じ場所から投げたいです。でもブルを狙って左にはずれる場合は、さらに左に構えることは意識していますね。

両足の荷重はどうでしょうか?
普段は9:1ですが、試合ではつっこむ癖があるので左足を2、3割にする時もあります。

左足の役目は大事ですか?
そう思います。僕は右足のかかとと左足のつま先で立ってのバランスなんですが、肩、かかと、つま先のイメージが大事です。


構えた時、肘の位置は高低いかがですか?
ダーツが目線にあるので、そこで肘の高さが決まります。始めた頃はいろいろ変わったんで、たくさん試しましたね。最後に行き着いた先が今の位置です。

構えた時、肘の位置をしっかり固めているプロと、柔軟性を大事にしてゆるくしているプロがいますが、どちらですか?
僕の場合は肘が支点になって腕が回転しているので、固めています。僕にとっては一番大事なことかもしれません。

肘はプロプレイヤーが怪我しやすい場所でもあるのですが、何かケアはしていますか?
僕も何回か痛めたんで投げ始める時に、いきなり強く投げないようにしています。素振りでもいいのでウォーミングアップが大事です。特に冬は気をつけた方がいいですね。

テイクバックについて
始動はどのようにしていますか?
構えてからゆっくり手を前に出して、タイミングを作って引き始めます。構えた処からいきなり引き出すと、どうしても力で引いてしまいますが、反動で引くと無駄な力がかかりません。
全部の流れを詳しく説明するとですね。
1-構える
2-テイクバックの最終点に引く
3-もう一度構える
4-少し前に手を出す
5-さきほどのラインを意識しててテイクバック

テイクバックの最終点は決めていますか?
自分ではイメージしている場所、形があってそこに行くように練習しています。試合ではそれほど考えていないですね。同じ場所からスタートできたら、同じ振りもしやすいように思います。テイクバックがずれると身体が勝手に修正するので、フォームも変わってしまいます。

スローについて
スローでは何を考えていますか?
肘を支点に腕が弧を描いて回転することですね。僕にとっては肘がとても重要で、肘さえきちんと使えていれば、後はほぼ思ったように動くと思うんです。

リリースポイントについてはいかがですか?
出来るだけ手前にして、長くダーツを持っていたくないですね。早く離せるように意識しています。

投げきった後、手は伸ばしていますか?
下に振り切っているんで伸ばしてないですね。

投げきった後、手の形はいかがですか?
あまり気にしてないです。僕ははらって投げるので、人差し指と中指が右を向くんですが、それで一定しているので納得しています。やはり離すまでが勝負でしょう。

スティールとソフトの違いについて
ソフトをメインに投げていますが、スティールもリーグに参加したりしてちょこちょこ接しています。違いはダブル!ですね。一定の緊張感の中で、あのサイズの的を狙うのはたいへんです。

FIDOのオンラインなどで見るとけっこう練習してるな、と思ったんですが?
今はソフトの試合が止まっているので、FIDOのオンラインが自分を試せる場なので、練習でもスティールに寄っては来ていますね。

PDCワールド・チャンピオン出場をかけた試合では、惜しくも2回準優勝ですが成績も残していますよね?
でもあの場所に来ていたメンバーでは、僕はそれほどスティール投げてるプレイヤーでは無いですよね。普段は9:1ぐらいでソフトの練習をしています。それでも決勝にいきましたが、何だったんでしょうか?削りで圧倒されて何度も厳しい局面に追い込まれたんですが、偶然にダブルが入ってそれに救われました。

今年も挑戦しますか?
そう思っています。アノ舞台には立ってみたいですね。手が届きそうになったんで、一層その気持が強くなりました。元々はそれほどPDCに行くぞ!という感じでは無かったんですが、いろいろなものが芽生え始めています。

練習
メニューを教えて下さい。
基本的には対人がメインになります。ありがたいことにお店のお客さんではパーフェクト優勝している人もいますし、ライブで18、フェニックスで25とか、うまい人達が多いんですよね。リーグのメンバーはすごくレベルが高いので、一緒に練習して高めてもらっています。

一人では練習しないんですか?
自分だけで練習できることと、対戦では大きな違いがあると思っています。練習では出来たのに、緊張すると入らない場面を多く経験してきました。入れたい時に出来ないことを練習しても意味が無い、と思うようになったんです。ここは絶対外せないという局面に追い込まれることで、よりスキルアップ出来ると常日頃考えています。
そんなことから実践形式でできるだけ練習しています。

ダーツの飛び
気にしていますか?
定期的にスローで動画を撮っています。矢角を保ったまま出せているのか、つぶれて出ているのかを一番見ています。矢角を保つのはとても重要です。
理想とする飛びは、大きな弧では無い放物線ですが、それも真ん中では無く刺さる直前が一番高いのを目指しています。少し低めから投げるので、きちんと矢角が保てていると、自然にそんなイメージの飛びになります。

リズム
ダーツには1本のリズム、3本のリズムなどたくさんありますが、どう考えていますか?
僕の特徴なんですが、スローに関してリズムが無いんですよね(笑)。最下点で止まるんで誰よりも無いです。普通の人はテイクバックしてからすぐにスローに移りますが、僕はそこで少しの間静止するんです。僕のイメージではタメを作っているんですが、独特だとよく言われますね。
僕は1、2本目が外れたとしても3本目は同じリズムで投げます。どっちみちスウィッチしない方なので、リズムを切りたくないからですね。

試合ではプレイが早い人、遅い人などいますが気にしますか?
すごく気になります。僕は遅い方だと思うんですが、でも遅い人は苦手です(笑)。考えちゃう時間ができてしまうのが嫌なんですね。あぁミスしたな、次はこうしようとか、次々に頭にいろんなことがよぎるんです。早い人はそんなことを考える時間が無いので楽です。
相手に惑わされることは、克服しなければならない課題ですね。

ソフトではゼロワンとクリケット、どっちが好きですか?
ゼロワンです。レバルの高いプレイヤーとやる時は、クリケットよりもゼロワンでブレイクする確率が高いような気がします。でも5レッグ目にゼロワンを選ぶ勇気は無いんですが(笑)。でもブレイクしてやるぞ!という強い気持ちが持てるのがゼロワンです。削りが良くてもダブルを引っぱったりしますからね。何が起こるか分からないので楽しいですね。

スピリット
トッププレイヤーになると技術的にそれほど違いは無くて、勝つ精神力が重要だと言われますが、どう思いますか?
それは課題ですし、気持ちが7割、技術が3割と意識もしているので、メンタルでは負けたくないですね。どんなゲーム展開でも絶対諦めないようにしています。

プロツアー準備は出来ていますか?
準備はしています。2019年は年間ランキング6位ですが、少しずつ上げていけるようにしたいと思っています。

これからの夢や目標を教えて下さい。
大きな夢で言うと、世界でプレイできるようになりたいですね。でも現実的にはそれを追いきれてはいないです。目の前の目標もあるので、応援よろしくお願いいたします。