2016年7月
あらゆる技術的な悩みの原因は「一緒」
私が主宰しておりますPCL(Power Control Lectureチカラの正しい伝え方)は力の伝え方を最適化する事で技術を上げ、イップス症状からの改善を目指します。イップス症状は一般的にその原因はメンタルにあると言われていますが、私はあくまでも方法論・技術論、即ち身体の使い方によって起こるものと解釈しています。様々な方がPCLを受講され、ダーツは勿論の事、野球・ソフトボール・テニス・卓球・バレーボール・ビリヤード・競走馬の調教師さん、先日はディスクドッグ競技(フリスビーを投げワンちゃんに咥えさせるスポーツ)の方をレクチャーしました。この多種多様の競技もしくは症状の方に対し、PCLは話を一切変えません。イップスの原因はおろか、不調、低迷、力み、怪我など競技における技術的な悩みの原因は皆「一緒」なのです!
間違いを間違いと言えなくなる状況
残念ながら間違った技術論が横行しています。それらはビジネスを中心に組織化され間違いを間違いと言えない状況を作り出し、知識のない方達を食い物にしています。経済活動は当然だと思います。しかし宣伝文句のために無理のある理屈を打ち出し、検証もないまま空気と勢いだけで世に広まっていってしまうのです。正直あんなに聡明な方が何故信じるのだろうと思ったりしますが「自尊心」をくすぐられてしまい、我を忘れてしまうのでしょうね…。
イップスの原因はメンタルではありません
身体には物理的に出来る事出来ない事がはっきりしています。個体差は関係なく、あくまでも身体の仕組みによるものです。物理的な事象とは、万人が何万回行ったとしても同じ結果しか出ないものを指します。もし万が一が起きた場合は再検証が必要で、万が一に対する説明が「特別」の一言で片づけられては、もはや理論として成り立たないのです。
私のイップス論は解剖学による簡単な構造論で、身体を詳しく勉強された方なら簡単に理解できると思います。このNDLコラムを書き始めて4年が経とうとしていますが、理論値に達したその当時「こんな簡単な原理すぐ真似されてしまう」と思い、イップス症状の解明を身体の仕組みで行ったのは、私が最初だと記録を残す為に執筆を開始しました。
しかし最近ではスポーツ業界・スポーツビジネスもしくは心理学を知れば知るほど、簡単にはイップス論が理解されない現状がある事を痛感するとともに、中々真似されないなとも思い始めました(笑)。
誰にでもイップス症状は襲いかかります
私がやるべき事は粛々とイップス症状と向き合い改善させていく事です。ようは私の話を聞くことによりイップスが改善し、楽しく前向きなスポーツライフを取り戻して頂く事が目的なのです!イップス症状はある日突然誰にでもやってきます。当然メンタルでも性格性によるものではなく、身体の使い方によるものなので「自分だけはならない」なんて事はありません。なるわけのない自分がある日違和感に襲われ、そして大好きだった競技を嫌いとうそぶき、練習不足を理由にやめていってしまうのです…
自分の腕が自分の腕でなくなる
ダーツイップスはその症状が顕著に現れ、その異変は周りで観ている方なら簡単に気付きます。しかしイップス症状のある他競技はそこまでではなく、周りの方に気付いてもらえません。故に誰かに相談しても「考えすぎ」の一言で収められてしまい、非常に苦しくなってしまうのです。沢山の競技者が「違和感」を抱えています。周りから見て何ら変わって見えないプレイでも、すでに「自分の腕が自分の腕でなくなっている」のです。
「自分」と「自身」
ダーツ競技は腕が「勝手」に動き、身体を乗っ取られます。何に乗っ取られるのかと言うと「自身」に乗っ取られるのです。例えば私、五十嵐信一を形成しているのは「自分と自身」です。自分とは随意、思い通りに出来るのが自分で、自身とは不随意、正に思い通りにならないのが自身なのです。これを解剖学で説明すると、不随意とは心臓や内臓器官を指します。心臓は自分では動かしたりする事は出来ず「勝手」に動いています。逆に言えば、自分で一生懸命動かさないといけないのであれば、非常に大変な事となり命に支障が出るのです。
姿勢制御の機能
