Sakai_column_Top-26

No.26 生でしか味わえない感動と興奮の場

2015年7月

6月末に日本で初めてPDC主催のイベント「ジャパン・マスターズ」が開催されました。
結果や内容に関しては本誌の巻頭ページで取り上げていると思うので、私の目で見て感じたジャパン・マスターズに関して書きたいと思います。

今回のイベントは2日間に渡り開催されました。
チケット発売前の段階では、土曜日の1回戦PDCプレイヤー対日本人選抜の日は行かなくてもいいかなと思っていたんですよね。
やはりあのメンバーに勝つのは日本人の現状では非常に困難ですからね。
でも2日間行こうと誘ってくれる友達もいましたし、チケット発売日が日本人出場者決定戦も兼ねたPDCチャレンジ西日本予選の前でしたので、サポートしている清水浩明が勝ち残る事も期待して両日分VIP席のチケットを購入しました。
チケットを購入した後で、清水浩明が予選を勝ち抜けず個人的にはトーンダウンしたのは確かです。
でもそれ以上に両日とも不安は沢山ありました。
チケットが売れ残っていて会場がガラガラじゃないかとか、日本人はダーツを見ながら盛り上がれるのか。
それから、主催のPDC側は日本での協力会社であるPDJの意向は汲まず、自分たちのスタイルを全て通そうとしているという話も聞いていました。日本人に合わせたマイナーチューンは必要なんじゃないかなと私も考えたりしていました。
そんなわけで物凄く楽しみではありますが、不安も沢山あったんですよね。
それが御存知の通り物凄い内容になりました。

先ずは初日の土曜日ですが、会場に入ると日本人選手を応援する気が満々で、お揃いの衣装やアイテムを持ってきている人がたくさん居ましたね。
皆さんそれぞれイベントを楽しもう、そして大好きな選手に頑張ってもらえるように応援しようと考えていたんですよね。
私も日本人選手を応援する気満々になってきました。
試合の組み合わせは前日に抽選が行われ、PDCが試合順を決めました。組み合わせはバッチリでしたね。
試合順もPDCから見て日本のエースである村松治樹が最終戦で、ランキング1位のガーウィンがその前。あとはおおよそランキング順になっています。この試合順も結果的に良かった。
最初に出てきたのが東京の井上晋太郎、2戦目が開催地神奈川の饗場克也。
この2人への応援は地元ですから人数も多く凄く盛り上がりました。
饗場さんはバーニーが調子が悪い事もあり「勝てるかも」と思わせる内容だった事も、観客をヒートさせた要因でしょう。
しかし2試合にエネルギー使い過ぎた人も多かったようで、途中から私も含め会場の中にエネルギー切れの方がちらほらいました。
でも最初の盛り上がりがあったから、会場全体がずーっとホットな状態で行けたのは凄く良かったと思います。
2試合目が盛り上がり過ぎただけで、他の試合も十分に観客は盛り上がれていました。
結果は予想通り日本人選手の全敗でしたが、物凄く楽しめた内容で見に来た人のほとんどが満足したんじゃないでしょうか。
終わった後に一緒に行った仲間と話したのですが、初日は日本人選手の応援で予想以上の盛り上がりになりましたが、それが無い2日目はどう盛り上がったらいいのか想定外に不安になりました。

