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No.42 10周年ではNDLと英国取材

2018年3月

今号でこの雑誌も創刊から15周年だそうです。10周年の取材で編集長と一緒にイギリスに行ってからもう5年も経つんですよね。
フェイスブックをしていると過去のその日に自分で書いた投稿や写真が表示されるので、当時の事を色々と思い出し懐かしんでいました。
ロンドンに着いたのは夕方で翌日は観光をして取材は3日目からで、先ずユニコーン社に取材に行きました。
実にプライドが高い人達で、日本人が求める商品クオリティーを伝えても理解してくれないんですよね。まあ、バレルの重さがセット内で0.2g違っただけで販売店に電話をしてくるのは日本人だけだとは思いますが。
ソフトダーツが流行り始めた本誌創刊の頃はユニコーンのシェアも大きかったのですが、5年前の時点では非常に厳しい状況でした。
現在はトリニダードを展開するフェリックスがユニコーンの総代理店となり、浅田斉吾をプレイヤーとして迎えましたがシェア回復となりますか。ユニコーンも12年前に日本人プレイヤーを契約選手として迎える為のトーナメントをしているんですよ。
当時実力ナンバーワンと言われていた松元大奉が優勝し面白くなるかと思われた情況で、当時フェリックスの社員だった松元選手は結局契約せず翌年も同じトーナメントをするという事態に。そんな過去のある両社が総代理店契約をしているから不思議なものです。
その時ユニコーンが出した条件は知りませんが、受け入れられない程相当厳しい条件であろう事は容易に想像がつきます。
翌日はターゲットとハローズを訪問。ターゲットは他社のOEMを請け負う下請け会社から、自社ブランドを大きく広げ始めた頃でした。
社長のゲーリーは自信満々に話しをしてくれるのですが、こちらの話もちゃんと聞いてくれて、社長自ら日本に何度も来ていましたから日本の情況も日本人の好みも把握している印象でした。日本へのOEM商品は磨きを増やしていると言っていましたね。
その後のハローズでは30年前に日本で開催された、イギリスのプロを大勢呼んだ豪華なイベントのポスターを見せてもらいました。社長のロバートが喜ぶだろうとわざわざ用意してくれていたんだと思います。
その時はフィル・テイラーのダーツの飛びに関して色々と教えてもらいました。
フィルは若い頃はハローズの看板選手エリック・ブリストーの練習パートナーを務めていましたから、フィル自身もバレルを色々と作ってもらったり相談をしていたようです。
日本人選手と契約しようと思っているんだけど、榎股慎吾はどんな選手なんだと質問をされましたね。契約前でしたからフェイスブックには書けませんでしたが、まだ勝てていないけれど実力もあるし性格もいいからなんて話をしたと思います。
翌日はプレミアリーグが開催されるボーンマスへ移動。PDCにホテルをお願いしてあったので選手や関係者と同じホテルでした。
イベント当日の午前中は選手へのインタビュー。事前にガーウェンだけは絶対インタビューしたいとお願いしてあったのでスケジュールが組んでありましたが、ユニコーンにセッティングを依頼した為それ以外はユニコーンの選手しか予定されていないんですよね。
この日と前日バーや喫煙所で実は選手はスーパーダーツの話しをしていたんですよ。プレミアリーグに参加の多くの選手にスーパーダーツへ出場の打診があったそうです。
フィル・テイラーも当時のスーパーダーツの主催者から直接電話がありギャラの話もしたと言っていました。
ただ、多くの選手が「刺さったダーツが真っ直ぐになっちゃうから」と参加には前向きでは無い印象でした。
ダーツライブ的には破格のギャラを提示したとは思いますが、PDCのビッグトーナメントを戦い毎週プレミアリーグを戦うトップ選手にとってはソフトダーツの為の調整をする余裕は無かったのでしょう。結果的にプレミアリーグに参加の選手は出場せず、マーク・ウェブスターが参加しました。