そして自分の意思ではなく、自身が勝手に調整している機能が人間にはあります。それは「姿勢を制御する事」です。人間はこの重力働く地球上において、二足で立ち歩行・走行する事が出来ます。しかも「自分でバランスを取ろうとせず」に、です。そうです、立つという行為は「自身が勝手に行っている」のです。子供のころから自然と行ってきた姿勢制御ですから、あまり意識したことはなかったと思いますが、実は人間にもたらされた素晴らしい機能であり、その機能を実現させる身体的構造がイップス症状の原因にもなっているのです。ちなみに電車に座り、隣の乗客が寄りかかってくる事があると思います。実はその時は機能である姿勢制御の機能が働かなくなっている時なのです。多分ですが眠くなって休みたいのに、姿勢を制御する機能が働いたのでは、ゆっくり眠れないからだと思います(笑)。
この「自分」と「自身」のバランスによりスポーツ技術は構築されます。しかし「自分と自身」のバランスが崩れ「自身」に乗っ取られた状態がイップス症状で、そのイップス症状は間違った技術論により引き起こされているのです。
目線の使い方で身体のバランスは「勝手」に変わる
姿勢を制御する為の情報源は沢山ありますが、目と首がその代表だと思います。故に目の使い方、首の使い方で姿勢は変化を起こします。見る方向、首の方向で身体のバランスは変わり、見る方向・向けた首の方向に対し「構造上の仕組み」に則り、決められた姿勢を取るようになっているのです。自転車を乗れるようになるために必要な条件は「神経が繋がる」事であって筋力はあまり関係ありません。赤ちゃんが立てるようになるのも神経的なもので、姿勢制御の機能が備わる事が重要なのです。ちなみに逆立ちという行為には姿勢制御の機能は対応していないので「自分」で一生懸命バランスを取らなければ、立っている事は出来ないのです。
イップスは技術論で克服
先日全日本レディースソフトボール千葉県予選会に、昨年12月よりPCL受講して頂いた選手の所属するチームでコーチとして出場してきました。その選手は小中学校時代から有望な選手でありながら、残念にも高校時代より10年間ソフトボール送球イップスに悩まされ、初めは引退を決意の上、今後指導者としての知識向上を目的としてPCLを受講されました。しかしチーム編成や指導論を話しているうちに、まだ若い事もあり指導者としてではなく選手としてもう一度チャレンジし、そしてPCLに対する理解もされていたので、尚更送球イップスを克服し復活する事が技術論の最大の証明になり、チームにやる気や勇気を与えられるのではないかと話しました。
10年苦しめられた送球イップス。練習ですらフィールドに立つのは怖かったと思います。しかし彼女は勇気を振り絞り守備練習につきました。そこで初めて守備(ショート)を見せてもらったのですが、どうして送球イップスになったのか何となく分かり、簡単な助言をしたところ練習では問題なく送球が出来るようになったのです。
そして試合本番、本職のショートではなくチーム事情によりセカンドを守る事に、特にセカンドはイップス症状が出やすい守備位置でしたが、事前に分かっていたので対応策を練り、試合前練習でも入念に話をしました。もし本番で送球イップスが出てしまったら…不安は私にもありましたが、彼女はその何倍も不安だったと思います。
試合が始まり初回ワンアウトランナー二塁、初めての守備機会がやってきます。一塁線ファースト後方にあがった難しいファールフライを捕球、二塁ランナータッチアップするも好返球でダブルプレーの結果になったのです。その後も無難に守備をこなしましたが、残念ながらサヨナラ負け(対戦相手は去年千葉県準優勝チーム)を喫しましたが、接戦の好ゲームが出来た事、そして何より試合後に「楽しかった」と満面の笑みを見せてくれた事が嬉しかったです。彼女は今後レベルアップを目指し、諦めていた公式球でのソフトボールにチャレンジします!イップスは克服できるのです!
イップスになったら楽しめない
ダーツ楽しんでいますか?無理していませんか?イップス症状になったら楽しめるはずがありません。自分の腕ではなく、自分の中にいる「自身」に身体を乗っ取られたままでは楽しくありません。お金を払うのは「自分」、ダーツを投げるのは「自身」では不公平です。自分を取戻し、自分の思い通りのダーツを楽しめるお手伝いを是非させてください。