そして2日目。
前日の会場の温まり具合はこの日も続いていて、私の心配は不要なものでした。
初戦のガーウィンとバンティングの試合が好ゲームだった事も、盛り上がりのエンジンをかけるのにかなり貢献しましたね。
最初の3ダーツで180が出ると会場全体が「9ダーツやってくれ」と自然と盛り上がりますね。
そして、この日の主役はピーター・ライトです。
前日からピーターへの応援はモヒカンヘアーを模したカツラで目立っていたのですが、この日は更に増えていました。
名前も「ピーター」と日本人がコールしやすかったのも幸いしました。
ピーターは2回戦でジェームス・ウェイドを倒して、準決勝でランキング1位のガーウィンを迎えます。
ガーウィンが強いのは会場中のほとんどの人が分かっています。
声援の多くは判官贔屓も有りピーターに集中します。
「ピーター」と名前をコールする日本人に応えるかのようにビッグ・プレイを連発するピーター。
通常はステージ上のスターのコールに、観客がレスポンスするのですが、この会場では逆のコール&レスポンスが起こりました。
会場は選手も観客も一体となって興奮状態でした。
そして7ー7となり最後のレッグでピーターは141をフィニッシュし勝利。
この時会場は大爆発しましたね。私は訳あってこの試合でガーウィンを応援していたのですが、ダブルが入った瞬間立ち上がってピーターの名前を叫んでいました。
そして感極まって涙を浮かべるピーター。
もちろん人気選手ですが、それでも会場中からこんなに声援を受けた事は無かったのでしょう。
そのピーターの前に決勝戦で立ちはだかるのがフィル・テイラー。
序盤は観客の声援にピーターも応えられず、劣勢を強いられ会場中が「このまま終わっちゃうのか?」と思った2ー7の状態からピーターは観客の声援に応えてくれました。
前の試合のようにコールに応えビッグ・プレイを連発します。
ハイライトは129残りをT19・D16・D20と決めた場面でしょう。
2本目は多くの人がT16だろうと思ったところで、D16でしたからね。
そしてなんと7ー7とピーターは追いつくのですが、この間も流石フィルだなと思わせるシーンがあったんですよね。
観客のピーターへのコールや自身へのブーイングに対し、ゼスチャーや表情でちゃんと返しているんです。
あまりないアウェイの状況になっても、自分のペースを守りながらダーツをエンジョイしているんですよね。
最後はフィルが決めて優勝しましたが、この2日間のMVPは間違いなくピーター・ライトでした。
後日PDCの月間MVPにピーターが選ばれたのもジャパン・マスターズでの活躍が評価されてのものでしょう。

当初は日本人向けにイベントの演出等を変えるべきじゃないかと思っていたんですが、全くその必要はありませんでした。
今回のイベントはTVクルーも含めると総勢50名近くが日本にやってきたのですが、あの素晴らしい選手達が必要な事は当然ですが、司会・コーラー・ステージ・照明・音響・カメラその全てが揃ってPDCであり、あの盛り上がりを全員で作り上げている事が分かりました。
あの8人の選手が別の大会に出たとしてもあんな風には盛り上がらないでしょう。
PDCはダーツ界で唯一のプロスポーツ・イベント運営会社と言えるでしょう。

今回のジャパン・マスターズの日本人の盛り上がり方について気にしている方も居るかと思います。
私は凄く良かったと思いますし、全く問題無いと思っています。
選手が投げ難いほどの状況でしたら、選手が投げるのに間をおいた時点でコーラーが観客に注意しますからね。他の選手からしたら何故ピーターがあんなに人気があるのか不思議だったでしょうね。
それから、2日目私の席から見える位置にユニコーンの取締役のリチャードが座っていました。
ユニコーンはPDC立ち上げの時から、スポンサーとしてPDCを外から支え、そしてずっと見てきたダーツメーカーです。
そのトップがジャパン・マスターズにどんな反応をするか気になり、時々見ていたんですよね。
リチャードはずっと席に座りどちらかの選手がダブルを決めると静かに拍手をしていました。
ユニコーンの選手の時は拍手が強くなり、バーニーと試合をしている時のフィルに対しては多少投げやりに。
フィルには様々な思いがあるんでしょうね。
でもその姿はあくまでもPDC関係者のモノでした。
しかし、そのリチャードがピーターの最後の2試合に関しては我々と同じように立ち上がり渾身の拍手を送っていました。
そのリチャードの姿を見た時に、ジャパン・マスターズはPDC関係者から見ても成功だったと確信しました。
数多くPDCの試合を生で見てきた男がスタンディングオベーションを送っているんですから。

来年もPDCは日本でイベントをやりたい意向だそうです。
次回はもっと多くの人に会場に来てもらい、生でPDCを体感して欲しいですね。
音楽だって、演劇だって、他のスポーツだって、生で観るのとTVでは全く違うでしょ。
ダーツだってやっぱり会場で体感するのが一番最高です。
ピーターに力を与えるような声援を送った会場の人々、その声援に応え凄いプレイを次々と見せてくれたピーター。
生でしか味わえない感動と興奮の場に居られた事を感謝したいですね。

来年も行くぞー!

ダーツ屋どっとこむ よろしくお願いいたします