PDCアジア・オフィシャルレフリー日本人3人のうちのひとりであり、現在PDCアジアンツアーの重要なポストで活躍しています。自己紹介をお願い致します。
坪倉初奈(はな)と申します。現在大学4年生です。2021年にコーラー活動をはじめて、2022年にPDC ASIAから認定をいただきました。
2023年シーズンからASIAN TOURを回らせていただいていています。国内では、STEEL DARTS JAPAN TOURを回っています。アジアと日本の双方から、PDCへ送り出す選手を決めるための大会に携わらせていただいていること、とてもありがたいです。
他にはダーツバーにてスティールダーツの大会があるとき、コーラーとして呼んで頂くこともあります。選手がイベントをするのがスタンダードな中で、コーラーとしてのお仕事をいただくことができ、大変光栄です。

コーラーって何?
スティールダーツのみに存在する審判のことです。日本では大会の場合準決勝などからつくことが多く、 ボードの横で点数を読み上げ、また選手のスローなどに違反がないかどうか確認しています。これはステージ上での主な役割です。ステージではない場所では、フロアを回りトラブルやルール違反などがないか確認しています。 試合前には選手のチェックインやユニフォームチェックなども行っています。
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コーラーとは何?どんな役目?仕事内容?などについて教えて下さい。
コーラーとは、スティールダーツのみに存在する審判のことです。日本では大会の場合準決勝などからつくことが多く、ボードの横で点数を読み上げ、また選手のスローなどに違反がないかどうか確認しています。これはステージ上での主な役割です。 ステージではない場所では、フロアを回りトラブルやルール違反などがないか確認しています。試合前には選手のチェックインやユニフォームチェックなども行っています。
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責任は重要だと思いますが、どうゲームに影響するのですか?
これは私の師の1人であるラスがいつも言っているのですが、人間なのでコーラーも間違いはします。もちろんしないようにする努力は惜しんではいけません。でももし、間違いをしたら、出来るだけ早く訂正をする。それが大切です。選手の中には間違っていることに気づいてダーツを抜かない選手もいますし、ミスに気づいていなくてすぐダーツを抜く選手もいます。基本的には、ダーツを抜いた時点でその選手はコーラーのコールした点数を認めたことになります。ですが、選手がダーツを抜く抜かないに関わらず、自分のミスはできるだけ早く気づいて、できるだけ早く訂正するのが重要だと感じます。
ゲームの中には流れがありますよね。大事なダブル、重要な場面でのビッグショット、そういった時にミスコールがあると試合の流れを止めてしまいかねません。そういった意味でミスをしないということは非常に重要ですね。まだまだ勉強中です。
数を読み上げるスピードや抑揚も人それぞれです。とくにPDCでは多くのお客さんが入って、大きな声で歌ったりしているわけですから、コーラーの声量もなかなかです。惜しいショットに対して本当におしそうにコールをしますし、ナイスショットに対しては本当に嬉しそうに読み上げます。観客が多い中でのコーラーの役割は、ただ数字を読み上げるだけでなくゲームの様子を数字の読み上げ方で実況するような役割もあるんじゃないでしょうか。
アジアのダーツシーンではまだまだしんとした中でダーツを投げる音とコーラーのコールだけが響き渡る、呼吸をするのもはばかられるような静寂が目立ちますので、コーラーの役割自体がPDCとは少し違うような印象があります。

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海外でのお仕事も多いでしょうから英語力も必要ですね。
はい、英語力は重要になってくるかと思います。ステージの上でコールをする分には、英語で数字が言えて、決まり文句さえ英語で言えれば問題ないです。ただ、試合前のミーティングやメッセージなどは基本全て英語になりますので、そういった場面で英語力は必要になります。
選手への注意も基本的に英語になります。ですが英語が通じない国の選手もいますよね。その場合は、その国の言語を少しでも勉強していくことにしています。さらに、注意の文言を紙に書いてポケットに入れています。ステージ上での注意は、回り方が逆だとか、スローラインを超えないで欲しい、だとか、ある程度事前に予想ができますから。万が一英語が通じなくても、現地の言葉で注意を紙に書いておけば、それを見てもらえば少なくとも私が何を言いたいかは伝わるでしょう。
英語はコミュニケーションという意味では重要ですが、それが出来ないとしてもなんとかしようとする工夫も同じように大切だと感じます。
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ダーツ界で最高峰のPDCでのアジア・オフィシャルレフリーにはどうしたらなれるのですか?
私が知っている限りになりますが、PDC ASIAのオフィシャルになる方法をお伝えしますね。
各アジアツアーにて、あまり大々的に宣伝はされていないのですが、常にコーラー試験は開催されています。コーラーになりたいと思う場合、アジアツアーのホームページにのっているメールアドレスに連絡していただいても、現地のパートナーに連絡しても、あるいは私にメッセージいただいても構いません。
正確には、マーカーとコーラー試験の二つに分かれています。マーカー試験は、基本的にダーツコネクトを正確に使用することができれば取得できます。コーラー試験に関しては、現在はステージ上でマーカーを2回、ステージ上で実際にコーラーを2回行う実技試験が主になっています。
コロナ以前はラスによる講義が3時間座学であった後に、実技試験という形だったようですね。私の時はコロナ真っ只中だった事もあるのか、軽いラスからのレッスンの後ステージ上の実技のみでした。現在も実技中心の試験体制は変わっていないようです。上手くできるかも大事ですが、ミスをどうやってカバーできるか、というような対応力も見られているように思います。
昨シーズンは合計10人ほどがマーカー試験に合格し、2人が新しくコーラー試験に合格しました。

