2020年11月
近年、様々なタイトルを獲得し賞金ランキングをどんどん上げている選手、ガーウィン・プライス。そんな彼に、今回は注目してみる。
ガーウィン・プライス。レッド・ドラゴンの契約選手であり、使用バレルは24gの本人使用モデル。右手から放たれたバレルは、ターゲットにねじ込むかのように入っていく。徹底的なトッパー(上がりのダブルでD20を好む人の事)であり、D20の決定率は凄まじい。1985年生まれの35歳でウェールズのカーディフ出身。妻のベッサン、娘のエミリー、ベサニーとマークハムという南ウェールズの街に住んでいる。家族仲がとても良く娘2人を溺愛していて、プライス本人のSNS投稿等に度々登場する程だ。PDCプレイヤーの中では珍しく、とても筋肉質でがっちりとした体格をしている。これは元ラグビープレイヤーであった為であり、今でも筋肉トレーニングを欠かさないようである。
プライスのダーツプレイスタイルはとても特徴的だ。ハイスコアやフィニッシュを決めた時に、高く太い声で観客席やカメラの方に向かって、「Come On!!!」「Yeeeeesssss!!」と吠え、セレブレーションするのだ。このシーンをPDCの配信や動画で見たことがある方も多いだろう。
そして、この激しいプレイスタイルが故に様々なトラブルを起こしている。その中でも最も有名なのが、2018年グランドスラム・オブ・ダーツの決勝でギャリー・アンダーソンとの試合の際に起こったものだろう。過剰なセレブレーションを繰り返し続けるプライスに対しギャリーが激怒、吠えているプライスを右手で押し払った上に「退け、俺の番だ」と言い放ち、非常に険悪な空気が流れた。このトラブルが引き金となり、プライスに対しアンチが続出、会場では常にブーイングを受け続け、SNS上では炎上とバッシングの嵐、プライスの娘であるエミリーに対する嫌がらせすらあった。
だが、プライスはそれでも自身のプレイスタイルを変えることは無かった。その後1年以上、激しいブーイングを受け続けながらも、一切物ともしないのだ。それどころか、時には観客席の方へ煽っていったりするくらいなのだから、笑ってしまうくらいにヒール役が似合っている。
そんなプライスのキャリアについて纏めてみた。
2014年までは、クロスキーズ・スコーピオンズ・グラスゴーウォーリアーズ、といったチームでラグビープレイヤーとして活躍していた。そんな中、ウェールズ出身のPDCプレイヤー、バリーベイツが、プライスにPDC Qスクールへのエントリーを勧めた事がきっかけで、プライスは2014年度のQスクールにエントリー、2日目に勝ち上がり、ツアーカードを獲得する事に成功した。
2014、15、16年と徐々にPDC賞金ランキングを上げていき、2017年頃からその頭角を現し始めた。
2017年、UKオープンで初めてTVメジャータイトルの決勝へ進出、惜しくもピーター・ライトに敗れて準優勝。年度末にはPDC賞金ランキングのTOP16入りを果たす。
2018年、プレミアリーグデビューを果たし、UKオープン・ワールドグランプリ等の準々決勝まで勝ち進む等、好成績を見せていた。そしてグランドスラム・オブ・ダーツの決勝でギャリー・アンダーソンを破り優勝、初のTVメジャータイトルを獲得し、その名をダーツ界に轟かせる事となった。
2019年、デフェンディングチャンピオンとして迎えたグランドスラム・オブ・ダーツで、見事デフェンディングに成功、2連覇を果たした。ワールドダーツチャンピオンシップでも準決勝まで進出した。結果、PDC賞金ランキングを3位にまで上げ、その実力が選手・観客・視聴者から確実に認められるようになった。
今年2020年は、更なる好調で実力をめきめきと発揮。UKオープンで準優勝、ワールドシリーズ・オブ・ファイナルズ優勝、ワールドグランプリ優勝、ジョニー・クレイトンと共にウェールズ代表でワールドカップ優勝、フロアトーナメント3回優勝。といったように、素晴らしい好成績と数々のタイトルを獲得しており、一度はPDC賞金ランキング2位へ上り詰めたその勢いは他のプレイヤーが全く止められない程に凄まじく、現世界3強の1人であることは間違いない。
そして今現在、プライスはPDC賞金ランキング3位に位置している。1位にはマイケル・ヴァン・ガーウェン、2位にはピーター・ライトがおり、1位のマイケルと賞金の差額は£541,250(日本円で約7400万円)となっている。
11月以降には、「グランドスラム・オブ・ダーツ」・「プレイヤーズチャンピオンシップファイナルズ」・「ワールドダーツチャンピオンシップ」といったTVメジャータイトルの試合が控えている。
もし、グランドスラムとプレイヤーズチャンピオンシップファイナルズで良い成績を残した上で、ワールドダーツチャンピオンシップで優勝しワールドチャンピオンになる事があれば、賞金ランキング1位へ上り詰め、名実ともに世界1位の座に就く事があるのではないのだろうか。最近のプライスの調子を見ていると、その可能性は大いにあると私は考えている。
これから年末にかけて、ますますPDCから目が離せない。