この話、フェイスブックにも書きたかったのですが当然書けません。いや、後で知るのですがこのボーンマスでこれ以上の事があるんですよね。
鈴木健太郎も合流し夕方からターゲットの社長のゲーリーとプレミアリーグを観戦。ユニコーン社長のリチャードには「大切な取引先はゲーリーと一緒なのか?」と少々嫌味の混じった挨拶を笑いながらされます。
日本だとプロの試合時に会場でブース販売をしているメーカーもありますし、遠距離でなければ選手の激励に来たりする社長も多いですからダーツメーカーの社長が会場に居る事にあまり違和感を感じませんでしたし、リチャードもいますからゲーリーが会場にいても全く不思議に思いませんでした、が今になって思い返すとターゲットはルイスしか出場していないんですよね。
そのエイドリアン・ルイスは1試合目に出場、3試合目にはフィル・テイラーも登場しました。最後の試合の途中でゲーリーは席からいなくなります。
それまでも時々ビールを買ってきてくれていましたし、控室の入口付近でルイスと話しこんでいるのを見ましたから、どちらかだろうと思っていました。結局ゲーリーは戻ってこずイベントは終了し、編集長と合流し3人でホテルに戻りロビーのバーで食事をしました。
フィル、サイモン、ソントン、バーニー以外の選手はロビーで一緒に飲んだり出来ましたが、その4人は見かけませんでしたね。
翌日ホテルで朝食を食べようとすると案内された席は、フィル・テイラーとゲーリー・アンダーソンの隣のテーブル。
編集長はフィルに大事な話をしているからと釘を刺されます。
まあ私は全く英語が分かりませんので話の内容は皆目見当つきませんが、編集長によるとお金の話と一流のアスリートなんだから飛行機に乗る時はファーストクラスにすべきだとフィルが話していたそうです。
イギリスに行く前に編集長はある地方のソフトダーツ団体からフィル・テイラーを呼びたいから交渉してくれと言われ金額も聞いていたんですが、スケジュール的にも厳しい上にスーパーダーツのギャラで断ってしまう状況でしたから難しい話でした。
半年後の2013年の夏くらいに編集長から「フィル・テイラーがターゲットに移籍する」と教えられます。しかも移籍の打診を最初にしたのは、我々が行ったボーンマスのプレミアリーグ後にフィルとゲーリーだけで行ったレストランだったとか。
それで彼が会場までわざわざ来た事も、試合途中でいなくなった事も、フィルがホテルに遅くまで戻らなかった事も納得がいきました。
プレミアリーグ取材のセッティングはユニコーンにお願いしてあったのですが、私と健太郎のチケットだけはターゲットが用意するからとゲーリーが押し通したんだとか。
普段ゲーリーがプレミアリーグの会場にいるかは不明ですが、もし普段いないのだとしたらゲーリーがボーンマスにいる理由が分かったような気がします。翌朝のフィルとアンダーソンの大事な話はその事だったのでしょうか?
そして2014年2月のフィル・テイラー移籍発表。
いや、最初の一報は1月末に発売の本誌65号でのターゲットのユニフォームを着たフィル・テイラーの表紙でした。ターゲットが正式発表前に雑誌の表紙にして欲しいと送ってきた写真です。
ダーツ屋どっとこむでも販売開始と同時にフェイスブックに写真を載せましたが、海外からのコメントが非常に多くメールでの問い合わせも多数ありました。
エイドリアン・ルイスがターゲットに移籍した時にもゲーリーはまだまだ引き抜くと言っていたのですが、一番の大物にいくとは思っていませんでした。
まさにダーツ界においてここ10年で一番のビッグニュースでした。
この後のターゲットの快進撃は日本では皆さん御存じの通りです。
ハローズも榎股慎吾に続き鈴木猛大と契約し、ユニコーンは先程書いた通り浅田斉吾と契約し巻き返しを狙っています。
このボーンマスでダーツ界の潮目が変わったんだと思うと感慨深いものがありますね。

ダーツ屋どっとこむ よろしくお願いいたします