コーラーになるまでの経緯
正式にコーラーになるためには、まずPDC ASIAの試験を受けたいと思っていました。
でも調べてもどうやって応募したらいいか分からなかったので、 当時活躍されていた方に思い切ってTwitterでDMしてみました。
するとその方が試験の詳細を教えてくれました。 そこからSkypeで、どういう練習をしたらいいのか、どういう決まり文句があるのか 定期的にレッスンをしていただきました。連絡をとってから1-2ヶ月でデビューの舞台も決まりました。
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ラス・ブレイは有名ですがどんな人物ですか?彼は有名でソフトダーツマシンの声にもなっていますね。
試合会場ではとにかくビールを沢山飲んでいますね(笑)。リラックスして、自分の出番を待っているという感じです。時に厳しく時に優しく、コーラーにもアドバイスをくださいます。とても気さくな方で、誰からも愛されています。
やはり長くダーツ業界にいらっしゃるので、アジア中にファンがいます。会場ではいつも写真をお願いされています。 コーラーとしてステージに立つと、がらりと場の雰囲気が変わります。ただし決して選手と試合よりも目立つことはなく、そこに立っているだけで空気の流れを変える人なんです。彼にしかできないことだと思います。心から尊敬しています。
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ダーツを始めたのはいつ、どんなきっかけだったのですか?
高校生のときです。最初はソフトダーツから始めました。漫画喫茶でダーツマシンを見つけて、やってみて楽しいなと感じました。運動神経が悪いので体育の授業がずっと苦痛で(高校の時の成績は2でした笑)、体を動かすスポーツなんかが全部嫌いでした。運動神経関係なく楽しめるところが良くて感激した覚えがあります。

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なぜプレイヤーではなくコーラーという道を選んだのですか?
まず自分の傾向として、何に関してもやるよりも見る方が好きなことが多いですね。スポーツなんかは特にそうですし、ダーツも見る方が好きになっていきましたね。
情熱を持ってプレーしている選手達のためになることは無いかなと思うようになりましたが、当然スポンサーをするようなお金はありません。元々そろばんをやっていたので計算には得意意識がありました。
その時YouTubeでPDCの動画見つけて、本当にふと、コーラーとしてダーツに関わってみようかな。と思ったのがはじまりです。そこから本気で頑張ってみようと思ったのは、世界を目指すという道のひとつにコーラーという道があってもいいのではないかなと思ったからです。イップスで苦しんでダーツを辞めてしまう人もいますよね。選手としてのキャリアだけでなく、コーラーとしてのキャリアも作ることが出来たら、ダーツへの関わり方がもっと増えると思いました。
楽しくプレーする、好きな選手を応援する、グッズを買う、イベントに行ってみる。ハウスに参加する、大会に参加してみる、プロ資格をとる。私にとってダーツにどう関わりたいかと考えた時に、なにか新しい方法をみつけてみたいなと思いました。それがコーラーでした。
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コーラーになるまでの経緯を教えて下さい。
正式にコーラーになるためには、まずPDC ASIAの試験を受けたいと思っていました。でも調べてもどうやって応募したらいいか分からなかったので、当時活躍されていた方に思い切ってTwitterでDMしてみました。
するとその方が試験の詳細を教えてくれました。そこからSkypeで、どういう練習をしたらいいのか、どういう決まり文句があるのか定期的にレッスンをしていただきました。連絡をとってから1-2ヶ月でデビューの舞台も決まりました。それがPDC WORLD CHAMPIONSHIPの代表選考戦でした。
本当に初めてで、いきなりです。彼が大会の主催者と私を繋いでくれたんです。当時はコロナウイルスが蔓延していて、アジアツアーがやっていませんでした。
しかしPDCのWORLD CUPとWorld Championshipへの選考はアジアツアーとは別に行われていました。それからそこに毎回呼んでいただけるようになり、その縁がさらにアジアツアーに繋がって、コーラー試験が日本で行われる際に受験が叶いました。
本当にたくさんの方のおかげで、今の自分があります。

