No.33 2018年 ワールドマスターズを振り返って

2918年11月

歴史的瞬間の裏には歴史が必要なんだなー、と思うイギリスの旅でした。

2018年10月2日、ユース2人を含む日本選手団9名が関西関東、それぞれの空港から二手に分かれて、オランダのアムステルダム経由でハンバーサイド空港に向かいました。そこからタクシーをチャーターして開催の地ブリドリントンのSPAホールの近くのホテルに到着。移動は日本の家を出てからは丸一日近くかかります。
今回はJSFDランキング男女4名までの選手が出場できることになり、初めてのマスターズトライの選手が半数でしたが特に問題もなく無事に到着することが出来ました。

毎年プログラムは違いますが大体はレイクサイド予選とマスターズ本戦がセットで行われる日程になっています。今年もレイクサイド予選から始まり、翌日からマスターズの本戦が始まるという基本行程だったのですが、今まで初日は疲れも溜まっているのと慣れない緊張から力を出し切れずに終了してしまう感じです。
しかし今年のチームジャパンは違いました!鈴木未来と周作、英彦のユース2人が信じられないくらい良いプレイでどんどん勝ち上がっていきます。そしてユースで日本人対決となりマスターズ二度目のトライの周作が勝ち上がりました。しかし初トライでここまで来た英彦君には驚かされました。
結果は先にユースの周作が決まります。負けた時にいた場所はトップ8、何とレイクサイドユース8位という日本人初の快挙を成し遂げたのです。

そして年始のレイクサイドワールドチャンピオンシップ代表、世界のトップ24人しか出られないこの大会の中の2席を決める大事な予選で、歴史的瞬間が訪れたのです。
鈴木未来がその日最後のダブルを決めると後ろの観客全員から拍手が起こり、BDOの役員の女性が英語で言いました「アジア人初よ、この予選突破したのは!」未来さんはこの日誰にも負けずに終わりました。
アジア人初の快挙というのは、この予選会の歴史で初めてアジアの人が最後まで残りその座を射止めた事であります。
浅田斉吾選手ももちろん凄いですが以前レイクサイドに出場したのはアジア枠です。この未来が勝ち取った枠は、すでに決まったレイクサイド代表以外の世界中の挑戦者が集まる予選会で勝ち取った枠なのです。

しかし歴史的快挙の裏には歴史があると最初に行ったように、近くで見てきた私や本人にとってはとっても嬉しいし、大興奮ではありましたが、彼女の計画通りというか4年構想というか、何せ描いていた目標を達成した感もありました。アベレージも世界トップクラスにもっていき、もちろんまだ頭一つ抜けたわけではありませんがトッププレイヤーと並んでいることに間違いはありません。
ステージ慣れや緊張感もJAPANの舞台で経験してそれも肩を並べています。彼女が残したこの歴史的偉業は彼女の積み上げてきた歴史や努力によって成しえたものなのです。まあそう理解していても鼻血が出そうなほど興奮もしたし、嬉しかったのは忘れられませんが…。

そして二日目のワールドマスターズ本戦がスタート!高山徳溶選手が11ダーツを出す調子良さでも勝てずに他の日本人選手が苦戦をする中、やはり勝ち上がってきたのは鈴木未来でした。ステージ手前までをこの日だけで決定します。今年から女子はBDOランキングのシード4(ランキング4位)までがステージで待っていますから、この日のトップ4までを128の山から勝ち上がらなければなりません。
前回もトップ8まで行ったことがありますし、過去に大内麻由美、大城明香利が8の同じ位置まで行っています。何としてもその上を行きたいと気合が入っていましたが、それが気持ち良いくらいに実現します。その日ステージ決定までの山がとても厳しく、以前に明香利さんが惜しくも敗れたシード6のファロン選手、以前未来さんを破ったマリア選手を始めシード10に入る選手が3人もいました。
しかし結果だけ見てみると4レッグ先取のゲームで、最高でも相手に1レグしか取らせない圧巻のプレイをしたのです。
正直誰も勝てないのではないかと思わせる内容で、翌日からのシード選手もそれを見て驚いていました。つまり未来さんはこの日まで誰にも負けていないのです。

翌日運命のステージが始まりました。他の選手もチームジャパンとして一丸と応援する中ゲームは始まります。
相手はシード3のデターヘッドマン、彼女は何度も世界タイトルを手にしてランキング1位2位を常に争う実力者。チームLーstyleの女子の頂点で現在はBDOランキング2位でWDFランキング1位の調子の良さです。
私の立場として同じLーstyleチームなので露骨に応援はできませんでしたので、だいぶ後ろの方から静かに応援していました。誰もが認める世界トップランカーを相手に果敢に立ち向かう鈴木未来選手の姿に会場は大盛り上がり。レイクサイド予選の快挙を観客も知っていますので、注目度も最高で歓声もどちらに対しても大きかったです。

結果は先に王手をかけた未来をヘッドマンが追い付いてフルレッグになり、最終レグは先行のヘッドマンが色々なプレッシャーを振り切り、世界チャンピオンの意地を見せ勝利を収めました。
未来が王手をかけたダブルトライが入っていればとかもどうでも良くて、勝ち負けはもどうでもいいと思わせるくらいの感動的な試合で観客を魅了して世界を驚かせました。
もちろん勝って欲しかったし結果だけ見れば前回と同じ8位、しかし内容の濃い今回のマスターズ戦はまた歴史を作って来年のアジア人女性初のワールドチャンピオンシップに繋げたと思います。一回一回の結果ではなく積み上げた歴史を彼女は作ったと思います。世界の女子トッププレイヤーは、誰も彼女がたまたま飛んだなんて思っていません。何度も凄いプレイや高いレベルで安定した戦い方、強いメンタルを目の当たりにしているからです。

その日コーラーのみんなと世界の女子トップランカーと一緒にカラオケ&ダーツバーに行きました。その中に溶け込んでみんなと遊ぶ未来選手はまさにトップの仲間入りを果たしたんだな、と改めて思いました。
一つ心配だったのが、シード4アナスタシアもシード2リサアシュトンもそこにいたのですが、次の日ステージで準決勝…。何なんだこの余裕は?遅くまでダンスしてメチャメチャ楽しんじゃってるじゃないか!文化の違いを感じながらも凄くクールに見えてしまいました。
2019年1月5日からワールドチャンピオンシップがレイクサイドで行われます。もちろんアジア人女性初トライの鈴木未来選手を応援に行きますのでご報告させていただきます。来年の1月末、次号NDLが発売される時は結果がでていますので歴史がどうなっているか楽しみで仕方ないです。どうぞ次号もご期待くださいませ!

ちなみに今回の現地での生活動画はダーツYouTuberの菊地山口さんに託したので是非見てみて下さい。「菊地山口ダーツ」で検索するとチャンネルが出てきます!