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コーラーになってからの活躍や経歴をお願い致します。
正式に公認をいただけたことは自分にとってスタート地点に立ったという認識でした。でもそこからどうやったらアジアツアーに毎回呼ばれるようになるか分からなかったので、アジアツアーのトップのJoeにどうしたらいいか聞いてみました。でもあんまりはっきりした答えが返ってこなくて。最初は呼ばれてないけど自分が行きたいから行きました(笑)。
とにかく色んなことを色んな人に聞きながらやってみました。そうやって頑張っているうちに、仕事を少しづつ任せて貰えるようになりました。2023年は香港大会を除く大会全てに、2024年はありがたいことに全ての大会に呼んで頂けました。
大会以外では、ダーツバーに呼んでいただけることもあります。昨今の日本のトップ選手の活躍から、スティールダーツへの注目度が高まっていますよね。今までソフトダーツしかしていないので計算が分からないけど、興味はある…という方々と交流しながら少しづつスティールダーツの面白さを伝えているつもりです。
私は選手では無いので技術的なことは何一つ分からないのですが、スティールダーツを始める上で大きなハードルになるであろう計算を私が担うことで、まずは楽しくプレーして欲しいなという気持ちでいっぱいです。
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普段どんな練習をしているのですか?
紙やペンがなくてもできる練習は、数字についてとにかく考える機会を増やすことです。
例えば車に乗っていたとして、前の車のナンバーが361だったとします。501から1ラウンド目に140とったらこの数字だなあ、とか。ふと時計を見た時に1:03だったとします。この数字は19から行きたいな、20から行ったらどうなるだろう、17はどうだろう、とか。マクドナルドに行った時のオーダーのナンバーとか。色んな数字から考えるわけです。
選手は頭で考える私とは違って体に染み付いたアレンジを間髪入れずに繰り出してくる訳ですから、そのアレンジになる理由も考えます。そうすると実際コーラーをするときに視線の移動がスムーズになり、選手を待たせずに済みます。試合の流れを邪魔しないためには、選手と同等かそれ以上の知識が必要だと思っています。
私の場合プレーヤーでは無いので、尚更そう思います。紙とペンがあるなら、とにかく色んな試合を見て自分でスコアを書いてみることです。声に出しながら私はやっています。
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アジアにおける日本スティールダーツの立ち位置はいかがでしょうか?
ダーツを好きになったのが2-3年前なので在り来りなことしか言えないかもしれませんが…(笑)。 ぐんぐんとレベルが上がっていますよね。アジアツアーに参加する選手も増えていると思います。FIDODARTSだったりコロナを経て、スティールダーツへのアクセスが増えたことも大きいのだと思います。
PDC自体がどんどんと成長している団体なので、その影響力もあるかなと思います。センセーショナルな話題が尽きないですよね。ツアーカードを持っていない選手でも権利のある大会の数が増え、アジア人が参加できる大会も少しずつ増えています。そう言った大会に日本のトップ選手が呼ばれて活躍していることも、スティールダーツの輪を広げているように思います。

世界の進化
若い才能がどんどん出ていますよね。モンゴルでは14歳が9ダーツを達成し、 フィリピンオープンのユース部門の参加者は120を超えており、今年のJDCの優勝者は12-3歳の選手でしたよね。
Luke Littlerの大活躍をはじめ、ユースの世代への浸透がどんどんと広がっているのを感じます。 アジアにもまだ見ぬ隠れた宝石がたくさんいるのだと思います。 PDCのスタンダードもぐんぐん上がっていますよね。ダブルの成功率が30%ならばいいと 言われていたものが40%必要になり、AVGも90前半では足りなくなってきていますね。 どこまで行ってしまうんだろう…という気持ちです(笑)。
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今の日本スティールに思うことはありますか?
大会を運営することはとても大変でとてもお金をかかることを承知で言うのですが、もっとスティールダーツの大会が増えたらいいなと思います。
例えば今フィリピンでは、Facebookを見る限り毎週毎週国中で大会が開催されています。モンゴルでも大会が盛んに開催されていますね。シングルスの大会はあまりなくて、ダブルス、トリオスやガロン(しかもランダムドロー)がほとんどなんですね。とにかくダーツをエンジョイして、しかもお金もゲットできる、お祭りのような雰囲気を感じます。
日本人の国民性を鑑みるにシャイな方が多いのでランダムドロー形式が正しいかは別として、スティールダーツをまずやってみたい!という方が参加できる大会と、PDCやWDFを目指すような大会と、レベルの幅が少ないように感じます。どうしてもちょっと踏み込みづらいイメージを持たれている方が多いと思います。ダーツバーがハウスを開催するにしても、やっぱり圧倒的にソフトダーツ文化なのでそれも難しいんでしょうね。もっと身近にスティールダーツの様々なレンジの大会があると、プレーヤーのやってみたい、を刺激するきっかけになるんじゃないかなと思います。あくまで私の希望です(笑)。
後はモンゴルのダーツシーンから思うこととしては、週に数回場所を借りて、みんなでお菓子や飲み物をもちよって部活のような感じで練習をしてるということですね。たくさんのダーツクラブがあります。モンゴルではダーツブームが到来しているようで、まず父親母親の世代の方が、そしてそのお子さん方も一緒にプレーする形でダーツが普及しています。日本でダーツをするとなるとバーに行く、だとか満喫に行く、というような感じですよね。お子さんと楽しむと言うより、子育てのあいまを縫って練習されているお父様やお母様が多いような印象を受けます。なかなか難しいのかもしれないですが、大人ダーツクラブみたいなものがあると、もっと広い層へのアプローチができて面白いのかなと思ったりもします。

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日本人プレーヤーについてはいかがでしょうか?
時間を守り、不正を行わず、ルールを遵守する。日本は秩序のある安全な国で、そこに生まれた私たちはその意識が根付いています。でもこれはとても稀な事だということを私は思い知りました。アジアはそういった意味で混沌としている部分が多々あります。理解できないと跳ね除けるのではなく、順応性が求められる部分は大きくあると感じます。
アジアツアーでの出来事で言うと、2023年のフィリピンオープンでは準決勝の真っ最中で停電して会場が真っ暗になりました。有り得ないですよね。アジアではこういった予期せぬトラブルがよく起きます。但し本場のPDCでも、いきなりステージに乱入してトロフィーを盗んだ観客がいたりしましたね。
とにかく、自分の当たり前が、アジアの、世界の当たり前ではないということです。小さな島国に生まれた私達は、そういった意識がやや希薄かもしれません。会場の雰囲気もそうですね。歌声や騒ぎ声、時には口笛が絶えないPDCでプレーすることと、呼吸をするのもはばかられるような静寂の中でプレーするのは大きく違うでしょう。慣れていないから仕方ないのは当然です。しかしこの当たり前を打ち破ってくれる選手が出てくることを、私は信じています。
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世界のスティールダーツの進化のスピードはどうでしょうか?
こちらもここ2-3年での出来事のみの言及になってしまいますが…若い才能がどんどん出ていますよね。モンゴルでは14歳が9ダーツを達成し、フィリピンオープンのユース部門の参加者は120を超えており(5-6歳の子も沢山いました)、今年のJDCの優勝者は12-3歳の選手でしたよね。
Luke Littlerの大活躍をはじめ、ユースの世代への浸透がどんどんと広がっているのを感じます。アジアにもまだ見ぬ隠れた宝石がたくさんいるのだと思います。PDCのスタンダードもぐんぐん上がっていますよね。ダブルの成功率が30%ならばいいと言われていたものが40%必要になり、AVGも90前半では足りなくなってきていますね。どこまで行ってしまうんだろう…という気持ちです(笑)。
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今までに印象に残っているゲームは?
2022年5月に開催されたWDF マスターズへの日本代表決定戦で、松田純選手と、由肥元希選手の試合です。松田選手が劇的な110アウトを決めて日本代表を勝ち取りました。19-51-40のアレンジだったんですが本当に流れるようなチェックアウトでした。
体に染み付いているというのはこういう事なんだなと思いました。松田選手のアレンジのリズムは本当に凄まじいので、今でも色んな動画を探させていただいたり、n01でのレコードを見ながら勉強させていただいています。

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失敗談はありますか?
沢山あります(笑)。そもそも自分は、コーラー試験の時に大失敗をしているんです。自分は本来公認を受けるような人間では無かったんです。今でも夢に見るような大きなミスです。それを見ていた方は、なぜあんな大きなミスをしたのに、この子は今のうのうとやってるんだろう?と疑問に思う人もいると思います。
やってしまったミスは消えないけれど、それを忘れずに、どうやったら同じミスをしないか考えています。一つ一つの試合に選手の人生がかかっていますから。私の場合始まりが最悪だったので、伸び代しかないと信じてやっています。
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これからの予定や目指すこと目標などを教えて下さい。
直近だとまずは1月にアジアツアーの開幕戦がドバイであります。それが2025年の最初のお仕事になります。
目指す先にはPDCの舞台がありますが今は、アジアでのトーナメントをしっかり回せるようになって、アジアでコーラーと言えばハナだよね。と言われるようになるために頑張っています。
PDCに送られる選手は、全員アジアでトップクラスの選手です。いつかアジアからコーラーがPDCに送られる日が来るのならば、アジアで1番になっている必要があると思います。そのために日々努力しています。








